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第2876号 2010年4月19日


教科書から学ぶ精神科看護


質問に答える演者ら
 日本精神科看護技術協会による「系統看護学講座『精神看護の基礎』『精神看護の展開』を学ぶ――精神科臨床と教育の手がかりとしての教科書」が,3月7日,日赤看護大広尾ホール(東京都渋谷区)にて開催された。定員300名のところ全国から約350名が来場。満員の会場を熱気が包んだ。

 まず2冊の代表著者である武井麻子氏(日赤看護大)が,患者,家族,看護師それぞれの「ナラティヴ」を紡ぎ出すことを目的に教科書を編纂したと語った。氏は,急性期治療に傾きがちな医療の現場においては,感情を核とした患者とのかかわりが大切であると主張。ただし,患者への共感を強調しすぎることは看護師の「共感疲労」を惹起する可能性があるとし,あくまでも等身大の自分らしく,患者のそばにいることが大切であるとした。

 続いて,執筆者の1人である小宮敬子氏(日赤看護大)は,患者との関係評価のためにプロセスレコードを利用して学習者の気付きを促すことや,精神科看護においても身体のケアは重要視されるべきことなどを『精神看護の展開』からピックアップして述べ,精神疾患からの回復が可能な社会をめざす教育の一助として教科書を活用してほしいと語った。同じく執筆者である末安民生氏(慶大)は,社会における精神科医療のあり方を教える重要性について発言。貧困など発症リスクになりうる環境から患者を救い,患者と情報を共有して回復のための共通基盤を築いていくためにも,精神障害者の権利を保障したり,一方で一時的な制限を加えたりする法制度の知識を備えておく必要があると述べた。

 末安氏と式守晴子氏(静岡県立大)の司会による質疑応答では,武井氏・小宮氏のほか5名の執筆者が登壇。「プロセスレコードの内容で学生を評価してよいか?」という質問には,「評価の道具にするのではなく,記録を見て感じた学生個々に対する印象を教育に生かしていくことが大切。学生は正答を求めることにとらわれているが,まずは『腑に落ちる』ことを重視して指導すべき」と回答がなされた。臨床教育に携わる看護師からの「共感疲労に陥った看護師への対応は?」との問いには,「ケアの現場には必ず矛盾や利害の対立はあり,その際患者に対して『看護師としてふさわしくない』思いが生じることもありうるもの。それがすなわち自己否定につながらないよう,本音で語ってよい場所を作ることも必要。患者と看護師の尊厳を共に大切にしてこそ,看護が成り立つ」との発言があった。