精神機能作業療法学 第4版

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本改訂では、診断名・診断基準をICD-11やDSM-5TRに合わせることはもちろん、精神領域の作業療法で用いられる具体的な理論や実践モデル、フレームワークを時系列に沿って一覧できる項目を追加しました。また、豊富な事例は、臨床実習で活用しやすいフォーマットに編み直し、臨床現場、国家試験対策、臨床実習と、全方位をカバーした最良の一冊に仕上がりました。

*「標準作業療法学」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 標準作業療法学 専門分野
編集 新宮 尚人
編集協力 藤田 さより / 清家 庸佑
発行 2025年12月判型:B5頁:296
ISBN 978-4-260-06214-5
定価 4,620円 (本体4,200円+税)

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第4版 序

 第4版では,第3版の内容をふまえたうえで,より活用しやすいものとするため,レイアウトの大幅な変更と,付録として書き込み可能な事例フォーマットをダウンロードできるようにした.また,キーワードの解説は,前版では章末にまとめて掲載していたが,第4版では,本文中にKeywordとして挿入し,同じページ内で参照できるようにした.以下,構成に沿って本書の特徴を概説する.

第I部 精神機能作業療法の基礎
 第1章「精神機能作業療法の基本的視点」では,精神機能作業療法を学ぶ際の基礎となる「精神機能が低下した状態をどうとらえるか」という解説から始まる.この理解をベースとして「作業療法は対象者にどのように治療・指導・援助するか」「何をもって作業療法の効果とするか(アウトカム指標)」など,第II部以降で学習する「作業療法の実践基盤や実践事例」を階層的・論理的に理解することができる.
 第2章「精神保健医療福祉と作業療法」では,わが国における精神障害者に対する処遇の歴史をふまえ,関連法規の変遷に沿って概説した.インターネット上で豊富な情報を得ることが容易になったことや,アクティブラーニングが推奨される時代背景をふまえ,各項目の記述を必要最小限とし「自己学習のきっかけとするための大枠を示すこと」に重点を置いた.一方,日本作業療法士協会が,33年ぶりに作業療法の定義改定を行ったこと(2018年5月)や,同協会の学術誌編集委員会により学術誌『作業療法』に掲載された10年間の論文(2006~2015年)の分析と考察の内容にふれるなど,最近の動向までも網羅した.

第II部 精神機能作業療法の実践基盤
 第II部では第1章「精神機能作業療法の理論・実践モデル」,第2章「回復過程と作業療法」,第3章「地域生活における作業療法の視点」について解説した.「精神機能作業療法の理論・実践モデル」には,新たな項目としてD「具体的な理論・実践モデル」を追加した.精神科リハビリテーションの理論やモデルが,時系列かつ体系的に示されており,どのような対象にどのような目的をもって支援技術が発展してきたかを理解することができる.それを知識基盤として,「ストレス反応(脆弱性)モデル」と「リカバリーモデル」,「精神機能作業療法の治療構造」と「回復過程〔回復早期・後期,生活期(維持期)〕に沿った作業療法の役割と視点」について学ぶことができる.そして,再燃・再発をコントロールしながら,「安定した地域生活を送るための援助の視点や国の政策」についてふれている.

 以上の第II部までを精神機能作業療法における基礎知識の学習とするならば,第III部以降は,これらをさまざまな切り口(疾患別,状態別,場面別)で応用する実践的な内容と位置づけることができる.

第III部 疾患別精神機能作業療法
 2018年に公表されたICD-11の「第6章精神,行動,神経発達の疾患」に沿って8つの精神疾患別に作業療法がどのように展開されるかを記述した.なお,ICD-10の「第5章精神および行動の障害」のうち,「F8.心理的発達の障害」に分類されていた疾患群は,「神経発達症群」という独立した主要なカテゴリーにまとめられており,本書もその分類でふれている.各章は医学的治療と作業療法の関連,作業療法評価,作業療法の目標とプログラムへと説明が展開し,最後には事例を掲載した.事例は掲載部分が一目でわかるよう,独立したレイアウトにしている.また,項目を細分化して事例レポートの形式に近いものとしたことで,学生が臨床実習などで参照できるようにした.前版を踏襲して,作業療法の進め方をストーリーとしてとらえるために,行動目標(SBO),修得チェックリストとは別に,事例に特化したセルフチェックリストを設けている.これにより,学習者は「知識」として学んだ作業療法の進め方のポイントが,実際の事例ではどのように「運用」されるのかを体験的に理解することができる構成となっている.

