医学界新聞

 

MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


JIMの連載「外来で見落とした症例」が1冊の本になった!!

《Meet the Master Clinician》
見逃し症例から学ぶ日常診療のピットフォール
生坂政臣 著

《書 評》中村明澄(筑波大学附属病院 総合医コース・シニアレジデント)

 外来患者さんの主訴から診断にいたるまでの思考過程を根拠ある資料をもとにしっかり学習することで,患者さんに自信をもって説明でき,治療を選択していけるようになる本だと思います。

リアルな症例をじっくり考えられる構成

 外来でよく出会う13の主訴と超音波所見について全57症例から学ぶ形式になっています。症例はすべて右ページに掲載され,ページをめくってはじめて解説が読める構成になっているので,症例に集中してじっくり考えることができます。
 右ページは,患者さんをイメージできる1文(例えば「床屋で髭剃り中に失神した老人」)に加えて,現病歴と簡単な身体所見をまとめた「症例」,「初診時診断」,「特徴的な身体所見や検査所見」の写真で構成されます。画像所見だけでない身体所見のカラー写真が臨場感を生み出してくれます。

「考え方」を学べる!クリアカットな生坂流

 ページをめくると「その後の経過」,「最終診断」,「教訓」と続き,そのあとに適宜,解説ミニレクチャーなどが掲載されます。解説には主訴から考えるべき思考過程が書かれているため,単なる鑑別診断ではなく「考え方」を学べるところが魅力的です。また,1つの主訴につき2-7症例あるので,通読すると自然と鑑別診断がイメージできるようになりますし,説明を読むことでその症例以外のcommon diseaseも自然に学習できるようになっています。
 五七五でまとめられた22のピットフォールや,テンポのよいクリアカットな説明は,生坂先生のお声が聞こえてくるようで,飽きずに一気に読み通すことができ,明日からの臨床の現場ですぐに活用できます。また,ところどころで出てくる「マスターアドバイス」には,外来で臨床医としての基本がコメントされており,「こころ」についても学ぶことができます。

かゆいところに手が届く

 「あとで調べよう」と思っても,忙しい病棟業務に追われてつい忘れてしまいがちになってしまうことや,後輩医師に伝えたくてもすぐに資料が出てこないようなことがミニレクチャーに載っています。忙しい外来でもすぐに復習できますし,外来カンファレンスで身体所見の写真を共有したり,鑑別診断を一緒に学習しなおしたりできます。
 コンパクトながらもりだくさんな内容で,外来で手元にあると心強い1冊です!
A5・頁192 定価(本体3,700円+税)医学書院


指導医も若手医師も「米国式」の刺激で意識改革を

米国式Problem-Based Conference
問題解決,自己学習能力を高める医学教育・卒後研修ガイド
町 淳二,児島邦明 著

《書 評》安達洋祐(岐阜大教授・腫瘍総合外科学)

日本の伝統があるのに「米国式」

 何と挑発的なタイトルだろう。日本には日本の伝統があるのに「米国式」である。「Evidence-Based Medicine(EBM)」にうんざりしているのに,「Problem-Based Conference(PBC)」である。「見て学べ」「習うより慣れろ」で鍛えるべきなのに「問題解決」「自己学習」「医学教育」「卒後研修」など,タイトルを見ただけで敬遠したくなる。
 案の定,「tutorial」「BSL」「OSCE」「EBM」「PBL」と馴染みのない英語が並ぶが,写真はカンファレンスルームのありふれた光景である。「シナリオに沿って指導医が質問し,医学生や研修医が答える」と書いてあり,基本的なシナリオは,「主訴→病歴→診察→検査→診断→治療」と進行していくという。私たちがやっている日常診療の手順である。
 最初のシナリオは「55歳女性の頸部腫瘤」である。医学生や研修医が自由に病歴聴取を行うと,指導医は「現病歴→既往歴→家族歴→社会歴→服薬歴→アレルギー歴」の順に聴取することを確認し,見逃しを避けるための「Review of Systems(ROS)」を補足する。全身所見と部位別所見のあと,甲状腺腫瘤や転移リンパ節を想定した検査法に進んでいく。
 臨床判断のポイントは,「主訴から鑑別診断を考える」「常にcommon diseasesを考える」「cost-effectiveな検査を優先する」という。大学病院の臨床研修で洗脳された若い医師たちは,鑑別診断を考えずにとりあえず検査を行ない,ありふれた疾患を忘れがちである。コスト意識もない若い医師には「米国式」がよい刺激になるかもしれない。
 次は「急性腹症」であり,「消化管出血」「術後ショック」「重症多発外傷」と続く。いずれも臨場感にあふれ,迫力のある質疑応答に思わず引き込まれてしまうが,「米国式」では,「バイタルサイン,静脈確保と酸素投与,救急処置のA・B・C・D・E・F・G」を繰り返し叩き込み,救命処置を徹底的に指導しているのがすごい。これは自分の勉強にもなる本だ。

