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第3282号 2018年7月23日


Medical Library 書評・新刊案内


《看護教育実践シリーズ3》
授業方法の基礎

中井 俊樹 シリーズ編集
中井 俊樹,小林 忠資 編

《評 者》網野 寛子(帝京平成大教授/看護学科長)

教育学と看護教育のコラボ

 文部科学省は,看護教育をレベルアップするための切り札「看護学教育モデル・コア・カリキュラム」において,看護系人材として求められる基本的な資質・能力は9つと明言した。今後,各大学はカリキュラムの改正準備を行う中で,これらの資質・能力をどの科目でどのように教えて獲得させるか考えなければならない。変革を迫られたこの時期に,タイミングよく本書が上梓された。

 本書は,教育学の視点から看護教育について幅広く解説する「看護教育実践シリーズ」(全5冊)の中の一冊である。授業方法に焦点を当てたのが本書であり,シリーズの第一弾として発刊された。

 内容は3部から構成されている。第1部は授業方法の意義と指針の総論。看護教員は,看護学の専門知識と教育学の知識の両方を身につけることが肝心であると論ずる。学生は高卒の伝統的学生のみならず職業経験のある者がおり,学習意欲や学習習慣に差があるなど多様性に富んでいる。教員は自身の偏見に敏感になり,全ての学生の学習を素直に尊重する姿勢を持つ必要を述べている。また,授業は授業の型(導入・展開・まとめ)の各パートの持つ役割を認識し,学生の興味や関心を喚起するような展開をして,学習を評価することが大事と説く。

 第2部は授業の技法について紙面が多く割かれている。授業の技法には,説明,発問,スライド,板書,教材などがある。技法を適切にチョイスすることが授業の成功の要素であるとして,それぞれについて詳しい解説がある。発問を例にとると,例えば看護教育の目標「人間の生命と権利を尊重する態度」を学ばせようとするとき,これは教員が一方的に押し付けて身につくものではない。発問を工夫することで学生は深く考えたり,自分なりの答えを見つけたりできる。発問は学習意欲を喚起したり,思考を焦点化したり拡散したり,揺さぶったりと学習を促進する機能を持っているのだ。

 第3部はさまざまな場面での授業の工夫を述べている。1回の授業の構成は,前述の授業の型と同じであるが,15回のコマも同様である。初回の授業では,学生のレディネスやアクティブラーニングが可能かどうかの学生の汎用的能力を確認してからスタートするのが肝心で,最終回は習得できた知識や技術,習得できていない内容についても列挙させ,振り返りを通して学生自身に今後の学習の指針を立てさせる。また学生に高等教育機関に属する者としての知的誠実性を求めることも忘れてはならないと,きめ細かい対応を説く。

 付録に授業に役立つ資料と用語集があり,著者らの優しい配慮を感じる。一読して感動するのは,教育学の専門家が体系的に授業の基本を押さえた上で,看護教育のオーソリティーたちとコラボして具体を展開しているため,身近で説得性があることだ。近年の理論を踏まえた「看護授業論」であり,活用すればその価値にも気付くはずである。

A5・頁200 定価:本体2,400円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03202-5


あなたの患者さん,認知症かもしれません
急性期・一般病院におけるアセスメントからBPSD・せん妄の予防,意思決定・退院支援まで

小川 朝生 著

《評 者》桑田 美代子(青梅慶友病院/よみうりランド慶友病院看護介護開発室長)

組織全体で認知症ケアに取り組む時代が到来した

 「桑田さんから紹介された小川朝生先生の本,面白くてもう2回も読んだわ。認知症のことわかっていると思っていたけど,改めて勉強になった! すごく読みやすいのよ」と,当法人の看護部長が意気揚々と語ってくれた。面白かったという点は以下の通りである。認知症に関する知識の整理につながった。随所に「ポイント」として,重要な点が簡潔にまとめてあるのも理解の助けになった。そして,皆が疑問に思うことに答えるような書き方になっている。急性期・一般病院で日常起こっている現象だから,「ある・ある」と自然に頭に入る。小川先生の講義を聞いている印象さえすると語っていた。

