総合診療 Vol.34 No.1
2024年 01月号

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「診断エクセレンス」とは、一定の時空間の中で正確な診断をタイムリーに行うことを意味する。そして「フィジカル(身体診察)」は、迅速・簡便・低侵襲・低コストであり、診断エクセレンスのための必須スキルである。また、全人的なヒーリングにもつながるタッチとしての役割もある。しかし、既存の教科書を読むだけでは、「エクセレンス」をもたらすフィジカルのノウハウを習得することは困難である。
そこで考えたのが、メタバース的な“体験型”の臨床クイズである。各執筆者がフィジカルで「診断エクセレンス」を実体験したケースを、読者がアバター的に追体験し、ゲーミング的世界のなかでフィジカルについての重要な決断を行い、そのフィードバックを直ちに得られる構成とした。脳内辺縁系に深く突き刺さる感動を味わうことで、フィジカルによる診断エクセレンスを再現できる実力をつけてもらいたい。

ISSN 2188-8051
定価 2,860円 (本体2,600円+税)

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「Art and Science」としての「History and Physical」

徳田安春(臨床研修病院群 プロジェクト群星沖縄)

 オスラー先生は「医学はScienceに基づくArtである」と述べた。「Art and Science」という言葉は、それ自体が1つの単語でもある。特にこれを反映している臨床スキルは「History and Physical」だ。これも1つの単語である。実際、病歴と身体所見は不可分だ。腹部膨満という病歴は、視診でも腹部膨満という身体所見になる。本特集では、診断に役立った「Physical」のリアルストーリーを集めた。全て貴重なリアルエピソードだ。
 Physicalは、検査としての側面もあるが、純粋な検査ではない。身体所見の感度・特異度などの検査特性を比較して、それが低いからといって「この身体所見には意味がない」などと言うのはやめたほうがよい。たとえば、左の肩痛を自覚する「心筋梗塞」のケースは稀にある。これを感度・特異度で示すと、両方ともかなり低いだろう。この病歴を感度・特異度で表現することはない。むしろ、このような「放散痛」は診断エラーを防ぐための注意すべき症候だ。急性虫垂炎における「腸腰筋徴候」と「閉鎖筋徴候」の検査特性も高くない。しかし、「急性虫垂炎」を疑うケースにおいてMcBurney点の圧痛陰性のケースであれば、必須の手技である。「盲腸後部や骨盤内部に存在する虫垂炎」というサブグループでの診断価値は高いのだ。「ある症候が陽性となるのはどんなサブ病態か」を解剖と生理で考えるべきだ。
 臨床では「Art and Science」としての「History and Physical」が重要であり、現場での豊かな気づきが医療の質を向上させるのだ。


鈴木智晴(浦添総合病院 病院総合内科)

 人工知能の診断支援が進化しても、医師の手による診察の価値は変わらないと思います。それはAbraham Verghese医師がTED(Technology Entertainment Design)でのレクチャー「医師の手が持つ力」で語った“儀礼”としての身体診察だけではなく、フィジカルが診断に直結するという事実を、徳田安春先生のベッドサイド回診で何度も目撃し、私自身も幾度も経験しているためです。
 須藤博先生(大船中央病院)曰く、フィジカルの伝達に必要なことは「患者さんにその身体所見があり、その所見をとれる指導者が居て、その場にそれを学びたい学習者が居ること」であり、指導者と患者さんの協力なしにフィジカルを学ぶのは難しいように思われます。本特集は、フィジカルの達人である先生方が厳選した、身体診察が診断の鍵となった実際の症例シナリオを読者が追体験し、メタな視点に立ってフィジカルを学習するという挑戦的なものです。各シナリオの冒頭に、医師の人物像や診療の状況が提示されています。ぜひ登場人物になりきってシナリオに没入していただき、各執筆者の素晴らしいガイドも頼りに、楽しく真剣にフィジカルを学んでいただきたいと思います。どの症例も学びが多く、ご執筆いただいた先生方に心より御礼申し上げます。
冬の夜、熱気で曇る救急外来で、専攻医は患者と共闘し続ける。診断につながる「フィジカル」は何か?──その答えが患者を救うための鍵となる。
 “フィジカルの達人”による導きを、ぜひ体感してください!

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医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。

特集 “体験型”臨床クイズで習得する! フィジカル診断エクセレンス
企画:徳田安春│鈴木智晴

①呼吸器──急性呼吸不全
名嘉祐貴│平島 修

②循環器──呼吸困難──多職種でフィジカルを共有する
伊藤大樹

③腹部──急性腹症
鈴木智晴

④脳神経疾患──「孫が胃腸炎なんです」
矢吹 拓

⑤内分泌・代謝──10年以上続く原因不明の全身痛
髙瀬了輔│片岡仁美│大塚文男

⑥腎疾患──急性腎障害の原因は…?
須藤 航

⑦整形内科──「痛みがどこに行ってもよくならないんです!」
和足孝之

⑧リウマチ・膠原病──関節炎
山本恭資│金城光代

⑨婦人科疾患──夜間頻尿・排尿困難
嘉陽真美

⑩小児──歩行の異常
利根川尚也

⑪悪性腫瘍──高LDH血症
服部 聡│萩原將太郎

⑫全身疾患の皮膚所見──手指の腫脹・疼痛
鵜山保典│山中克郎

[コラム]在宅医療におけるフィジカル診断
藤沼康樹

今月の「めざせ!総合診療専門医!」問題


●Editorial
「Art and Science」としての「History and Physical」
徳田安春│鈴木智晴

●新春特別座談会 ゲストライブ~Improvisation|25
次世代の“日本版ホスピタリスト”の役割
小坂鎮太郎×日下伸明×徳田安春

●What's your diagnosis?|253
黒い限定ベンツ
井岡 修│明保洋之

●対談|医のアートを求めて|6
医療×音楽 「好き」を追求して生きる──歌手として、そして医師として【前編】
アン・サリー│平島 修

●オール沖縄! カンファレンス Ver.2.0|レジデントの対応と指導医の考え|84
イライラそわそわ変な患者さん……それって不安が強いだけ?
江川愛祐美│上原圭太│知花なおみ│仲里信彦、他(監修)

●Dr.上田剛士のエビデンス実践レクチャー!|医学と日常の狭間で|患者さんからの素朴な質問にどう答える?|46
眉毛や睫毛が伸びる
上田剛士

●ジェネラリストに必要な ご遺体の診断学|10
ご遺体の検査① 後頭窩穿刺
森田沙斗武

●アスクレピオスの杖|想い出の診療録|45
凍りついたSLE症例
北野夕佳

●臨床医のためのライフハック|限りある時間を有効に使う仕事術|10
臨床研究② 忙しい臨床医の「論文」執筆術
中島 啓

●臨床教育お悩み相談室|どうする!?サロン|12
“difficult teaching encounters”にも「SOAP」を使ってキレイに解決!
佐田竜一│木村武司│長野広之

●投稿 GM Clinical Pictures
浮腫の所見から鑑別に有用と思われる検査は何か?
松本知己│市村尚之│玉野井徹彦

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