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第2886号 2010年7月5日


MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


解剖を実践に生かす
図解 泌尿器科手術

影山 幸雄 著

《評 者》村石 修(聖路加国際病院泌尿器科部長)

術野のイメージに役立つイラストが発揮する学習効果

 本書は,著者影山幸雄氏が自己の豊富な手術経験に基づいて理解した外科解剖と,その解剖学的知識を駆使することで到達し得た最良の手術手技を,イラストで伝えようとする実践的な手術書である。記された内容はすべて著者が実際に行っている手術手技であり,長年の経験から得た細かなコツから思いがけない失敗に対する対処法まで,著者の手技を正確に伝えようとするものである。

 日ごろ滞りなく行われている手術も場面を細かく分解すると,「次に現れてくる術野をイメージして決断された操作の連続」と言える。手術に携わる者が「術者の手が止まってしまった」と表現する場面は,術者が次の理想的な術野とそこに至る手術操作をイメージできずに困っている状態である。誰でも初心者時代に経験した記憶があろう。本書に多用されているイラストは,単に手術の手順を伝えるだけでなく,手術の進行に合わせて術者がイメージすべき次の場面を教えてくれる。エキスパートの手術ビデオを見て同じ手技で行おうとしても実際に執刀する場面でつまずくことが多いのは,静止画像的な次の術野をイメージしにくいことが一つの理由だと考える。手術ビデオを静止画像に分解したような本書のイラストが今までの手術書になかった学習効果を発揮すると期待できる。また,熟練した医師が若い泌尿器科医に手術を教えようとする場合の解説書としても最適であろう。

 直接の手術手技ではないが,「よりよい手術をするためのアドバイス」と題して挿入されたコラムも魅力的である。「手術中冷静さを保つために」,「スタッフの力を最大限に引き出すもの」,「不測の事態に対して」,「手術を終えて」などの見出しで書かれているが,著者の理想的な手術をめざす真摯な姿勢と熱意が示されている。同感することばかりであり,よりよい術者をめざす若い泌尿器科医にぜひ伝えたい内容である。

A4・頁312 定価12,600円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-01021-4


リハビリテーションレジデントマニュアル 第3版

木村 彰男 編
里宇 明元,正門 由久,長谷 公隆 編集協力

《評 者》橋本 圭司(国立成育医療センターリハビリテーション科医長)

リハビリテーション医学の学び方を最短ルートで提示

 評者が医学部を卒業して間もなく,まだ右も左もわからず,しかし志だけは大きく「リハビリテーション医学を究めたい」などと思っていたころに,本書初版に出合った日のことを今でも鮮明に覚えている。

 さまざまなリハビリテーション医学関連書籍の中から,真っ先に同書を購入したものだが,同じ病院の研修医の中でも,この貴重なマニュアルを手にしていたのは,ごく一部であったと思われる。しかし,それゆえに,ほかの分野の医師たちとは違うベクトルでの医療の理解・実践に心を躍らせることができたのも事実であった。

 あの日から10年以上が経過して,もう1度,初版を手にとってみると,コンパクトな白いマニュアルの余白にはわれながら初々しい書き込みがあり,表紙の裏にはさまざまな評価スケールの切り貼りがしてあり,本は手あかで汚れている。

 さて,このたびの第3版は,編集の木村彰男先生をはじめ慶應義塾大学リハビリテーション医学教室や関連病院の諸先生方による改訂版である。最近のトピックス(高次脳機能障害やがんのリハビリテーション,転倒予防や廃用予防などの予防的リハビリテーション,社会的リハビリテーションなど)や評価や治療のポイントを,項目ごとに要約形式で見事にまとめられている。

 評者自身は,まず項目ごとに収載されている「臨床上のコツ」を拝読し,その上で,各執筆者の先生方と,まさに実際に対話をしながら教えをいただいているような感覚で理解を進めることができた。

 リハビリテーションは,その解釈によってさまざまな対象をも含むことがあり,一臨床医学としては,とっつきにくい側面がある。そのような中で,本書は,わが国のこの分野のリーダーたちが読者に実際に語りかけるような息吹を感じとることができる良書と言えよう。

