医学界新聞

《看護版特別編集》

「21世紀への飛翔」をテーマに,世界各国から東京に集う
第3回国際看護学術集会開催


 日本看護科学学会第3回国際看護学術集会(3rd International Nursing Research Conference:Innovation & Creativity Nursing into the 21st Century)が,文部省,厚生省,日本学術会議,日本看護協会,日本医師会などの後援を得て,さる9月16-18日の3日間,小島操子会長(大阪府立看護大学長)のもと,東京・有楽町の東京国際フォーラムで開催された。
 「21世紀への飛翔」をメインテーマに掲げた今学会に,世界20か国から約850人が参集。会長講演をはじめ,基調講演2題,駅伝シンポジウム2題,パネルディスカッションを中心に,アメリカ人コーディネーターによるワークショップ3題,日本人コーディネーターによるインフォメーションエクスチェンジ7題の他,一般演題は日本の175題を最多に,14か国から19領域229題に上った(下表参照)。さらに,市民公開講座として「21世紀に向けて,日本におけるホスピスケアのあり方を考える」が企画された。


日本の看護の発展を称賛

 台風5号の襲来と重なった初日は,列車や飛行機便の遅れから開会式では空席も目立ち,遅れて会場入りをする参加者の姿がみられた。その開会式には,戦後の日本の看護界にとって多大な影響を与えたバージニア・オルソン氏(現イリノイ大名誉教授。GHQ公衆衛生福祉局看護課の初代課長G.E.オルト大尉の下に保健婦担当官として1947年に来日。日本看護協会など看護団体の設立推進,看護婦教育など,日本の看護界発展に尽くした)が登壇し,あいさつを述べた。オルソン氏は,「終戦後の日本に着き,羽田空港から東京へ向かうバスの中からは,小さな家が道路の近くまでならび,どの家も開けっぱなしのままで,奥に日本人が見えた。通りには,浴衣を着た老人や赤ん坊を背負い,子どもの手をひいているモンペ姿の女性を見て,それまでアメリカの家から離れたことのなかった私は,『すいぶん遠くまできてしまった』と感じた。初めての海外での仕事が,日本人を相手にすることであり,神に『どうぞ日本人を理解できますように。日本人が私に心を開いてくれますように』と祈ったことを覚えている。そのおかげもあってか,日本で多くの友人ができた。残念ながら,亡くなった方や高齢のためにこのような学会に参加ができなくなった方も多くなったが,まだ現役として活躍されている友人も大勢おり,この友情に感謝したい。看護がまだ自立していなかった日本において,多くの方々から看護のさまざまなことを学ぶことができたが,日本の看護婦も私たちから多くのことを学んだことと思う」と述べ,日本の美しさと日本人看護婦の温かさに触れるとともに,「看護教育,看護実践,看護研究が大きく進歩したことを高く評価したい。これまでの実績やこれからの発展は日本の誇りである」と,日本の看護界を称賛するメッセージを残した。

看護の創造と変革

 小島会長は開会式のあいさつの中で,「医学や科学の分野での技術革新が進む一方で,高齢社会を迎え,社会のあり方にも変化が見られる。日本の看護学は多大な発展を遂げているが,今学会では21世紀に向けた『看護の変革と創造』について世界各国の看護職者が話し合うことを目的に『21世紀への飛翔』をテーマに掲げた。実りある討論を深めてほしい」と述べ,その後会長講演「看護と看護教育における変革と創造:Innovation & Creativity in Nursing and Nursing Education」を行なった(詳報掲載)。

「21世紀の看護」を議論

 基調講演は,海外よりヘレナ・レイノー・キルピー氏(フィンランド・ツルク大)が「Future of Nursing : Innovation in Client-Orientation」を,ジョアン・L E・シェーバー氏(イリノイ大)は,「Advancing Nursing Leadership through Research: Biobehavioral Science for Nursing into 21st century」を口演。
 また,2日間にわたる駅伝シンポジウムは,初日にI「看護ケアシステムと文化」(司会=東大 村嶋幸代氏,長野県看護大キャロライン・ホワイト氏),2日目はII「看護介入と科学」(同=日本看護協会 岡谷恵子氏,大阪府立看護大 エレン・イーガン氏)をテーマに,日本を含む海外から4人が登壇し,それぞれが各国の状況を踏まえた口演を行なった(駅伝シンポジウム IIIを掲載)。
 さらにこの駅伝シンポジウムでの発表,討論や,会長講演,基調講演を土台とし,今学会のまとめとなるパネルディスカッション「変革と創造-21世紀の看護」(司会=三重県立看護大 前原澄子氏,聖路加看護大 菱沼典子氏)が,最終日に開かれた。
 両駅伝シンポジウムの司会者に加え,小島会長およびキルピー,シェーバーの両氏がパネラーとなり,最初に村嶋,岡谷両氏から駅伝シンポジウムの報告がなされ,その後,壇上およびフロアからの討論が交わされた(パネルディスカッションおよび参加者の印象記は,次回看護号に掲載する)。
 なお今学会では,発表は公用語である英語。質疑応答は英語,日本語の併用とされていたために,発表者,参加者間で若干の戸惑いがみられる場面もあった。同時通訳での進行などの配慮があったものの,会場からは「日本人の参加が圧倒的に多い会場(セッション)ではもう少し何らかの配慮がほしい」との意見もあった。
 また,シンポジウムの時間帯に設定された別会場でのワークショップやインフォメーションエクスチェンジにも,各国から多くの参加者が詰めかけるなど,活発な意見交換が各会場で交わされた。

一般演題発表領域(229題 口演149,示説87)
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基礎看護(Principles of Nursing
看護倫理(Nursing Ethics
感染看護(Infection Control
クリティカルケア・周手術期看護(Critical Care / Perioperative Nursing
慢性期疾患患者の看護(Nursing for Adults with Chronic Illness
がん看護・緩和ケア(Oncological Nursing / Palliative Care
老人看護(Nursing for the Eldery
痴呆性老人の看護(Nursing for the Eldery with Dementia
子どもと家族の看護(Nursing for Children and Family
母性看護と助産(Matarnity Nursing and Midwifery
女性の健康(Women's Health
メンタルヘルスケア・リエゾン精神看護(Mental Health / Psychiatric Liaison Nursing
地域看護・在宅ケア(Community Health Nursing / Home Health Care
家族看護(Family Nursing
看護マネジメント・看護管理(Nursing Management / Administration
看護政策と看護経済(Nursing Politics and Economics
質の保証(Quality Assurance
看護教育・継続教育(Nursing Education / Continuing Education
研究法・異文化間看護(Research Methods / Transcultural Nursing