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第3232号 2017年7月17日


第113回日本精神神経学会開催


尾崎紀夫会長
 第113回日本精神神経学会(会長=名大大学院・尾崎紀夫氏)が6月22日~24日,名古屋国際会議場(名古屋市)で開催された。本紙では,2018年の公表に向けて準備が進むICD(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)-11について現状の報告がなされたシンポジウム「ICD-11の最新の進捗状況,フィールド・スタディを中心に」(司会=NTT東日本関東病院・秋山剛氏,聖徳大・丸田敏雅氏)の模様を紹介する。

ICD改訂に当たり,検証研究が初めて日本語で行われる

 ICDは異なる国や地域から,異なる時点で集計された死亡・疾病データの体系的な記録,分析,解析及び比較を目的にWHOが作成している。1900年の初版以来約10年おきに改訂を行ってきたものの,現在の版(ICD-10)の採択は1990年にさかのぼる。森桂氏(厚労省)は現在進行中の改訂の全体像を説明し,ICD-11では医学の進歩に合った分類整理の他,漢方医学などの新項目が入ること,さらに電子環境でのデータ利用など現代のシステムを前提とした改訂が進められていると述べた。現在はICD-11草案の内容を各国の研究機関が検証する段階にあるという。

 神庭重信氏(九大大学院)は「精神,行動又は神経発達の障害」分野における2つのフィールド・スタディの概要を国際的観点とともに報告した。その内容は,①医師に同じ症例を提示し,ICD-10とICD-11の基準を用いて診断傾向を比較するCase-controlled研究と,②実際の患者に対して2人の医師がICD-11を用いて診断し,医師間の診断差異の程度(評価者間信頼性)とICD-11の有用性を検討するEcological implementation研究。日本精神神経学会は今回の改訂に学会を挙げて協力し,①は世界第3位の人数である約1000人(世界合計で約1万2800人)の医師が登録,②は国内23施設で実施するなど,国際的枠組みでの作成に向けた日本の貢献を強調した。

 これらの研究推進のためにはICD-11草案の日本語版が欠かせない。松本ちひろ氏(日本精神神経学会)は,ICD-10までは英語版の完成後に和訳を進めていたが,今回改訂では草案の段階で各言語に翻訳し,英語圏以外での検証研究への活用が進んでいると述べた。日本の立場からは検証研究への参加の他,ICD-11完成後により速やかな普及につながると見込まれる点もメリットとなる。

 シンポジウムではこの他,座長の秋山氏が,「臨床医がICDを適切に運用し,同じ患者に対して同じICD診断に到達するためには研修が重要」と訴え,三浦智史氏(九大病院)は国内で2017年1月より開始されたEcological implementation研究の途中経過を報告し,ICD-11草案の評価者間信頼性を検証する研究が進行中であると話した。