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内科医に役立つ!
誰も教えてくれなかった尿検査のアドバンス活用術

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尿検査は、簡便、迅速、安価で、一見ローテクニックに見えるが、使い方によっては実にハイパフォーマンスな検査だった! 一般内科医にこそ、読んで役立てて頂きたい。
上田 剛士
発行 2019年11月判型:B5頁:176
ISBN 978-4-260-03954-3
定価 3,850円 (本体3,500円+税)

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はじめに

 今思い返せば尿検査の魅力に取りつかれたのは初期研修医の時でした。当時の研修先である名古屋掖済会病院の腎臓内科部長を務められていた瀬嵜 良三先生(現医療法人有心会おおぞねメディカルクリニック院長)はすべての研修医に尿所見の読み方を丁寧に教えて下さいました。そこで学んだ尿所見の読み方は,筆者がその後,総合診療の道を歩む上で大きな糧となりました。腎臓の問題については,腎臓が頑張れなかった最終結果を血液検査で確認するよりも,腎臓が頑張れていない様子を尿検査で確認するほうが早期に病態を正確に把握できることが多いからです。尿検査という簡便,迅速,安価でローテクニックとも言える代物は,使い方によってはハイパフォーマンスな検査だったのです。
 本書では一般内科医にお役立て頂きやすいように,尿定性所見を中心に解説をしています。一般臨床で役立つことを第一に考えた結果,尿臭や肉眼的所見といった臨床所見も取扱うことに致しました。一方で,尿沈渣や尿電解質に関しては遭遇頻度の高い急性腎障害や低Na血症などにポイントを絞って解説していますので,一般内科医にとっても抵抗感なくお読み頂けると考えています。
 尿検査の魅力に取りつかれたとはいえ,若輩者である筆者が本書を発刊するにあたっては洛和会京都医学教育センター所長(洛和会音羽病院副院長兼務)の酒見 英太先生に並々ならぬお力添えを頂きました。本書の元となった雑誌『総合診療』の連載「I LOVE Urinalysis シンプルだけどディープな尿検査の世界」の原稿を善意にて高閲頂きましたことを,この場を借りて心底より感謝申し上げます。
 本書が臨床で活躍する若手医師,医療資源の乏しい環境で頑張られている医師,あるいはせっかちで検査結果を待ち切れない医師のお役に立てたなら,筆者としては望外の喜びです。

 2019年11月吉日
 上田剛士

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はじめに

第1章 尿所見で慢性腎臓病(CKD)を予測する

第2章 その尿蛋白は淡白か? 濃厚か?

第3章 あんな蛋白尿,こんな蛋白尿

第4章 その尿潜血「陽性」は本物か?

第5章 血尿の4大原因とは?

第6章 「尿の濃さ」を濃厚にみる

第7章 腎前性腎不全の判断にFENaは万能か?

第8章 ちゃんと尿のpHをみていますか?

第9章 尿路感染の起因菌は何か?

第10章 この尿は臭う。何かあるぞ。

第11章 尿糖は本当に甘い?

第12章 尿ケトン体がケトアシドーシスでも陰性となる時

第13章 尿ビリルビン・尿ウロビリノーゲン

第14章 薬剤による着色尿

第15章 妊婦の尿検査からわかること

第16章 年齢が違えば注意すべき疾患も全く異なる

第17章 低ナトリウム血症をみたら尿をみろ

第18章 低カリウム血症をみたら尿をみろ

第19章 髄膜炎? 尿試験紙でしょ!

第20章 涙にも鼻水にも尿試験紙を

第21章 喀痰に尿試験紙?!

第22章 経管栄養するなら尿試験紙を!

第23章 胸水にだって尿試験紙!

第24章 腹水にも尿試験紙を!

第25章 関節液にも,爪にも,血液にも尿試験紙を!

column
 1日に排泄されるクレアチニンは何mg?
 脂肪塞栓症における3のルール
 横紋筋融解症の診断と治療に尿潜血を
 ヘモジデリン尿と血管内溶血
 FENa<1%であるかどうかを迅速に推測する方法
 急性腎障害のバイオマーカー
 好酸球尿の意義
 代謝性アルカローシスにおける低い尿Cl値は嘔吐を示唆する
 性感染症における尿試験紙の役割
 尿から空気が一緒に出たら
 呼気臭から尿毒症かどうか,透析後かどうかまでわかる?!
 薬物・毒物を疑えば尿検査
 ミルクのような尿をみたら
 妊娠反応検査は血液で?
 絨毛膜羊膜炎の診断にも尿試験紙を
 妊婦腟分泌物のpHからわかること
 スポット尿でNaやKの経口摂取量は予測できるか?
 高カリウム血症における尿所見
 髄液検査を迅速に行うべき理由

略語一覧
巻末付録:尿以外の検体への尿試験紙法の応用
索引

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計り知れない魅力的な尿の本
書評者: 志水 太郎 (獨協医大主任教授・総合診療医学)
 本書の魅力は計り知れません。このデジタル時代に,尿所見というシンプルでどこかアナログで,しかしcost effectiveな臨床ツールを題材に一冊の本で勝負するというコンセプトが,後輩目線から見て痛快です。卒業年を拝見すると上田剛士先生は評者(2005年)より3年上の先輩ですが,このような先輩が総合診療業界を牽引されているということに勇気が湧きます。本書の魅力をいくつか具体例とともにピックアップしてみます。