 リハビリテーション医療は,机上の勉強だけでは理解できない要素を多面的に意識する必要がある。あまりに高度に情報化された社会において,何がスタンダードで何が先進的なのかといったことを理解する間もなく,次の情報が押し寄せてくる。

 本書はそのような時代に,われわれリハビリテーション医療にかかわる人間一人ひとりが,何を理解し,どう歩んだらよいのかを,最短ルートで端的に示してくれているように感じた。リハビリテーション医学を志すレジデントのみならず,リハビリテーションチームにかかわるあらゆるスタッフにとって必読・必携の書である。

B6変型・頁544 定価5,250円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00844-0


消化器外科レジデントマニュアル 第2版

小西 文雄 監修
自治医科大学附属さいたま医療センター一般・消化器外科 編著

《評 者》志田 晴彦(東京厚生年金病院外科部長/副院長)

若手を育成し外科の発展のために貢献する本

 2005年に発刊された『消化器外科レジデントマニュアル』が待望の改訂を迎えることになった。この間に多くの外科レジデント,研修医の必携の書として彼らを育てた実績を持っての改訂である。不肖私が“『外科レジデントマニュアル』からさらに一歩消化器外科へ進む本”として本書初版の書評に記したように,日進月歩の外科分野のマニュアルとして改訂には大変なご苦労があったものと察する。

 実際にこの第2版を見ると,小西教授のもと自治医科大学附属さいたま医療センター一般・消化器外科のスタッフが,最新の情報を求めながら日々診療されているご苦労がそのままマニュアルに反映されていると感じた。それぞれの項目で5年間の新しい知見が盛り込まれているが,特に「内視鏡下手術の基本」「stapling deviceの種類と使い方」の項や,各種の消化器癌取り扱い規約やガイドラインなどの更新に応じたそれぞれの章での改訂に医局員のきめ細やかな配慮が印象的である。

 私自身も若いころから小西教授には多くのご指導をいただき,また教授が大腸癌や炎症性腸疾患の診療,研究に熱意をもって立ち向かわれ,さらにその後腹腔鏡手術の発展に主導的立場で貢献され,今日の消化器外科を作り上げてこられた経過を目の当たりにしてきた。開腹手術で名を挙げてきた多くの先輩たちの中にあって,当初より腹腔鏡手術の将来を見据えた立場でのお仕事は,常に科学に新しいものを求める教授の姿勢の現れであり,真に敬意を表するばかりである。教授の信念が医局の先生方に浸透して教室として数多くの優れた実績を挙げてこられたものと思うが,中でもこのマニュアルはその小さな形に比して存在意義は極めて大きいものと言えよう。

 今日多くの外科系学会では,「外科医を志望する学生の減少」「女性外科医が働けるための環境づくり」「専門医制度の意義」などが強調され,厳しい課題が山積みではあるが,問題の解決と発展のためには若手外科医の指導,育成が基本であることは自明である。このマニュアルが研修医,レジデント,ならびに時間的制限から経験のみに頼りがちになる医長,部長クラスの指導医にも引き続き必携の書であり,若手の育成を通じて外科学の発展に貢献するものであることを確信している。

B6変型・頁368 定価4,410円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00851-8


臨床家が知っておきたい「子どもの精神科」 第2版
こころの問題と精神症状の理解のために

市川 宏伸,海老島 宏 編

《評 者》大南 英明(放送大客員教授)

特別支援教育や障害児・者の教育,福祉をめざす人へ

 医療と教育との連携,協力の必要性,重要性については,編者である市川宏伸先生をはじめ,幾人もの先生方が,都立青鳥養護学校の分教室における長年にわたる実践により,成果を示してこられました。

 都立青鳥養護学校の分教室は,1972年4月,小児精神科の専門病院である都立梅ヶ丘病院の中に設置され,入院中の患者の中から教室での学習が可能と医師から診断された児童生徒(義務教育段階)を対象としていました。

