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第2938号 2011年7月25日


座談会

外来がん化学療法において
看護の力を発揮するために

山内照夫氏(聖路加国際病院 オンコロジーセンター長/腫瘍内科医長)
田墨惠子氏(大阪大学医学部附属病院オンコロジーセンター・副センター長)=司会
番匠章子氏(北里大学病院 がん看護専門看護師)
岩嵜優子氏(静岡県立静岡がんセンター 看護部)


 近年,外来におけるがん化学療法の治療件数が飛躍的に増加するなか,いかに患者の安全を守りセルフケアを支えるか,各医療機関でさまざまな取り組みが行われている。一方で,「化学療法を担う看護師不足,教育体制の未整備などにより,患者に対し十分なケアができていないのではないか」「十分な指針もないなか,自施設の取り組みはこれでよいのだろうか」などの悩みも聞かれる。そこで本座談会では,業務の効率化も視野に入れ,いま外来がん化学療法看護に必要なこと,できることは何か,お話しいただいた。


田墨 外来におけるがん化学療法の治療件数は年々増加傾向にあり,治療自体も複雑化の一途をたどるなかで,看護師の役割が非常に大きくなってきたと日々感じています。まず,皆さんの施設における外来がん化学療法の現状についてお話しいただけますか。

番匠 当院では,日帰りの化学療法は化学療法センターが担っています。ベッド数は24床。月曜日から金曜日まで1日約30件,年間では6500件程度化学療法を実施しています。

 スタッフは,専任の看護師として私とがん化学療法看護認定看護師の2人,それから外来から長期リリーフという形で3人の看護師が勤務しています。医師は当番制です。

岩嵜 当センターの外来通院治療センターは,今年3月にリニューアルオープンし,70床に増床しました。当面は39床で稼動することになっていますが,段階的に開床していく予定です。治療件数は1日当たり60-70件,年間1万5000件程度で推移しています。

 登録されているレジメンは多岐にわたりますが,なかでもジェムザール®などの短時間レジメンが多く,消化器内科のレジメンが約半数を占めています。スタッフは,がん看護専門看護師2人,がん化学療法看護認定看護師1人を含む専任の常勤看護師14人が勤務しています。

山内 当院のオンコロジーセンター(外来化学療法センター)は39床で,1日40-50件,年間約1万件の外来化学療法を行っています。扱うがん種は幅広いですが,外来化学療法センターが乳腺外科の規模拡大に伴って拡充していったという経緯もあり,乳腺外科の患者さんが7-8割を占めます。腫瘍内科としてあらゆる腫瘍を対象にしており,さらにリウマチや膠原病の分子標的薬を扱っているのも当センターの特徴だと思います。

 看護師は,乳腺外科とオンコロジーセンターとの兼務で17-18人が配属されており,ローテーションを組み,10-11人が当センターに常駐勤務するという形をとっています。そのうちがん看護専門看護師,がん化学療法看護認定看護師,乳がん看護認定看護師が1人ずつ勤務しています。

田墨 当院の現状をお話ししますと,化学療法室のベッド数は19床で,1日当たりの平均治療件数は約30件です。年々増加しており,昨年度は年間7000件を超えました。ただ,大学病院ということもあり,内訳を見るとアクテムラ®などの抗体治療が増加しているのが現状で,がん化学療法自体はこの辺りで飽和しているのではないかと考えています。看護師は7人勤務しており,うち6割が16時15分までの勤務です。化学療法室拡張の話も出てはいますが,スタッフ数の確保が厳しい現状では難しいのではないかと思っています。

医療者自身を守れているのだろうか?

