総合診療 Vol.35 No.12
2025年 12月号

ISSN 2188-8051
定価 2,860円 (本体2,600円+税)

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変化の時代に、変わらぬまなざしを
鈴木富雄(大阪医科薬科大学医学部 総合診療医学教室)

 感染症診療は、臨床の基本を最も端的に示す領域です。診断には、画像所見や血液検査データだけでなく、丁寧な問診と的確な身体診察、さらに生活環境や社会的背景の理解が欠かせません。患者さんの状態を多面的に把握し、経過を注意深く追いながら判断することが求められます。その過程には、臨床の根幹を成す観察と考察、判断と省察の営みが常にあります。
 この10年、感染症を取り巻く状況は大きく変化しました。新興感染症の出現、診断技術や治療薬の進歩、医療体制の再構築など、現場は絶えず新しい対応を迫られています。しかし、どれほど時代が変わっても、診療の基本となる姿勢は変わりません。医療の技術やシステムがどれほど進歩しても、それを生かすのは、目の前の患者さんを真摯に診るという“確かな臨床の力”です。
 感染症は、臨床医にとって最も身近で、かつ、避けて通れない課題です。症状は多彩で、年齢や基礎疾患、生活環境によって経過は大きく異なり、個々の状況を的確に把握し、全体を見渡して判断する総合的な視点が求められます。限られた情報を整理しながら仮説を立て、多職種チームとの協働のうえ、患者さんの生活背景への理解が欠かせません。感染症診療は、医療の現場において広い視野と柔軟な対応を必要とする領域であり、総合診療の実践と深く結びついています。
 また、感染症は個人の病気にとどまらず、社会や地域のあり方とも密接に関わります。高齢者施設や家庭内での感染、ワクチン接種に関する課題、医療へのアクセスの不均衡など、社会構造の影響を常に受けながらの対応が求められ、地域全体の健康を視野に入れた実践が不可欠です。
 本特集では、臨床現場で感染症診療に携わる多くの先生方に、この10年を振り返りながら、変化する医療環境の中での課題と展望を示していただきました。いずれの論考にも、日々の診療に根ざした実践と深い省察が込められています。今回の執筆をお願いした先生方は、いずれも各分野でご活躍の識者であり、私自身が心から敬愛している方々です。お忙しい中にもかかわらず、快くご執筆をお引き受けくださり、貴重な原稿をお寄せいただいたことに、この場をお借りして心より感謝申し上げます。

 感染症診療の進歩はこれからも続きます。ただ、その根底にある臨床の姿勢──患者さんを見つめ、考え、判断し、振り返るという営み──は決して変わりません。毎日の実践の積み重ねが、現場の診療を支えています。
 本特集が、日々の臨床を担う皆さんとともに歩みを振り返り、これからの医療をより良いものへと築いていく一助となれば幸いです。

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医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。

特集 総合診療の視点から見た 感染症診療Update──この10年で変わったものと変わらないもの
企画:鈴木富雄

■感染症診療Update──この10年で変わったものと変わらないもの
①医学教育と感染症
岩田健太郎

②新興感染症への対応
片山理智|岡 秀昭

③AI時代の感染症診療
山口征啓

④免疫不全状態への心得
古谷賢人|伊東直哉

⑤臨床微生物学検査の挑戦
笠原 敬

⑥臨床現場で問題になる耐性菌
大場雄一郎

⑦抗菌薬の適正使用の変遷
矢野晴美

⑧STIに関する今日的見解
本郷偉元

⑨未来志向の院内感染対策
忽那賢志

⑩在宅医療で感染症を疑うときの最優先事項
石川元直

⑪ワクチンをめぐる課題
齋藤昭彦

⑫誤嚥性肺炎との闘い──超高齢社会での永遠のテーマに総合診療の立場からどう挑むべきか?
神谷 亨


●Editorial
変化の時代に、変わらぬまなざしを
鈴木富雄

●ゲストライブ
感染症診療──変わったものと変わらないもの
藤本卓司|鈴木富雄

●アスクレピオスの杖|想い出の診療録|68
一枚の家族図が教えてくれたこと
吉田英人

●オール沖縄! カンファレンス Ver.2.0|レジデントの対応と指導医の考え|107|最終回
DWIよりも病歴を読め──病歴と症候が導く神経診断
佐々木 周|蒲生直希(著)|仲里信彦、他(監修)

●日常診療で出会う “おとなの発達障害”|明日から使える身体症状に対する問診と診断アプローチ|12
発達障害の感覚過敏と医療受診
廣田智也

●オスラーに学ぶ“平静の心”|医師と医学生に贈ることば|5
平静の心
森島祐子|仁木久恵

●What's your diagnosis?|276
天網恢恢疎にして漏らさず
大江将史|上田剛士

●復活 『19番目のカルテ』を読んで答える!|あなたの“ドクターG度”検定&深読み解説|14
守るべき“場所”
徳田安春

●構造式で語る医学|薬物の交差反応や意外な副作用を学ぼう!|12
PDE阻害薬は様々
上田剛士

●ジェネラリストに必要な ご遺体の診断学|33
実践応用編②:高齢者施設での看取りと死因「老衰」の検討
森田沙斗武

●投稿 総合診療外来・在宅
酢酸亜鉛水和物錠が原因と考えられた胃病変の3例
山根建樹|梅田 啓|稲見茂信|秋田貴之|大竹孝明

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