 認知症患者は,“大変な患者”の一言で語られてしまう現状もある。スタッフは忙しいので対応しきれない。そして,ケアする側が大変と受け取れば,それは“不穏”,“問題”と表現され,その理由に目が向けられない。ケアする側が不安や混乱を増強させていることに気付いていない。だから,根本の原因解決となる対応にはつながらない。本書は,その根本原因の解決につながる知識,現象の見方が書かれている。認知症をもつ人の生活のしづらさ,苦痛や不安に焦点を当て,認知症の知識に基づき,その原因がひもとかれている。だから,「なるほど,そうなんだ!」と合点がいくのである。見方が変わると,現象の受け止め方も変わり,ケアする側の気持ちにも余裕が出てくる。

 本書の構成を紹介すると,序章「今急性期病院で起きていること」,1章「一般病院における認知症の問題」,2章「急性期病院における認知症の問題の現れ方」,3章「認知症を知る」,4章「認知症の人が入院時に体験する苦痛・困難とは」,5章「急性期・一般病院で求められる認知症ケアとは」,6章「認知症・認知機能障害をアセスメントする」,7章「認知機能障害に配慮したコミュニケーション」,8章「認知症の人の痛みを評価する」,9章「食事の問題」,10章「行動心理症状(BPSD)の予防と対応」,11章「認知症の人の治療方針を考える(意思決定支援)」,12章「せん妄を予防しよう」,13章「認知症の退院支援:ケアの場の移行を支える」,14章「患者・家族への心のサポート,社会的支援を提供する」,となっている。もちろん,序章から読むのも良いが,私はまず3章と4章を一読し,日頃の実践を想起しながら,最初から読み進めるとより理解が深まるように思う。また,最近「意思決定支援」に注目が集まっている。しかし,認知症患者の意思決定支援は,認知症の知識がなくて行えるわけがない。ケアする側が認知症のことを知って初めて支援できる。本書は,そのための基本的知識が系統的に書かれている。

 本書は,急性期・一般病院という「場」に関係なく,誰が手に取っても読む価値がある。その中で,私が最も読んでいただきたいのは,急性期病院の看護管理者の皆さんである。その理由は,看護管理者の方たちの認知症に対するケアの考え方が,スタッフに大きな影響を与えるからである。認知症患者の対応に,倫理的ジレンマを感じているスタッフも少なくない。組織全体で認知症ケアに取り組む時代が到来している。本書は必ず役立つ一冊である。

A5・頁192 定価:本体3,500円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02852-3


知っておきたい変更点
NANDA-Ⅰ看護診断 定義と分類 2018-2020

上鶴 重美,T. ヘザー・ハードマン 著

《評 者》冨澤 登志子(弘前大大学院准教授・看護学)

NANDA-I看護診断の変更点や新たな診断のポイントがよくわかる

 3年ごとのNANDA-Iの看護診断の改訂がいよいよやってきました。改訂のたびに,「何がどう変わったの?」と不安になっていらっしゃいませんか?

 本書は,NANDAインターナショナル理事長の上鶴重美氏および専務理事のヘザー・ハードマン氏によって『NANDA-I看護診断 定義と分類2018-2020 原書 第11版』における前回からの変更点,新たな診断のポイントがダイレクトにまとめられた解説書です。特に新たに加わった診断については具体的な事例と看護介入や看護アウトカムが丁寧に説明されていますので,これまで臨床や教育で看護診断していらっしゃった皆さまの疑問を解決してくれる一冊といえます。

 まず第1章「何がどう変わったか」では,前回の定義と分類からの変更点が示されています。ヘルスプロモーション型看護診断の定義の変更,これまで看護介入によっても取り除いたり,修正できない関連因子や危険因子に関する新たな分類などが紹介されており,NANDA-I看護診断ユーザーへのわかりやすい解説が添えられております。前回の改訂からさらにエビデンスレベルが上がり,社会問題や各国の問題なども加味されて,バージョンアップされたことがわかります。

