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第3003号 2012年11月19日


Medical Library 書評・新刊案内


M-Test
経絡と動きでつかむ症候へのアプローチ

向野 義人,松本 美由季,山下 なぎさ 著

《評 者》川島 みどり(日赤看護大名誉教授)

看護師による日々のケアの質を変える

 ある学会の懇親会の場で,久しぶりに出会った友人に「肩凝っているのでは?」と問われ,「すごく凝ってる。パソコンに向かい過ぎかしら……」と答えた私の右手の人差し指の根元を,彼女は「ちょっと失礼」というが早いかぎゅっとつまんだ。あっけにとられながら,そのまま首をぐるぐる回して見ると,首筋から肩胛骨にかけて突っ張っていた感じが取れているのを感じた。これがM-Testとの最初の出会いであった。

 本書によると,M-Testとは経絡テストのことで,「からだの動きを負荷することで,経絡・経穴の異常を見つけ出す診断治療体系」のことをいい,その特徴は,西洋医学では見えてこない病気の側面を観察しながら,個々の患者の症状発現の背景をその人の日常生活動作から発見できるという。友人は,この技術を看護師がマスターすれば,かなり応用範囲が広がるはずとも言った。

 全部で361もあるツボ(経穴)を今から覚えるのは至難だと思う一方,こんなに劇的に愁訴が治るとしたら,ぜひその原理と方法を知りたいと思った。半信半疑で初級の講習会に出て,M-Testではとりあえず24の著効穴を覚えればよいと聞いた。たった一度の講習ではあったが,患者の苦痛や愁訴に直接向き合う頻度の高い看護師らがこの方法に習熟したら,日々のケアの質が変わるのではないかと直感した。昨今の看護師たちが,自身の手を用いたケアから遠のいている現状をギアチェンジできるのではないかとも思った。

 本書は,医師,鍼灸師による共著であるが,M-Testの産みの親である向野義人教授の,臨床医の経験を通して培われた思想が脈々と流れている。本法誕生以来20年の間,仮説の反復検証を重ねて到達された標準化システムは,診断から治療までのプロセスの再現性故に,その信頼性が担保され,多職種が活用できるというのもうれしい。患者と対面しコミュニケーションを交わしながら,その動きと主観を尊重しつつ診断施術を図る方法は,文字通り患者参加型医療のモデルでもある。

 序論では,本法発想の経緯と命名の主旨が簡潔に述べられ,初学者なら誰でも興味をそそるであろう。続く概説であらかたの知識を得た後,理論的背景と実践面それぞれを,基礎から中・上級にステップアップしながら学べるように構成され,実際の症例や症状別治療まで,豊富な図やイラストによって深めることができる。

 施設在宅を問わず,ケアを必要とする人びとがますます増え続けることが予想されるだけに,ケアのワークモデルとしてのM-Testの可能性は,今後も広がることは間違いない。そのためにもケア提供の主力である看護師として,医薬品に頼らない苦痛緩和の有用な方法を知る意味は大きい。多くの看護師が,本書によって知識を深めた後に,実際に使える技術を身につけ実践することで,患者のQOLが高まることは間違いないと思う。多くの看護師たちにぜひ読んでいただきたい書としてお薦めする。

B5・頁184 定価3,780円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-01608-7

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