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生活期におけるリハビリテーション・栄養・口腔管理の協働に関するケアガイドライン

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要介護高齢者の日常生活活動および栄養状態、摂食嚥下や口腔内の問題は、相互に関連・影響するもので、単独介入ではなく、多職種による一体的な複合的介入こそ最も効果があると考えられてきた。しかし、その効果を検証した研究は少なく、ガイドラインも無かった。自立支援・重度化防止に向け、CQ11問・BQ21問を含む、リハビリテーション・栄養・口腔管理の一体的取り組みのための国内外初のガイドライン、ここに堂々刊行!

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 2023(令和5)年6月に発表された「経済財政運営と改革の基本方針2023」,いわゆる骨太方針に,「リハビリテーション,栄養管理及び口腔管理の連携・推進を図る」という文言が入った。リハビリテーション・栄養・口腔管理の三位一体改革の狼煙である。わが国における,高齢者人口の増加と先の見えない高齢化率の上昇基調に対し,いよいよ私たちに医療や介護の現場で新たなアプローチの実践を求められていると感じた。運動や訓練と認識されている狭義のリハビリテーション,そして食事療法に限らず,栄養状態の改善を目指す広義の栄養管理,食べる口としての全般的なケアを含む口腔管理は,それぞれ職能別に発展し,その連携・融合については不可侵という空気すら帯びていた。しかし,現場をよく知る臨床家の多くは,この3種の融合こそ高齢者に必要な1つのケアであることを感じていた。

 高齢者ケアでは多角的な視点が重要である。活動や心身機能に応じた栄養摂取,栄養状態に応じた運動など,リハビリテーションと栄養管理の組み合わせは相性がよい。口腔は栄養摂取の最重要器官であり,栄養と口腔を別々に論じるのも無理がある。口腔の問題は栄養不良を引き起こし,栄養不良は口腔の問題の要因となるという相互関係が知られる。リハビリテーションを必要とする高齢者の口腔管理のよしあしは,食べる機能のリハビリテーションという側面だけでなく,全身機能・全身状態に影響する。高齢者を包括的にケアするとき,リハビリテーション・栄養・口腔管理を一体として考えるべきである。
 しかしながら,高齢者ケアにおいて,この三位一体が真に価値があるものなのかどうか,十分に検討されてこなかった。本ガイドラインは,国立長寿医療研究センター・日本リハビリテーション栄養学会・日本老年歯科医学会の全面的な人的支援と,厚生労働省の研究費支援を受けて完成された,国内外初の,リハビリテーション・栄養・口腔管理の三位一体ケアについてのガイドラインである。

 本ガイドラインでは,医学領域で用いられるエビデンスの吟味手法や推奨決定方法を採用した。一般的に,人を対象とした行動介入研究(リハビリテーション・栄養・口腔ケアなどを含む)は,介入を完全に盲検化することが困難である。また,高齢者を対象とした研究では,不健康なケアをコントロール群に課すことは倫理的に問題があり実施困難である。さらに,介入内容の遵守や除外基準と実態の乖離など障壁が多く,現行の医学系ガイドライン評価システムでは,エビデンスの質が低いと必然的に判定される。そのうえで,高齢者ケアのエキスパートが推奨を決め,解説を執筆した。エビデンスの質が低いことを取り立てて,この三位一体ケアアプローチを「しない」理由にしてはいけない。作成者を代表して,この一点は強調したい。
 ステークホルダーである家族会会員の方から貴重なご意見をいただいたので,その一部を要約して紹介する。ガイドラインという枠組みでは拾いきれない,当事者の気持ちである。
 「本人が自分らしく生きるために,どのくらいのことをできるようになりたいのか,目指す目標を決定することの難しさを感じるが,家族の多くは本人が望むことをできる限りかなえてあげたい。そして,医療・介護の関係者が,たとえ達成することが難しいと知っていたとしても,本人の目標と同じものに向かって伴走するために,リスク回避志向ではなく,適切なリスク管理ができる関係者になっていただきたい。現状維持をよしとすることが優先されるような雰囲気を打破し,本人のこれまでの生き方や意思が尊重され,ケア方針の中心におかれる,望むリハビリテーションや栄養,口腔管理をどのようにしたら行えるのかを示せるようなガイドラインになることを今後期待している。また,専門性の棲み分けがはっきりせず,どこに相談すればよいのか迷う場面がある。行政が明確な指針を示すことで解決できるのではないかと感じている。本ガイドラインを機に,ケア受給者中心のよりよい介護システムへと変化していくことを願っている」

