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帰してはいけない外来患者 第2版

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やっぱり帰さなくてよかった! 第2版では外来診療に求められる「臨床決断」「診断エラー」「28症候」の知識をブラッシュアップ。「帰宅して様子を…」と言いたくなる47症例はすべて書き下ろし。「緊急性、重篤性、有病率、治療可能性から決断する!」「秒単位、突発で持続する症状は危ない!」「増悪傾向の症状はピークアウトするまで目を離さない!」など、外来で使えるgeneral ruleが満載。外来研修にも最適。

編集 前野 哲博 / 松村 真司
発行 2021年03月判型:A5頁:288
ISBN 978-4-260-04479-0
定価 4,180円 (本体3,800円+税)

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第2版 まえがき

 本書は,2012年に初版が発行されて以来,「帰してはいけない」患者にフォーカスしたコンセプトと印象的なネーミングが注目され,幸い好評を得ることができた.このたび,9年の時を経て,第2版が出版されることになった.
 初版からの主な変更点として,第1章(総論)では,臨床推論の基本的な概念としてよく知られる二重プロセス理論について加筆するとともに,診断エラーに関する項目を新たに追加した.第2章(症候編)は,症候ごとに見開き2ページに収めるというコンセプトは堅持しつつ,新しく「妊婦の症状」を追加するとともに,内容のさらなるブラッシュアップを図った.執筆は,可能な限り初版と同じ著者にお願いしたので,それぞれ著者の9年分の経験値が上乗せされ,より充実した内容になっている.第3章(症例編)は,症例・執筆者とも全面的に入れ替えて,47の全く新しいケースブックになっている.いずれも,実体験に基づく臨場感あふれるケースばかりで,実践で役立つクリニカルパールが満載である.初版を読まれた方も含めて,第2版も,ぜひ多くの読者に手に取っていただければ幸いである.
 近年,医療の機能分化,在院日数の短縮などの変化を受けて,外来診療における患者アセスメントのウエイトが高まっており,外来でのトレーニングの重要性が強調されるようになっている.この流れを受けて,2020年度からは,すべての研修医に対して外来研修が義務づけられた.また,本稿執筆時点において,新型コロナウイルスの感染拡大が重大な問題になっている.1日も早い収束を願うばかりだが,このような状況では,対面での病歴聴取や身体診察には制約を伴うため,これまで以上に,限られた情報から患者の状態を見極めるスキルが求められる.
 本書のコンセプトである「帰してはいけない」患者に焦点を当てるアプローチは,外来診療の最重要ポイントであると同時に,外来トレーニングの基本中の基本ともいえる.これから外来診療を学ぼうとする医学生や研修医・専攻医は,ぜひ,本書を最大限活用して,効果的な学修につなげていただければ幸いである.

 2021年1月
 前野哲博

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第2版 まえがき
初版 まえがき
本書で使用している略語一覧

第1章 外来で使えるgeneral rule
 外来で使えるgeneral rule
 外来で必要な診断エラーの知識

第2章 症候別general rule
 全身倦怠感
 食欲不振・体重減少
 浮腫
 発疹
 発熱
 頭痛
 めまい
 失神
 意識障害
 呼吸困難
 咳嗽
 咽頭痛
 リンパ節腫脹
 動悸
 胸痛
 悪心・嘔吐
 吐血・下血
 腹痛
 便秘
 下痢
 腰背部痛
 歩行障害
 四肢のしびれ
 排尿障害
 肉眼的血尿
 視力障害・視野狭窄・眼の充血
 不安・抑うつ・気分障害などの精神症状
 妊婦の症状