「standard」と「controversy」をしっかり区別

 治療のポイントは,「スタンダードな治療を行なう」ことだという。「米国式」に一貫しているのは,臨床試験などで検証されて推奨されている「standard」,臨床研究があるにもかかわらず「controversial」,臨床研究がないので「controversial」,この3つを区別する姿勢である。権威や経験に左右されずにエビデンスを重視する指導は見習いたい。
 最後に,実際の口述試験が紹介されている。なるほど,「米国式」では,「医学的知識,臨床上の判断力,問題点への対応能力,コミュニケーション技術,医師の責任感や倫理観」などが総合的に評価できる。巻末の「症例シナリオとteaching point一覧」も参考になり,自分も明日から後輩を集めて「米国式PBC」をやってみようという気になる。

指導医の意識改革を迫る

 著者はいう。「PBCを行なう指導医は現時点でのstandardとcontroversyを正確に教授すべきである」「指導医は『一方的に教え込む』という考えを捨て,学習意欲を向上させるような指導を行ない,自らも学習を怠ってはならない」「実践に強くpatient orientedな医療のできる医師を育成していきたい」。今,指導医の「意識改革」が迫られている。
B5・頁256 定価(本体4,000円+税)医学書院


新しいリハビリテーション医療を築き上げるバイタリティを感じる名著

FITプログラム
統合的高密度リハビリ病棟の実現に向けて
才藤栄一,園田 茂 編

《書 評》蜂須賀研二(産業医大教授・リハビリテーション医学)

 藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学講座・才藤栄一教授,藤田保健衛生大学七栗サナトリウム・園田茂病院長の編集で,医学書院より『FITプログラム-統合的高密度リハビリ病棟の実現に向けて』が出版された。
 FITとはFull-time Integrated Treatmentのことであり,日本語に訳すと“統合的高密度リハビリテーション治療”となる。この本は152頁の手頃なボリュームの読みやすい本であるが,内容は大変革新的であり,著者らの独創的で進歩的な姿勢と思想が文面から伝わってくる。
 FITプログラムそのものについては,第1章から第7章にかけて,概念・概要,ハードウエアとソフトウエア,その効果,今後の展開について解説されており,最後にFAQが掲載されている。第8章「リハビリテーション医学・医療エッセンス」以降の章では,リハビリテーション医療の本質にまで話を発展させ,著者らのリハビリテーションに対する基本的な立場や思想が提示されており,そこからFITプログラムが生まれた背景やその根底にある理論を汲み取ることができる。

独創的なリハビリテーション施設

 FITプログラムのもっとも特徴的で重要なポイントは,独創的で進歩的な訓練室一体型病棟とリハビリテーション医療システムであろう。七栗サナトリウムでは訓練室と病室が一体となり配置され,訓練室と病室との間には横幅6m,縦50mの巨大な廊下があり,歩行訓練中の患者や車いすに座った患者,家族,訓練実施中の療法士,看護師が混在している。そこは訓練の場であり,実際の生活の場であり,休憩の場でもある。そして,これらの状況は,若くて活力のあるスタッフとLANを活用した緻密な情報交換や共有化により適切に管理運営されている。今まで,このようなリハビリテーション施設があったであろうか?

