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プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第4版

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言わずと知れた解剖学アトラスの最高峰が待望の改訂。第4版では、「筋膜」や「肘関節の画像診断」など、近年の医療に合わせた項目が新規に収載。読者の理解を深めるため、イラストの美しさを追求する姿勢はとどまることを知らず、少しずつ解釈が変遷する細かな変化にも対応し、内容面にもさらなる磨きがかかっている。職種を問わず、人体の構造を学ぶすべての人に──。

シリーズ プロメテウス解剖学
監訳 坂井 建雄 / 松村 讓兒
発行 2025年02月判型:A4変頁:644
ISBN 978-4-260-05630-4
定価 14,300円 (本体13,000円+税)

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第4版 訳者序/なぜプロメテウスか?

第4版 訳者序

 『プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第4版』をここにお届けする.原書の初版全3巻は,ドイツ語原書として2004年から2006年にかけて出版され,熟練した画家の筆による精細な原画の数々にコンピューターによる画像処理を駆使して実現した,実在感と清潔感を合わせもつ高品質の解剖図は,世界中に大きな衝撃を与えた.日本語版としては2007年から2009年にかけて出版され,わが国の読者に広く迎えられたことは,訳者の大きな喜びとするところである.

 『プロメテウス解剖学アトラス』の中で本書は第1巻にあたり,四肢を中心として運動器に重点をおいたこれまでにない解剖学書として,注目を集めている.さらに内容においても,単に運動器の解剖を記述と図解により提示するだけでなく,運動機能に関する解説がきわめて充実している.医学生および臨床医だけでなく,理学療法士・作業療法士などリハビリテーションに携わる医療職の人たちからも大きな関心を集め,教科書や参考書として広く利用していただいている.

 すぐれた解剖図は解剖学書の生命線であり,まさに解剖図の革新が新しい解剖学書を作り出してきたと言える.近代解剖学の出発点と目されるヴェサリウスの『ファブリカ』は,精緻な芸術的な木版画により生命を与えられ,17世紀から18世紀にかけての銅版画による繊細な表現は,ビドローやアルビヌスによる傑出した解剖図譜を生み出してきた.19世紀の木口木版画によりもたらされた解剖図と本文を一体化した編集は,解剖学書に新たな生命を吹き込み,20世紀の写真製版の技術は,解剖図の新たな表現に無限ともいえる可能性を生み出してきた.『プロメテウス解剖学アトラス』の解剖図は,人間の手で描かれたものでありながら,人工のわざとらしさを感じさせない,まさに人智を尽くして自然を再現した21世紀という時代が生み出した解剖図の最高傑作である.

 原書の第2版は2007年から2009年に出版され,日本語訳第2版が2011年から2015年に出版された.原書第3版(2011年,2012年)に続く原書第4版(2014年,2015年)が,日本語訳第3版として2017年から2020年に出版された.原書第5版(2018年)に続く原書第6版が2022年に出版され,本書日本語訳第4版はその翻訳である.第1巻については,初版で542頁であったものが,第2版では大きく内容を増やして599頁になり,第3版では612頁になり,今回の第4版ではさらに充実して624頁へと大幅に増補されている.運動器の機能解剖学と臨床解剖学における近年の目覚ましい研究の進歩を取り込むとともに,医学生に必要な事項を読者にわかりやすい形で提供するというコンセプトはさらに強化されている.『プロメテウス解剖学アトラス』は,これまでの解剖学書にないすぐれた特徴を有している.見開き構成の中で視認性に優れた解剖図と文字情報を伝えるテキストをバランスよく有機的に配置すること,系統解剖学や臨床解剖学といった伝統的な枠組みに依拠せず学習内容の重要度に応じて内容を選択したことなど,まさに新しい視点からの解剖学が実現されている.第4版においてもこれらの特徴をよりよく生かす改訂がなされている.

 本書「解剖学総論/運動器系」の翻訳にあたっては,初版ではドイツ語版の他に英語版を参照することができた.これは翻訳を効率的に行うにあたっては有利な事情であったが,ドイツ語版と英語版の食い違いも少なからずあり,ドイツ系の解剖学と英語系の解剖学が異なる伝統を有することも,改めて知らされることとなった.第2版以降では対応する最新の英語版が刊行されていないために,もっぱらドイツ語版に依拠することとなった.翻訳にあたっては,ドイツ語の専門家の協力を得て改訂部分について重点的に各訳者が訳稿を作成し,最終的な確認と調整を監訳者が行った.訳語については,原則として日本解剖学会監修『解剖学用語 改訂13版』に準じるとともに,初版から第3版までとの整合性を可能な限り重視した.日本語訳にあたっては瑕疵のないように最善の努力をしたつもりではあるが,至らぬところは監訳者の責である.

 訳者を代表して 坂井建雄,松村讓兒
 2024年11月1日


なぜプロメテウスか?

