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第2802号 2008年10月20日


MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


コーチングで保健指導が変わる!

柳澤 厚生 編著
鱸 伸子,田中 晶子,磯 さやか 著

《評 者》飯島 美世子(職域保健・産業看護塾主宰)

日ごろの保健指導のあり方を省みる書

 2008年4月から「特定健診・特定保健指導」が始まりました。早いところでは,特定健診の結果を階層化して特定保健指導の取り組みが始まりつつありますが,第一線の健診機関の窓口には取り扱い方がまだ行き渡らず,戸惑いがあるようです。一方では保健指導の研修も花盛りですから,まだまだ準備段階にあり,現場には不安や戸惑いがあるということでしょうか。

 保健指導については,従来から企業や健保組合に所属する保健師や看護師等は,カウンセリング技法や行動科学理論を学び,個別健康教育の手法を取り入れるなどして,対象者に適した保健指導技術を模索しながら健康診断時に,あるいは健診後に保健指導を実施してきました。そして,最近は,コーチングの技法を取り入れることが徐々に浸透し始めています。元来,保健指導は,対象者が将来にわたって健康的な生活を維持できるよう,対象者に必要な行動変容に関する情報を提示し,生活習慣を改善するための行動目標を設定するとともに,自らが実践できるよう支援することにあります。したがって,このたびの特定健診保健指導事業が始まってもなんら従来と変わることはないのですが,「標準的な健診・保健指導プログラム」により標準的な面接時間が示された上,具体的な成果を出すことが強く求められていますので,その対応に右往左往することになったようです。

 本書は,日本におけるコーチングの第一人者であり,新しいコミュニケーション技術としてのコーチングの医療や教育現場への導入に努めてこられた柳澤厚生先生らによってまとめられました。コーチングの技法の修得は,保健指導者の基本的なコミュニケーション能力を高め,結果を出せる保健指導の実現につながるとの意図の下に構築されています。

 著者らはコーチングの定義を,「相手の能力を引き出すコミュニケーション技術」から「クライアントが自ら考え,決断し,行動を起こすコミュニケーション技術」に大きく転換させ,さらに独自の「5つの基本ステップ」を提唱して,保健指導にコーチング方式を導入しやすくしています。また,全篇にわたって,具体的な保健指導場面の会話の事例がふんだんに紹介されていますので,今まで自分が行っていた保健指導をあらためて意識させられることになります。さらに,実際の保健指導の面談場面においてコーチング技法が容易に導入できるよう,「5つの基本ステップ」を使った個人面談記録フォームとその記入例が紹介されていますので,明日からの現場で早速,活かすことができるでしょう。

 保健指導の経験の浅い医療職のみならず,熟練者にとっても日ごろの保健指導のあり方を省みる図書として,ぜひ,ご一読をお勧めいたします。

A5・頁132 定価1,890円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00612-5

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