第3章 ケースブック
 1 15歳女性,発熱 持続する発熱をみたら
 2 20歳女性,頸部のしこり 主訴は何ですか?
 3 24歳女性,嗄声・咳嗽 かすれ声は職業病?
 4 25歳女性,乳房痛 産後4か月の乳房痛
 5 27歳男性,下肢痛・発熱・倦怠感 冬場の発熱に隠れているモノ
 6 30歳男性,呼吸困難 肺炎治療後も持続する労作時呼吸困難
 7 31歳女性,発熱・右季肋部痛 若い女性の腹痛ですけど?
 8 31歳男性,食欲不振 呑めるけど食べられない
 9 34歳女性,腹痛 上腹部痛の妊婦
 10 36歳女性,めまい・頸部痛 首を鳴らす癖のある患者のめまい
 11 40歳男性,発熱 あなたはどこで何をしていたのですか?
 12 40歳男性,発熱・咽頭痛 インフルエンザに紛れていたのは?
 13 41歳女性,悪心・下腹部痛 一家まるごと?
 14 42歳女性,腹痛 「突然」を探れ!
 15 50歳男性,不眠 「眠れない」のわけ
 16 50歳男性,心窩部痛・不眠 本当の主訴はどちら?
 17 51歳男性,左上下肢の筋力低下・転倒 身体診察にかける時間を惜しむな!
 18 51歳男性,食欲不振 冷蔵庫を開けるとニオイが変
 19 52歳女性,めまい 説明のつかないめまいにご用心
 20 55歳男性,心窩部痛 「O」が大切!
 21 58歳男性,腹痛 正月の白いヤツ
 22 59歳男性,ふらつき・転倒 飲酒者の頻回な転倒
 23 63歳男性,発熱 目は口ほどに物を言う
 24 64歳男性,顔面神経麻痺 単なる顔面神経麻痺ですけど何か?
 25 64歳男性,失神 百聞は一見にしかず
 26 68歳男性,口唇のしびれ 口唇のしびれは災いのもと
 27 70歳女性,背部痛 軽快していた背部痛
 28 71歳女性,嘔吐・頭重感 外食中に感じた頭重感と首の違和感
 29 72歳女性,腹痛 改善傾向にある突然の腹痛
 30 72歳女性,発熱・倦怠感 前日に肺炎と言われているが
 31 73歳男性,腰痛 筋肉痛で夜中に受診!?
 32 75歳女性,頸部痛 寝違いと勘違いで総力をケッシュウ!
 33 75歳女性,瘙痒感 ところで,それって本当なの?
 34 75歳女性,頭痛 歌えないのは年のせい?
 35 76歳女性,心窩部痛 red flag signには気づいていたのに!
 36 78歳男性,下肢筋力低下 下肢の筋力低下は腕の見せどころ!
 37 79歳男性,意識障害 その酔いは醒める?
 38 80歳女性,食欲不振・悪心 主訴も病歴もはっきりしない
 39 80歳男性,嚥下障害 飲み込みづらい,その理由
 40 81歳女性,関節腫脹 その症状は氷山の一角!?
 41 83歳女性,発熱・全身脱力 王手のかけ違い
 42 85歳女性,発熱 大事なところは隠すもの
 43 85歳男性,尿閉・腹痛 尿閉による下腹部痛?
 44 86歳女性,下肢痛 いつもの坐骨神経痛ですよね
 45 87歳男性,失神 うどんを食べていたら,意識を失ったんです
 46 88歳女性,低体温 心も体も温まる夫の甘酒
 47 90歳女性,全身倦怠感・体重減少 年のせいで動けない?

初版 あとがき
第2版 あとがき
第3章ケースブック診断名一覧
索引

column
 1 怒られないコンサルテーション
 2 帰してしまった患者さんを呼び戻す法
 3 親同伴の女子高生に妊娠歴を聞くには
 4 血圧測定はできるだけ薄着の上腕で
 5 女性をみたら妊娠と思え
 6 バイタルサイン
 7 普段は2合,時々3合
 8 外来看護師とのコミュニケーション
 9 タメ口? 敬語?
 10 COVID-19が外来診療に与えた変化①
 11 COVID-19が外来診療に与えた変化②
 12 COVID-19が外来診療に与えた変化③
 13 オンライン診療
 14 記憶と記録
 15 3,4年目は青かった
 16 忙しい時も暇な時も同じように
 17 診察中にPHSが鳴ったら
 18 医師頼みより神頼み?
 19 全身をみてもらっていると思っている
 20 高齢者の「ああ,そうですか」はあてにならない
 21 「外に家族が待っていませんか?」

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リアルなあるある症例からピットフォールを学ぼう
書評者:坂本 壮(総合病院国保旭中央病院救急救命科医長/臨床研修センター副センター長)

 “人は変えられるのは 未来だけだと思い込んでいるけど 未来は常に 過去を変えているんじゃないかな”

 私は主に救急外来で仕事をしている。救急というと多発外傷やショック,心肺停止など,死に瀕している患者さんばかりが来院すると思われがちだが,そんなことはない。『救命病棟24時』,『コード・ブルー』,最近では『TOKYO MER~走る緊急救命室~』,『ナイト・ドクター』など,おいおい,こんな若手がそんなことを,それも美男美女ばかりが……てな感じの突っ込みどころ満載ながらも楽しいドラマに出てくるような症例はまれだ。リアルな救急外来で出合う症例の多くは,発熱,呼吸困難,意識障害,意識消失,めまい,何らかの痛みなどを主訴に来院し,バイタルサインはおおむね安定している。最近では,高齢者が動けない,元気がない,食欲がないといった症例も多く,病歴聴取や身体所見の評価に苦渋しながら,みんな対応しているだろう。

 限られた時間,資源の中で多くの患者さんを同時に見ることが要求される救急外来ではエラーが起こりがちである。振り返ってみると,きちんとそこには見逃してはいけないはずの訴えや検査結果があるにもかかわらず,だ。それには,さまざまな認知バイアスが影響していて,知識不足以上の要因となっているとされる。しかし,当然のことながら知識は大切である。特にわが国では初期研修医など若手の医師が救急外来を担うことが多く,彼らが陥るエラーは誰もが経験するエラーであることがほとんどだ。嘔気や体動困難という主訴から心筋梗塞を想起できなかった,来院時には痛みの程度が軽度であったため大動脈解離やくも膜下出血を問診の段階で除外してしまった,外傷の背景に潜む内因性疾患を意識しなかった,X線のみで骨折を否定してしまったなど,あるあるはたくさんある。

