総合リハビリテーション Vol.49 No.1
2021年 01月号

ISSN 0386-9822
定価 2,530円 (本体2,300円+税)

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今月のハイライト 神経再生医療とリハビリテーション

 再生医療は多くの臨床場面で革新的な治療につながる医療と期待され,医療者および患者から強い関心をもって見守られています.特に,リハビリテーションの領域では,神経系の障害をもった患者(肢体不自由,視覚障害,など)にとって,日常生活や社会生活の改善に大きな期待が寄せられています.
 本特集では,神経細胞や神経系疾患分野における再生医療の研究の最前線について,特にリハビリテーション医療と関係の深い神経系の疾患において,再生医療がどのような役割を担っているか,今後の課題を含めて各領域の専門家に解説をお願いしました.

脳梗塞 本望 修氏
 現在,脳梗塞に対する自家骨髄間葉系幹細胞(MSC)を用いた医師主導治験が進行中である.MSC移植の効果は,移植(ドナー)細胞とホスト(レシピエント)細胞の反応の総和であり,多彩な作用メカニズムが時間的かつ空間的にも多段階的に作用することが特徴である.MSC移植を受けた患者の機能回復過程は,従来の脳梗塞の回復過程とは異なった回復を呈することから,再生医療におけるリハビリテーションの目標設定や治療戦略の抜本的な見直しが必要である.「先駆け審査指定制度」など,神経再生医療を取り巻く制度にも言及がある.

脊髄損傷の再生医療とリハビリテーション 田代祥一氏
 損傷脊髄の時期特異性が明らかとなり,細胞移植には受傷2~4週後の亜急性期が至適時期と考えられている.リハビリテーションがもたらす分子的変化の観点より,生着した移植細胞から分化した神経細胞が,残存する宿主の神経システムに統合され機能するためには,リハビリテーションによる再学習の過程が重要な役割を果たす.残念ながら,リハビリテーションと再生医療の併用に関する研究報告が少ないのが現状である.

パーキンソン病に対する再生医療とリハビリテーション 森実飛鳥氏ら
 細胞移植治療は失われたドパミン神経細胞に代わり,外から必要な神経細胞を補充するという治療である.2018年より人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いたパーキンソン病(PD)への細胞移植治療が医師主導治験として開始された.効果は2~3年をかけて徐々に現れるが,この期間はドナー細胞とホスト細胞の機能的結合が形成されるのに必要であると考えられている.中枢神経系疾患,特にPDに対する細胞移植治療と運動療法を組み合わせた研究報告は少ない.臨床経験的にリハビリテーションの中枢神経系疾患における有効性が実感されるのとは別に,科学的エビデンスとして有効性を示し,メカニズムを解明するのは容易ではないからである.

網膜再生医療と視覚リハビリテーション 秋葉龍太朗氏ら
 網膜再生医療に関する最先端の知見がわかりやすく紹介されている.網膜シート移植による機能回復がたとえ成功しても,疾患が生じる前の状態に網膜を復元することは困難である.ロービジョンという概念は再生医療を臨床応用する際には特に理解が必要である.ロービジョンケア(視覚リハビリテーション)は,根本的な視機能回復というより,視機能の変化に応じて生活様式を適応させ,補助具などを用いて自分の生活に必要な行為を行えるよう訓練することである.

再生医療とリハビリテーション 伊藤明良氏ら
 再生医療がリハビリテーション分野に引き起こす変化として,リハビリテーション治療に反応する時間窓が広がること,回復段階・様式が異なる可能性,ゴール設定が変わる可能性,移植細胞やその周辺微小環境へ介入方法創出など,従来と異なるリハビリテーションのあり方を検討する必要性が述べられている.また,今後の課題として,再生リハビリテーション研究の難しさ,動物実験の限界,臨床試験の課題,リハビリテーション専門職の参画について言及がある.

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価格については医書.jpをご覧ください。

脳梗塞
本望 修

脊髄損傷の再生医療とリハビリテーション
田代祥一

パーキンソン病に対する再生医療とリハビリテーション
森実飛鳥,他

網膜再生医療と視覚リハビリテーション
秋葉龍太朗,他

再生医療とリハビリテーション
伊藤明良,他


●ひと
第58回日本リハビリテーション医学会学術集会会長になられた和歌山県立医科大学リハビリテーション医学講座教授
田島文博氏 梅津祐一

●入門講座 3Dプリンタを使ってみよう!③
頸髄損傷者における3Dプリンタ自助具の導入と課題
水谷とよ江

●実践講座 摂食嚥下訓練のすすめ方①
摂食嚥下リハビリテーションにおける間接訓練の意義と選択方法
福岡達之

●研究と報告
頸部郭清術後の頭頸部がん患者における肩や頸部の疼痛とQOLの関連性
村田絵吏,他

●短報
急性期病院における上腕筋周囲長・下腿周囲長の調査結果
小林龍生,他

Mixed realityを用いた視空間認知機能の新しい評価法の検討
羽田 崇,他

●集中講座 評価法の使い方 シリーズ2 各論①
脳血管障害・脳損傷
高倉朋和,他

●リハビリテーション関連職種のキャリアサポート③
ソーシャルワーカーにおける実践
田中千枝子

●カンファレンスをどうしていますか? ①
総合リハビリテーションセンター<医療>
佐藤多美子

●Sweet Spot文学に見るリハビリテーション
ソポクレスの『オイディプス王』――治療者としてのクレオン
高橋正雄

●映画に見るリハビリテーション
「友達やめた。」――アスペルガー症候群女性と聴覚障害女性による現代友達論
二通 諭

●学会印象記
第57回日本リハビリテーション医学会学術集会
石原晶子

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