第IV部 状態別精神機能作業療法
 ここでは近年の精神科領域のトピックである「認知機能障害」と,精神疾患における「身体合併症」について記述している.
 第1章「認知機能障害における作業療法」では,「認知機能リハビリテーションの基本的考え方」を学習したのち,実際の事例を通して,「認知機能障害が具体的にどのような形で表れるのか」「どのようにアプローチするのか」を確認できる内容となっている.第2章「身体合併症における作業療法」では,その定義とともに,自殺や自傷,依存物質の使用,多飲水などの精神科特有の要因で生じやすい身体合併症について整理している.リエゾン精神医学の理念に基づく包括的な医療サービスについて学習する機会となるだろう.

第V部 場面別精神機能作業療法
 作業療法の実践においては,「基礎疾患はそれぞれ異なるが共通した生活上の困難をかかえる対象者」が集い,同じ目的をもって場に参加することも多い.ここでは退院支援,就労支援,復職支援,地域生活支援,司法精神医療における作業療法という5つの場面を設定し,実践事例に沿って作業療法の展開を解説している.すべての場面は,執筆者自身の経験をふまえて書かれており,臨床思考を垣間見ることができる最も特徴的でオリジナルな章である.

 以上のとおり,第4版では事例を通して臨床思考を養うことに主眼を置いている.養成校においてはこの点をふまえた教材として,また臨床現場の作業療法士にとっては,日々の臨床を振り返る材料として活用していただければ幸いである.

 2025年10月
 新宮尚人

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I 精神機能作業療法の基礎
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 第1章 精神機能作業療法の基本的視点
  A 精神機能と「自分」との関係
  B 精神機能の回復状態と作業療法
  C 作業療法における臨床思考過程
  D 精神機能の評価
  E 作業療法に必要な資源とチーム
  F 精神機能作業療法が目標とする成果
 第2章 精神保健医療福祉と作業療法
  A 精神保健医療福祉の動向と精神機能作業療法の歴史
  B 精神保健医療福祉の現状と今後の方向性
  C 精神機能作業療法の現状と課題
  【Column】国際生活機能分類(ICF)

II 精神機能作業療法の実践基盤
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 第1章 精神機能作業療法の理論・実践モデル
  A 理論と実践モデル,アプローチの関係
  B 精神機能の低下と回復のモデル
  C 精神機能作業療法の成果機序
  D 具体的な理論・実践モデル
 第2章 回復過程と作業療法
  A 回復過程における作業療法の視点
  B 回復早期における作業療法の視点
  C 回復期後期・生活期(維持期)における作業療法の視点
 第3章 地域生活における作業療法の視点
  GIO,SBO,修得チェックリスト
  A 精神障害者に対する地域生活支援の現状
  B 地域生活支援を行う際の重要な視点
  C アセスメントと支援のポイント
  D 予防・保健領域におけるメンタルヘルス支援
  【Column】精神疾患の分類

