消化器癌の診断と内科治療 2
肝・胆・膵

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肝胆膵の癌について最新の診断法と治療を,豊富な図・写真を用いて解説。なかでも,肝胆膵領域における画像診断(超音波,CT,MRIを含めた最新のモダリティ),機能診断,病理組織診断は圧巻。肝癌のTAE,PEIT,PMCT,RFA,化学療法,放射線治療などを詳述。臨床家必携の本。
監修 岡部 治彌
編集 西元寺 克禮
発行 2003年11月判型:B5頁:244
ISBN 978-4-260-10289-6
定価 24,200円 (本体22,000円+税)
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第I章 肝癌の診断
第II章 胆嚢癌の診断
第III章 胆管癌の診断
第IV章 膵臓癌の診断
第V章 肝・胆・膵癌の内科的治療
和文索引
欧文索引

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診断から非侵襲的治療まで消化器癌が系統的に学べるテキスト
書評者: 岡崎 正敏 (福岡大教授・放射線医学)
 本書は1998年に発刊された名著『消化器癌の診断と内科治療 1.食道・胃・大腸』の続編として肝・胆・膵の疾患を対象として発刊されたものである。

 本書は前刊に引き続き,消化管診断学の世界のパイオニアである北里大学内科学の初代教授の岡部治彌教授が監修,西元寺克禮・現教授が編集されたものである。前刊同様,北里大学消化器内科グループの内科,外科,放射線科,病理が一体となった合同カンファランスの集大成が網羅された内容の感が強い。

 これもひとえに,30年以上前から消化管診断で世界をリードされている岡部教授,西元寺教授の一貫した点と点,線と線,面と面を画像と肉眼所見および病理所見を厳密に対比する診断姿勢と,治療に対する情熱がなせる技と考える。

◆新しい概念で肝・胆・膵領域の癌を学ぶ

 内容は大きく臓器別に肝臓,胆嚢,胆管及び膵臓の癌を中心に述べられている。各々の臓器別に疾患の症候(機能),画像,病理診断,鑑別診断が体系的に記載され,さらに病態に応じた非侵襲的治療法の実際にも詳細に言及しているのも本書の特徴といえよう。

 肝・胆・膵領域の疾患の病態,画像診断,病理診断,癌取扱い規約なども,この10年間で大きく改変された。これらの新しい概念で,肝・胆・膵領域の癌を系統的にまとめられた書著は極めて少ない。この10年間の肝・胆・膵疾患の概念の変化をまず頭に入れながら,後半にまとめられた各種治療法の項を読めば興味は倍増するものと考える。

 さて,肝・胆・膵領域の疾患の画像診断は消化管疾患のそれよりも三次元的にとらえる必要がある。なぜならば,実質臓器の組織から発生するものもあれば,胆汁や膵液を分泌,流出している管腔の壁から発生するものも存在し,複雑な病態を示すものも多い。近年の各種画像診断機器の進歩は目覚ましいものがある。特に,CT,MRI,超音波装置による撮像が高速化し各種造影剤の導入と相まって,良質な画像と立体化した3次元,4次元画像も作製可能となった。病変部と血管を含めた隣接臓器との位置関係の描出,把握などは治療法の選択には最も重要な情報を提供する。
 
 本書ではこれらの最先端の画像を内視鏡も含めた種々のアプローチ法で明瞭に描出し,治療法にどのように連結するかの解析も興味を引かれるところである。

◆非手術的療法もわかりやすく

 肝・胆・膵の癌も手術療法が原則であるが,早期発見がかなり可能となった現在でも,残肝予備能,全身状態,合併症なども含めて手術が施行できない症例も多い。また一部の肝癌症例では非手術的療法でも切除と変わらない治療成績も散見される。これらの非手術療法はInterventional radiology(IVR:最近はImage guided surgeryとの呼称もあり)の1分野でリアルタイムに画像を見ながら経皮的に穿刺針やカテーテルを挿入するか,経管腔的に癌を非侵襲的に治療する方法である。最も的確な画像診断下での治療が要求されるものである。

 日本で最もアグレッシブに肝・胆・膵領域のIVRを施行し,世界にその成績を誇っておられる先生方が,本書の治療分野を担当され,各種治療法の利点と欠点が分かりやすく述べられている。

 本書は各臓器別に病態から治療,予後まで一連の流れとして系統的にまとめられており,臨床の現場で極めて有用なテキストとして広く推奨する次第である。

初学者にも配慮。最新の診断・治療をわかりやすく解説
書評者: 峯 徹哉 (東海大教授・消化器内科学)
◆飛躍的に発展した診断技術

 1998年に「消化器癌の診断と内科治療 1.食道・胃・大腸」が出されて5年後の2003年9月に同シリーズの第2巻となる「消化器癌の診断と内科治療 2.肝・胆・膵」が出されることになった。

 一読してわかる本書の特色は,1)診断,治療を項目別に淡々と述べるのではなく病理を組み込んでこれらを体系的に述べた点,2)北里大学の同門で執筆されており,相互の連携がスムーズであり,抵抗なく読める点にある。さらに詳しくみてみると,診断の項目に160ページが割かれている。その内訳は肝細胞癌に約100ページ,胆嚢癌・胆管癌に約30ページ,膵臓癌に約30ページが割かれている。肝胆膵の癌に対する治療の項目に対して約50ページが割かれている。ページ数の割り振りから推測するとやはり診断面おいて特に肝細胞癌の診断に対して飛躍的な進歩があったことをうかがわせる。それにひきかえ治療面については割かれているページ数が比較的少ないことは,診断面と比較し飛躍的な進歩が未だ十分行なわれていないことをうかがわせる。

◆画像診断を機器の原理から解説

 さらに通常の放射線学の専門書よりむしろ事細かに基礎的なことが書かれていることがみてとれる。例えばCT画像がどのような過程を経て構築されるか,MRIはどのような原理でその画像が構築されるのかなどさまざまな細かな画像診断機器の原理まで書かれている。通常のいわゆる画像診断の成書のような書き方ではなく,消化器臨床家及び初学者の視点にあわせて書くという慎重な配慮がなされている点が浮き彫りにされている。

 われわれ臨床家はついつい画像診断においてその画像をどのように読影するかということしか頭が働かないことが多い。この本ではその画像がどのようにして構築されているかという点までも明らかにされているのですばらしいという一語に尽きる。タイトルのつけ方も消化器癌と明記することにより本のねらいを鮮明にでき,さらに内科治療と明記していることにより暗にその中に最新の治療が含まれることを示しており,その意味でも標題のつけ方は圧巻というしかない。

 また,治療の内容をみてみるとinterventionalな治療だけではなく,現在治験中である抗癌剤の治療にも踏み込んでおり,実施臨床家のさまざまな疑問点にも答えられる形となっていると思われる。以上をまとめると,消化器癌の診断について最新のことはもちろん,画像診断の読影の基本となる原理についても書かれており,非常に読みやすい本であると言える。治療について現在の最新の治療法が入っており,しかも今後の治療法の将来についても考えさせられる優れた1冊であると断言する。

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