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第2774号 2008年3月24日


論理的な思考に基づくシステムを
第30回日本POS医療学会の話題から


 第30回日本POS医療学会が3月8-9日,岩﨑榮会長(NPO法人卒後臨床研修評価機構)のもと,東京都豊島区の上原記念ホールにて開催された。今回のメインテーマは,「POSを究める――医療の質向上と医療安全を目指す」。中村定敏氏(小倉第一病院)による記念講演,POS医療認定士のためのワークショップなどのほか,関連学会との情報共有を図るために日本クリニカルパス学会,日本診療録管理学会からも演者を迎えた。また,会場では第1回(1979年)から29回までの日野原重明氏(聖路加国際病院)による会頭講演をすべて収録した特別記念誌が配布された。本紙では,日野原氏による第30回会頭講演のもようを報告する。


 「よい医師は,よい足趾(good tracks)を残しており,また,よい足趾を見れば,医師のよさがおのずとわかる」(J.W.Hurst)――。米国のL.Weed, J.W.Hurstらによって開発されたPOS(Problem Oriented System:問題志向型システム)。その理論と方法をわが国に初めて紹介したのが,日野原氏の著書『POS――医療と医学教育の革新のための新しいシステム』(1973年,医学書院)である。この通称“赤本”は,診療記録やチーム医療,教育のあり方にいまなお大きな影響を与えている。

 会頭講演「POSは何処にいくか――30年のPOS医療学会の歴史から将来を展望する」にちなみ,ゴーギャンの大作『われわれはどこから来たのか,われわれは何者か,われわれはどこへ行くのか』(ボストン美術館所蔵)のエピソードを披露した氏は,POSの歴史を概説したのち,医療の将来を展望した。

“深い確信”を持つ行動

 講演の中で何度も重要性を強調したのは,ルーティンで行っている医療行為・業務の刷新だ。「自分の仕事の中にあるシステムの価値について,深い確信を持って行動しなさい」という哲学者・プラトンの言葉を紐解きながら,「つまりは習慣的に行っているだけのことは改めなければならない」と指摘した。

 特に看護師に対しては,保助看法の改正による医療行為の拡大を働きかけるなど期待が大きいぶん,手厳しい。例えば,骨粗しょう症に関する研究論文をもとに“安静の害”を説き,「安静が第一といったこれまでの医療は反省しなければならない」という。または,平熱には個人差があることから,「発熱=38℃以上」といった認識を改めなければならないとした。そのためにも,「ふだんの体温や血圧などは患者さんに申告してもらってはどうか」と,患者参与を提案した。

 最後にもう一度,POSは論理的な思考に基づいたシステムであることを強調し,「このPOSの原則を踏まえ,新しい試みを院内で実験し,学会の場で協議してほしい」と訴え,第30回会頭講演を閉じた。