総合診療 Vol.34 No.10
2024年 10月号
特集 化かしが得意なカメレオンな疾患を捕まえろ! よくある騙され方のゲシュタルト
ISSN | 2188-8051 |
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定価 | 2,860円 (本体2,600円+税) |
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Editorial
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騙されないための経験知をインプットしよう!
佐藤直行(ハートライフ病院 総合内科)
医学の中で、私が“ゲシュタルト”という言葉に初めて出合ったのは、2013年に発刊された『診断のゲシュタルトとデギュスタシオン』 1)(金芳堂)を手に取った時でした。当時、わりと厳しい病院の研修医だった私は、コモンな疾患ですら診断するのに難渋する日々を過ごしており、「医学の中に数多ある疾患をうまく診断できるようになる日など来るのだろうか…」と途方に暮れていました。忙しい臨床現場でも自分で経験できる疾患には限りがあり、その少ない経験だけではうまく疾患を見抜く眼はなかなか養われません。研修医であれば尚更で、未熟者だった私は、さまざまな非典型的な臨床像に簡単に騙されていました。「この症状からこの疾患を想起するのか…」と悔しい思いをしていた頃に出合ったその名著には、great physicianである高名な先生方の豊富な経験知が詰め込まれていました。great physicianがどのように疾患を見抜いているのか、経験を通してしか身に付けられないはずの「疾患の全体像(ゲシュタルト)を捉えるための見識」が散りばめられた内容に、私は強い衝撃を受けたものです。まさに「巨人の肩の上に乗る矮人*」の感覚でした。
とはいえその後も、臨床をやればやるほど、疾患の取りうる臨床像の幅の広さに驚かされると共に、未だに臨床の奥深さを実感し続ける日々です。以前よりも騙されにくくなったとは感じていますが、その要因の1つとして、疾患が騙してくる時の“化け方”にはゲシュタルトがあり、経験知としてのストックが増えてきたことが挙げられます。その“化け方”とは、最近で言うところの「カメレオン」にあたるのでした。診断学の領域で「ミミック」という言葉がよく使われるようになりましたが、「カメレオン」という概念は、ある疾患がとりうる臨床像の幅を認識することにも役立ちます。ミミックもカメレオンも、偉大な先人たちの叡智の結晶であり、騙されないための大切な教訓を含んでいますが、カメレオンのほうはまだあまり認知されていません。
そこで本特集では「よくある騙され方のゲシュタルト」のコンセプトのもと、さまざまな臨床像をとりうるコモンな疾患をうまく見抜き、診断できるようになるため、臨床現場の第一線で活躍されている先生方に、各疾患で騙されやすくなる状況や厄介なカメレオン疾患について解説いただきました。また、疾患の臨床像の幅を“見える化”するための「カメレオンチャート」も経験ベースで作成いただいています。読者の方が感じている頻度とは若干のズレがあるかもしれませんが、診療するセッティング(施設規模や診療科など)によって遭遇しやすい臨床像が変わるのは“あるある”なので、立場の違いで疾患の捉え方が変わることも楽しんでいただければと思います。どの解説もクリニカルパールと経験知が満載で、「疾患の捉え方の幅が広がること間違いなし!」と自信を持ってお届けします。よくある騙され方のゲシュタルトをインプットしていただき、次に現場で出合うカメレオンな疾患たちを巨人の肩の上から見抜いていただければ幸いです。
*先人たちの偉大な業績の積み重ねの上に現在の学問や技術があり新たな発見がある、ということを表現した隠喩。Google Scholarのトップページにも掲げられている。
文献 1)岩田健太郎(編):診断のゲシュタルトとデギュスタシオン.金芳堂、2013.
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医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。
特集 化かしが得意なカメレオンな疾患を捕まえろ!──よくある騙され方のゲシュタルト
企画:佐藤直行
■化かしが得意なカメレオンな疾患たち
①成人急性ヒトパルボウイルスB19感染症
佐藤直行
②結核
山口裕崇
③梅毒
岩田健太郎
④感染性心内膜炎
官澤洋平
⑤悪性リンパ腫
林 寧|上原孝紀
⑥偽痛風
山本恭資|金城光代
⑦甲状腺機能低下症
又吉貴也|佐藤直行
⑧脳梗塞
山本大介
⑨急性大動脈解離
神野 敦
⑩アナフィラキシー
坂本 壮
⑪尿路結石
鈴木智晴
⑫ビタミンB1欠乏症
冨山嘉月|本田優希
■コラム
脊椎・脊髄病変からの胸痛や腹痛
石塚晃介
ミミックとカメレオンはどう違う?
今月の「めざせ! 総合診療専門医!」問題
●Editorial
騙されないための経験知をインプットしよう!
佐藤直行
●ゲストライブ 『「卓越したジェネラリスト診療」入門』出版記念座談会
医師人生は長い! じっくり登ろう「卓越」の山──「卓ジェネ」や「家庭医療」はハードルが高いか?
松村真司|藤沼康樹|志水太郎
●アスクレピオスの杖|想い出の診療録|54
医師としての使命
斎田瑞恵
●What's your diagnosis?|262
あんまんだけじゃない
河田 薫|陣内牧子|小山 弘
●オール沖縄! カンファレンス Ver.2.0|レジデントの対応と指導医の考え|93
ただの酒飲みの誤嚥性肺炎じゃない?──うまくいかない時は立ち止まって考えよう!
大谷哲平|今村 恵|鈴木智晴、他(監修)
●臨床教育お悩み相談室|どうする!?サロン|18
「クイズ・ちょうどえぇ」──“距離感”とは何か? を考える
佐田竜一|木村武司|長野広之
●臨床医のためのライフハック|限りある時間を有効に使う仕事術|19
会議──効率的に会議を行うには?
中島 啓
●ジェネラリストに必要な ご遺体の診断学|19
腐敗したご遺体と孤独死
森田沙斗武
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