基礎作業学 第4版

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第1章では、作業療法理論や陶芸などの具体的な作業の治療的意義や手順を紹介(ワークシート付)。つづく第2章、第3章でそれらの作業を治療として活用する方法を事例を通して詳しく解説。さらに、第4章では基盤となるエビデンスや、科学的な考え方について触れており、作業学の導入から、実習前の学習、そして国試と幅広く対応しています。

*「標準作業療法学」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 標準作業療法学 専門分野
編集 濱口 豊太
編集協力 澤田 辰徳
発行 2024年12月判型:B5頁:256
ISBN 978-4-260-05748-6
定価 4,400円 (本体4,000円+税)

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第4版 序

 作業療法は,人間の「作業」という営みを治療に活かすものです.この「作業」とは,私たちが日常で行う活動や行動すべてを指し,それは仕事,趣味,家事,スポーツなど,さまざまな形で私たちの生活を豊かにしています.作業療法士は,その作業を使って心身の回復や生活の質の向上をサポートする専門家です.
 本書は作業療法士を目指すみなさんが,作業療法について学問的な理解を深め,実践力を磨くための第一歩となることを目指しています.

 本書の第I章を開いて,まずは作業を体験してみましょう.
 楽しい話はそのあとで.

 第I章「作業と治療を理解するために」では,作業の体験を通して,人間の行動や作業の成り立ちを学び,個人や集団における作業の意味を探ります.作業療法士として,作業がどのように身体や精神に影響を与えるのか,その基本的な考え方を理解することはとても重要です.
 第II章「作業と身体機能」では,作業が人間の身体に与える影響を運動学や運動神経生理学の視点から解説します.陶芸や革細工といった具体的な作業を通して,どのように運動器が働き,体が動くのかを体験的に学びます.ここでは作業が人々の身体機能をサポートするメカニズムを深く理解できるでしょう.
 第III章「作業と精神心理」では,作業が精神的な健康に与える影響について学びます.作業療法は,身体だけでなく,心にも働きかけるものです.陶芸やレクリエーションなどの活動が,どのように心の安定や回復に貢献するのかを理解し,実際の治療場面での応用を考えます.人間の行動学習や心理的支援のスキルも,この章で紹介されており,対人関係の技術を学ぶことができます.
 作業療法は,科学的根拠に基づいたリハビリテーション技術です.脳卒中や関節リウマチなどの疾患により生じる運動障害や日常生活動作の困難に対して,作業療法は対象者の運動能力を回復させるだけでなく,社会復帰や自立した生活を支援するために重要な役割を果たします.治療計画では,解剖学や生理学,神経科学に基づいたアプローチが必要であり,個々の対象者に合わせた作業選択や適切な介入が求められます.
 第IV章「もっと深く学ぶために」では,作業を治療とするための「科学の架け橋」を紹介します.作業が身体に及ぼす影響を神経科学的な観点から掘り下げます.筋電図を用いた筋活動の測定や,ニューロリハビリテーションにおける脳の可塑性の理解は,作業療法士が科学的根拠に基づいた治療を提供するための基礎となります.これらの理解は,リハビリテーション治療の効果を高め,対象者の回復を促進することにつながるでしょう.

 作業療法は心理学や行動学とも密接に関連しています.対象者が新しい行動を習得し,継続していくための意欲を引き出すためには,行動療法の理論や心理的支援のスキルが重要です.作業を通じて得られる達成感や自己効力感は,対象者の心の回復や精神的な安定をもたらし,治療への積極的な取り組みをサポートします.

 作業療法士としての道を歩み始めるみなさんには,本書を通じて作業療法の基礎をしっかりと身につけ,さらに専門的な知識と技術を磨いてほしいと願っています.理論を学び,実践を通じて理解を深め,自らの手で対象者の生活に変化をもたらす喜びを感じてください.作業療法は,ただの技術ではなく,人々の生きる力を引き出し,日常生活のなかでその人らしさを取り戻すための「架け橋」となるものです.

 さあ,学びの一歩を踏み出し,作業療法の専門家としての成長の道を進んでいきましょう.

 2024年10月
 濱口 豊太

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I 作業と治療を理解するために
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 1 作業療法の成り立ち
  A 人間と作業
  B 作業の分類
  C 個人と集団
 2 作業療法理論とその役割
  A 作業療法理論の特徴と種類
  B 人間作業モデル(MOHO)
  C 作業遂行と結びつきのカナダモデル(CMOP-E)
  D 作業療法介入プロセスモデル(OTIPM)
  E 作業科学
  F 生活行為向上マネジメント(MTDLP)
  G 作業療法理論をとりまく状況
 3 作業の分析
  A 作業を分析する手続き
  B 作業分析の実践
 4 基礎作業の体験
  A 作業のためのロール・プレイ
  B 陶芸
  C 木工
  D 革細工
  E マクラメ
  F くす玉
  G デジタルファブリケーション
  ワークシート

II 作業と身体機能
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 1 陶芸の運動学
  A 陶芸によるダイナミックな身体活動
  B 陶芸による細かな手指活動
  C 陶芸の手指・上肢を科学的に分析するには
  D 運動障害のある対象者の陶芸
 2 革細工の運動学
  A 身体機能・構造
  B 活動と参加の意義
  C 個人因子・環境因子
  D 適応疾患と適応年齢,禁忌事項
  E 骨折した高齢者の心身機能改善のための革細工
 3 マクラメの運動神経生理学
  A 身体機能・構造
  B 活動・参加
  C 個人因子・環境因子
  D 上肢切断者のマクラメ作業

III 作業と精神心理
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 1 陶芸の精神・心理学
  A 陶芸の心理
  B 陶芸を用いた活動・参加支援
  C 陶芸と個人因子・環境因子
  D うつ病のある対象者の陶芸
 2 革細工の心理学
  A 精神心理機能
  B 活動・参加
  C 個人因子・環境因子
  D 統合失調症のある対象者の革細工
 3 レクリエーションの心理作用
  A レクリエーション
  B 人的環境因子
  C 集団活動で促せる心身機能と社会機能
  D 自閉スペクトラム症のある男児の例

IV もっと深く学ぶために
  GIO,SBO,修得チェックリスト
 1 作業と運動
  A 作業と力
  B 作業時の筋活動と関節運動
  C 運動を作業療法に応用するには
 2 作業と神経生理
  A 作業と筋電図
  B 作業による脳の可塑的変化
  C ニューロリハビリテーション最前線
 3 作業と行動心理
  A 行動学習の理論
  B 行動学習理論の応用
  C 行動学習の方法
 4 コミュニケーションスキル
  A 対象者の心理を知る
  B 対象者が処理する障害心理
  C 心理的外傷と外傷後成長
  D 心理的支援
  E 対象者の感情を探索して共感するスキル
  F 作業療法の方針を話し合うスキル

索引

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Web付録

ワークシート(第I章 4-B~G)

ブックホルダーの3Dプリンタ用プログラム(第I章 4-G)

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