「男性看護師であるがゆえ」に迫って(前田貴彦)
寄稿
2013.11.18
【視点】
「男性看護師であるがゆえ」に迫って
前田 貴彦(三重県立看護大学准教授・小児看護学/三重男性看護師会代表)
ここでは,2012年12月-2013年4月に,病床数150床以上で複数の診療科を有する全国544病院に勤務する男性看護師8539人を対象に実施した実態調査の結果2-4)を紹介する。
◆男性看護師の苦悩も浮き彫りに
回答は,20-60歳代で臨床経験1-40年目の3713人(回収率43.5%)から得られた。回答者の就業部署は,内科系病棟543人(14.7%)が最多で,次いで混合病棟542人(14.7%)であった(なお,括弧内の%は無回答を除いている。以下も同様)。この結果が示すように,一般病棟で活躍する男性看護師も増え,2119人(57.4%)が男性看護師の[知名度]は高まってきていると認識していた。その一方,病院内で看護師以外の男性職員と間違われた経験を有する者が,3167人(85.7%)おり,看護師=[女性]とのイメージはまだまだ大きいことがわかる。そして,3003人(81.4%)の男性看護師が看護師の性差が看護に何らかの影響を与えると認識していた。
その影響の1つに,女性患者への看護がある。その中でも特に,女性患者への羞恥心を伴う看護に対し,男性看護師からは,「躊躇する時もある」「できる限り女性看護師に交代を依頼する」といった声も聞かれている。今回の調査でも,2576人(69.8%)が,女性患者の羞恥心を伴う看護を実施する際,多かれ少なかれためらいを感じていた。この男性看護師のためらいには,同性の女性看護師のほうが良いのではないか,男性では恥ずかしいのではないのか……といった,女性患者への配慮の気持ちが含まれているとも理解できる。それを裏付けるかのごとく,2977人(80.4%)の男性看護師が女性患者の羞恥心を伴う看護を実施する際,患者や家族に自分が実施してよいか事前確認を行っていた。
しかし,2909人(78.7%)が実際に女性患者の羞恥心を伴う看護を実施する際,拒否された経験を有していた。「看護師なのに,男性だからという理由で女性患者に看護を断られるのは寂しい」という声が臨床現場の男性看護師からは聞かれるものの,実際,男性看護師による女性患者の羞恥心を伴う看護には制限が生じる場合が多い。男性看護師は,その制限される看護を補うかのように回答者の約半数に当たる1798人(48.9%)が患者や家族への看護において,男性看護師特有の役割があると思っており,患者や家族のために男性の特徴を活かした看護を模索し,実践しようと努力していることがうかがえる。
また,男性看護師の苦悩は女性患者への看護だけでなく,1289人(42.8%)が女性看護師と仕事上の関係づくりで苦慮した経験を有していた。男性看護師は,女性看護師と同じ看護師でありながらも男性や少数派であるといった影響から,女性看護師が経験する以上の苦悩を感じながら看護を実践している現状が浮き彫りとなった。
男性看護師にとっては厳しい現状もあるが,多くの男性看護師は[男性看護師]であることに誇りを持ち,看護師として実施する看護とそれに男性の持ち味をプラスした男性看護師としての看護を日々実践していることを,今回多くの方々に知っていただければ幸いである。
参考文献
1)厚労省.平成24年度衛生行政報告例(就業医療関係者).
2)前田貴彦,他.看護における性差および女性患者・女性看護師との関わりに関する男性看護師の認識と実際.第44回日本看護学会(看護管理)学術集会抄録集.2013:316.
3)上杉佑也,他.男性看護師に対する周囲の見方および男性看護師間の連携に関する認識と実際.第44回日本看護学会(看護管理)学術集会抄録集.2013:386.
4)辻本雄大,他.男性看護師のキャリアおよびキャリア志向に関する認識と実際.第44回日本看護学会(看護管理)学術集会抄録集.2013:383.
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