口から食べる幸せをサポートする包括的スキル 第3版
KTバランスチャートの活用と支援
すべての人に口から食べる幸せを!
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「口から食べる」ために不足している部分を補い、強みや可能性を引き出すための包括的評価と支援スキルをあわせた「KT(口から食べる)バランスチャート」。第3版では、13項目それぞれの評価方法と段階的ステップアップのための支援スキルに関する記述をさらに充実させ、活用事例もすべて新たなものとした。高次脳機能障害や認知症の人へのアプローチなど、状況に合わせた食事介助スキルも豊富な写真で解説。
編集 | 小山 珠美 |
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発行 | 2025年07月判型:B5頁:224 |
ISBN | 978-4-260-06174-2 |
定価 | 3,520円 (本体3,200円+税) |
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序文
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第3版の序
2015年に初版を刊行し10年の歳月が経ちました。「十年一昔」という言葉がありますが,振り返ってみると,10年の軌跡は感慨深いものがありました。当初は看護の観点から,食べたい希望を叶えてくれる包括的評価ツールとしてKT(口から食べる)バランスチャート(以下,KTBC)を開発しましたが,果たして他職種にも受け入れてもらえるか不安でした。しかし,2017年の信頼性・妥当性検証後にブラッシュアップした第2版は包括的評価ツールとして国内外で評価をいただくことができ,医療機関・福祉施設・在宅・研究など多くの領域や支援場所で手軽に使っていただけるようになりました。KTBCの無料サイトが開発されたことも市民権を得る大きな推進力につながり,応援してくださった方々へ感謝の念に堪えません。
近々では「KTバランスチャート」を検索すると,AIが「KTバランスチャートとは摂食嚥下障害の評価方法の一つで,特別な機器を用いずに包括的に摂食嚥下障害の状況を把握できるツールです。摂食嚥下障害の評価において,単に食べる・飲み込む機能だけでなく,“食べたい”という意欲も重要な要素として捉えられます。摂食嚥下障害の状況を,口腔機能だけでなく,精神的な面や社会的な面も考慮して包括的に評価できます。」などと説明してくれます。時代の変化を思うと共に,包括的・簡便性・多職種連携・QOL向上のキーワードに共感と実践を重ねてくださる人々が増えたことにさらなる期待が膨らみます。
今回の改訂では13項目それぞれの支援スキルをさらにブラッシュアップし,食事介助技術についても,この10年間の進化をよりビジュアル化しました。特に高齢社会の加速により認知症や誤嚥性肺炎患者が禁食にさらされる現状に対応すべく,リスク管理についても支援策を追加しました。また,掲載する事例はすべて刷新し,理論とスキルと連携の融合が口から食べる幸せをもたらすということが理解できるよう,記述も工夫しました。食べられないという判断ではなく,「どうすればおいしい笑顔に出会えるか」という視点で,KTBC展開をしてほしいと願います。
本書に紹介した患者さんやご家族の笑顔には,形容しがたい苦痛・不安・努力・願い,そして食べることができるようになった喜びが散りばめられています。私たち執筆者が表現できなかった当事者・ご家族の物語をくみ取っていただき,エールを送ってくださいますようお願いします。そして,今出会っている方々,これから出会う方々への口から食べる支援の指南になることを切に願っています。すべての人に口から食べる幸せを届けたい思いです。
最後になりましたが,写真を提供し掲載を許可してくださった患者さんやご家族,初版から食べる幸せのイメージが膨らむ表紙イラストをオリジナルで描いてくださった塚本和子様に御礼申し上げます。また,医学書院の近江友香氏には,企画・編集・激励と細やかで多大なるご尽力をいただきました。心より深謝申し上げます。
2025年7月
編者 小山珠美
目次
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第3版の序
第2版の序
初版の序
第1章 口から食べる幸せをサポートすることの意義
口から食べる幸せを支えることの意義
高齢者モデルにおける食支援の有用性と展望
第2章 口から食べるための包括的評価と支援スキル
KT(口から食べる)バランスチャートによる包括的評価
① 食べる意欲
② 全身状態
③ 呼吸状態
④ 口腔状態
⑤ 認知機能(食事中)
⑥ 咀嚼・送り込み
⑦ 嚥下
⑧ 姿勢・耐久性
⑨ 食事動作
⑩ 活動
⑪ 摂食状況レベル
⑫ 食物形態
⑬ 栄養
第3章 食事介助スキル
基本となる食事介助スキル
個別に応じた食事介助の特殊スキル
覚醒不良へのアプローチ
むせ・窒息・呼吸状態不良へのアプローチ
高次脳機能障害へのアプローチ
認知症へのアプローチ
第4章 KTバランスチャートを活用した援助の実際例──食べるとこんなに元気になる!
急性期──経口摂取禁止であった神経筋疾患高齢患者への摂食嚥下リハ入院による支援と地域連携
在宅・1──経口摂取禁止であった認知症高齢者が再び口から食べる喜びを得られた事例
在宅・2──良好な機能を活かした食支援による重度嚥下障害からの経口摂取の再獲得
回復期──重度の延髄梗塞から回復期リハ病棟での包括的介入により経口摂取が可能となった事例
療養型病院──併存疾患を多く有し長期入院となった誤嚥性肺炎患者の「食べたい」を支える
在宅・3──人工呼吸器装着,経鼻経管栄養にて退院した医療的ケア児の食物形態のステップアップ
コラム
食べることに悪影響を及ぼす可能性のあるポリファーマシー
気管カニューレ留置中の経口摂取に向けてのアプローチ
気管切開の閉鎖に向けて
義歯の清掃/義歯についての注意点
間接訓練の方法とその留意点
ベッドサイドスクリーニング評価法の概要
スクリーニング評価から段階的摂食ステップアップの進め方(例)
Refeeding症候群
「絶飲食,内服のみ可」を見直そう!
経口摂取開始から退院までのプロトコール(例)
文献一覧
索引
付録・特典
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●KTバランスチャート作成用ファイル ダウンロードのご案内
本書18頁のKTバランスチャートを作成できるファイルと、19-21頁の評価基準一覧を配信しています。下のリンクよりダウンロードのうえ、ご利用ください。
- KTバランスチャート入力用ファイル 第3版 [Microsoft Excel ワークシート 約30KB]
- KTバランスチャート評価基準一覧 第3版 [PDF A4・3頁 約730KB]
- KTバランスチャート評価基準一覧 第3版【小児版注釈】付 [PDF A4・4頁 約510KB]
※KTバランスチャートを臨床においてご利用される場合は許諾申請の必要はありませんが、研究実績等を蓄積していくために、KTバランスチャートを用いた研究発表や実践報告を学会等で行った場合は、下記までご一報いただければ幸いです。
医学書院看護出版部 KTバランスチャート係
ktbc◎igaku-shoin.co.jp (◎は@に変更してください)
※「KTバランスチャート」および「KTBC」は、特定非営利法人口から食べる幸せを守る会の登録商標です(商標登録第5947805号、5947806号)。