総合診療 Vol.35 No.10
2025年 10月号
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Editorial
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診断学と処方学
家 研也(聖マリアンナ医科大学・川崎市立多摩病院 総合診療内科)
総合診療領域や内科領域における「診断学」は、先駆者の努力と学術的蓄積、そしてNHKのテレビ番組「総合診療医ドクターG」に代表されるメディアでの扱いもあいまって、いまやジェネラリストの代名詞となるほど市民権を得た感がある。
一方で、われわれ臨床医の日々は決して「ドラマティックな困難事例の診断」ばかりではない。むしろ、「診断がはっきりしないまま、患者も医療者もなんとか耐えている……」「診断がついても患者の抱えるつらさや困難が改善しきれない……」そして「慢性疾患管理など人生の一部としてどう折り合いをつけていくかが問われる……」そんな場面が多いだろう。
こんなとき、患者と医療者の間でさまざまな文脈を伴いつつ、「処方」という治療行為が両者の接点となりうる。
「医療の要具は、言葉と薬とメスである」というヒポクラテスの言葉が有名だが、「処方」は医師の専門職能であるという社会通念は、現在も定着しているように思える。処方は救いをもたらす鍵でありつつ、不適切/不用心な使い方がなされれば(時には適切にみえる使い方でも)有害になることがある。まさに毒にも薬にもなる、臨床医としての専門技能が問われる行為であったはずだ。
ここで診断学を否定する意図は全くない。むしろ筆者も、診断学の奥深さにどっぷりハマっている一人である。しかし、かつてときどき耳にした「診断さえつけば治療はおのずと決まる」というような、いわゆる cookbook medicine[G1]につながる言説にはきちんと異を唱えておきたい。「処方」は単に医薬品をオーダーすることの意味にとどまらず、患者の個別性に配慮した繊細で多層的な思考プロセスと、非薬物療法(言葉の意図的な処方も)までを包含した一連の治療的プロセスとして扱うべき概念なのではないだろうか。
本特集は「処方学」こそ、個別化医療を得意とするジェネラリストが追究すべき領域であるという前提に立ち、処方判断の熟達とその構造的理解を「攻めの安全処方術」という切り口から掘り下げていきたい。ぜひ本特集をお読みになり、日常診療に役立てていただければ幸いである。
[G1] cookbook medicine
臨床判断や患者・医療セッティングなどの個別性を軽視し、ガイドラインやプロトコルに従うことだけを重視する医療を揶揄した表現(例:○○症候群ならA薬、検査値が△△ならB薬を倍量にする、といったような画一的な対応)。実際は「cookbook medicineに陥らないように気をつけよう」というような文脈で用いられることが多い。
収録内容
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特集 攻めの安全処方術──引き算処方+多面的アプローチ
企画:家 研也
■総論編
①「攻める safe prescribing」とは?
家 研也
②押さえておきたい薬理学のイロハと薬剤効果の多因子性
青島周一
③safe prescribingの実際
北 和也
④攻めつつ安全な“引き算処方”の勘所
矢吹 拓
⑤処方管理への患者積極性を高めるには?
家 研也
■コラム 医療政策の視点からのsafe prescribing
①地域フォーミュラリ
今井博久
②AWaRe分類
松永展明
③薬剤総合評価調整加算
藤重瑶子
■疾患・愁訴編
①かぜ症候群へのsafe prescribing
宮松弥生|谷崎隆太郎
②生活習慣病へのsafe prescribing
高血圧症、糖尿病、脂質異常症
金原充志|岩間秀幸
③増悪予防を意識した慢性疾患へのsafe prescribing
大浦 誠
④慢性疼痛のマネジメントに強くなろう──線維筋痛症を中心に
西村美緒
⑤差がつく! 不眠・不安への引き出し①──診断と薬物療法
今村弥生
⑥差がつく! 不眠・不安への引き出し②──心理療法的アプローチ
坂田昌嗣|新野青那
⑦妊娠・授乳中の薬物療法の鉄則
玉井 瑛・水谷佳敬
●Editorial
診断学と処方学
家 研也
●アスクレピオスの杖|想い出の診療録|66
初期研修医時代の診療科部長からの贈りもの
花木奈央
●オスラーに学ぶ“平静の心”|医師と医学生に贈ることば|3
医師としての理想
森島祐子|仁木久恵
●日常診療で出会う “おとなの発達障害”|明日から使える身体症状に対する問診と診断アプローチ|10
食欲低下、動作緩慢を主訴に両親と来院した成人のASD患者
廣田智也
●What's your diagnosis?|274
流行り病は人間に望ましい“腐敗”をもたらすか?
妻鹿 旭|穂積未来|風間 亮|浜田 禅|桝田 元
●構造式で語る医学|薬物の交差反応や意外な副作用を学ぼう!|10
核酸(プリン塩基)に似た構造の医薬品
上田剛士
●ジェネラリストに必要な ご遺体の診断学|31
特別編:「死因推定シート」と「死亡日時推定シート」
森田沙斗武
●オール沖縄! カンファレンス Ver.2.0|レジデントの対応と指導医の考え|105
炎症の原因はどこだ!?
大城俊貴・中村一希・嵩原安彦(著)|徳田安春、他(監修)
●投稿
GM Clinical Pictures
謎はますます“膨れ上がる”
秋山由樹|若林崇雄|Goh Keng Wee|石橋幹之介|神田直樹|渡邉智之
GM Clinical Pictures
本当に、乾癬?
林 徹|宮崎晋一|前田百合香|後藤啓元|山下 良
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