- HOME
- 雑誌
- BRAIN and NERVE
- BRAIN and NERVE Vol.74 No.7
特集 COVID-19 脳神経内科医が診るための最新知識2022
ISSN | 1881-6096 |
---|---|
定価 | 2,970円 (本体2,700円+税) |
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。
- 特集の意図
- 収録内容
特集の意図
開く
特集 COVID-19 脳神経内科医が診るための最新知識2022
前回の特集「COVID-19──脳神経内科医が診るための最新知識」(2020年10月号)から2年が経過しようとしている。その間も新たな変異株が出現するなど,COVID-19はいまだ世界中で猛威を振るい続けている。一方で,例えば脳卒中の合併率が蔓延当初より少ないなど,従来とは異なる報告も散見される。本特集では最新の報告に基づき,COVID-19の神経合併症やlong COVIDとされる症状への対応,ワクチン接種の適応や注意すべき副反応について論じている。そして,パンデミック禍における医師のバーンアウトの問題も取り上げた。これらの知見を診療のアップデートに役立てていただければ幸いである。
Neuro COVID──現状と課題 下畑享良
COVID-19において,直接感染よりも,高サイトカイン血症や自己抗体のような二次的な病態が神経筋障害の原因として注目されている。急性期に神経筋合併症を認める場合,死亡リスクが高くなる。また感染後の後遺症として,brain fogや認知機能障害をきたし得ることも報告された。ワクチン接種後の副反応として神経領域のものが多いが,その頻度はCOVID-19に感染した場合のほうがはるかに高い。
COVID-19神経合併症(1) 脳炎と脳症update 小野大介,三條伸夫
COVID-19では高率に神経症状を呈し,以下の3つの機序で種々の脳炎・脳症を合併する。①SARS-CoV-2は極めて稀に中枢神経系へ直接感染し髄膜脳炎を起こす。②COVID-19に伴う高サイトカイン血症が血管内皮細胞障害,血液脳関門の破綻,微小血管症とそれらによる脳症を起こす。③COVID-19では急性期および感染後に,または神経症状を初発として自己免疫性脳炎を合併する。その他の経過・画像が特徴的な病型として急性壊死性脳症,ADEM,PRES,MERSを合併し得る。
COVID-19神経合併症(2) 脳血管障害update 吉本武史,豊田一則
いまだ世界中で猛威を振るっているCOVID-19の感染者数の増加に伴い,COVID-19関連神経学的合併症の報告が増加した。特にCOVID-19によって血栓形成促進状態が惹起され,脳梗塞発症リスクを高めることが示された。一方で,2022年において,COVID-19合併脳卒中の頻度が蔓延当初よりも少ないなど,蔓延当初の報告とやや異なる点も散見され始めている。本論では,COVID-19と脳卒中,特に脳梗塞との関連,COVID-19合併脳卒中の病態および予後について,最新の論文を参考に述べる。
COVID-19神経合併症(3) 運動異常症update──COVID-19感染症で見られる失調症,不随意運動症,発作性運動異常症 髙橋牧郎
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19)は脳炎・脳症,脱髄疾患,ギラン・バレー症候群などの神経合併症が報告されてきた。感染後数日〜数週間で運動異常症が発症する例もあり,自己免疫性機序が想定されている。またCOVID-19に対するワクチン接種が進み,副反応としてギラン・バレー症候群などの報告があるが,因果関係はいまだ不明である。本論ではCOVID-19感染症で生じるミオクローヌス,オプソクローヌス,パーキンソニズム,小脳失調など運動異常症の病態,SARS-CoV-2ワクチンとの関連につき概説する。
COVID-19神経合併症(4) 末梢神経障害と筋障害update 本田真也,神田 隆
2019年12月に中国・武漢で初めて報告された新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症であるCOVID-19は急速に世界中に拡大した。COVID-19に関連するギラン・バレー症候群の大多数は脱髄型であり,感染後の免疫応答が発症機序と想定されている。また,COVID-19患者では筋痛やCK値上昇といった筋障害が比較的多くみられ,一部の患者に筋炎が生じることがある。筋障害の機序としてはSARS-CoV-2による直接的な障害やⅠ型インターフェロノパチーが考えられている。
COVID-19神経合併症(5) 嗅覚・味覚障害update 三輪高喜
嗅覚・味覚障害は新型コロナウイルス感染症に特徴的な症状であるが,その発生頻度と病態はウイルス株の変異により変化を遂げた。嗅覚障害の発生には嗅上皮に存在するアンジオテンシン変換酵素2が関与している。嗅覚障害の多くは数週で改善するが,数カ月以上にわたり症状が遷延する症例では異嗅症が患者を悩ませる。嗅覚障害が遷延する症例では,障害が嗅神経細胞まで及び,嗅神経性嗅覚障害となることが推測される。
Long COVID(1) 病態と対策 渡辺宏久,島 さゆり,水谷泰彰,植田晃広,伊藤瑞規
