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第3267号 2018年4月2日


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眼瞼・結膜腫瘍アトラス

後藤 浩 著

《評 者》坂本 泰二(鹿児島大大学院教授・眼科学)

臨床眼科医の悩みを解決する決定版

 眼瞼や結膜の腫瘍は,眼科外来で頻繁に遭遇する疾患である。しかし,生検以外で確定診断することは難しく,臨床医を大いに悩ませるものではないだろうか。眼科病理学の日本の第一人者である後藤浩教授による本書は,この悩みを解決するための決定版になるものといえる。

 本書の素晴らしい点は,各疾患を理解するために必要な情報が,第一線で働く臨床医に理解しやすいように書かれている点である。腫瘍性疾患の本態を理解するには,病理組織像を理解する必要があるが,一般臨床においてまず得られる情報は外眼部の所見である。そして,臨床医はそれだけの情報に基づいて,ある程度正確な診断を患者に提供する必要がある。そのため,本書では美しい外眼部写真が過不足なく提示されている。海外の成書では,数多くの写真が提示されているものもあるが,それらは研究のためには重要でも,目前の患者を診断するには,むしろ判断を迷わせる。本書で示された写真は,診断のために重要な所見を中心に示されており,診断のためには必要かつ十分であるといえる。さらに,その所見を理解するために,重要なものには病理像が示されている。特に,外眼部写真の横に病理写真が提示されているのが役に立つ。外眼部を診るときには,病理像を頭に描きながら行うようにと教育を受けるが,病理診断は一般臨床医にはなじみが薄く,よほど病理に詳しくない限りは難しい。しかし,外眼部写真の真横にポイントとなる病理写真があれば,2回,3回と本書を読むうちに自然に頭に入るのではなかろうか。

 さらに素晴らしいのは,著者の「ひとり言」というコラムである。臨床の現場では,どのような点で悩むことが多いか,そしてその対処法はいかにすべきかについて,豊富な臨床経験からのアドバイスがなされている。臨床現場では,むしろこのことこそが役に立つポイントであり,これを読むだけでも十分な価値がある。以前は,門外不出として弟子以外には教えてもらえなかったコツも多く含まれており,これを斯界の第一人者から得られることは本書の価値を一層高めている。病理検査ができない臨床医は,患者のためには外眼部疾患の安易な治療を行うべきではないという言葉には,著者の教育者としての矜持や,臨床に対する厳しい姿勢が示されており,感銘を受けたことも記したい。

 各疾患を理解するためのポイントを文章で表すことは容易でも,その証拠となり得る画像を探すのは難しい。そして,その中から説得力を持つほど美しい画像を得ることはさらに難しい。これだけの美しい写真をそろえるには,相当数の写真の中から厳選されたことは容易に想像できる。そのことに深い敬意を表したい。

 本書は,眼瞼・結膜腫瘍疾患の診断のために眼科医にとって有用であるだけではなく,これにより救われる患者は多いであろう。眼科外来には必ず備えておくべき一冊である。

A4・頁176 定価:本体12,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03222-3

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