医学書院

検索
HOME週刊医学界新聞 > 第2817号 2009年02月09日

第2817号 2009年2月9日


MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


精神科の薬がわかる本

姫井 昭男 著

《評 者》今井 必生(神戸市立医療センター中央市民病院 精神科レジデント)

「やさしく」「わかりやすく」にかける著者の情熱

 精神科の薬の本で,これほど目に優しく,読みやすいものは見たことがありません。

 それぞれのページにはゆったりとスペースがとられており,文字も程よく大きく,権威的な威圧感がありません。随所にイラストも取り入れられています。文字を読むのに疲れるころにイラストが現れるので,頭を休めながら読み進めることができます。著者がやや高度と考えた項目(例えば薬理的作用機序など)は独立したページに小さなフォントで説明されており,大雑把に読むときには簡単にとばし読みすることができるし,逆に,詳しい説明を読みたいときにはすぐにそのページを参照することができます。

 しかし,読みやすさという点で本書が優れていると感じるのは,レイアウトだけではありません。

 精神科の薬物の書物といえば,権威ある医師が独断により執筆しているものがほとんどです。そういった本には情報がたくさん詰め込まれていて,私などは「これ一冊読めるかな」と臆してしまうことが多々あります。また,そうした本の文章は,小説のようにリラックスして読むような雰囲気とは違い,緊張感を感じさせる博物館のような雰囲気を持っているように感じてしまうこともありました。しかし本書は,著者の周りで働いている医師や精神科ソーシャルワーカーの目を通して文面が練り直されているためでしょう,医師の視点だけではつくりあげられなかったであろう視点やポイント,そして「読む人にわかるように書く」という配慮にあふれています。文体も「です,ます調」で表現され,自分が語る早さで情報をかみしめることができます。勤務が終わってから本書を読み進めましたが,寝る前にいつの間にか読了していました。本書はそのような本です。

 前書きには,読者対象として「当事者」も意識されていることが書かれていますが,当事者も含め,多くの人に読みやすい本にしようとする今回の試みは成功しているように思います。対象となる読者層も広がるのではないでしょうか。私のような研修医の立場からしても,高度な知識を一般の方にいかにわかりやすく説明するかを知る術としても,本書の文章は参考になるところが多いと感じました。

 では,自然に読者を引き込む本書は,どのような内容を伝えているのでしょうか。実は意外に幅広い内容を網羅しています。イオンチャンネルレベルでの薬剤の働きから,看護上での注意など,なぜこのゆとりをもった体裁でここまで取り入れることができるのかと驚きました。

 しかしここまでくると,読み手として本書に対して「もっとこうしてほしい」という欲も出てきます。

 1つは,「著者の経験」としての話題と,「広く受け入れられたスタンダードな知識」を明確に区別してほしいということがあります。本書は著者の豊富な経験が盛り込まれている点が特徴の一つなのですが,それが著者の経験なのか,一般的知識なのか,入門者にとっては区別しづらい部分がありました。その意味で,データが存在する部分については巻末に参考文献を掲載してもらえたほうがありがたいと思います。また,より深く勉強したい人のための書籍などの指針もいただけたらと感じました。

 2つ目に,細かい点になりますが,抗不安薬や気分安定薬がそれぞれ個別の章で説明されるのではなく,「その他の精神病治療薬」のなかにこぢんまりと付け加えられている感じがしました。特に気分安定薬などは,最近の双極性障害の概念の広がりを考えると重要な薬剤になってくるので,もう少しボリュームを割いて解説してほしかったです。

 いずれにしても,本書は難解と思われている精神科治療薬を,“広く,深く,優しく”,紹介してくれる優れた水先案内人です。今後,本書が版を重ね,入門者をさらに精神科の森の奥深くへと誘うよきガイドとなることを期待しています。

A5・頁208 定価2,100円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00763-4


肝疾患レジデントマニュアル 第2版

柴田 実,八橋 弘,石川 哲也 編

《評 者》井廻 道夫(昭和大教授・消化器内科学)

肝疾患診療での必要十分な情報をコンパクトに提供

 このマニュアルは研修医,レジデントの教育に病院で直接携わってこられた若手,中堅の肝臓専門医,指導医の執筆による肝疾患診療マニュアルである。初版は2004年で多くの医師に利用されたと聞くが,この4年間の肝疾患診療の進歩をもとに改訂された最新の肝疾患診療マニュアルといえる。

 情報過多のこの時代に,多忙な医師に求められる本はたくさんの情報の詰まっている厚い本ではなく,必要かつ十分な内容を一読できる,コンパクトな本である。ただ,あまりにも簡略化を図るため,十分な内容が含まれない本も最近多々認められるのは残念である。