 今回,第3章「臨床推論モデル」では,上鶴氏が開発した臨床推論モデルの解説も含まれており,実際に看護診断をしていく上でサポートしてくれる枠組みを学ぶこともできます。臨床推論モデルは看護診断にかかわる診断指標,関連因子,アウトカムなどの関連性を図式化し,診断とケアの関連性や方向性を明確にすることができます。このモデルは,正確な看護診断だけでなく,妥当な看護目標やアウトカムの設定,看護介入をシステマティックに導く秀逸なモデルです。看護学生や新人の看護職の方からアウトカム設定が難しいという話をよく聞きますが,論理的思考の過程を図式化していくので初学者にもぜひお勧めしたいです。

 また,第4章「クイックマスター! 新看護診断17」では,新たに採用された看護診断について,定義およびモデルケース,そしてそのモデルケースを臨床推論モデルで説明し,看護診断,目標,主なアウトカム,看護介入について,その関連性を明確に示しています。新しい診断ではありますが,具体的な概念がしっかりとイメージできるように説明されています。看護基礎教育の中では,これまで医学診断や疾患別の看護ケアに多くの時間が割かれており,看護診断にある「概念」を学ぶ機会がありませんでした。看護の独自性でもある看護診断の核となるのは診断概念です。本書によって診断の背景への理解が深まり,具体的なイメージを持つことが可能となるでしょう。

 看護職の臨床判断とケアの根拠として1970年代から導き出されてきた看護診断は今回の改訂で244となりました。目まぐるしく変わる社会の情勢に,看護のニーズや在り方も少しずつ変化しています。質の高い看護ケアを行っていくためには,専門職である看護師が独自性を持って臨床判断し,適切な看護ケアを実践していくことが不可欠です。コンパクトに要点が押さえられた本書は,質の高い看護をめざし臨床で努力されている看護職の皆さま,看護学生が理解できるように教授する看護教員の皆さまにとって,すぐに活用できる一冊になっています。

A5変型・頁112 定価:本体2,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03610-8


ポケット医学英和辞典 第3版

泉 孝英 編
八幡 三喜男,長井 苑子,伊藤 穣,Simon Johnson 編集協力

《評 者》福澤 利江子(筑波大大学院助教・国際看護学)

充実した内容と,理解を助け知識を増やす効果に驚く

 わからない言葉があればすぐにスマホやパソコンで検索して(それも無料で)調べる習慣がついている私たち。医学英和辞典を手元に置く必要があるのかと時代錯誤に思えるでしょう。日進月歩の医学分野で一般的に使われる用語を約7万語に集約し,それも,医学だけでなく薬学・検査・看護・介護の分野でも使えることをめざして作られたなんて,そんな辞書が可能なのだろうか? これがこの辞書を知った時の私の初めの正直な気持ちでした。同時に,インターネット上の情報収集は,いくら便利で,頻繁に利用し,その場は用を足しても,断片的で頭の中を素通りする気がして,専門用語が自分の言語体系として血肉になる感覚が得られにくいことが,以前から気になっていました。

 本書はポケット判でとてもコンパクトなので手に収まりが良く(手触りも良く),机上でもまったく邪魔になりません。何よりも,充実した内容と,印象強く理解を助け知識を増やす効果にはただただ驚いています。それに,医学以外の領域にも深い関心と配慮が本当に向けられているのです。

 例えば,“nurse”(看護師)という言葉ひとつをとっても,“community nurse”(地域看護師)と“public health nurse”(保健師)の区別が的確です。“assistant nurse”(看護助手)・“practical nurse”(准看護師)・“registered nurse”(看護師)・“nurse practitioner”(ナースプラクティショナー)の区別や表記,さらにリエゾンナース,リンクナースなどの近年使われるようになった用語にもわかりやすい説明が付いています。

 続いて次の“nursing”の項にも,“nursing home”(老人保健施設)や“nursing ethics”(看護の倫理)など,日本語でなじみがあっても英訳しにくいような言葉がきちんと載っています。かといって,医療者におもねるのではなく,nursingのそもそもの意味は「(1)授乳,(2)看護,養育」というように,社会常識的な見解も端的に示しています。

 私自身は助産学が専門なのですが,“uterus”(子宮)の項には,フランスの産科医の名前にちなんだクヴレール子宮,重複子宮・中隔子宮・単角子宮の定義など,医学事典でもないのに,図もないのに,短い言葉だけで明確に定義されているのです。他にもBCGワクチンは昔は経口投与も行われていた,など,非医療者にもわかりやすい言葉で,読者の興味を引く記述にも惹かれ,ページを開き読むたびにすっかり好きになりました。