 本書『帰してはいけない外来患者 第2版』は,第1章「外来で使えるgeneral rule」,第2章「症候別general rule」,第3章「ケースブック」で構成され,外来診療で頻度の高い症候の一般的なアプローチを解説するとともに,陥りやすい点をケースを通じて学ぶことができる。第3章のケースブックは47症例と豊富だが,そのどれもが「こんなこともある」というレアケースではなく,非典型的なように見えて実は典型的といった症例ばかりで,病歴や身体所見,バイタルサインの重要性がひしひしと伝わってくる。私のお勧めは第3→1章の逆読みだ。症例であるあるとうなずきながら一般的なアプローチを振り返るのだ(症例でうんうんうなずけない場合には,第2章から読むとよいだろう)。第1章,前野哲博先生の「外来で使えるgeneral rule」は外来特有の臨床決断の思考ロジックを,和足孝之先生の「外来で必要な診断エラーの知識」では認知バイアスまで学ぶことができてしまうという,お得感満載である。

 冒頭のセリフは映画化もされた平野啓一郎著『マチネの終わりに』の一節である。過去に起こった出来事,それ自身は変えられなくても,その経験から成長していくことができれば,過去も変わるのではないだろうか。本書から学び,実臨床で生かしていただきたい。


外来診療の知恵と経験が凝縮!
書評者:北野 夕佳(聖マリアンナ医大横浜市西部病院救命救急センター副センター長/聖マリアンナ医大准教授・救急医学)

 救急外来診療には地雷がつきものである。しかし,救急外来は「救急に来た」という時点で医師側も子細に問診・診察する心の準備ができている。また画像検査を含め,手厚い精査が時間的・医療資源的にも許容される。入院病棟診療は,重症病態なので入念な対応を要するが,継続的に経過観察でき,悪化時にはすぐに認識できる(=時間を味方につけられる)という圧倒的な強みがある。

 一方,外来診療はどうだろうか。「総合内科外来」にはどんな症例も来る。かつ,とにかく数が多い。朝,外来ブースで自分のリストに再診6例しか入っておらずガッツポーズをしたのも,束の間の夢。「初診です」「近医からの紹介状ありです」「○○科外来から内科依頼です」「○○科入院中の方で,術前の内科依頼です」「健診で異常を指摘された二次精査です」と,次々に新患が入ってくる。はじめましての患者さんばかりである。救急搬送や入院と同様の時間を割いていては外来が回らない。待ち時間の長くなった再来の患者さんたちがイライラし,看護師さんからはにらまれる。こちらも泣きたくなる。ほとんどの症例は本日初療・精査を開始し,次回,結果説明と介入を始めれば大丈夫なのである。

 しかし! その「ほとんど大丈夫」な中に,「帰してはいけない外来患者」が紛れ込んでいるのが外来診療の難しさである。臨床経験の長い医師であれば「なんか変って気付くでしょ?」ということもあるが,この「なんか変」を言語化して伝えるのが難しい。また「たくさん診てれば気付くようになるよ」では若手の成長が芳しくなく,指導医・若手ともにストレスがたまる。「なんか変」を論理的に再現性があるように言語化して伝える必要がある。

 本書が,それを見事に解決してくれる。第1章では「外来で使えるgeneral rule」として,情報収集,鑑別診断リストを挙げて絞り込むプロセスなどが詳細に解説してある。診断エラーの項は,慣れたころが危ないことを明記し,代表的な認知バイアスを具体例で記載してある。概念ではなく実用に直結するものである。

 第2章は「症候別general rule」で,各プロブレムとも「見逃すな(red light)」「帰してはいけない患者の見分け方」「これは安心(green light)」「general rule」の構成で見開き2ページにまとめてある。これがかなり素晴らしく,実用的で,感心して読んだ。鑑別疾患を50個列挙されても,網羅的だが実用的ではない。実際に私たちが専攻医に教えるときも「この症例で,帰してはいけないやばい鑑別は?」と的を絞った数個を列挙させる。本書は本当にベッドサイドで指導医から教えてもらっている実況中継のような記載である。必要十分に絞ることにかなりの労力を割かれただろうと思う。

 第3章は「ケースブック」であり,身につまされるえりすぐりの47ケースが記載されている。具体例の教育的効果を実感する。腰部脊柱管狭窄症だと思ったら実は,気管支喘息だと思ったら実は,前立腺肥大からの尿閉かと思ったら実は……,映画の結末を言ったらルール違反なので書きたくても書けないが,素晴らしく教育的な症例ばかりである。

 ぜひ手に取って通読されることをお薦めする。指導医・専攻医いずれにとっても,この上なく有益な書と確信している。

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