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第2750号 2007年10月1日


在宅医療連合大会2007開催

すべての「自宅に帰りたい患者」の希望をかなえるために


 日本在宅医療研究会,日本在宅静脈経腸栄養研究会,HIT(Home Infusion Therapy)研究会の3研究会合同による「在宅医療連合大会2007」がさる9月7-9日,東京臨海副都心の東京ファッションタウンにおいて開催された。

 病院から在宅への大きな流れのなか,外来での抗がん剤治療,在宅での栄養管理や緩和ケアの提供体制,そしてそれらを支える地域内での連携体制の構築や,在宅療養支援診療所のあり方など,患者に安心して在宅に移行してもらうための課題は山積している。本大会では,法整備を受け急速に枠組みづくりが進むがんばかりでなく,筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経難病を含めた,すべての「自宅に帰りたい患者」の希望をかなえるための方策が,多職種によりさまざまな方向から議論された。


◆在宅医療を推進するために

 現在,国内の診療所の約1割にあたる1万施設が在宅療養支援診療所として申請を行っている。在宅での看取りに対し1万点という高額の診療報酬が申請の呼び水となり,実際には死亡診断書を書くだけとなっている看取り医も少なくない。一方,申請の要件となっている24時間の往診体制による負担は大変なものがあり,地域内での連携体制の構築が不可欠だ。

 田城孝雄氏(順大)は在宅医療を提供する診療所を「在宅医療専門診療所型」「病院併設型」「特定施設併設型」などに5分類して現状を分析。将来的には,グループプラクティスによる在宅療養拠点診療所が地域の複数の個人診療所(ソロプラクティス)を支えるモデルが理想形であるとした。

 続いて,グループプラクティスによる在宅医療を実践するあおぞら診療所の川越正平氏は,地域での多様な連携体制の構築について提言を行った。同診療所は5つの24時間体制の訪問看護ステーション(以下,ST)と連携している。各ST担当看護師の配置や毎月の合同カンファレンスを通じ,密に情報共有を行っている。訪問看護師の移動ロスを最小限にするよう,各ST近隣の患者を集中的に依頼する配慮も行う。

 経営的に苦しいSTも多く,その施設数は頭打ちとなっている。川越氏はこの質の問題にも触れ,「24時間365日の在宅医療を実現するためには,介護報酬上の評価を得ながら,高い専門性を持つ訪問看護師5-10名で構成される拠点訪問看護ステーションも必要となる」と指摘した。

 また同診療所では半年前から,地域のがん診療連携拠点病院内の緩和ケアチームの回診に毎週同行する試みを開始している。この効用として「退院前の早い時期から在宅療養に関する具体的なアドバイスを提供できること」などを挙げ,在宅への移行を見越し,早期から勤務医と開業医が情報を共有することの重要性を強調した。

 訪問看護の経験者を退院調整担当看護師として病棟配置し,地域連携に成功している施設もある。田城氏は,地域の医師が病棟に入り,積極的なコンサルトを行う川越氏の取り組みを,この“ドクター版”といえると評価した。

 いまだ在宅医の力量を不安視する勤務医も少なくない。相互理解のもと,地域の実情に応じた切れ目のない在宅医療体制の構築・推進が求められる。

◆神経難病患者の在宅での看取り

 北里大では毎年20例程度のALS患者を院内で看取る。同大神経内科の荻野美恵子氏は,在宅療養支援診療所が制度化されたことをきっかけに昨年4月から取り組みを始めたALS患者の在宅看取りについて報告を行った。

 対象は「十分なインフォームドコンセントを行い,延命治療を希望しないと自己決定した患者」「本人も介護者も終末期を在宅で過ごすことを希望している患者」などとし,大前提としてオピオイド剤の導入により痛みのコントロールが可能であることを挙げた。

 これまで経験した4例(うち1例は院内で急変により断念)を紹介し,神経内科医と在宅往診医の連携によりALSの在宅移行は可能とした。

 そのうえで,退院後の在宅医や訪問看護師との連携体制構築について論考。当初,在宅医がしり込みしたケースでは,緊急時のファーストコールを荻野氏とすることで,最終的に退院が可能となった。非専門の在宅医が難病患者の看取りを行うための課題が提示された。

 また,姫路中央病院の看護師,池田やよい氏は同院が取り組む終末期のALS患者に対するオピオイド剤使用について数例の症例報告を行った。フロアからは「呼吸抑制をきたすオピオイド剤を神経内科領域で使用するのは難しく,使用経験がある施設もまだ多くない」と同院の患者QOLを尊重した取り組みを評価する声が聞かれた。