第5回日本線維筋痛症学会開催
2013.10.28
第5回日本線維筋痛症学会開催
第5回日本線維筋痛症学会が,10月5-6日,横浜市開港記念会館(横浜市)にて宮岡等会長(北里大)のもと開催された。全身の持続的かつ激しい疼痛を主症状とする線維筋痛症は,本邦での有病者数は200万人と推計されるが,治療下にある患者数は年間4000人ほどにとどまる。昨年,鎮痛薬プレガバリン(リリカ®)が保険適用となったが,病因が不明であること,診断基準が自覚症状に拠ることなどから,疾患としての位置付けにもいまだ議論が絶えないのが現状だ。今学会では,学会テーマと同題のシンポジウム「線維筋痛症の中核群をさぐる」(座長=桑名市総合医療センター・松本美富士氏,宮岡氏)にて,その原因や臨床での対応について,さまざまな診療科から演者が登壇し,話し合われた。
◆身体科・精神科が協働して治療にあたる必要性
シンポジウムのもよう |
行岡正雄氏(行岡病院)は疼痛と抑うつ,睡眠障害との関連を考察。抑うつと睡眠の関係はよく知られるが,FM患者でも約90%と高率に睡眠障害が認められ,脳波所見ではノンレム睡眠でのα波干渉が見られるという。また氏は,睡眠を促すメラトニンを合成するセロトニンの欠乏が,疼痛・疲労感を惹起する可能性にも触れた。
心療内科医の村上正人氏(日大板橋病院)は,難治化・慢性化の要因には心理・社会的ストレスや精神疾患の合併があると考察。筋・骨格系,リウマチ性疾患の心身症としてFMをとらえた。また,患者の75%が認知的・心理的障害を有するなか,専門家を受診するのは7%にすぎない現状も示し,心身両面からの支持的対応を長期に続ける必要性を強調した。
精神科の立場からは橋本亮太氏(阪大大学院)が登壇。慢性疼痛は診療科ごとの診断基準が複雑に重なる状態にあり,自験例ではFMの約9割に何らかの精神疾患が認められると話した。精神医学的評価を行い症状改善につなげるためには,身体科と精神科が相互理解を高め,連携する診療システム構築を要望した。
小児科医の横田俊平氏(横市大大学院)は若年発症のFMを考察。時期(9-11歳),性格傾向(完璧主義),心理検査(過剰適応・低い自己評価)に特徴があり,家庭や学校での過度のストレスが発症の契機になると話した。発症早期・若年なら入院による環境分離や医療面接が奏効する例もあるという。症状が共通で,進展して固定化することなどから原因は中枢神経系にあり,脳の炎症が関与する可能性を示唆した。
本間三恵子氏(埼玉県立大)は,リウマチ医およびFM患者への調査から,病識や病因についての医師・患者間のギャップを提示。その結果から氏は,患者の内的要因への言及は慎重にすべきと提案。患者のネガティブな感情に注目し過ぎず,疾患のコントロール感を高めることが,診療への満足度の向上に効果的と語った。
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