• 医学

2026.06.01

 これは将来進む診療科の選択に悩む医学生や研修医からよく受ける質問です。SNS の普及により、医師の年収や働き方など、以前は知り得なかった情報が簡単に手に入る時代になりました。その結果、情報が多すぎるが故に迷い、決断できなくなっている人も少なくないと感じます。
 
 私はこの質問が嫌いです。なぜなら、答えは明白であり、それを考える時間も答える時間も無駄だと思うからです。診療科に本質的な優劣など存在せず、社会に必要とされる役割も、求められる責任の重さも、それぞれ異なる形で存在しています。どの診療科を選んだとしても、患者に向き合い、責任を果たすという点において、医師としての価値に差はありません。

 心臓外科医である私がよく聞かれるのが、「美容外科医をどう思いますか?」という質問です。その背景には、「命を直接扱わない診療科を下に見ているのではないか」という無意識の前提を感じることがあります。しかし、診療科によって医師の価値を序列化することに意味はありません。医療は多様な専門性の積み重ねで成り立っており、どの分野も欠かすことはできないのです。

 研修医時代、私は循環器内科に興味を持っていました。ただ、治療の対象となる心臓を直接見ることなく診療を進めることに、どこか物足りなさを感じていました。原因から治療、そして結果までを直接自分の目で確かめたい。その思いから外科医の道を選びました。

 中でも心臓外科は、結果が手術中に明確に現れます。心臓を止め、全身の血流を管理するという、極めて高い技術と責任を伴う特殊な分野です。冷静に考えれば非常識とも言える行為を、医学的根拠のもとで合法的に行える。その点に強烈に魅力を感じ、私は今も心臓外科医を続けています。

どの診療科が一番いいのか。答えは明白です。もちろん、心臓外科でしょ。

シカゴ大学病院 心臓外科 / NPO 法人チームWADA 代表理事

X : @HirotoKitahara
YouTube:@TeamWADA