問題解決の最短距離を導く1冊
書評者:宜保 行雄(宜保消化器内科クリニック院長・内科学)
日本の誇る良書である。本書の第1版も肝疾患の『ワシントンマニュアル』のような必要十分条件を満たしており,すばらしい内容であったがさらにその上を行く内容になっている。
ちなみに第1版は台湾で中国語版が出版され,彼らの白衣のポケットに入り日々の診療に大いに役立っているのである。
今回紹...
問題解決の最短距離を導く1冊
書評者:宜保 行雄(宜保消化器内科クリニック院長・内科学)
日本の誇る良書である。本書の第1版も肝疾患の『ワシントンマニュアル』のような必要十分条件を満たしており,すばらしい内容であったがさらにその上を行く内容になっている。
ちなみに第1版は台湾で中国語版が出版され,彼らの白衣のポケットに入り日々の診療に大いに役立っているのである。
今回紹介する第2版は,その最新の内容もさることながら,3人の編集者がよくもこのような強力な執筆者を集めて第1版を凌駕する充実した内容にしたものだと感心せざるを得ない。レジデントのみならず,専門医にとっても概念,診断,治療,予後など完璧に網羅されている。
本書は千数百人の肝癌患者の臨終に立ち会った医師によるターミナル・ケアとみとり,レジデントの心得より始まる。そして,365日間肝疾患患者と共に闘ってきた医師らによる面接と身体診察のこつ,救急初期診療,検査とIVR,各論と続く。
特に感銘を受けたのが,慢性肝疾患の2008年の最新の治療ガイドラインがすでに詳しく記載されていることである。時代錯誤の治療をしないで済むし,12週ルール,80%ルールのような抗ウイルス療法の治療成績を向上させるこつまでそっと教えてくれている。
また,肝癌の最新の治療の一つであるRFAに関しても,明日にも応用が利くようにまず肝生検や腫瘍生検したのが応用できるようになっている。本書の目次通りに技術を習得すればRFA可能な専門医になれる扉を自ら開けるのである。
診療中しばしば遭遇する肝炎ウイルスの針刺し事故に関しても最新の予防処置,治療などの重要な点が網羅されている。自分のみならず,他の医療従事者を守る答えが即座に出せるようになっている。
さらなる知識が必要なら「役に立つサイトの紹介」より,肝炎,劇症肝炎から肝移植まで国内外の主なサイトに即座にアクセスできるようになっている。痒いところに手が届く問題解決の最短距離を導いてくれる多忙なレジデントの福音となるよう構成されている。肝移植に関しても最新の情報が生々しく再現されており,いながらにしてICや移植前後の抗ウイルス療法など肝移植の経験ができるようになっている。
memo欄も目からうろこの斬新で興味深い臨床上有用な内容が満載されており,仕事に疲れたとき目を通すだけでも笑えて眠気覚ましになること請け合いである。
レジデントのみならず,専門医にもお薦めしたい。