精神医学 Vol.66 No.1
2024年 01月号

ISSN 0488-1281
定価 3,080円 (本体2,800円+税)

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特集にあたって
明智龍男(名古屋市立大学大学院医学研究科精神・認知・行動医学分野)

 精神科診療に長く携わっていると,精神科医療における性差について考えさせられることも多い。たとえば,私自身は,男性は長い話をあまり好まない一方で,女性は話にじっくりと耳を傾けてもらうことへのニーズが高いように感じることも少なくない。そういった自身の感じ方も影響し,自分の専門領域であるコンサルテーション・リエゾンやサイコオンコロジーの診療の中で,意識的にも無意識的にも女性と男性で面接の方法や治療のアプローチを分けていることが多い。たとえば,女性ではまずじっくり時間をかけて気持ちの状態やストレスとなっている状態とその背景を聴きとることを優先する。一方,男性では,感情面に焦点を絞って聴くことよりも,その患者が抱えている問題点を共同作業で同定し,その解決方法を 一緒に考えることへのニーズが高いのではないだろうか。個人差による影響はむろん大きいが,これらのことが結果的に自身の診療における面接の進め方などにも影響を及ぼしているように感じる。
 翻って,これはなぜなのだろうか。先日,産婦人科の医師と話す機会があり,そのことについて尋ねてみたところ,やはり女性特有のライフステージやエストロゲンなどのホルモンなどの影響は間違いなくあると思うが,それだけで説明できるかどうかは分からないということと,女性に対しては精神心理的な側面や感情面についての問題を扱いながら診療を進めることは疾患を問わず重要であると思う,との意見であった。また少し調べてみると,性差自体を研究テーマにした性差医学(gender-specific medicine)という領域があることも知った。女性と男性は生物学的に異なる面があり,また心理社会学的にもさまざまな異なる影響を受ける可能性があるので当たり前なのかもしれないが,考えてみてもうまく整理できず,その結果, 私自身のそういった疑問が今回の企画につながった。
 単純に性ホルモンによる影響などに帰着させるわけにはいかないのだろうが,精神疾患の病態や有病率,治療において求められるアプローチ上の差異などの一部の説明にはやはり有用でもある。しかし,性差として個人差を超える「何か」が本当にあるのであろうか。
 今回の企画では,第一線の現場で活躍している専門家に筆をとっていただいた。普段の診療を深める一助になれば幸いである。

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価格については医書.jpをご覧ください。

特集 性差と精神医学──なぜ頻度や重症度に差があるのか
企画:明智 龍男

特集にあたって
明智 龍男

精神医学における性差
松島 英介

性の多様性を考慮した精神医療
小澤 寛樹・他

脳における性差
山縣 文

女性のライフサイクルと精神疾患
竹内 崇

精神疾患とエストロゲン
菊山 裕貴・他

性差と自閉スペクトラム症
山末 英典

摂食症(摂食障害)における性差
小川 晴香・他

うつ病は,なぜ女性に多いのか
寺尾 岳

アルコール依存症と女性
真栄里 仁・他

なぜ不安症は女性に多いのか
塩入 俊樹

統合失調症と性差──なぜ男性の病理は重いのか
兪 志前・他

自殺関連行動における性差──自殺企図行動のプロセスとジェンダー・パラドックス
小熊 貴之・他


●古典紹介
シャルル・ラセーグ──ヒステリー性拒食症について(第2回)
[翻訳と解説]西依 康・他

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