田墨 各施設の現状をご紹介いただいたところで,看護師に期待される具体的な役割についての話題に移りたいと思います。化学療法における看護師の役割として,まず挙げられるのはリスクマネジメントです。リスクマネジメントには患者さんを守ることと,医療者自身を守ること,の二つの視点があります。特に後者については,抗がん薬の調製時,プライミング時,投与時,投与終了後のライン抜去時などに抗がん薬曝露の危険性が指摘されています。

 薬剤師の場合は,2008年に日本病院薬剤師会による「注射剤・抗がん薬無菌調製ガイドライン」において具体的な方針が示されました。しかし看護師は,化学療法外来における曝露対策の重要性は認識しつつも,その具体策については施設間の差が大きく,どのような対策が有効なのか,コンセンサスを得るには至っていないのが現状です。北里大学病院ではどのような対策をとっていますか。

番匠 当院では,抗がん薬を扱う際には防水性のガウン,マスクとニトリル製の手袋を着用しています。調整時,手袋は厚さ約0.2 mm以上が望ましいと言われて投与時もそれに準じ,薄い手袋の場合は重ねて使用しています。現在抗がん薬の調製の大半が薬剤部で行われているので,ゴーグルを使用するのは病棟で調製するときなどに限られています。調製後の薬剤については密封した容器に入れて運んでいます。

田墨 静岡がんセンターはどうですか。

岩嵜 個人防護具としては手袋とマスクを着用しています。ガウンとゴーグルは,夜勤などでどうしても病棟で抗がん薬を調製しなければいけない場合のみ着用している状況です。

山内 当院も同様で,抗がん薬の調製をすべて薬剤師が行っていることもあり,看護師が抗がん薬を扱う際に着用するのは手袋のみです。ただ,病棟においては週末に限って看護師が薬剤を調製しなければいけない場合があるので,その際にはゴーグル,ガウンを着用しています。

田墨 当院では,看護師が抗がん薬の調製を行うことはありません。化学療法室の看護師には標準的にマスクと手袋を着用するように指示しているのですが,限られた時間で多くの治療件数をこなさなければいけない状況下で,手袋の着用がなかなか浸透しません。このような状況を見ていると,医療者から患者さんへの感染を防ぐために手袋やマスクを着用するという意識は浸透してきたけれど,抗がん薬投与における手袋やマスクの着用の意味,医療者自身の身を守るという意識はまだまだ低いのかなと感じます。

■防水性の防護具など,できることから改善を

田墨 今お話を伺っていても施設ごとにさまざまな状況があるなか,やらなければいけないことをやっていないのか,やらなくてもよいからやらないのか,一度整理する必要があるのではないかと思います。私自身は,防護のポイントの一つは防水ではないかと考えています。北里大学病院でも防水性の防護具を使用されていますね。

番匠 ガウンは従来撥水性のものを使用していたのですが,私も防水が重要だと考え,環境整備課に交渉して防水性のガウンに替えてもらいました。さらには,防水性ガウンのクリーニング代と,使い捨てガウンのコストを比較したところ変わらないことがわかり,使い捨てガウンの使用を検討しているところです。

田墨 コストの面から検討することも重要な視点ですね。マスクについてはいかがですか。

番匠 米国のガイドラインでは調製時N95の使用が推奨されています。しかし,N95は看護師にとっては息苦しく,患者さんから見ても「自分たちはそんなに危険物扱いされるのか」と不安を煽りかねません。薬剤を外気にさらすことなく注射用器具に接続注入できる閉鎖式薬剤混合デバイスが開発されたこともあり,投与時はサージカルマスクで十分防護できるのではないかと考えています。

田墨 確かに,閉鎖式薬剤混合デバイスの開発によって,曝露の危険性は非常に低くなりましたね。ただ,そういったデバイスは価格が高いため,導入を見送る医療機関も少なくありません。コストの面でどう折り合いをつけるかといった点は今後の課題だと思います。

 どの施設でも調製は通常薬剤部で行っているというお話でしたが,そうすると,看護師にとって危険なのはルートのつなぎ換えや輸液バッグの交換時だと思います。その際,皆さんゴーグルは使用していないそうですが,目からの曝露を回避するために,何か工夫していることはありますか。

番匠 輸液バッグを交換するときには目線の位置より下げて手元で行います。ルートのプライミングは生理食塩水もしくは前投薬で行い,ルートの先から抗がん薬に曝露することを防いでいます。また,閉鎖式およびロック式の点滴セットを使用し,三方活栓など接続部から漏れないようにしています。