 本マニュアルは肝疾患患者の診療に豊富な経験を有する肝臓専門医,指導医の執筆によるマニュアル本だけに,必要かつ十分な内容は担保されている。また,肝疾患診療におけるちょっとしたコツもメモとして随所に書かれ,研修医,レジデントには大いに参考になることであろう。もう少し簡略に記載したほうがよいのではと思う箇所もあるが,内容を十分にするためにやむを得なかったのかもしれない。

 最近の医療の進歩はすさまじく,このマニュアルではどの程度までこれらをカバーできているか興味があったが,さすがこの執筆者の面々ではこの点はまったく問題なかった。さらに,「役に立つサイトの紹介」を参考に,このマニュアル以降の新しい治療法の導入あるいは診療指針の変更もフォロー可能であるし,また,詳細な情報を得ることもでき,このマニュアルの出版以降についても配慮してある。

 上記のように,この肝疾患レジデントマニュアルは肝疾患患者を診療する上での必要かつ十分な情報をコンパクトに提供しており,肝疾患患者の診療において研修医,レジデントには非常に有用と考える。さらに,日常診療で肝疾患患者を診ておられる先生にも十分にお役に立てるコンパクトな本であると考える。

B6変・頁456 定価4,725円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00640-8


ティアニー先生の診断入門

ローレンス・ティアニー,松村 正巳 著

《評 者》亀井 徹正(茅ヶ崎徳洲会総合病院・院長)

鑑別診断の森の中で迷子にならないために

 『ティアニー先生の診断入門』は卓越した臨床家であるローレンス・ティアニー先生が松村正巳先生と共に日本の研修医を対象にして書かれた診断学の入門書である。しかし,本書は通常の入門書とは一味もふた味も違い,ティアニー先生ご自身の診断のプロセスを解説した極めて貴重な教科書となっている。

 ティアニー先生に接した人は皆その膨大な知識量と分析力に圧倒されるが,その診断の進め方は極めてオーソドックスであり,病歴から鑑別診断をもれなく挙げ,身体所見で絞り込み,必要な検査にて確定診断に持ち込むものである。

 しかし,臨床の現場では皆がティアニー先生のように鑑別診断できるわけではない。鑑別診断の森の中で迷子にならないためには,基本に忠実である大切さが繰り返し強調され,また,診断能力を磨く上での秘訣の一端がクリニカルパールとして本書のあちこちにちりばめられている。

 第一部はティアニー先生ご自身の診断法が紹介されており,診断学を学ぶ人に対して多くの示唆に富む基本的な考え方,アプローチの仕方が示されている。

 第二部は松村先生の経験された症例をティアニー先生と共に,あるいはティアニー先生の診断の進め方にならって松村先生ご自身が,その診断のプロセスを初心者にも理解しやすいように提示している。提示された12症例は,ありふれた疾患からまれな疾患まで多彩であるが,鑑別診断の挙げ方,それぞれの絞り込み方をティアニー先生のやり方で示し,診断学の奥行きの深さ,醍醐味を余すところなく伝えてくれる。

 感染症コンサルタントの青木眞先生のご紹介がきっかけで,ティアニー先生には1996年から毎年のように私どもの病院を訪れていただき,短期間ではあるが研修医の指導に当たっていただいている。この期間中は,先生のカンファレンスに参加するために多くの院外の研修医や医学生が当院を訪れる。参加者皆が診断学の面白さ,奥行きの深さを感じ取り,その高みに到達する困難さを理解しつつも大きな目標を見つけて帰るようである。

 本書は初期研修医ばかりでなく,特に後期研修医や研修医の指導に当たっている指導医の先生方にとっても大変に参考になる教科書であり,松村先生のお力により,この素晴らしい本を日本語で読めることを感謝したい。

A5・頁152 定価3,150円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00698-9


一目でわかる心血管系 第2版
The Cardiovascular System at a Glance

Philip I. Aaronson, Jeremy P. T. Ward 執筆
村松 準 監訳

《評 者》和泉 徹(北里大教授・循環器内科学)

本文(図版)が4色に彩られさらに見やすくわかりやすく

 このたび,メディカル・サイエンス・インターナショナル社から『一目でわかる心血管系』The Cardiovascular System at a Glanceの改訂版が発刊された。本文が4色に彩られ,15点の図表も改訂された新しい装いである。病歴聴取と診察(第30章)と薬物療法(第34章)がさらに加えられ,魅力的な54個のテーマで引き締まった内容に満ちている。これはBlackwell Publishing社から出された“at a glance”シリーズ27作の一つで,初版は2000年に出されている。