 このコンパクトさの奥にいかほどの配慮や努力があるのだろうかと感じ入るばかりですが,本書の背景を知り納得しました。日本が戦後に米国から情報を輸入し医学が大きく発達した最中(1967年)に本書の初版は刊行されており,その後も50年間の時代の変化に合わせた改訂がされ,由緒ある,長い歴史を持つ辞書なのでした。さらに,“The New England Journal of Medicine”を毎号読破していた医師による綿密なアドバイス,本書の編纂のために日常の生活態度から改め,診療の合間に執筆した故・渡辺良孝医師の熱意が込められ,その後も引き継がれて本版に至っているそうです。

 おそらく今後,医療系の電子辞書などの電子媒体にも今回の新たな版が反映されていくことも楽しみです。でも,この時代にあえて紙の医学英和辞典を手元に一冊置くことで得られる思わぬ勉強効果と楽しみも,読者の皆様とぜひ共有できれば幸いです。

新書判・頁1282 定価:本体5,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02492-1


《がん看護実践ガイド》
病態・治療をふまえた
がん患者の排便ケア

一般社団法人 日本がん看護学会 監修
松原 康美 編

《評 者》小澤 恵美(昭和伊南総合病院/皮膚・排泄ケア認定看護師)

さまざまな療養場所で活用できる心強い一冊

 日常生活を普通に行っている方でも,「便がうまく出ない」「便が気になって仕方がない」という状況はあるだろう。病院では,便秘に伴う下剤や,下痢による皮膚障害,ストーマケアに関する相談が多く,退院後も移動した施設や訪問看護師から排便ケアについて相談が寄せられることがある。排便は,QOLにかかわる重要なことだとうかがえる。

 医療が高度化し,短期入院や外来通院治療も多くなる中で,排便ケアに関する知識も向上させる必要がある。中でも,がん患者数は増えているため,がんならではの排便ケアのポイントを押さえておくべきである。排便についての基礎的知識を「知らなかった!」という医療者も意外と多い。本書のようなわかりやすく根拠を押さえた書籍が求められていると感じる。

 第1章「がん患者の排便ケアに必要な基礎知識」では,排便のメカニズムとその障害,排便障害の原因やアセスメントツールが紹介され,これらは明日から使えるものだ。また,排便障害の治療についても,オピオイドや抗がん薬に伴う便秘・下痢や手術後の排便障害など状況別にわかりやすく説明されており,「なぜ,どうして」が理解しやすい。

 次章からはケアにかかわる内容が詳しく説明されている。第2章「がん治療における排便ケア」では,化学療法に伴う下痢と便秘,放射線療法における排便ケアが紹介されている。排便姿勢といったセルフケア支援や,二次的障害の予防・対策などのケアのポイントを知ることができる。

 第3章「進行がんに伴う排便ケア」として,播種性病変やオピオイド使用時の便通対策が述べられているが,下剤の効果時間などをまとめた表がわかりやすい。下剤についての基本的なことから留意点まで理解できる内容となっている。下血の項では,精神的な援助まで言及されており,ケアの質の向上につながる内容である。

 第4章「下痢・便失禁に伴うスキントラブルのケア」では,アセスメント項目の他,予防的ケアやスキントラブル時のケアについて,具体的に使用製品も紹介されているため,すぐに現場で取り入れられる。

 第5章「消化管ストーマ造設患者のケア」では,術前からストーマ閉鎖術前後のケア,緩和ストーマを造設する患者のケアや社会保障についてまでカバーされており,先を見越したケアの実践に生かせる内容である。

 第6章「療養生活の支援」では,排便障害専門外来や栄養管理についてメニューも紹介されている。また,排便ケアにおけるチーム医療の実際として,事例を用いた具体的な介入例もあり,チーム医療の重要性も理解できる。

 このように,本書はがん患者の病態や治療を踏まえたケアが展開されている。病院・施設・在宅などさまざまな療養場所で活用できる心強い一冊である。

B5・頁192 定価:本体3,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02777-9

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