総合診療 Vol.35 No.11
2025年 11月号

ISSN 2188-8051
定価 2,860円 (本体2,600円+税)

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総合診療医にとって見逃しがちな婦人科・泌尿器科疾患
山中克郎(諏訪中央病院総合診療科/看護専門学校)

 診療の現場で、尿失禁や外陰部の不調を女性患者から打ち明けられることはほとんどありません。患者は「こんなことをおじさん医師に話しても仕方がない」と思うのか、あるいは忙しそうな医師の姿を見て「こんな相談をしては迷惑だろう」と遠慮しているのかもしれません。しかし、現実には40歳以上の日本人女性の44%が尿失禁を経験しているようです(本特集「尿失禁」p1236)。咳や荷物を持ち上げた際の軽い尿失禁は、かなり多くの女性が経験しているはずです。
 私自身がこの領域に関心を持ったのは、当時70代だった母からの相談がきっかけでした。母は年に数回、頻尿や残尿感を伴う膀胱炎様症状に悩まされていました。抗菌薬を数日服用すると改善するものの、数カ月後には再び同じ症状が現れます。若い女性であれば性交が誘因となりますが、母の場合には明らかに異なる背景があるはずだと感じていました。
 数年後のある日、母から「膣から硬い塊が降りてきた」と連絡がありました。婦人科への受診を勧めたところ、骨盤臓器脱(「骨盤臓器脱」p1240)と診断され、ペッサリーを挿入してもらいました。さらにエストロゲン膣錠を定期的に挿入してもらうと、膀胱炎の症状は激減しました。振り返ってみると、母は萎縮性膣炎のため膀胱炎を起こしやすかった、または頻尿は萎縮性膣炎の症状だったのだろうと思われます。萎縮性膣炎を含めた、閉経関連泌尿生殖器症候群は40~90歳の女性の79%にみられるようです(「GSM」p1244)。
 この経験から学んだことは、婦人科や泌尿器科領域のトラブルは、プライマリ・ケア医が知識や経験をもたないがゆえに見逃されやすいという厳しい現実です。患者は症状を訴えにくいため、医師が積極的に問いかけなければ沈黙のまま時間が過ぎていきます。適切なタイミングで疾患に気づいて初期治療を開始し、必要があれば専門医に紹介することにより、患者の生活の質は大きく改善されます。
 今回の特集では、こうした「見逃されがちな外陰部の疾患」について、婦人科・泌尿器科の専門医から診断や治療の重要ポイントを学ぶことができます。総合診療医が日常診療でどう振る舞うべきか、患者の声にならない訴えをどう汲み取るか、そのヒントに満ちた特集となったと思います。

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医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。

特集 シモジモの悩み
企画:山中克郎

■総論 鼎談
排尿と性のちょっと深い話──シモジモの悩みにプライマリ・ケア医はどう向き合うか
松木孝和|中山明子|山中克郎(司会)

■各論
①尿失禁──切迫性尿失禁を腹圧性尿失禁から見分けろ!
加藤久美子|荒木英盛|成島雅博

②骨盤臓器脱
野村昌良

③genitourinary syndrome of menopause(GSM)──閉経関連泌尿生殖器症候群
池田裕美枝

④子宮留膿症
石谷 健

⑤過多月経
篠原康一

⑥子宮内膜症
長谷川祐子|岩瀬 明

⑦骨盤内炎症性疾患(PID)
柴田綾子

⑧外陰部真菌感染症(カンジダ外陰腟炎)
山室 理

⑨男性性機能障害──male sexual dysfunction(MSD)
伊藤裕一

⑩尿道炎
成田玲奈

⑪前立腺炎
松木孝和

⑫前立腺肥大症
大日方大亮|高橋 悟

⑬前立腺がん/腎がん
上平 修

⑭精巣上体炎(副睾丸炎)
沖 貴士

⑮過活動膀胱/神経因性膀胱
吉川羊子


●Editorial
総合診療医にとって見逃しがちな婦人科・泌尿器科疾患
山中克郎

●オスラーに学ぶ“平静の心”|医師と医学生に贈ることば|4
三つの人生訓
森島祐子|仁木久恵

●オール沖縄! カンファレンス Ver.2.0|レジデントの対応と指導医の考え|106
止まらない! その出血、ただものじゃない!
岡崎将斗|田中瑠美子|今村 恵(著)|佐藤直行、他(監修)

●復活 『19番目のカルテ』を読んで答える!|あなたの“ドクターG度”検定&深読み解説|13
“不和”を生むもの
山中克郎

●ジェネラリストに必要な ご遺体の診断学|32
実践応用編①:病院や診療所での看取り
森田沙斗武

●日常診療で出会う “おとなの発達障害”|明日から使える身体症状に対する問診と診断アプローチ|11
入院病棟で起こる発達障害に関連する混乱
廣田智也

●臨床教育お悩み相談室|どうする!?サロン|26
心配事も今夜のご飯も全部AIで答えて!
長野広之|佐田竜一|木村武司

●What’s your diagnosis?|275
汗のかき方
酒見英太

●アスクレピオスの杖|想い出の診療録|67
『19番目のカルテ』に見る自身の医師人生
大切なことは目に見えない
横江正道

●構造式で語る医学|薬物の交差反応や意外な副作用を学ぼう!|11
アデノシンに関連する薬剤
上田剛士

●投稿
総合診療外来・在宅
在宅療養患者に対する往診時の睫毛抜去による症状改善の1例──在宅医療における眼科的対応の意義
西村裕樹|戸澤小春|横岩良太|中山慎太郎|清水映輔

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