 プロメテウスは,ギリシャ神話における神々の息子である.自分の姿に似せて人間を作り出したために,神々の父であるゼウスの怒りをかってしまった.しかし伝説によれば,ゼウスは,プロメテウスが人間に火とそれによる知恵を与えたことを不用意だと考えたに違いない──これはまた別の解釈であるが.
 プロメテウスは,ギリシャ語で「先に考える者」を意味する.われわれの新しい解剖学アトラスは,その名前にふさわしいものとするために,新しい道を行かねばならない.すでに本書の構想段階において,この未踏の道への一歩を踏み出していた.その基礎になったのは,Thieme社によるアンケートと面接調査である.これは学生と講師を対象に,ドイツ語圏および米国で行われた.出発点は,「“理想的な”解剖学アトラスはどのようなものでなければならないか」という設問であった.学生にとって理想的なアトラスというが,その学生はアトラスを使って,きわめて窮屈な時間割の中で解剖学という学科の膨大な情報をこなし,持続する堅固な知識を身につけるための学習をしなければならない.
 解剖学の深い知識が,高度な能力を要する医師の診療において不可欠であることは,学習が進むにつれてますます明らかになってくる.そこには,人の体の個人差を知ることも含まれ,これは,後に所見の解釈や手術の際にきわめて重要であり,過誤を防ぐのにも役立つ.したがってプロメテウスでは,過剰な血管や不規則に走行する血管,臓器の位置の異常なども特に考慮する.
 著者たちは,まさにこの解剖学──とくに肉眼解剖学であるが──では,学生は他の医学の学科と比べようもないほどの困難に直面し,圧倒的な量の名称と事実を相手にしなければならないことを忘れていない.解剖学は医学の最初に教えられかつ学ばなければならず,この時期のほとんどの学生は有意義な学習技術を十分に身につけていないため,その困難はいっそう大きなものとなる.不可避の重要な事柄とそうでないものを区別することができず,さらには生理学など他の学科との関連を築くこともほとんどできないのである.
 こうした背景から,学生にとって優れた設計の「学習環境」を作り上げることが,この解剖学アトラスの構想における第1の目標として設定された.優れた学習環境というのは,上述の困難に狙いを定めた配慮がなされ,その構成が同時に学習に役立つということである.この目標設定によって,テーマを綿密に選び出すことが可能になった.「完全網羅」では十分な基準になりえない.むしろ,そのテーマが解剖学の基礎的理解に必要であるか,それとも臨床において意義があるかを吟味した.もちろん,テーマを吟味することは,さらにテーマの重要度に差をつけるのにも役立った.
 第2の目標は,説明の少ないあるいは説明なしの図を提供することはしない,ということであった.そこで図の情報はすべて,本文と密接に関連づけた.たとえ図がある程度「単純で自明」であったとしても,本文にある図の解説や学科を超える臨床との関連など,学習へのヒントによってさらに理解を深めることができる.そうして読者は,本文の助けによって図の一つひとつに導かれ,複雑な関係についても深い理解に到達する.こうした「単純から複雑へ」の原則が基調となっている.
 肉眼解剖学のさまざまな領域(おそらく神経解剖学の一部の所見は例外だが)が,「完結した」分野に相当することは明らかな事実である.内容に関わる真の革新という意味での新知見は,ほとんどないといえる.通常,多くの領域で確立された専門知識は,変化する臨床の要求に照らして,新しい断面を得るに過ぎない.例えば断面解剖学は,80年以上前から解剖学者に知られていたが,ほとんど用いられなかった.CTやMRIといった現代の画像診断技術によって,巨大なルネサンスがもたらされたが,断面解剖学の深い理解なしにその画像を判断することは到底できない.「新しい」は真に革新的な性格をもつ語であるが,解剖学そのものが新しいのではない.しかし新しくするべきもの──時代に適うという意味で──は,教育的な編集方針とその具体的な方法である.
 こうしてこの解剖学アトラスを作成する際の,原則的な方策が確立された.学習テーマを定め,それに図・説明・表から成る学習環境を与える.隣接するテーマで,この本で同様に述べられるものは,参照する.出発点はあくまでも定められた学習テーマであり,図やその基になる標本ではないので,すべての図を新しく構想し作成しなければならず,それのみに8年を費やした.その際,標本を原寸大に再現することは重要ではなかった.むしろ,図そのものに教育的に意味があり,解剖学的な所見を学習に役立つように提示することで,複雑な図の内容を学ぶ際の学習者の労力を軽減させるようにした.
 われわれがプロメテウスという解剖学アトラスを作る目標は,解剖学という学科を学ぶ際に教育的な手引きとして学生を支援すること,このわくわくするテーマに対する感激をさらに強めること,まったくの初心者には自信を与えて解剖学への啓発的な手引きとすること,上級の学生には信頼できる情報源として,医師には熟知した参考書として役立つことである.

 「もしお前が可能なところに達しようと望むなら,不可能を試みねばならぬ」(ラビンドラナート・タゴール)

 Michael Schünke, Erik Schulte, Udo Schumacher, Markus Voll, Karl Wesker
 Kiel, Mainz, Hamburg, München, Berlin にて
 2022年8月

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A 解剖学総論
 1 系統発生と個体発生
 2 人体の概観
 3 体表解剖,目印,基準線
 4 骨,骨の連結
 5 骨格筋
 6 筋膜
 7 血管
 8 リンパ系とリンパ節
 9 神経解剖学総論

B 体幹
 1 骨,関節,靱帯
 2 筋:機能による区分
 3 筋:局所解剖
 4 神経と脈管:形態と位置
 5 神経と脈管:局所解剖

C 上肢
 1 骨,関節,靱帯
 2 筋:機能による区分
 3 筋:局所解剖
 4 神経と脈管:形態と位置
 5 神経と脈管:局所解剖

D 下肢
 1 骨,関節,靱帯
 2 筋:機能による区分
 3 筋:局所解剖
 4 神経と脈管:形態と位置
 5 神経と脈管:局所解剖

付録
 文献
 索引

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