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第2774号 2008年3月24日


がん看護のパワーアップをはかる
第22回日本がん看護学会の話題から


 第22回日本がん看護学会が2月9-10日,名古屋国際会議場で開催された(愛知県がんセンター中央病院・兵藤千草集会長)。両日ともあいにくの降雪となったが,開催テーマ「がん看護のパワーアップをはかる」の文字どおり,全国各地でがんに携わる看護師による力強い講演・示説が数多く展開され,がん看護の質の向上,層の厚さを感じさせる集会となった。


 昨年,施行された「がん対策基本法」ではがん医療の均てん化がうたわれ,第14条では特に,「専門的な知識及び技能を有する医療従事者の育成」について盛り込まれた。日々,治療法が進歩するがん看護の現場は最前線でケアを提供する多くのジェネラリストと,そのサポート・教育のため横断的に活動するスペシャリストによって支えられている。

 より一層の均てん化を推し進めるうえで,ひとりでも多くのスペシャリストの育成,そしてジェネラリストの継続教育は重要な課題だ。シンポジウム「がん看護におけるジェネラリストの人材育成」(座長=神戸市看護大・鈴木志津枝氏,オフィス梅田・梅田恵氏)では,この課題について4名のシンポジストが論考を行った。

 均てん化が題目となる一方で,教育資源が大都市圏に集約される傾向は否めず,地理的な要因がスペシャリスト育成の障害となっている。

 沖縄県内に4か所あるがん診療連携拠点病院のひとつである那覇市立病院では,出張扱いで認定看護師研修に職員を送り出し続けている。同院副院長・看護部長の中森えり氏は「知識と実践を結びつけるため,ジェネラリストとスペシャリストとの協働は不可欠。より有機的な活動のために,各認定看護領域について複数名の配置をめざしたい」とし,今春の独立行政法人化後はこれまで以上に人事制度を整えながら,可能性を開くさまざまなキャリアパスを明示していきたいと述べた。

 続いて,足利幸乃氏(日看協神戸研修センター)は看護師の教育研修に携わる立場から,ジェネラリストのコンピテンシーが抽象的となっている現状があると指摘。コアとなる知識や技術をコンセンサスを得たうえで明確化し,適切で客観的な個別評価につなげていくことが必要と述べた。

ジェネラリストの人材育成

 コンピテンシーや教育カリキュラムの明確化が求められる一方,ジェネラリストは経験がそれぞれ異なるため,こうした設定がむずかしい側面もある。では大前提として,がん臨床に携わるすべての看護師に求められる資質とはどのようなものだろうか。

 がん看護専門看護師の近藤まゆみ氏(北里大病院)は,患者・家族の苦悩に向き合うために患者本人と「死」を話題にできることを挙げ,みずからも痛み,気づかい,ともに揺れることがケアリングの心であり,この涵養が求められ,同時にこれはすべての看護者に必要な資質でもあるとした。

 近藤氏はスペシャリストの役割にも触れ,「ジェネラリストの体験を紐解き,言語化し,意味づけるという緻密な作業に惜しみなくかかわっていきたい」とした。

スペシャリストの役割とは――教育・サポート・連携

 スペシャリストによるジェネラリスト支援については,専門病院に勤めるがん専門看護師である遠藤久美氏(静岡県立静岡がんセンター)も言及し,「専門病院のジェネラリストは24時間,最前線でがん看護に関する技術・知識を得て,日々大きな力を蓄えている。近い将来(ジェネラリストを極めた)ジェネラリストのなかのスペシャリストが出てくるだろう」と述べ,そのような看護師に対する教育や連携方法の創出が,スペシャリストの次の課題になってくると指摘した。

 高度化を続ける医療現場のさまざまな領域で活躍するジェネラリストの存在について,前出の近藤氏は「救命救急センターで,社会的な問題をはらむ患者も多い母性・小児の臨床現場で,看護師は真摯に取り組んでいる。混沌としているジェネラリストの今後の道筋を看護全体で考えるべきときにきているのではないか」とも指摘した。

 現在,がん看護専門看護師は約100名,がん領域の認定看護師は4分野約1000名が誕生し,近く放射線療法認定看護師の養成も開始される予定だ。

 しかし,この数はまだ十分とはいえない。管理者や現任教育に携わる関係者には,看護師一人ひとりのキャリア形成や,さまざまなキャリアを持つ看護師間の効果的な連携促進といった課題への創意工夫が求められている。

■『がん看護コアカリキュラム』の意義・活用方法

 日本がん看護学会の創立20周年記念事業として米国がん看護学会による“Core Curriculum for Oncology Nursing”を翻訳した『がん看護コアカリキュラム』(以下,『コアカリ』)が昨年,出版された。教育講演「ジェネラリスト育成におけるがん看護コアカリキュラムの意義・活用方法」では,昨年まで学会理事長を務めた小島操子氏(聖隷クリストファー大)が講演を行った。

 小島氏は現状の課題として,がん看護の方法・質・レベルが地域や施設,個人によって差異がある点を指摘。この原因として「教育と実践がうまく結びついていない」「実践に役立つマニュアルがない」ことを挙げた。

 この課題を背景に,『コアカリ』翻訳出版の経緯を「がん看護の均てん化をめざして,がん看護に携わるすべての看護師ががん患者・家族に対し等しく水準の高い標準的な看護を提供するために企画した」と説明した。

 米国のがん看護師認定試験のブループリントに準拠して編集された本書は,各章が系統立てられた内容で構成され,エビデンスに基づいたがん看護過程を展開するために必携の書といえる。

 小島氏は「自己研鑽,病棟などのグループ学習,その他の教育・研修などさまざまな場面で本書を活用してほしい」とし,将来的には“日本版コアカリ”の作成をめざしたいと述べ,講演を締めくくった。

 わが国におけるがん臨床の知が集約された“日本版コアカリ”完成の日を心待ちにしたい。