医学界新聞

2017.08.28



第23回日本看護診断学会開催


任和子大会長
 第23回日本看護診断学会学術大会(大会長=京大大学院・任和子氏)が7月15~16日,「患者像をつかむ!――看護診断をケアに活かそう」をテーマに国立京都国際会館にて開催された。本紙では,精神科医の村井俊哉氏(京大大学院)による特別講演「再考:患者像に名前をつけること」の模様を報告する。

患者像に名前をつけることが「レッテル貼り」にならないために

 看護診断や精神医学では,患者の日常的な振る舞いや気持ちに診断名をつける。医療者の共通言語である専門用語を用いることにより,カンファレンスなどでの効率的な情報共有が可能となる。

 講演の初めに村井氏は,「専門用語は現代の医療に不可欠」とした上で,「専門用語による名づけにはデメリットもある」と述べた。それは,異なる悩みを抱えるさまざまな患者の状態を「抑うつ気分」などと一括すると,「一人の人間としての患者」への関心が失われてしまうからだという。氏は,こうしたデメリットを最小化するために医療者が心得るべきポイントを6つ挙げて解説した。

1)専門用語であるという自覚:専門用語の定義の正確な理解が必須である。一般社会では定義から外れた意味で用いられる用語も多い。例えば一般に“アルコール中毒”と呼ばれる状態は,医学的には「依存」または「使用障害」という用語が適切である。
2)具体的な言葉も添える:症状名や疾患名だけでなく,それがどこに,どのくらいの強さで,いつから見られるのかといった情報が患者像の正確な把握や記録には欠かせない。
3)価値判断ではないという自覚:専門用語はあくまで患者の状態の的確な理解や治療指針の決定に有用なものである。人としての「良し悪し」の判断や患者をおとしめる意図は決して含まれてはならない。
4)名前は暫定的な仮説である:診断は患者の情報が集まる中で変わることがある。また,専門用語の定義そのものも変わり得る。
5)視点によって名前は変わり得る:医師の診断と看護診断では基準が異なる。各専門職の価値観を相互に理解することで,効果的な多職種連携が可能になる。
6)名前は落とし込みの作業である:診断名をつけることは,積極的かつ主観的なものだ。病名告知や病状説明は患者の心理・身体の状態に影響を及ぼすこともある。

 「患者像に名前をつけること」は医療者である以上,避けられない行為である。村井氏は,「自らの信念・覚悟や明確な根拠を持った上で名前をつける」という意識が全ての医療者に必要だと呼び掛けた。

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