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第2987号 2012年7月23日


第5回日本看護倫理学会開催


シンポジウムのもよう

 5月26-27日,東京女子医科大学(東京都新宿区)にて日本看護倫理学会第5回年次大会(会長=女子医大・田中美恵子氏)が開催された。シンポジウム「さまざまな臨床における倫理的意思決定のための支援」(座長=看護倫理研究所長・長野県看護大・小西恵美子氏,女子医大・伊藤景一氏)では,「患者の立場にたった治療や看護を行うためには,誰にどのような支援が必要だろうか」という問題提起のもと,3人の看護師が登壇。倫理的意思決定に向けて行った事例を紹介しながら支援の在り方について議論した。

価値観の相互理解が倫理的な医療を促進する

 最初に登壇した山内典子氏(女子医大病院)は,さまざまな迷いを抱える患者への支援について発表した。氏は看護師の倫理的行為を,「患者の訴えの背景にある本当の要望を汲み,ケアを通してそれに応えること」と定義。看護師にできる支援は,個々の患者にとっての病を知り,迷いに寄り添いながら,患者の尊厳を一緒に取り戻すことと主張した。また,リエゾンナースでもある氏は,患者への支援と同様に,情緒的苦しさを抱える看護師を支援することの重要性も指摘した。

 病棟看護師への支援を精神看護専門看護師の立場から発表した江波戸和子氏(薫風会山田病院)は,看護師が倫理的な考え方を身につける過程には段階が存在するため,それぞれの段階に応じた支援をすべきと主張。例えば,日常業務で抱いた“不全感”を倫理的な問題として認識させるためには,教育やカンファレンスの機会を増やす支援が有効だ。また,身につけた倫理的な問題意識をより深く点検するためには,日常的な看護業務を振り返ったり,今できることに前向きに取り組めるようにするなど,余裕を持たせる支援が重要だという。氏は最後に,倫理は個人の価値の凝縮であり,難しい選択を迫られる場合もあるが,あきらめず地道に行動してほしいと聴衆に呼びかけた。

 浅香えみ子氏(獨協医大越谷病院)は,救急医療チームに対する支援事例について報告した。短時間での意思決定が求められる救急現場では,すべての医療者が,救急患者に対する治療やケアが不十分だと感じている問題があった。これを解決するために,氏のチームでは,臨床倫理の4分割表を改変したシートを導入し,各医療者が患者のQOLと満足度を向上させるためのアクションプランを記入。これをカンファレンスで共有し,事前に定めた退院日までに結果を十分に出せる治療計画を立て,実行してきた。導入から5年が経過した現在では,シートを用いることなく,各職種が意見を交換し,救急患者に対して納得のいく治療やケアを行えるようになったという。今後は,生命至上主義になりがちな救急医療の現場においても,医療者が患者の生活や医療の質の向上を意識するようさらに努め,倫理的な価値に基づいた救急医療を実践したいと述べた。

 全体討議では,医療チーム全体への支援に着目。患者にとって好ましい倫理的意思決定を行うためには,医療者が対立し合うのではなく,互いの価値観を肯定し,支え合う人間関係づくりが大切と確認された。