 記録をたどりますと,当初は,自閉症,情緒障害の児童生徒が中心でしたが,1990年には医師と教員がLD(学習障害)について,1994年ごろにはADHD(注意欠陥・多動性障害)についての研究・研修を開始し,分教室の教育の中心は,LD,ADHD等の発達障害の児童生徒へと変化し,現在に至りました。2010年2月,分教室は病院の統廃合により閉室となりましたが,新しい医療機関,特別支援学校で,医療と教育との連携による実践が始まっています。

 本書は,次の点で類書にみられない特色があります。

1.サブタイトルにあるように「こころの問題と精神症状の理解のために」幅広く解説されている。
 「III 子どもによくみられる精神症状のみかた」「IV 子どもによくみられる精神疾患とそれらへの対応」「V 子どもの精神科におけるいくつかの問題」の中で,こころの問題,精神症状の理解のためのポイントが解説してあります。

2.一つひとつの事項について,簡潔,明解に解説してある。
 例えば,「IV 子どもによくみられる精神疾患とそれらへの対応」の各論では,20項目について,それぞれ4-5ページでコンパクトに解説してあります。「自閉症(広汎性発達障害:PDD)」では,1)診断,2)行動上の特徴,3)疫学,4)鑑別診断,5)経過および予後,6)対応,について解説し,学校,家庭,医療などが共通の認識に立って対応する必要性を述べています。

3.教育,福祉,司法,保健とのかかわりについて解説してある。
 「V 子どもの精神科におけるいくつかの問題」の章で,1)教育との連携,2)福祉・司法・保健との連携について,具体的に解説してあります。教育との連携では,(1)連携にあたって留意する点,(2)学校からの依頼,(3)学校への依頼,(4)その他の社会資源,について述べています。

4.医療の専門分野(小児精神科等)で著名な執筆陣により編集されている。

5.事典(辞典)としても活用できる。
 例えば,LDは,166-170ページにコンパクトにまとめてあり,参考文献が例示されています。

 本書は,特別支援教育の関係者,関心がある方々,障害児・者の教育・福祉をめざしている方々などにお薦めしたい図書です。

A5・頁304 定価3,360円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00619-4


神経内科ハンドブック 第4版
鑑別診断と治療

水野 美邦 編

《評 者》栗原 照幸(東邦大名誉教授/神経内科津田沼)

ベッドサイドですぐに役立つ

 水野美邦先生は,1969年から4年間Chicago,Northwestern大学で神経内科レジデントを体験され,帰朝後それを一冊の本にまとめておきたいという希望から,1987年に『神経内科ハンドブック』(初版)として出版された。その後版を重ねてこのたび,34名の執筆者によって最近の知見を盛り込んだ第4版が2010年3月に出版された。米国の神経内科レジデント教育では,成人の神経内科のほか,一定期間ずつ小児神経内科,脳神経外科,精神科,神経放射線,脳波・筋電図,神経病理のローテーションが組まれ,All roundな臨床能力を能率よく3年間で体得できるようプログラムが組まれている。

 神経系はその解剖学的な複雑さから,とっつきにくいと考えられるが,問診をして,発症の仕方(突発性,急性,亜急性,慢性進行性,寛解・増悪の繰り返し等)や病気の経過,家族歴の有無,仕事や環境との関連性などよく話を聞いて,次に神経診察を取りこぼしなく行うと,(1)主に問診からどのような病態か(血管障害,炎症,代謝・中毒,腫瘍,変性,脱髄),(2)神経診察所見から神経系の疾患部位を8割がた,明らかにすることができる。問診と診察所見から最も考えられる診断を思いついた後に,多くの鑑別診断も思い浮かべて,神経学的検査法の助けも含めて最終診断に至るが,この本の副題にもなっている鑑別診断の重要性を編者はよく強調している。図や写真も多く,まとめの表も理解しやすい。重要な参考文献が読書を深めるために十分すぎるほど記載され,最新情報が盛り込まれている。