 現在の循環器診療においても,一見してわかるようにアナログ化された医学情報は大いに役立つ。もちろんその背景には細部も漏らさぬ緻密なデジタル的考察が要求されることは言うまでもない。今日,患者さんは高い臨床成績と短い入院期間,それに行き届いたコスト感覚やリスク管理を常に求めている。医療サイドは,病歴聴取や理学的診察と同時に,これらの諸点を勘案したバランスよい診療シナリオを即座に選択せねばならない。この高いニーズに日常的に応えるには,緻密な医療情報をアナログ化し,いつでも駆使できるよう備えることが上策であろう。たゆまぬ基礎的修練と優れた標準テキストが必須と強調されるゆえんでもある。

 今回,村松準博士によって監訳された『一目でわかる心血管系』改訂版,The Cardiovascular System at a Glance(Philip I. Aaronson & Jeremy P. T. Ward著)はこの目的にうまくかなっている。身近なテキストとして医学生やコメディカルのみならず,レジデント,スタッフにも薦めたい。常備したい優れものである。通読するもよし,参照するもよし,またこの情報をもとに深く検索するもよし,である。心憎いのは,54章に及ぶ網羅的な記述に加えて,さらに症例検討問題が盛られていることである。これも本著の特徴の一つであろう。8例にわたる症例を提示し,本書流の理解と回答を詳述している。目の覚めるカンファレンスに参加したと同じ思いが残る。

A4変・頁144 定価4,620円(税5%込)MEDSI
http://www.medsi.co.jp/


画像診断を学ぼう
単純X線写真とCTの基本

江原 茂 監訳

《評 者》南 学(筑波大教授・放射線医学)

医学生の入門書,初期研修医のバイブルに

 医学生や初期研修医に画像診断を修得してもらうためにはどのような教科書がよいか? 私自身が考えていた教科書の基準は,(1)画像診断の基本である単純写真,特に胸部・腹部・骨単純写真の基本的な読影法を中心に書いてあること,(2)救急やICU管理で必要なカテーテル,チューブ位置などの記載があること,(3)単独執筆であること,(4)何とか1か月で読破できる分量であること(すなわち400頁以下),(5)価格が適切であること,である。そのような考えでこれまで探してきたが,なかなかよいものが見つからなかった。医学生の実習ではFelsonのprogrammed text(胸部単純写真)を使用してきたものの他の分野では同様の本はなく,Squireは非常に素晴らしい本ではあるが医学生にとっては少し分厚く高価である。

 そんな折,本書を邦訳すべきかどうかという打診をMEDSI社からいただき,少し目を通したところ,まさしく本書は以上の条件にぴったりの本であることを直感した。聞いてみると,この本は米国放射線専門医の資格もお持ちの岩手医大の江原教授が米国放射線学会の書籍展示で見つけてきたばかりの本であり,かつ江原教授も同様の悩みをずっとお持ちであったとのこと。さらに本書の翻訳にあたっては,多数の訳者による翻訳ではなく岩手医大の若手の菅原先生お一人が担当され,江原教授ご自身が監訳されている。そのため出来上がった本は非常に読みやすく,ごくわずかな誤植はあるものの(一部は原著の誤植と思われる),素晴らしい出来映えである。

 原著はAlbert Einstein Medical Center放射線科のHerring教授(残念ながら個人的に面識はない)が医学生・研修医のために単独で書かれたものである。内容は25章からなり,単純写真の基本に始まり,胸部単純写真の基本所見(心拡大,びまん性病変,肺野の透過性低下,無気肺,肺炎,気胸などのair leak,心疾患,肺水腫)を述べた後,カテーテル・チューブの同定および縦隔・肺腫瘍について記載されている。さらに腹部単純写真(消化管閉塞,腸管外ガス,石灰化),骨単純写真(骨折・脱臼,関節炎,脊椎病変)についても書かれている。その他,胸部・腹部・頭部CTの基本と消化管バリウム検査に関してもそれぞれ1章が割かれている。記載は箇条書きが中心で非常にわかりやすく(時にやや冗長ではあるが医学生が独学するにはこれくらいがちょうどよい),ふんだんに表や注意マークが使われ,各章の最後にはポイントがまとめられている。画像は鮮明で,矢印などの位置も適切であり,画像の解説もわかりやすい。このように本書は入門書として必要十分な内容でありながら頁数は本文のみで292頁と最初に述べた私自身の条件にもぴったりである。

 本書は今後,医学生にとっての画像診断の入門書となるのみならず,初期研修医にとってのバイブルになると確信する(特に国家試験終了後,研修が始まる前に読んでいただきたい)。本書を読んで画像診断の基本を身につけた先生が増えると同時に,その結果,各診療科の先生方がご自身で単純写真などを読影せざるを得ない状況が多いなか,患者さんのマネジメントの向上に本書が役立つことを強く期待したい(もちろん放射線診断に興味を持ってローテートしてくれる研修医が増えることも望みつつ)。

A4変・頁320 定価7,140円(税5%込)MEDSI
http://www.medsi.co.jp/

関連書
    関連書はありません