療法士システムの工夫で週7日の訓練を実現

 さらに賞賛すべきは,週7日訓練を実施するために考案された療法士システム-Triangle-Pairsである。従来,1人の療法士は十数名の患者の訓練に専従していたが,効率的な訓練が実施できる反面,患者の抱え込みあるいは閉鎖的な状況に陥ることもあり,また,療法士の休みの対応にはしばしば頭を悩まされていた。FITプログラムでは3人の療法士がチームを組んで18人の患者を担当し,1人の療法士は6人の患者を主担当として受け持ち,同時に他の2人の療法士の主担当患者をそれぞれ3人ずつ副担当として受け持つ。1人の療法士が休んでも他の2人の療法士が副担当として訓練を受け持つので,療法士が週2日ずつ交代で休みをとれば,1週間のうち2人勤務が6日,3人勤務が1日となり,週7日訓練を円滑に実施することができる。
 FITプログラムの概要,実施上のコツ,治療成績に関しては,本書に詳しく述べられているのでこれ以上の紹介はしないが,ぜひ,購入して一読することを勧める。新しいリハビリテーション医療を築き上げるバイタリティを感じる名著である。
B5・頁152 定価(本体3,800円+税)医学書院


精神疾患をエビデンスに基づいて考える時代が到来

統合失調症治療ガイドライン
精神医学講座担当者会議 監修
佐藤光源,井上新平 編

《書 評》山内俊雄(埼玉医大教授・神経精神科)

統合失調症の概念から学べる

 「精神科の診断や治療は,人それぞれ,思い思いに行なわれており,流派によってもやり方が違う,何でもありだ」といった声を他の科の医師から聞くこともあったように,かつては,有効な治療手段を持たず,それぞれの精神科医が工夫をこらして,治療にあたった時代もあった。それだけに,精神科の中心的な疾患とされる統合失調症の治療ガイドラインが上梓される時代が来たことに,ある種の感慨を覚える。それは,精神科治療が進歩し,いくつもの治療手段を手にするようになって,最適な治療法を,エビデンスをもとに考えることができるようになったことを意味しているからである。
 この本は,「治療ガイドライン」とうたっているが,実は治療に関することだけではない。第1章の「疾患の概念」では,統合失調症の概念の変遷や疫学,臨床症状,経過・転帰が述べられており,統合失調症についての必要な知識の概要を学ぶことができる。また,治療も薬物療法に限らず,身体療法,心理社会的療法も含めて,広い立場で記述されている。しかも,「その他の重要な問題」の章では,自殺,身体合併症,老化,司法精神医学的諸問題について述べられ,その他に,法的事項,社会制度,社会資源にまでわたっているので,その意味でも,本書は統合失調症について学ぶべき必要な事柄がすべて,要領よくまとまって書かれている良書というべきであろう。
 もちろん,「治療ガイドライン」とうたっているとおり,薬物療法を中心とした治療についてはより詳しく記述されている。それも,「治療計画の策定」の章は,精神医学的管理,急性期治療,回復期治療,安定期治療に分けて,症状評価と治療選択が具体的に呈示されている。それぞれの薬物,治療選択については,なるべくエビデンスに基づいて,もっとも適切と考えられる治療手段が書かれており,「治療オプションの推奨度」「引用文献のエビデンスレベル」が示されるなど,これまでの精神医療の弱点ともいえた客観性を確保するための努力もなされている。