COVID-19では,感染症状の治療後にも長期にわたって精神症状,睡眠障害,運動不耐性,関節痛,頭痛,認知機能低下,brain fog,自律神経症状など,多様な全身症状が遷延,もしくは新たに出現し,long COVIDと呼ばれる一群が存在する。最近の脳画像研究では,long COVID症例では,糖代謝の低下や脳萎縮を認め得ることが示されている。Long COVIDの多様な臨床像や出現時期を一義的に説明できる病態仮説はないが,①ウイルスの持続感染,②炎症の持続,③自己免疫系の関与,④ミトコンドリアの機能障害などが注目されている。炎症性サイトカインは,迷走神経の過活性化を通じて血圧の変化をもたらすACE2の発現や活性を低下させ,起立性調節障害に関与する可能性がある。また,筋や末梢神経への直接感染,低酸素とミトコンドリア障害,サイトカインストームなどは筋障害や末梢神経障害につながる可能性がある。全身の炎症所見が中枢へ影響を及ぼす機序として,炎症細胞が脈絡叢細胞を介し血液脳関門を超えて神経炎症が起こすとともに神経変性疾患類似の変化が生ずるとの説や,多様な自己抗体が関与しているとの説があるものの,病態の複雑さや多様性も相まって,明確な結論は出ていない。Long COVIDに伴って神経症状が出現し得ることを理解し,その病態解明を進めることは極めて重要である。
Long COVID(2) コロナ後遺症外来の現状 髙尾昌樹,大平雅之
国立精神・神経医療研究センター病院における,コロナ後遺症外来の現状をまとめた。いわゆる罹患後症状であるlong COVID(PASC)は,病態が解明されておらず,症候もさまざまである。しかし,患者数は増加しており,多くの医療機関で診療に携わる機会が増えている。診断・検査・治療法が確立していないが,個々の患者の症状を評価のうえ,長期的に診療にあたるスタンスが求められる。さらに,わが国としても,PASCを長期的に検討する体制の構築が急がれる。
神経疾患患者に対するワクチンと副反応(1) 総論 中嶋秀人
神経疾患患者の多くが高齢者で基礎疾患を有している。そのためCOVID-19罹患時には重症化のリスクが高まると考えられ,基本的にワクチン接種が推奨される。副反応にはアナフィラキシーのように重篤なものもあるが,他の副反応を含め頻度は稀なことが多く,COVID-19重症化リスクを踏まえてワクチン接種を考慮する必要がある。ワクチンによる感染と重症化の予防効果は経時的に減衰するため,長期化に備えてブースター接種を検討する必要がある。
神経疾患患者に対するワクチンと副反応(2) 神経免疫疾患 小川 諒,中島一郎
新型コロナウイルスが大流行してから2年以上経過しているが,終息する気配はない。2020年末よりウイルスに対するワクチンの接種が各国で進められ,本邦でも2021年2月に接種が開始された。新型コロナウイルスに対し高い有効性を示す一方で副反応や血栓症のリスクも報告されている。神経免疫疾患患者におけるワクチン接種と免疫抑制薬を使用している患者におけるワクチン接種について,現時点で判明していることを概説した。
神経疾患患者に対するワクチンと副反応(3) ワクチン接種後の血小板減少を伴う血栓症(TTS) 八木田佳樹
COVID-19ワクチン接種後の血小板減少を伴う血栓症(TTS)は,血小板減少症と血栓症をきたす疾患である。血小板第4因子に対する抗体が産生され,ヘパリン起因性血小板減少症と類似した病態を呈する。発症率はワクチン接種10万例に1例前後と非常に低いが,予防のためのワクチン副反応であることと死亡を含む重篤な状態となることから念頭に置くべき副反応である。TTSを疑った場合はすみやかに治療を開始することが必要である。
コロナパンデミック禍の医師のバーンアウト 小寺志保,木村百合香,久保真人
新型コロナウイルス感染症の流行により,医療従事者は多くの負担を強いられた。東京都のコロナ重点医療機関となった3病院を対象に,医師のバーンアウト調査を行った。日本版バーンアウト尺度では,従来の医師への調査より高い値を示した。とりわけ専門診療ができないことに対しての「やりがいのなさ」からバーンアウトの状態となっていた。この調査を基に,コロナパンデミック禍での医師のバーンアウトについて考察する。
収録内容
開く
医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。
特集 COVID-19 脳神経内科医が診るための最新知識2022
Neuro COVID──現状と課題
下畑享良
■COVID-19神経合併症
(1)脳炎と脳症update
小野大介,三條伸夫
(2)脳血管障害update
吉本武史,豊田一則
(3)運動異常症update──COVID-19感染症で見られる失調症,不随意運動症,発作性運動異常症
髙橋牧郎
(4)末梢神経障害と筋障害update
本田真也,神田 隆
(5)嗅覚・味覚障害update
三輪高喜
■Long COVID
(1)病態と対策
渡辺宏久,他
(2)コロナ後遺症外来の現状
髙尾昌樹,大平雅之
■神経疾患患者に対するワクチンと副反応
(1)総論
中嶋秀人
(2)神経免疫疾患
小川 諒,中島一郎
(3)ワクチン接種後の血小板減少を伴う血栓症(TTS)
八木田佳樹
コロナパンデミック禍の医師のバーンアウト
小寺志保,他
■総説
異常型タウの構造多型は多様なタウオパチー病理の形成に寄与する
樽谷愛理,長谷川成人
てんかん治療におけるペランパネルの臨床成績と特性に基づく治療選択
赤松直樹,他
●脳神経内科領域における医学教育の展望──Post/withコロナ時代を見据えて
第11回 Dx時代の地域医療と臨床教育──変わること,変わらないこと
高村昭輝
●臨床神経学プロムナード──60余年を顧みて
第17回 「脊髄性間歇性跛行」をめぐって:本邦初報告から久しく絶えた(1929~1967)意外な理由
平山惠造