III 疾患別精神機能作業療法
 第1章 神経認知障害群
  GIO,SBO,修得チェックリスト
  A 概要
  B 作業療法評価
  C 作業療法の目標
  D 作業療法プログラムとその実践
  実践事例1 単身生活の70歳代女性──認知症初期からの訪問支援
 第2章 物質使用症または嗜癖行動症群
  GIO,SBO,修得チェックリスト
  A 概要
  B 作業療法の評価・目標
  C 作業療法プログラムとその実践
  実践事例2 家族の喪失と自己否定を乗り越えて──アルコール使用症患者の回復事例
 第3章 統合失調症および他の一次性精神症群
  GIO,SBO,修得チェックリスト
  A 概要
  B 作業療法評価
  C 作業療法の目標
  D 作業療法プログラムとその実践
  実践事例3 措置入院後緘黙を呈した統合失調症事例に心理社会的アプローチとして実施した作業療法
 第4章 気分症群(抑うつ症群,双極症および関連症群)
  GIO,SBO,修得チェックリスト
  A 概要
  B 作業療法評価
  C 作業療法の目標
  D 作業療法プログラムとその実践
  実践事例4 仕事と家庭のバランスを再考した事例
 第5章 不安および恐怖関連症群,強迫症および関連症群,解離症群,身体的苦痛症または身体的体験症群
  GIO,SBO,修得チェックリスト
  A 概要
  B 作業療法評価
  C 作業療法の目標
  D 作業療法プログラムとその実践
  実践事例5 精神科デイケアを利用した社交不安症の男性の支援
 第6章 食行動症および摂食症群
  GIO,SBO,修得チェックリスト
  A 概要
  B 作業療法評価
  C 作業療法の目標
  D 作業療法プログラムとその実践
  実践事例6 摂食症患者の心の成長を支えた作業療法──食への執着から前向きな生き方への転換
 第7章 パーソナリティ症および関連特性群
  GIO,SBO,修得チェックリスト
  A 概要
  B 作業療法評価
  C 作業療法の目標
  D 作業療法プログラムとその実践
  実践事例7 パーソナリティ症を背景に摂食症を合併した事例に対する作業療法
 第8章 神経発達症群
  GIO,SBO,修得チェックリスト
  A 概要
  B 作業療法評価
  C 作業療法の目標
  D 作業療法プログラム
  実践事例8 対象者中心の実践──幼児期から思春期におけるかかわり

IV 状態別精神機能作業療法
 第1章 認知機能障害における作業療
  GIO,SBO,修得チェックリスト
  A 認知機能リハビリテーションの基本的考え方
  B 神経認知機能障害に対するリハビリテーション
  C 社会認知機能障害に対するリハビリテーション
  実践事例9 かかわりのなかで認知機能障害に気づき,治療標的としていった事例
 第2章 身体合併症における作業療法
  GIO,SBO,修得チェックリスト
  A 身体合併症と作業療法の基本的考え方
  B 身体合併症と作業療法(実践事例)
  実践事例10 生活習慣病をかかえた意欲低下が顕著な統合失調症患者への支援

V 場面別精神機能作業療法
 第1章 退院支援における作業療法
  GIO,SBO,修得チェックリスト
  A 退院支援の基本的考え方
  実践事例11 入院作業療法と精神科デイケアを利用した退院支援
 第2章 就労支援における作業療法
  GIO,SBO,修得チェックリスト
  A 就労支援の基本的考え方
  B 作業療法士による就労支援の留意点
  実践事例12 支援を通じて自己理解を深め,製造業への就職に至った事例
  【Column】てんかん
 第3章 復職支援における作業療法
  GIO,SBO,修得チェックリスト
  A 復職支援の基本的考え方
  実践事例13 軽躁状態によって生じる過重労働に気がついた事例
 第4章 地域生活支援における作業療法
  GIO,SBO,修得チェックリスト
  A 地域生活支援の基本的考え方
  B 地域生活支援にかかわる制度・社会資源
  C 地域生活支援における作業療法の流れ
  D これからの地域生活支援
  実践事例14 病院からの地域移行を経て,就労した事例
 第5章 司法精神医療における作業療法
  GIO,SBO,修得チェックリスト
  A 心神喪失者等医療観察制度と作業療法の役割
  B 指定入院医療機関・指定通院医療機関における作業療法の留意点
  実践事例15 医療観察法での入院から地域での支援へ

 精神機能作業療法学の発展に向けて
  A 脳科学の発展とリハビリテーション
  B 精神機能作業療法のオリジナリティ
  C 生活行為向上マネジメントの活用

 さらに深く学ぶために

索引

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Web付録

事例フォーマット(第Ⅲ~Ⅴ部実践事例)

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