 今回出版された第4版では,神経学的診察法,局所診断,症候から鑑別診断へ,神経学的検査法,診断と治療,基本的治療法・手技(救急蘇生法,中心静脈カテーテル,栄養,嚥下障害や褥瘡予防)のほか,医療費の助成制度や,身体障害者手帳,介護保険制度の手続きに至るまで,患者の助けになる内容を盛り込み,ベッドサイドですぐに役立つ素晴らしい構成である。医学生,神経内科の後期研修医をはじめ,臨床に携わる神経内科医にも推薦したい。

 第5版が将来出版されるときには,さらに完璧なものとするために,神経内科疾患への問診法の章をぜひ加えてほしいと考える。神経内科疾患の診断には,神経学的診察を見落としなく行うことが大切であるが,それ以上に話をよく聞くことが重要である。年齢,性別,職業(会社員と書くだけでなく実際に行っている仕事を具体的に聞き出すとよい。一日中コンピューターを見ている仕事(VDT業務)も最近多くなり,目の疲労,頭痛,肩こり,腰痛などが起こりやすくなっている),病気の発症の仕方,経過,今まで使われた薬とその効果,抗うつ薬によるパーキンソニズムなどの副作用。

 既往歴では,糖尿病,高血圧,脂質異常症,手術歴,輸血歴,薬物アレルギー,入院歴。家族歴では,家族構成,本人と同様な症状を呈する家族がいないかなど。筋疾患や変性疾患,片頭痛などでは家族歴のあることが多いので,遺伝形式にも注意するとよい。よく話を聞いてラポールが築かれてくると,神経診察をする際もよい協力が得られる。

 神経内科の教科書には,問診についての章がないものが多く,これは診断学の教科書に任せるという傾向もあるが,第4版は,1300ページにわたる教科書なので,大切な問診については5ページほどを割いてもよいかと思われる。

A5・頁1312 定価14,175円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00874-7


《脳とソシアル》
発達と脳
コミュニケーション・スキルの獲得過程

岩田 誠,河村 満 編

《評 者》小林 登(東大名誉教授 チャイルドリサーチネット(CRN)所長)

発達を脳科学と関係づけて論じた書

 本書は,東京女子医科大学名誉教授の岩田誠先生と,昭和大学医学部教授の河村満先生によって編集され,序論を含めて4章から成り,わが国の発達領域にかかわる脳研究の第一人者である18人の専門家により執筆された272ページから成るものである。

 全体として,その構成を見ると,岩田誠先生のアイデアが光っているように感じられる。評者は折々,先生のお考えを伺う機会があったからそう思うのであろうか。脳からみたヒトの発達について先生が書かれた興味深い序論,さらには冒頭の「発刊に寄せて」,そして巻末の「あとがきにかえて」の河村先生との対談を読むと,それがよく理解される。すなわち,文化人類学的,さらには進化論的な発想で医学・医療問題をとらえようとする立場である。評者も,脳の働きの理解には,それなしでは成し得ないと考えている。

 本書の内容を見ると,Iの「発達障害と脳」は,発達の脳科学的基本ばかりでなく,いわゆる自閉症スペクトラム,さらには成人の神経疾患に特異な自閉症スペクトラムも取り上げ,治療教育も含めて単に臨床的視点からだけでなく,認知神経学的にも論じている。

 IIの「コミュニケーション・スキルの獲得と脳」では,脳神経系の形態的,機能的な発達と高次の機能の生まれる過程から始まって,言葉の発達を中心に,コミュニケーション・スキルの発達と障害を論じている。障害としては,ディスレクシア,ひとまねの模倣障害としての自閉症スペクトラム,特殊な認知解離を示すウィリアムズ症候群,教育現場で問題になっている注意欠陥・多動性障害を取り上げ,これらの疾患の新しい視点からのとらえ方が理解される。

 IIIの「コミュニケーションの広がりと進化――個から集団へ」は,進化論的な立場から人間に最も近いチンパンジーに始まり,サル,イヌを取り上げ,いわゆる「社会脳」の進化と発達を論じ,本書を特徴付けている。特に,チンパンジーの子育てについては,われわれの子育てに応用できる点が多い。