岩嵜 私たちも輸液バックにルートをプライミングする際や,抗がん薬の輸液の交換時には輸液を必ず下に向けます。また,輸液を点滴台にかけて準備する際,以前は抗がん薬につけたルートの先端がちょうど看護師の目線に近いところに垂らされていることが多かったのですが,それを目線より下にセッティングするようスタッフに働きかけているところです。

田墨 山内先生,米国では2004年に国立労働安全衛生研究所から「医療現場における抗がん薬およびその他の危険性医薬品の職業的な曝露を防止すること」との勧告が出されるなど,曝露対策が非常に厳格に行われている印象がありますが,いかがでしょうか。

山内 米国では労働安全衛生局(OSHA)が,化学療法室や研究室に勤務し有害物質に曝露される可能性がある人に対し,自らを守るための研修を実施することを職場に課しています。OSHAが示す基準を満たした研修を行わなければ,危険物自体を取り扱えないのです。私が病院に勤務する際にも,薬剤を扱う際や廃棄する際に自分の身を守るための研修がありました。

田墨 国内で標準化されているのですね。日本ではまだまだ病院単位,部署単位の基準しかないので,できることから抗がん薬取り扱いのスタンダードを整備していくことが大事なのかもしれません。

静脈穿刺は誰が担う?

田墨 次に,「患者さんを守る」というもう一つの視点ですが,患者さんのリスクに関して医療者がいちばんストレスを感じるのは,抗がん薬の皮下漏出ではないでしょうか。治療中に皮下漏出した際の対応については,皮膚科医にコンサルトするなど,既に各施設で取り決めがなされていると思います。今回皆さんにお伺いしたいのは,抗がん薬の静脈穿刺についてです。

 2002年に「看護師等が行う静脈注射は診療の補助行為の範疇として取り扱う」との厚労省医政局長通知が出されたことにより,現在施設によっては静脈注射を担う「IVナース」の育成が進められています。しかし,起壊死性抗がん薬と呼ばれる一部の薬剤は,皮下漏出により皮膚壊死を起こすこともあり,大変リスクの高い処置です。そのため,静脈穿刺には医師と同等か,それ以上の安全な技術を持つ必要があると考えます。当院では専門看護師である私が医師と一緒に穿刺を行っていますが,皆さんの施設では抗がん薬の静脈確保はどの職種が担っていますか。

番匠 当院でもIVナースの育成は行っていますが,抗がん薬の静脈確保は医師が行っています。ただ,病棟によっては静脈ポートの場合に限り看護師が穿刺している部署があるようです。

岩嵜 当院では,今年4月よりIVナースが静脈穿刺・静脈ポート穿刺を施行しています。しかし,皮下漏出のリスクを考えると,看護師が穿刺することに大きなストレスを感じている現状もあります。皮下漏出を予防するためには,血管アセスメントを十分に行うことのできる知識や技術が重要だと思います。

田墨 私自身は技術が落ちないように,年間2000件の穿刺を行っています。各施設で院内認定制度を設け,静脈穿刺の実施者を十分な教育と経験を積んだ看護師に限定し,さらに定期的に技術をチェックする機会を設けることで,質を担保するための取り組みも進んでいますね。

番匠 当院では,教育ラダーがレベルII以上でないとIVナースの研修を受講できません。研修後は医師の指導のもとで患者に実施し,院内認定バッジを取得しますが,IVナース認定後もチェックリストに沿って定期的に技術確認を行っています。

山内 米国の場合,皮下漏出の防止のため,皮下埋め込み型ポートを使用するケースが多いですが,埋め込む際に手術が必要なこともあり,日本では抵抗感を示す患者さんが多くいます。しかし,長期間の化学療法が必要な患者さんや,再発・転移で頻回な治療を行う患者さんの場合は血管がどうしても脆くなってしまいます。マネジメントのしやすさという観点からも,もっとポートの導入が検討されてもよいのではないかと思います。