 尿所見による腎組織像の予測(p.4)という項目(第1章)が,実は評者が一番好きな章となりました。腎病理の“予測”は病歴にも通じることです。一つの些細な情報がその全体像を想像して描くという想像力はAIには不可能といわれます。つい先日,AIと人間の診断思考比較のイベントで上田先生と同席させていただきました。そのときの上田先生との会話がフラッシュバックしたような錯覚を受けました。この「想像力」が,一つの情報から全体のスクリプトを描く臨床能力であり,それは病歴にとどまらず尿所見一つとっても同じ,ということをこの章は教えてくれると思います。

 上田先生の書籍を拝読していつも勉強になるのは「裏を取る習慣」です。キャリアの早期に,ある臨床的な事柄を,これはそんなものなのだ,と耳学問で得た場合,それが自分の中の常識になっていて,ふと振り返るときにその論拠は? と気付くことがあります。そのような場合はそれを逐一文献に当たってみることを怠らないように,というメッセージが本書のそこここに配置されています。その他,トリビア的でしかも役に立つ知識も満載で,例えば,妊娠の有無は尿中反応検査が一般的ですが,実は血液検査でもほぼ同じ診断特性がある,といった記載などは「へー!」でした(p.103)。

 巻末付録の「尿以外の検体への尿試験紙法の応用」一覧図は,このような形でのまとめを見たことがなかったので,このまま医局に張ってもよいような素晴らしいページと思いました(p.165)。余談ですが個人的には,尿臭の章(第10章「この尿は臭う。何かあるぞ。」)で,猫尿臭のメチルクロトニルグリシンと3-メチルカプトヘキシルアセテートの違いに触れられていたところは日本ソムリエ協会会員としてはツボでした(p.68)。

 このように,尿をテーマに実用性と,尿所見というシンプルで奥深い学びが満載の一冊,ぜひお手に取っていただければと思います。
救急医や研修医が尿検査を学ぶバイブル
書評者: 清田 雅智 (飯塚病院総合診療科)
 今日ほとんどの大病院では中央検査室が標準的に整備され,医師自ら検体検査を行うことはほぼ皆無になっている。検体検査の中では採血を行うことが主流で,多くの疾患は血液検査から分析され診断されていくことが多い。検尿という地味な検査は,腎臓内科医や泌尿器科医を除くとこだわりを持ってオーダーをすることは少ないのではないか。しかし,採血と異なり検査の侵襲は少ないメリットがあり,深く診ていくと意外な気付きもあり,今日でも有用な武器であることには違いない。

 内科医として日常臨床でよく使用するのは,「第9章 尿路感染の起因菌は何か?」における尿中白血球,亜硝酸塩,pHの判断であろう。腎臓の大家Burton D. Roseも他書にて尿のpHの尿路感染での重要性を指摘しているが,きちんとした解釈がここに書かれている。また,「第17章 低ナトリウム血症をみたら尿をみろ」というのは確かにその通りで,ナトリウムに加えて尿酸を解釈することが重要であり,これを血液検査だけで診断するというのはあり得ない話だろう。低ナトリウムの解釈は,学生時代にはあまり教わらず研修医になり臨床現場で学ぶものの一つであり,ここに書かれている内容を読めば,マニュアルの背景がわかることだろう。同様に「第18章 低カリウム血症をみたら尿をみろ」も重要で,低カリウム血症の解釈では尿中Kの排泄を評価するために,K/Cr,TTKG,FEKなどの難解な解釈をHalperinの文献も用いて明確に論じている。

 評者は,雑誌『総合診療』の連載は極力目を通すように意識しているので,著者の上田剛士先生の連載「I LOVE Urinalysis」は毎月リアルタイムで読んでいた。毎回きちんと文献的にも裏打ちされた内容で,知らなかった内容も複数あり,サブタイトル通り「シンプルだけどディープな尿検査の世界」が本当によく表現されていた。今回これが単行本になったことは大変ありがたいことである。

 尿の試験紙の特性を生かして,尿以外の検体に応用することは,若干マニアックで,実際には使わないような話に見えるかもしれない。昔,研修医の頃に夜間の救急外来にて吐血疑いで運ばれてきた患者さんがいた。消化器内科に緊急内視鏡を依頼すべきかどうかは当時ハードルが高かった。患者さんの吐物が本当に出血であるといってよいのかと悩んだ時,同僚が尿試験紙で確認をして出血だと診断していたことを思い出す。個人的には,尿の検体用の検査を他の検体に対して行って本当によいのかという疑問を持っていたが,第19章から第25章は,こういった疑問にきちんと根拠に当たり,どこまで検証されているかを述べている。これを読むと,尿という枠組みではなく,その検査特性を理解することの重要性が理解される。

 この本は,救急の医師や研修医が,尿の検査について勉強をするバイブルと言ってよいと私は思っている。

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