 評者は,書評のご依頼を受けて,「脳とソシアル」という発想の本がシリーズとして出版されていることを知り,感銘を受けた。その第二弾としてのこの本も,発達を脳科学と関係づけて論じていて,格調高いものになっている。現在の医療の現場で問題となっている発達障害,特にコミュニケーション障害を原点に立って理解するために本書は有用である。医師や看護師ばかりでなく,ぜひ学生にも読んでいただきたいものである。

チャイルドリサーチネットホームページ
 http://www.crn.or.jp

A5・頁272 定価3,780円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00936-2


感染症999の謎

岩田 健太郎 編

《評 者》喜舎場 朝和(元沖縄県立中部病院内科部長)

感染症の頂を見上げて

 久しぶりに,感染症の本一冊に一わたり目を通して,大いに勉強になった。手頃なサイズの中に中身がずっしりと詰まっている。編者の岩田先生は,臨床感染症学にかけては,わが国でその完成度の高さを誇るべきお一人である。その彼が新進気鋭の若手執筆者たちを束ねて本書を結実させた。

 中身の重厚さに対抗して,面白く読みやすいように工夫されている。まずQ&A形式が面白い。われわれ医師はとりわけ試験漬け人生を経てきているので,この形式には馴染みがわく。臨床現場でよく疑問になりそうなQを繰り出し,出来る限りエビデンスに基づいたAをひねり出している。「よくわからない」を含めて答えは簡潔明瞭。それぞれのQ&Aは難易度に従って“A”か“B”,面白い逸話などは“C”に含めてランク付けされていて親切である。ほとんど文脈がないのをよいことに,読者の興味と疑問の赴くままにどこから読んでもよい。また巻末の索引が丁寧なので,そこから逆引きして,頭に浮かぶ疑問に関連したQ&Aに結構行き着けると思う。

 本書は臨床感染症学の,概ね欧米中心のグローバルスタンダードの高みを呈示している。なかなか先端的で読み応えがある一方,難解な箇所も少なくない。大雑把に,臨床感染症学を初期研修医向け,後期研修医向け,さらなる専門分化の程度によって「初期」「後期」「特殊」の3つに分けてみるならば,本書は初期をほどほどにすませて,後期・特殊により重点をおいている。エビデンスの蓄積とともに,グローバルスタンダードが急速に成長し膨張しつつある現状が読み取れる。HIV,移植に関する感染症,熱帯感染症などの特殊専門分野で示されるように,もはや臨床感染症学は一筋縄ではいかなくなりつつある。

 日本の臨床感染症学はひところに比べれば確かに進歩してきたといえるものの,もともとかなり出遅れた上に,グローバルスタンダードの膨張に比べるとその加速レベルはかなり遅い。このようなときに,時機を得た本書が感染症医とそれをめざす医学徒にとって必読の書となることは必然といえるが,感染症診療に携わり抗菌薬を処方する機会のあるすべての臨床医に,一度手にとって読んでみることを薦めたい気持ちになる。読みの深さや理解の程度を問題にする前に,むしろグローバルスタンダードとその膨張速度を感じとってもらいたいのである。熟読して山頂に立てるならばもちろん文句なしだが,麓から眺めて頂の高さや山容を感じとるだけでも十分意義がある。ただしこの際大事なことは,頭で理解してよしとするレベルよりも,臨床の場で実践すべきかどうか・実践できるかどうかのレベルで感じとってもらいたい。

 その上で,さらに,後期・特殊の山の高嶺を支える初期臨床感染症学の逞しい裾野の広がりにも思いを馳せて,翻ってわが国の一般的臨床現場における平均的感染症診療の現状を今一度振り返ってみようではないか。もちろん,断るまでもなく,欧米vs.アジア・日本の臨床感染症学の中身が全く同じになればよいという単純なことでもない。

A5変型・頁590 定価5,250円(税5%込)MEDSI
http://www.medsi.co.jp/

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