輸液ポンプを安全に使用する

田墨 皮下漏出に関してはもう一つ,強制注入型の輸液ポンプを使用することによって,漏出のリスクが増すのではないかという指摘があります。当院では,毒性の強い薬剤を投与する場合や血管が脆弱な患者さんの場合には輸液ポンプを使用しないなど,基準を設け,頻回な観察をしながら使用しています。これだけ化学療法の件数が増えてくると,輸液ポンプなしにはやっていけないというのも現実ですが,皆さんの施設ではどのように工夫されていますか。

番匠 確かに現状の体制では,手動で行っていると管理が行き届かず,かえって過剰投与などの危険な状況をつくりかねません。そのため,ナベルビン®などフラッシュで落とす抗がん薬以外は,起壊死性,炎症性にかかわらず輸液ポンプを使用しています。ただし,投与する際には必ず最初に生理食塩水で自然滴下を確認し,短時間のレジメンであっても定期的に観察しています。

岩嵜 私たちも輸液ポンプを使用していますが,起壊死性抗がん薬投与時は,特に観察を強化し慎重に扱っています。また,急速投与で行う起壊死性抗がん薬は自然滴下で投与しますが,それ以外にも血管の状況に応じて輸液ポンプを外し,自然滴下で投与するように工夫しています。

田墨 山内先生は,輸液ポンプの使用についてはどのようにお考えですか。

山内 当院では,起壊死性抗がん薬を末梢から投与する場合には,輸液ポンプは使用しないことにしています。外来化学療法センター全体の看護管理上の利点をとるか,薬理学的に投与時間が正確であるべきなのか,圧力をかけることによって漏出の危険性を上げるのか,諸々考察すると,やはり安全性を確保することを第一に考え,輸液ポンプを使用しないという結論に至っています。

田墨 輸液ポンプに頼らざるを得ないなかで,いかにリスクを回避するか,その施設の環境に合った方法を医師,看護師で話し合いながら,共通認識を持って取り組んでいくのが重要なのではないかと思います。

ケアの効率化と質向上をどう両立させるか

田墨 化学療法における看護師の役割が期待される一方で,外来は看護師数がなかなか安定しない,同じスタッフが定着しない,などさまざまな問題を抱えています。収益の面から考えても,看護師配置はどうしても病棟が優先されてしまうなか,今の体制のままでよりよい看護をめざすには効率化も重要な課題です。そのためには,個々の看護師の知識と技術の向上に向けた取り組みが必須となります。山内先生は医師の立場から,看護師にどのような役割を期待されていますか。

山内 抗がん薬には毒性があるということを前提に,オーダーに則って正確に仕事を遂行できるのがまず重要です。さらに一歩踏み込むと,今後は副作用のアセスメントを医師,看護師のどちらが担うのかが問われてくるのではないかと考えています。

 がん化学療法認定看護師の養成など,既に取り組みも始まっていますが,現場における安全・確実な抗がん薬投与だけでなく,より専門的な知識を身につけ,さまざまながん種に対応できる看護師がいれば,患者さんにとっても大きなメリットになります。米国ではすでにナースプラクティショナーやフィジシャンアシスタントがその役割を担っていますが,日本の現状を考えると処方権の問題は別として,ナースプラクティショナーのような臨床医療の診断・判断ができる人材育成が望まれるのではないでしょうか。

田墨 主体的な判断ができる看護師が必要だということですね。ただ,現状では,副作用のマネジメントのためにチェックシートを用いている施設は多いですが,多くは「医師に報告する」というレベルにとどまっているのではないでしょうか。

 例えば,患者さんが治療中に腹痛を起こした場合,コリン作動で起きているのか,通常のお腹の痛みなのかを的確に情報収集し,「こういった情報があるから,コリン作動だと私は考える」というところまで情報を集約して医師に伝えられることが,看護師の専門性だと私は考えています。すぐには難しいですが,専門看護師や認定看護師など軸となる看護師に情報を集約することで,効率的なアセスメントを意識した情報収集が可能になってくると思います。

岩嵜 私自身も起きている現象に関しては,何が原因で起きているのかをしっかりアセスメントした上で医師に報告するように努力していますが,自分だけの判断ではなく,専門看護師と協働しながら一緒に考えています。その姿を他のスタッフに見せることで,アセスメントのポイントを理解してもらい,チーム内の意識を高めることにもつながってほしいと思います。

