認知症の鑑別診断ガイドブック
治せる認知症を見落とさないために
治療薬は進歩してゆく。では、診断は?
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アミロイドβ抗体薬の登場で、アルツハイマー病は「進行を遅らせ、予後を変えうる疾患」となりました。だからこそ、これから最も重要になるのは適切な診断です。本書は、新しい時代の認知症診療に必要な次の視点を第一線の専門家が徹底解説。
・ アルツハイマー病をどう見出すか
・ 他の認知症とどう鑑別するか
・ 治療介入が可能な認知症を見逃さないための考え方
専門家の豊富な経験を凝縮した、これからの認知症診療の実践ガイド。
| 編集 | 神田 隆 |
|---|---|
| 発行 | 2026年05月判型:B5頁:272 |
| ISBN | 978-4-260-06540-5 |
| 定価 | 6,820円 (本体6,200円+税) |
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序文
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序
認知症の臨床は今,大きな転換期を迎えています.2023年,2024年に相次いでアミロイドβ抗体製剤が上市され,アルツハイマー病もついに,治療介入により予後を修飾できる病気の仲間へと一歩を踏み出しました.“治せる”という段階にはまだまだ遠い道のりです.しかし,職場や社会の欠かせない一員として活躍できる時間,そして大切な家族と穏やかに過ごす時間を延ばす可能性を持つ,画期的な薬剤を私達は手にしました.この進歩によって,認知症患者に接するすべての医師に大きな責任が課せられたと私は思います.治療介入によって“治せる”,あるいは,“進行を遅らせ,予後を変える”ことのできる認知症患者を的確に見出し,適切な治療を行う,またはその可能性を考えて専門医療機関へ紹介することが,医療のスタンダードになる時代がやってきたのです.
本書はこの新しい時代での認知症診療の指針を示すことを目的としました.第1に,どのようにしてアルツハイマー病を見出すか,第2に,その他の認知症疾患はどういう点でアルツハイマー病と異なるのか,第3に,アルツハイマー病以外の治療介入が可能な認知症にはどういうものがあり,どのように診断・治療を進めていくべきか,この3点が本書の主眼です.現時点で認知症の実地診療の第一線におられる先生方が編者の意図を良く汲んで執筆くださったことで,編者のねらいを超えた素晴らしい一冊が出来上がったと自負しています.
アルツハイマー病の確定診断には本来,脳の病理所見が必須です.とはいえ,アルツハイマー病疑いの患者に脳生検は論外ですから,「アルツハイマー病らしい」臨床症候をもとに各種の補助検査を駆使してアルツハイマー病の診断に至るのが臨床の常道です.しかし,すべての患者にアミロイドPETを施行できるわけではありませんし,脳脊髄液検査もルーチンにできる検査ではありません.また,非アルツハイマー病で治療介入可能な疾患には,ビタミン欠乏,内分泌異常,感染症などさまざまなものがあり,個別の血液検査異常が診断の大きなヒントになりますが,すべてをカバーできる絨毯爆撃的な検査が保険診療で許されるはずもありません.本書の第3章「疾患各論」では先述のとおり,それぞれの認知症疾患を疑うにはどんな病歴・症候に留意すべきか,それはアルツハイマー病とどんなところが違うのか,という点を詳述していただきました.患者さんをトータルに診てその特徴から次の一手を考える──これはAIの時代にも変わらない臨床の基本ですが,認知症診療も,ようやくその原点を改めて問われる段階に至ったのだと感慨を覚えます.
アルツハイマー病の薬物開発はすさまじい勢いで進行しており,遠からずタウ蛋白を標的とした治療薬が上市されるものと思います.また,非アルツハイマー病の治療薬候補も今後,次々と臨床の現場に登場することでしょう.本書は2026年3月の段階での日本の認知症診療の水準と理解していただきたく,数年後にはさらなる改訂が必要と考えていますが,患者さんから得られる情報を大切にする姿勢の重要性はおそらく不変です.本書が先生方の座右にあって,日々の認知症診療の友となってくれれば,編者としてこれ以上の喜びはありません.
2026年3月
神田 隆
目次
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第1章 診断
1 認知症はどのように診断するか
1 認知症の定義と診断基準
2 アルツハイマー病(AD)の診断基準
3 軽度認知障害(MCI)
4 MCIと認知症の区別
5 主観的認知低下(SCD)
6 認知症診断区分とCDRとの対応
7 認知症診断の基本的な考え方
2 うつ病との鑑別診断はどのように進めるか
1 認知症とうつ病の疫学と臨床統計
2 うつ病と認知症の鑑別
3 認知症の原因となる疾患をどのように診断するか
A 病歴,神経症候から──脳神経内科の眼
1 問診
2 主訴の内容ごとの問診
3 家族歴
4 身体診察,神経学的検査で特徴的な所見のある認知機能低下
B 病歴,精神症候から──精神科の眼
1 病歴を考える軸
2 認知症でよくみられる精神症候
C 神経画像から
1 アルツハイマー病(AD)の画像所見と画像診断の限界
2 軽度認知障害(MCI)の画像診断
3 認知症の画像診断の鑑別ポイント
4 健常高齢者の画像所見
5 脳容積の定量値を解釈する上での注意点
D 各種検査から
1 血液検査
2 脳脊髄液検査
3 脳波検査と終夜睡眠ポリグラフィー
4 その他の電気生理学的検査
5 病理検査
6 遺伝子検査
7 心理検査
第2章 治療総論──認知症症候への治療
1 認知機能障害に対する治療
1 ADの臨床症状
2 ADの認知機能障害に対する薬物療法
3 Aβ抗体薬
4 アルツハイマー型認知症治療薬
5 認知症治療のアルゴリズム
2 BPSDに対する対策と治療
1 BPSDのアセスメントと治療の原則
2 幻覚・妄想
3 アジテーション(焦燥性興奮),易怒性
4 不安,抑うつ,アパシー
5 睡眠障害
6 徘徊
7 脱抑制
第3章 疾患各論
1 アルツハイマー病
2 レビー小体型認知症
3 パーキンソン病
4 前頭側頭型認知症
タウオパチー
5 進行性核上性麻痺
6 大脳皮質基底核症候群/大脳皮質基底核変性症
7 嗜銀顆粒性認知症
8 神経原線維変化型老年期認知症
9 多系統萎縮症
10 ハンチントン病
11 神経核内封入体病
12 ライソゾーム病
13 筋強直性ジストロフィー
14 ミトコンドリア病
15 血管性認知症
遺伝性脳小血管病
16 CADASIL
17 HTRA1関連脳小血管病
18 脳アミロイド血管症
19 アルコール関連認知症
20 薬剤誘発性認知症
ビタミン欠乏症
21 ビタミンB1欠乏症
22 ビタミンB12欠乏症
23 ニコチン酸欠乏症
金属中毒
24 無機水銀中毒
25 マンガン中毒
26 アルミニウム中毒
27 鉄中毒
28 銅中毒
29 肝性脳症
30 甲状腺機能低下症
31 神経梅毒(進行麻痺)
32 HIV脳症
33 ヘルペス脳炎
34 進行性多巣性白質脳症
35 多発性硬化症
36 視神経脊髄炎スペクトラム障害
37 自己免疫性脳炎
38 中枢神経血管炎
39 神経ベーチェット病
40 橋本脳症
41 中枢神経ループス
42 特発性正常圧水頭症
43 慢性硬膜下血腫
44 慢性外傷性脳症
45 プリオン病
46 てんかん
索引