精神疾患をどう理解するかを学ぶ格好のテキスト

 このように本書は,統合失調症についての,最新のデータに基づく包括的テキストブックであり,治療的側面に限らず,臨床の現場で役に立つ,実践の書でもある。編者は「統合失調症の治療に焦点を当てた本書は,脆弱性-ストレスモデルをもとに編集したガイドラインという点に特色がある」と述べているが,この本は決してある仮説や特定の考えにしたがったものではなく,ひとつのモデルに基づいて編集されたにせよ,そのことによって図らずも,きわめて広い立場に立って,生物学的,心理-社会的視点で疾患を考えるという,バランスのとれた本になっていることも特色である。
 その意味では,本書は精神医療の現場にいる人はもちろん,新しくはじまる卒後臨床研修医にとっても,精神疾患をどう理解するかを学ぶ格好のテキストである。
A5・頁356 定価(本体4,700円+税)医学書院


診断から非侵襲的治療まで消化器癌が系統的に学べるテキスト

消化器癌の診断と内科治療
2.肝・胆・膵
岡部治彌 監修
西元寺克禮 編

《書 評》岡崎正敏(福岡大教授・放射線医学)

 本書は1998年に発刊された名著『消化器癌の診断と内科治療 1.食道・胃・大腸』の続編として肝・胆・膵の疾患を対象として発刊されたものである。
 本書は前刊に引き続き,消化管診断学の世界のパイオニアである北里大学内科学の初代教授の岡部治彌教授が監修,西元寺克禮・現教授が編集されたものである。前刊同様,北里大学消化器内科グループの内科,外科,放射線科,病理が一体となった合同カンファランスの集大成が網羅された内容の感が強い。
 これもひとえに,30年以上前から消化管診断で世界をリードされている岡部教授,西元寺教授の一貫した点と点,線と線,面と面を画像と肉眼所見および病理所見を厳密に対比する診断姿勢と,治療に対する情熱がなせる技と考える。

新しい概念で肝・胆・膵領域の癌を学ぶ

 内容は大きく臓器別に肝臓,胆嚢,胆管及び膵臓の癌を中心に述べられている。各々の臓器別に疾患の症候(機能),画像,病理診断,鑑別診断が体系的に記載され,さらに病態に応じた非侵襲的治療法の実際にも詳細に言及しているのも本書の特徴といえよう。
 肝・胆・膵領域の疾患の病態,画像診断,病理診断,癌取扱い規約なども,この10年間で大きく改変された。これらの新しい概念で,肝・胆・膵領域の癌を系統的にまとめられた書著はきわめて少ない。この10年間の肝・胆・膵疾患の概念の変化をまず頭に入れながら,後半にまとめられた各種治療法の項を読めば興味は倍増するものと考える。
 さて,肝・胆・膵領域の疾患の画像診断は消化管疾患のそれよりも三次元的にとらえる必要がある。なぜならば,実質臓器の組織から発生するものもあれば,胆汁や膵液を分泌,流出している管腔の壁から発生するものも存在し,複雑な病態を示すものも多い。近年の各種画像診断機器の進歩はめざましいものがある。特に,CT,MRI,超音波装置による撮像が高速化し各種造影剤の導入と相まって,良質な画像と立体化した3次元,4次元画像も作製可能となった。病変部と血管を含めた隣接臓器との位置関係の描出,把握などは治療法の選択にはもっとも重要な情報を提供する。
 本書ではこれらの最先端の画像を内視鏡も含めた種々のアプローチ法で明瞭に描出し,治療法にどのように連結するかの解析も興味を引かれるところである。

非手術的療法もわかりやすく

 肝・胆・膵の癌も手術療法が原則であるが,早期発見がかなり可能となった現在でも,残肝予備能,全身状態,合併症なども含めて手術が施行できない症例も多い。また一部の肝癌症例では非手術的療法でも切除と変わらない治療成績も散見される。これらの非手術療法はInterventional radiology(IVR:最近はImage guided surgeryとの呼称もあり)の1分野でリアルタイムに画像を見ながら経皮的に穿刺針やカテーテルを挿入するか,経管腔的に癌を非侵襲的に治療する方法である。もっとも的確な画像診断下での治療が要求されるものである。
 日本でもっともアグレッシブに肝・胆・膵領域のIVRを施行し,世界にその成績を誇っておられる先生方が,本書の治療分野を担当され,各種治療法の利点と欠点が分かりやすく述べられている。
 本書は各臓器別に病態から治療,予後まで一連の流れとして系統的にまとめられており,臨床の現場できわめて有用なテキストとして広く推奨する次第である。
B5・頁244 定価(本体22,000円+税)医学書院