田墨 番匠さんは管理職として,情報が集約される立場,いわば医師に情報を伝達する前のワンクッションとなっていると思いますが,何か心がけていることはありますか。

番匠 現場の看護師には,患者さんの状態を観察しながら,本当にさまざまな判断が求められます。ですから,勉強会を開いてより深い知識を身につけられるような機会を設けたり,スタッフには「わからなければ,まず呼んで」と声をかけ,私や主任である認定看護師がベッドサイドにすぐに行けるように心がけています。

田墨 「何かあったら呼んで」と言ってくれる人がいると,スタッフにとっても安心ですね。そうした日々の業務のなかで,スタッフが「専門看護師に報告すべきこと」「師長に報告すべきこと」「医師に報告すべきこと」を的確に判断できるようになってほしいと思います。

山内 がんは病態として非常に複雑なので,診断に基づいた治療を適切に行っていくには,私たち医師も患者さんの情報や自分の判断を,チームメンバーである看護師,薬剤師,受付スタッフなどにきちんと伝えていくことが重要です。当院の腫瘍内科では,週1回全症例を看護師,薬剤師とともにレビューする機会を設け,それぞれのがん種の特徴や薬剤,副作用に関する知識を提供し,アセスメントのポイントを伝えています。また,受付スタッフにもどのような患者さんが来院するか情報提供しておき,体調が優れない場合などは診察室に案内してもらったりしています。

田墨 医師と一緒にレビューし治療方針を共有できている医療機関はまだ少ないと思います。今後そういったことも提案していくべきなのかもしれないですね。

施設を越えて情報共有の場を持つ

田墨 ケアの質向上には,現場で軸となる看護師の養成あるいは研鑽も今後の重要な課題だと思います。静岡がんセンターは,病院立として初めて認定看護師教育課程(緩和ケア分野,皮膚・排泄ケア分野,がん化学療法看護分野)を設置されましたね。どのような背景があったのですか。

岩嵜 認定看護師教育課程の設置には,当センターの山口建総長の「全看護師がスペシャリストとしての知識と技術を有した専門看護師,認定看護師となり,患者さんに質の高い看護を提供したい」という熱意があったと聞いています。

田墨 専門看護師や認定看護師の養成は,これまで看護師から働きかけることが大きかったので,病院のトップががん医療の充実のために看護師の質向上に力を入れていることが,とても新鮮に感じます。岩嵜さんはがん化学療法看護分野の1期生でもありますが,手応えはいかがですか。

岩嵜 外来通院治療センターは認定看護師が在籍していないため,教育課程修了後はスタッフからのスペシャリストとしての期待も大きいと感じます。その期待に応えるためにも,抗がん薬に対する正しい知識とアセスメント能力を備えたいと考えています。新薬がどんどん誕生するなか,勉強し続けなければ安全・安楽な看護ができないという危機感もあります。

田墨 番匠さんは,医師の期待に応えるために,あるいは患者さんのために,化学療法センターを指揮する立場でどのような自己研鑽をしていますか。

番匠 医師から最新の化学療法や自分が知識不足と思われる診療科のがんについて教えていただくことも多いですが,学会やセミナーにも積極的に参加し,そこで得た情報や知識をスタッフと共有しています。新薬については製薬会社の方に情報提供をお願いし,他の医療機関における副作用への対応などについても教えていただいています。

田墨 ある施設では標準的に行われていることが自分の施設では標準になっていないということも,外に出ていかなければわからないですよね。私も施設内だけではなく,横の根を張りながら化学療法に携わる看護師全体で情報交換していくことが,ひいては自身の研鑽にもつながるのではないかと考えているところです。

■高いマインドとスキルでさらなる飛躍を

田墨 では最後に,これからの外来がん化学療法の課題をお話しいただけますか。

山内 日本国内を見ると,がん化学療法の教育システムが施設間でだいぶ開きがあるのではないかと感じます。腫瘍内科の成り立ちも施設ごとに異なりますし,腫瘍内科医自身が受けてきたトレーニングのバックグランドも大きなばらつきがあります。また,日本では化学療法外来を立ち上げる際の明確なガイドラインがないため,結果的に多様な在り方が存在することになります。

