総合リハビリテーション Vol.49 No.4
2021年 04月号

ISSN 0386-9822
定価 2,530円 (本体2,300円+税)

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骨粗鬆症――指導に役立つエビデンス

 骨粗鬆症の予防・二次予防が社会にとって重要であることは既に知られています.しかし,骨は「沈黙の臓器」といわれるように,骨折前は自覚症状に乏しい臓器です.骨粗鬆症のリスク因子をもつ方々に,骨の脆弱化を骨折する前から予防するという行動変容をしていただくためには,適切な説明や指導によるモチベーションの喚起と維持が重要になります.
 本特集では,個々の症例に骨粗鬆症の予防・二次予防の指導をする立場である,「総合リハビリテーション」読者のために,患者治療・予防指導に有用な知識(数字やエビデンス)を,できるだけ具体的に,専門の先生方にご執筆いただきました.ぜひ,本特集を日ごろの臨床において,骨粗鬆症の予防・二次予防にお役立ていただければ幸いです.

骨粗鬆症のインパクト 帖佐悦男氏
 2019年,骨粗鬆症患者は1280万人と報告されている.大腿骨頸部での有病率は40歳以上の男性で12.4%,女性で26.5%であり,1.8%/年増加する.骨粗鬆症は骨折の最大のリスク因子で,要介護や生活の質の低下につながるとともに,大腿骨近位骨密度は累積生存率に対してもハザード比で2.58の影響力をもつ.50歳以上の女性に対する骨密度検診と高リスク症例に対する薬物療法は費用対効果に優れることが報告されている.二次骨折予防のための介入も,医療費節減効果が報告されている.

骨粗鬆症治療薬の選択 萩野 浩氏
 骨粗鬆症とは骨脆弱化の進行であり,骨折を発生する以前に診断され治療されるべきである.近年の骨粗鬆症治療薬の進歩は著しく,以前とは異なる作用機序の新規薬剤の開発と承認,投与間隔の延長,また治療薬の選択や逐次投与に関する新しい知見がある.治療薬は,骨吸収抑制薬(ビスホスホネート薬など),骨形成促進薬,その他(活性型ビタミンD3薬,ビタミンK2薬)に大別される.骨折リスクを,骨密度値,脆弱性骨折の既往,年齢の3つの独立した因子からおおむね3段階に評価して,かつ通院頻度,認知機能の状態なども考慮して薬剤を選択する.治療目的は骨折無発生と骨密度Tスコアの改善であるが,ビスホスホネート薬以外の薬では,中止による骨密度の減少があるので,逐次投与が必要である.

非荷重骨の骨量低下とその改善 篠原正浩氏
 骨は皮質骨と海綿骨から構成され,海綿骨が多い骨から骨量低下が始まり,また非荷重骨の骨量低下は,荷重骨の骨量低下よりも遅れて起こる.骨粗鬆症時の非荷重骨の骨折のうち臨床的に頻度が高いのは転倒時の橈骨遠位端骨折と上腕骨近位部骨折である.骨粗鬆症治療薬は非荷重骨の骨量増加の報告もあるため,薬物治療と転倒予防のための運動訓練が望ましい.一方で寝たきり症例では骨量が急速・劇的に低下し,介護骨折では大腿骨近位部骨折,橈骨や上腕骨,肋骨骨折がある.介護骨折の主な原因は骨量低下と関節拘縮であるため,栄養と薬物による骨量の維持,関節可動域訓練が対策となる.

紫外線によるビタミンD産生――必要な日照時間と影響因子 西田佳宏氏ら
 骨粗鬆症を予防,あるいは進行させないためには日光浴が重要である.ビタミンDの必要量補充の目安は,食事摂取から8.5μg/日,日照から約5μg/日である.日照によるビタミンD産生には肌タイプ,天候,緯度,露出面積などさまざまな条件が影響するが,日本人が,顔と両手甲を露出してビタミンD5.5μgを生成するのに必要な日照時間は,7月晴天日の12時で,札幌4.6分,筑波3.5分,那覇2.9分と算出されている.これは紫外線の副作用の発症しない範囲ではあるが,副作用の予防には,露出面積を大きくしたほうがよい.日光浴に代わる紫外線照射機器についても開発が進められている.

骨粗鬆症予防のための食事に関するエビデンス 佐々木敏氏
 習慣的なカルシウム摂取量とその後の骨折発生率の関連を検討したメタアナリシスでは,両者の関連は逆J字型であり,日本人の平均摂取量よりも低い摂取量の症例においては,カルシウム摂取量を増やす意義があるが,多量摂取すればするほどよいわけではない.閉経後の女性を対象としたカルシウムのサプリメントのメタアナリシスでは,2~3年の介入の場合に骨密度の増加が示されている.地中海食は欧米諸国のその他の食パターンとの比較では骨密度や骨折に有利であるが,日本食との比較はなされていない.最近のメタアナリシスの結果は,食習慣が骨密度・骨粗鬆性骨折に与える影響が,これまで考えられていたよりもはるかに複雑であることを示しており,日ごろより研究情報の質を十分に吟味する姿勢が重要である.

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骨粗鬆症のインパクト
帖佐悦男

骨粗鬆症治療薬の選択
萩野 浩

非荷重骨の骨量低下とその改善
篠原正浩

紫外線によるビタミンD産生――必要な日照時間と影響因子
西田佳弘,他

骨粗鬆症予防のための食事に関するエビデンス
佐々木 敏


●巻頭言
リハビリテーション医学と動的ヘテラルキー
小金丸聡子

●入門講座
認知行動療法② 脳卒中後うつ
大嶋伸雄,他

●実践講座
摂食嚥下訓練のすすめ方④ 発達期嚥下障害症例への訓練
山本弘子

●症例報告
迷路性眼球反射促通法実施後に眼球運動障害の改善を認めたFisher症候群の1例
齋藤幸恵,他

●総説
大動脈弁狭窄症術後患者に対する心臓リハビリテーション
福井奨悟,他

●集中講座 評価法の使い方 シリーズ2 各論④
骨関節疾患
津田英一

●リハビリテーション関連職種のキャリアサポート⑥
訪問リハビリテーションにおける実践
竹中佐江子

●カンファレンスをどうしていますか? ④
回復期リハビリテーション病棟
天野純子

●印象に残ったリハビリテーション事例
くも膜下出血の後遺症で重度の嚥下障害と高次脳機能障害を呈した症例――自宅復帰に向けた長期的なかかわり
稲川利光

●Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
カレル・チャペックの『白い病』――疫病による世代間対立と社会的分断
高橋正雄

●Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「カムイチェプ サケ漁と先住権」――友よ,夜明けは近い
二通 諭

●リハビリテーション論文の正しい書き方 第1回
「総合リハビリテーション」編集委員会

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