 最後に,本ガイドライン作成にご協力いただいた団体・学術団体,査読やご助言をいただいたエキスパートの皆様に,改めて感謝の意を表する。本ガイドラインがわが国の高齢者ケアの向上に寄与することができれば幸甚である。

 2024年3月
 「生活期におけるリハビリテーション・栄養・口腔管理の協働に関するケアガイドライン」
 ガイドライン統括委員会 委員長
 前田 圭介

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第1部 本ガイドラインについて
  1 総論
   1 目的
   2 取り扱う健康上の問題
   3 ガイドラインの適用が想定される対象集団
   4 想定される利用者・利用施設
   5 今後の改訂
   6 一般向けの解説
   7 資金
   8 利益相反
  2 ガイドライン作成手順
   1 組織
   2 臨床疑問の設定
   3 系統的レビュー方法
   4 エビデンスの総体について
   5 推奨の決定に関して
   6 外部評価(AGREEII)ならびにパブリックコメント

第2部 推奨と解説
 第1章 リハビリテーション
  CQ1 要介護高齢者に対するリハビリテーション治療は身体機能の改善につながるか?
  CQ2 要介護高齢者に対するリハビリテーション治療は認知機能の改善につながるか?
  CQ3 要介護高齢者に対するリハビリテーション治療は口腔機能・栄養状態の改善につながるか?
  CQ4 要介護高齢者に対する自助具,装具の使用はADL,IADL,QOLの改善につながるか?
  CQ5 要介護高齢者の集団療法は効果があるのか?
  BQ1 要介護高齢者のADL,IADLを評価する方法にはどのようなものがあるか?
  BQ2 要介護高齢者のQOLを評価する方法にはどのようなものがあるか?
  BQ3 要介護高齢者のADL,IADL悪化の原因は何か?
  BQ4 要介護高齢者のQOL悪化の原因は何か?
  BQ5 要介護高齢者に対するリハビリテーション治療にはどのようなものがあるか?
  BQ6 要介護高齢者に対するリハビリテーション治療の適切な頻度,介入期間はどれくらいか?
  BQ7 要介護高齢者に対するリハビリテーション治療効果はどれくらい継続するか?
  BQ8 要介護高齢者に対して介護者が行える介助にはどのようなものがあるか?

 第2章 栄養管理
  CQ6 要介護高齢者に対する栄養管理はアウトカムの改善につながるか?
  CQ7 介護スタッフ/家族への栄養支援は要介護高齢者のアウトカムの改善につながるか?
  CQ8 要介護高齢者において,減量は介助負担の軽減につながるか?
  BQ9 要介護高齢者における栄養障害(低栄養・過栄養)の有病割合はどの程度か?
  BQ10 要介護高齢者において食欲が低下する要因にはどのようなものがあるか?
  BQ11 要介護高齢者の栄養障害(低栄養・過栄養)の危険因子は何か?
  BQ12 要介護高齢者の栄養状態をスクリーニングする方法にはどのようなものがあるか?
  BQ13 要介護高齢者の栄養状態をアセスメントするための指標にはどのようなものがあるか?
  BQ14 要介護高齢者において,食べる意欲を引き出すための支援にはどのようなものがあるか?
  BQ15 要介護高齢者に対する栄養状態改善のための栄養療法にはどのようなものがあるか?
  BQ16 要介護高齢者に対する栄養状態改善のための栄養支援にはどのようなものがあるか?

 第3章 口腔管理
  CQ9 要介護高齢者の口腔状態の改善(または維持)のための効果的な介入方法は何か?
  BQ17 要介護高齢者の口腔状態や口腔機能は全身の問題と関連しているか?
  BQ18 要介護高齢者に対する口腔管理は全身の問題の改善につながるか?
  BQ19 要介護高齢者の口腔機能,口腔衛生状態の改善に歯科専門職以外への教育は有効か?
  BQ20 要介護高齢者の口腔機能,口腔衛生状態をスクリーニングする方法にはどのようなものがあるか?
  BQ21 要介護高齢者の口腔機能低下,口腔衛生不良の有病割合はどの程度か?

 第4章 複合
  CQ10 リハビリテーション治療と栄養管理の複合的介入は要介護高齢者のアウトカムの改善につながるか?
  CQ11 要介護高齢者に対する口腔管理とリハビリテーション治療の併用,口腔管理と栄養の併用,および複合的介入が全身の問題を改善するか?

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