 治療の均てん化を進めるためには,クリアすべき明確な目標を掲げることと,それに対するバックアップ体制を整えていくことが重要です。例えば関連学会がリーダーシップをとって,立ち上げる際にある程度クリアしなければいけない技術,安全対策,組織体制などのガイドラインを設定することで,施設にとっても方向性が定まって取り組みやすくなるのではないでしょうか。そうした上で,トレーニングについてもプログラムモデルを提示し,ワークショップや研修会を開催していくことが必要だと思います。

田墨 日本がん看護学会から外来がん化学療法のガイドラインが発表されましたが,それでも現在は基準がない部分も多く,手探りで進めているのが現状です。岩嵜さんはいかがですか。

岩嵜 ガイドラインが出たことによって看護全体の質が上がり,どの病院でも同じ看護が受けられるための取り組みが進んでほしいと思います。また,スタッフの知識や技術の差が患者さんにとって不利益とならないためにも,外来がん化学療法において,私にできることは何かをしっかり見極め,多職種と協働しながらがん化学療法看護をもり立てていきたいと思います。

番匠 確かに,米国のように国がガイドラインを示していると,それを基に病院独自のものをつくっていけますよね。日本は学会間の連携もこれからだと思います。

 私自身の課題は,病棟勤務の看護師に対して化学療法センター,そして化学療法看護についてもっと興味を持ってもらえるような働き掛けを行うことです。現在は化学療法センター,外来,病棟間で,患者について定期的に情報交換したり,看護師の相互研修の機会を設けたりして連携を図っています。病院全体として化学療法を安全に実施するためにも,私たちが持つ知識や技術を病棟に伝えていきたいです。

田墨 外来がん化学療法が飛躍的な発展を遂げるなかで,看護師も,医師,薬剤師と並び,高いマインドとスキルで外来化学療法をリードしてきました。今後もこの動きを止めることなく,医療チームの主要メンバーとしての役割を発揮することが大切だと感じました。本日はありがとうございました。

(了)


山内照夫氏
1988年鹿児島大医学部卒。聖路加国際病院,慈恵医大を経て,94年渡米。ハーバード大ダナ・ファーバーがん研究所,ジョージタウン大ロンバーディがんセンター,米国立衛生研究所等に勤務。2001年ハワイ大内科研修後,同チーフレジデントを経て,プライマリ・ケア開業医。06年南フロリダ大モフィットがんセンター。09年より現職。患者がキャプテンとなる真のチーム医療のために,より患者に近い看護師の活躍の場を広げられるよう,職種間連携の強化をめざしている。

田墨惠子氏
1986年神戸大医療技術短大看護学科卒。卒後,阪大病院に入職。2000年兵庫県立看護大大学院修士課程入学。02年同大大学院修了。08年より現職,11年4月より教育・実践室看護師長を兼務。がん看護専門看護師。編著に『がん化学療法看護』(日本看護協会出版会)。化学療法において患者のセルフケアがキーとなることを日常的に感じるため,患者のセルフケア能力が十分に発揮できるようなかかわりを心がけている。

番匠章子氏
1992年北里大看護学部卒。卒後,北里大病院に入職し,2001年同大大学院修士課程入学。03年同大大学院修了。同年同大病院外来化学療法センターの立ち上げにかかわり,現在同センター看護係長代行を務める。08年がん看護専門看護師の認定を受け,がん化学療法看護をサブスペシャリティとして活動している。

岩嵜優子氏
1996年静岡県立静岡厚生保育専門学校看護一学科卒。卒後,聖隷沼津病院,伊東市民病院を経て2003年静岡県立静岡がんセンターに入職。10年がん化学療法認定看護師教育課程を修了。外来化学療法における安全管理(血管外漏出の予防や安全な投与,救急時の対処など)について力を注いでいきたいと考えている。