臨床にも研究にも役立つ! 緑内障に関する世界の趨勢がわかる

緑内障
北澤克明 監修
白土城照,他 編

《書 評》岩田和雄(新潟大名誉教授・眼科学)

 最近,緑内障診療に関するガイドラインが日本緑内障学会より発表された。スタッフの知恵を結集した結果である。ただこのガイドラインは骨子のみを正確に表現したもので,実地に当たっては,血が通い十分に肉付けされた記述が望まれる。本書は,その要望に完全に応えるものとして登場したと見てよい。スタッフがオーバーラップしているので,当然の帰結とも言えよう。

緑内障のエキスパートたちが各専門分野について執筆

 本書は日本緑内障学会北澤理事長のもとで,31名が分担執筆している。いずれも緑内障の研究,診療のエキスパートであり,それぞれが専攻分野を担当しているので迫力がある。とかく分担執筆の場合は一貫性がなく,記述もbusiness-likeで,参考に本を開いてみる程度のものが多いが,本書は対象が緑内障一本槍なのでまとまりがよく,各エキスパートが,自身の研究成果やら経験を熱心に語りかけている様が読みとれ,本書の魅力ともなっている。ただ学問や経験は各執筆者それぞれの成長とともに,より深く,より広くなってくるものゆえ,余裕をもって読む必要もあろう。
 本書はまず緑内障の定義と分類からはじまる。ガイドラインどおりだ。高頻度を占める正常眼圧緑内障を緑内障と認め,広義の原発開放隅角緑内障に分類しているのは賛成だ。また眼圧非依存因子の存在を単に推定に留めているのもよい。
 本文は,Basic ScienceとClinical Scienceに分けられ,前者に5分の1,後者に5分の4の頁数を割いている。妥当な分け方だ。留意したいのは,従来の原発先天緑内障の表現がなくなったことだ。Hoskinsに倣ったもので,小児期の緑内障を房水流出路の発達異常によるものと,他の眼疾患に続発するものとに分け,前者を発達緑内障Developmental Glaucomaと呼び,早発型と遅発型に分類している。この方が現実的で判りよいことは確かだ。ガイドラインではそのことが明確に記載されているが,本書には早発型の項目は大きく取り上げられているものの,遅発型の項目がない。実態が不明確なことによるものであろう。
 原発閉塞隅角緑内障の定義や分類に国際的な問題があるようであるが,それは別として,相対的瞳孔ブロックにより急性発作が起こるとの説明は頷きがたく,絶対瞳孔ブロックという表現を用いるべきではないであろうか。またレーザー虹彩切開術は瞳孔ブロックを解除する手術とされているが,理論的には瞳孔ブロックによる隅角ブロックを解除するとすべきではなかろうか。瞳孔ブロックが解除されることにはならないからだ。

新しい「緑内障文化」の発展に期待

 本書は約500頁より成るが,総体的にみて,各項目ごとに国際眼科雑誌を中心にした文献が2003年まで網羅され,より詳しく知りたい場合に便利で,現在の世界の緑内障に関する趨勢を知るのに最適である。参考書と教科書の中間的位置を占め,初心者にとっても,ベテランにとっても良き友となることであろう。臨床に,研究に役立てていただきたい。
 緑内障の診療に関する近年の進歩は眼を見張るばかりで,これは“緑内障文明の革命的進歩”と言えよう。反面“緑内障文化”の方はvon Graefe以来あまり進展がなく,いささか淋しい。本書をベースに新しい文化の発展に期待をかけよう。
 余計なことだが,本書の装丁はやや魅力に欠ける。もっと明るく近代的色調にならぬものか。手にとってみたくなるように。
B5・頁504 定価(本体20,000円+税)医学書院