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第3048号 2013年10月21日


Medical Library 書評・新刊案内


ひとを育てる秘訣

渋谷 美香 著

《評 者》西田 朋子(日赤看護大講師・看護教育学)

はじめて指導者になる人に贈りたい1冊

 「教育委員や指導者の心と仕事を軽くする本にしたい」(はじめに)とあるように,本書は,現場で初めて指導者になるすべての人に向けられた,著者からの温かいメッセージに満ち溢れている。

 初めて後輩を育てる立場になった人も,ひとを育てる立場になって長い人も,「ひとを育てるってどういうことだろう?」「どうやったらもっとうまくいくのだろう」と考えることは少なからずあるだろう。しかし,考えれば考えるほど,また,後輩が思うように育たないと感じれば感じるほど,「ひとを育てるって難しい」と思いがちである。ところが,後輩が頼もしく育つと,「ひとを育てるって楽しい!」「また指導者になりたい!」という思いを抱くのも事実ではないだろうか。本書には,指導的立場にある多くの人が,悩みつつ指導にあたりながらも,最終的には指導者になってよかったと思えるような仕掛けがちりばめられている。

 1つ目は,目次に目を通すだけでも,「今の自分にも,これならできそう」と思える具体的な行動を選び取れることである。われわれは指導に困っているときに,藁をもつかむ思いで解決の糸口を探ろうと本を手に取ることがある。しかし,じっくりと腰を据えて本を読む時間が取れないこともあるだろう。"涙があふれる新採用者の背中をさする"(春 十一番)のように,内容を十分に読む時間が取れなくても,今できることにたどり着くことができる。

 2つ目は,パラパラとページをめくってみるとわかる。ところどころにある,おみくじの指南のような著者からの「お告げ」に目が留まるはずである。ところどころ,というのが著者らしい仕掛けである。そして,次の「お告げ」は何だろう? と思いながら読んでいるうちに,スーッと気持ちが軽くなるのを期待できる。

 教えることは学ぶこと,とも言われるように,はじめから相手が望むようには教えられないかもしれない。しかし,ひとを育てることや教えることは,育てる・教える立場である自分を受け入れ,逃げ出さず,あきらめないことが第1歩であるのかもしれないとあらためて考えさせられる。本書を何度か読み返してみると,「新採用者へのかかわり方」だけではなく「指導者としての自己のありよう」の大切さも浮かび上がってくる。考えや意見が異なるのは,そのひとが持っている価値が違うからであり,その違いを大切に扱うことである,という内容が文中には書かれている。著者は,本書を通して単なるかかわりの方法だけではなく,育てる人としての自己を振り返ることや,ひとを育てる自分が成長することの必然性を伝えているようにも思える。

 どの立場にあっても,ひとを育てる秘訣を知りたい方には,もちろん手に取っていただきたい本である。しかし,秘訣だからこそ次世代に受け継いでいくことも大事である。読み終えたらぜひ,皆様の身近にいらっしゃる,ひとを育てることで悩んでいる人,初めてひとを育てる立場になった指導者に贈っていただきたい。一人ひとりが自分にできることを丁寧に実践していれば成果はついてくる。本書がその後押しをしてくれるに違いない。

A5・頁112 定価1,680円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-01629-2


ナースのミカタ 小児看護
知っておきたい53の疾患

右田 真 編

《評 者》関根 弘子(済生会横浜市東部病院こどもセンター看護師長/小児看護専門看護師)

子どもの「看方」を教えてくれる,心強い一冊

 『ナースのミカタ 小児看護』は,主に小児科の若手の臨床医が執筆しており,序文には「病める子ども達をみる看護師さんに,これまでと少し違った『看方』をしてほしい」,「(医師の)パートナーとして小児医療にあたる看護師さんたちと患児の病態の理解を同じくしたい」という気持ちで執筆したと書かれている。本書を読み進めると,子どもと家族のために一緒に頑張ろう,という看護師への優しさが随所に感じられ,その内容は小児特有の成長発達や病態を理解するための道しるべになっている。

 本書は,小児の成長発達と疾患の解説の2章で構成されており,一般的な教科書にある記述だけでなく,小児科の臨床医の「診方」が記述されているのが特徴である。

 Chapter1は,「小児をみるとき,最初に必要なこと」と題し,生理的・機能的成長発達,栄養,一般状態,バイタルサインで構成され,小児の正常な発達を理解するための基礎知識が得られる。しかし,看護師として子どもを理解するために重要な認知や言語の発達,心理社会的発達に関する記述が無いのが残念である。看護師は,身体的だけでなく,心理的,社会的に子どもを理解し,子どもと家族の日常を支える役割を持つからである。

 Chapter2は,「小児をみるとき,知っておきたい疾患」として,53の疾患を解説している。どの疾患もカラーの図や写真を使って説明がされており,2-4ページ以内で読みやすく,小児の病態生理の専門書をわかりやすく要約した内容である。

 私は小児看護専門看護師として病院に勤務しているが,新卒看護師や小児病棟に異動してきた看護師に,必ず伝えていることがある。それは,「小児医療に携わる看護師として必要な知識は,子どもの成長発達と病態生理の二本柱」ということである。これらを同時にアセスメントした看護実践が,小児医療に携わる看護師の「看方」である。つまり,小児医療において看護師は,子ども特有の成長発達,病態に関する専門的知識を持ち,これらを相互に関連させたアセスメントをすることが求められる。

 小児を専門とする医療者であれば,この二本柱の知識を統合して理解するのは容易だが,新卒看護師や成人病棟から異動してきたばかりの看護師には難しい。

 本書には,その二本の柱をつなぎ,知識の整理を助ける記述がある。例えば,急性虫垂炎を例に挙げると,学童以降の発症が多いことは多くの教科書に書かれているが,その根拠として,「虫垂は消化管のなかでは,最もリンパ組織が発達した臓器の一つです。そのため,小児の成長過程でリンパ組織が急激に発達する5-6歳くらいから発症が多くなります」(本書,p. 96)と小児の生理学的発達が根拠として明示され,成長発達と病態の二本柱が,一段落に集約して記述されている。

 冒頭で紹介した序文にあるように,「看護師が小児科医と病態の理解を同じくする」には,小児の成長発達と病態を統合した理解を支援する教育が必要である。煩雑な日常業務に翻弄されながらも,本書を道しるべに子どもの成長発達と疾患の要点を理解し,小児のフィジカル・アセスメントの奥深さ,面白さを知り,さらに専門書を調べて知識を深めれば,臨床判断や実践力が高まる。

 小児医療に携わる看護師に,臨床で大切な子どもの「看方」を教えてくれる,心強い「味方」となる一冊である。

B6・頁224 定価2,520円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-01618-6

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