医学界新聞

2019.03.25



第33回日本がん看護学会開催


 第33回日本がん看護学会学術集会(学術集会長=熊本大大学院・國府浩子氏)が2月23~24日,「その人らしさを支えるがん看護――知と技の伝承から創造へ」をテーマに福岡国際会議場,他(福岡市)にて,約4700人の参加者を集め開催された。がんゲノム医療中核拠点病院が2018年に指定され,19年度中の遺伝子パネル検査の保険適用をめざす方針が示されるなど,がんの個別化診断・治療に向けた基盤整備が進む。シンポジウム「がんゲノム医療の現状と課題――その人らしさを支えるための個別化医療」(座長=聖路加国際大・青木美紀子氏,熊本大病院・岡本泰子氏)では,がんゲノム医療の時代に期待される看護師の役割が議論された。

大切なことは患者・家族の真の意向を引き出し,その人らしさを支えること

 最初に登壇した武田祐子氏(慶大)は,看護師に期待される役割として患者・家族の思いの理解を挙げた。がんゲノム医療を受ける患者は治療方法に加え,遺伝学的情報の家族との共有も考慮しなければならない。それを支えるためにも「看護師は看護の基本の傾聴を大切にし,ニーズに応じたコンサルテーションなどの支援をすべき」と強調した。

 がんゲノム医療中核拠点病院の岡山大病院でゲノム医療推進のための体制整備に携わった医師の平沢晃氏(岡山大大学院)は,主治医が中心となりつつもチームでがん治療を第一に掲げる診療の在り方を唱えた。チーム医療実現に向けた試みとしてエキスパートパネルの開催時間と場所の固定,ビデオ会議の利用などを紹介。氏は,これらの取り組みが各施設に合わせて改良され,がんゲノム医療が通常の診療の一環として根付くことに期待を示した。

 遺伝子パネル検査では,本来目的としていなかった生殖細胞遺伝子変異(二次的所見)が見つかる場合がある。認定遺伝カウンセラーの浄住佳美氏(静岡県立静岡がんセンター)は,「二次的所見の受け止め方は個々の状況で異なり,個人の意思尊重が大切」と,自身の経験から述べた。患者に日々接する看護師への期待について氏は「遺伝情報に関する基礎知識を身につけた上で,対話の中から患者・家族が求める支援を判断し,必要に応じて専門部署につなぐ役割」だと話した。

 がんゲノム医療に携わる遺伝看護専門看護師の大川恵氏(聖路加国際病院)は,「看護師はがんゲノム看護や遺伝看護に積極的にかかわってほしい」と意見を述べた。患者と日々の臨床で話すのは遺伝子変異の詳細ではなく,遺伝性がんを抱えて生きる不安や生活への影響だという。「がんゲノム看護も一般のがん看護実践と共通することは多い」と強調し,傾聴や生活のサポートによって看護師の役割を果たしてほしいと語った。

シンポジウムの模様

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