総合リハビリテーション Vol.49 No.3
2021年 03月号

ISSN 0386-9822
定価 2,530円 (本体2,300円+税)

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東日本大震災から10年

 東日本大震災から10年が経過します.しかし,つい先日起きた出来事のような強い印象がまだ残っています.現在(2021年1月29日)はCOVID‒19による2回目の緊急事態宣言下であり,日々のニュースも新型コロナ一色です.3月11日が近づけば,10年目の区切りでもあり報道も増えてくると思いますが,東日本大震災の経験は忘れてはいけないと考えます.
 障害のある方々が日常生活や社会生活を取り戻すためにどのような支援を必要としたのか,あるいは現状必要なのかを記録しておくことは,今後の対策を考えるうえでも重要と考え,本特集を企画しました.

災害医療の現状と課題 今村 浩氏
 阪神・淡路大震災から東日本大震災,さらにはその後のさまざまな災害を経験しながら,日本の災害医療体制は整備されてきた.しかし,災害は毎回形を変えて発生し,その都度新たな問題が生じている.大規模災害では「防ぎえた災害死」をどれだけ少なくできるかが重要であるが,その数をはるかに超える「防ぎえた生活機能低下」が存在する.単なる救命だけでなく,生活機能低下を起こさせないための取り組みも必要であり,リハビリテーション関係者に期待したい分野である.

日本災害リハビリテーション支援協会(JRAT)の紹介――その誕生経緯・活動と課題 栗原正紀氏
 東日本大震災を機にリハビリテーション関連団体が結束して組織的な支援を展開するための活動が行われ,その後2013年7月に大規模災害リハビリテーション支援関連団体協議会(Japan Disaster Rehabilitation Assistance Team;JRAT)が発足した.そして2020年4月から略称は同じJRATだが,日本災害リハビリテーション支援協会として一般社団法人化された.実際の災害支援を通してさまざまな経験をし,新たな課題も生じている.新型コロナウイルス感染症下の支援においては,さらなる地域JRATの組織化が必要である.

岩手県における東日本大震災の発災時の概況と10年後の現況――岩手県における災害時リハビリテーション支援も含めて 大井清文氏ら
 岩手県における被害の本質は大津波であり,岩手県では東日本大震災・大津波と呼ばれている.もともとあった地域リハビリテーションのシステムを利用して広域支援センターなどの協力を得て支援が行われた.災害時にも有効なシステムであり,全国での地域リハビリテーションシステムの復活が求められる.支援が長期になればなるほど,自県内で自立したリハビリテーション支援の継続が重要となる.現状においても,住民の健康維持やフレイル予防に関する課題があり,早急な対応が必要である.

宮城県の震災被害の状況と災害公営住宅の現状 千葉茂樹氏ら
 宮城県の災害公営住宅は,当初の予定よりも遅れはしたが,2019年3月末に15,823戸が整備・完成した.仮設住宅からの転居が進み,2020年4月にすべての仮設住宅が解消された.著者らは仮設住宅時代から継続して健康相談会などを実施しており,健康上・生活上の不安や社会活動への参加,相談相手の有無などを調査した結果を報告した.公的支援は徐々に減っており,周辺環境から孤立しがちで弱い立場にある高齢単身者は,コロナ禍によりさらに社会参加の制約が加わり,苦しい立場になっている.

福島災害被災者への精神保健支援――エビデンスに基づく電話介入 桃井真帆氏ら
 被災者の心理状態は,被災からの時間経過に伴って変化していく.被害のピークが災害直後である物理的被害と異なり,心理的危機は発災から比較的時間が経過した時期から現れることが少なくない.そのため,支援活動とのタイムラグが生じてしまう.また原発事故は自然災害と異なるさまざまな特徴を有している.そうしたなか,著者らは「アウトリーチ型電話支援」と呼ばれる積極的支援を続けている.一方,自治体職員をはじめとする支援者側の疲弊も大きな問題となっており,支援者に対するサポートやケアも重要である.

障がいのある人の防災対策――避難,避難生活から生活再建までを視野に入れて 立木茂雄氏ら
 平時の在宅福祉・医療・看護体制が充実しているほど逃げおくれた人が多く発生した事実がある.サービスや配慮の提供を平時と災害時で切れ目なく連結することが重要である.また,被災後早期は仮設住宅でフォーマル,インフォーマルな支援に恵まれた環境で生活できていたが,自力で再建可能な層が恒久住宅へ移行していくなかで,仮設住宅に取り残された障がいのある人たちは復興感が低くなっていた.生活再建に向けた合理的配慮の提供が必要であった.根本的解決の方向性について詳細に述べられている.

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災害医療の現状と課題
今村 浩

日本災害リハビリテーション支援協会(JRAT)の紹介――その誕生経緯・活動と課題
栗原正紀

岩手県における東日本大震災の発災時の概況と10年後の現況――岩手県における災害時リハビリテーション支援も含めて
大井清文,他

宮城県の震災被害の状況と災害公営住宅の現状
千葉茂樹,他

福島災害被災者への精神保健支援――エビデンスに基づく電話介入
桃井真帆,他

障がいのある人の防災対策――避難,避難生活から生活再建までを視野に入れて
立木茂雄,他


●巻頭言
朝まだき
吉尾雅春

●入門講座 認知行動療法
認知行動療法の基礎とリハビリテーションにおける応用
大嶋伸雄

●実践講座 摂食嚥下訓練のすすめ方③
直接的アプローチ開始前・後の理学療法
吉田 剛

●研究と報告
心不全症例の監視下運動療法による6分間歩行試験の改善に影響を与える因子の検討
笠井健一,他

回復期リハビリテーション病棟における脳疾患片麻痺患者の整容動作評価表「Functional Grooming activity Assessment(FGA)」の作成と信頼性・妥当性の検討
荒井果菜子,他

●集中講座 評価法の使い方 シリーズ2 各論③
高齢者疾患
海老原 覚,他

●リハビリテーション関連職種のキャリアサポート⑤
介護老人保健施設における実践――活動と参加に焦点を当てたリハビリテーションの推進
大内義隆

●カンファレンスをどうしていますか? ③
大学附属病院におけるカンファレンス
沢田光思郎,他

●Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
ベケットの『ゴドーを待ちながら』――統合失調症的な要素
高橋正雄

●映画に見るリハビリテーション
「本気のしるし 劇場版」――パーソナリティ障害のメタファーとしても光を放つ
二通 諭

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