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医学部、歯学部、薬学部、看護学部等(看護師等学校養成所)の医療系教育機関における著作物の利用について

著作権法第35条について

著作権法第35条第1項は、学校その他の教育機関が授業の過程における利用に供することを目的とする場合、その必要と認められる限度において、無許諾で著作物を複製(複写・複製機器による紙その他の媒体への有形的再製)し、若しくは公衆送信等(インターネットその他の通信回線による送信及び通信機器への蓄積等)利用i できることを規定しておりますが、同規定はその「但し書き」において、利用する「著作物の種類及び用途並びに当該複製の部数及び当該複製、公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合」は、無許諾では利用できないと付記しています。
つまり、この「但し書き」に該当する場合には、著作権法第35条第2項に規定する補償金を支払ったとしても無許諾で複製あるいは公衆送信等利用することはできず、権利者の許諾と所定の使用料の支払いが必要になります。
 

この「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」について、弊社では以下のように考えています。

医学・医療系教育機関と弊社が発行する出版物について

医学・医療系教育機関における授業の殆どは、当該領域の専門職養成を目的とした専門教育であり、一部の例外を除いて、教育を受けた学生は国家資格を得て当該領域の専門職になります。
 

一方、弊社が発行する書籍、雑誌等の出版物は、その大半が当該教育機関に在籍する学生あるいは専門職としての医療従事者を利用者として想定し、それぞれ購入して利用していただくことを前提にしています。
 

このような出版物を医学・医療系教育機関における授業(演習、実習等も含みます。)で利用する場合、著作権法第35条第1項「但し書き」との関連が問題となりますが、上記の通り、弊社が発行する出版物は、当該教育機関の学生あるいは専門職としての医療従事者が授業において使用するため購入して利用していただくことを前提にしていることから、それが購入されずに著作権法の規定によって無許諾・無償あるいは無許諾・補償金で利用されることは、当該出版物の販売に大きな影響を及ぼすものと考えます。当該教育機関では学生向けの教科書(具体的には弊社発行の標準教科書シリーズ、新臨床内科学、内科診断学、系統看護学講座等の教科書群等)・参考書、辞書・事典類の利用、またそれ以外にも専門職向けの臨床書、研究書、マニュアル、各種指針書、専門雑誌等の利用もあると思います。教科書・参考書等についてはもとより、当該教育機関に在籍している学生は、ほぼその殆どが卒業後は専門職として医療関連業務に従事することから、専門職向けの出版物も教育課程においては重要かつ利用価値の高い著作物であり、教材として十分その役割を果たすものと考えます。

許諾の必要性について

前項の考え方を前提とし、弊社としては、前項記載の出版物はもとより、基本的には弊社が発行し著作権を有する全ての出版物に掲載された図表等の著作物を、医学・医療系教育機関における授業等で学生全員が購入することなく複製配布あるいは公衆送信することは、一定の限られた場合を除き、著作権法第35条第1項が規定する「但し書き」(著作権者の利益を不当に害することとなる場合)に該当すると考えております。出版物の複製・公衆送信利用が、一回あるいは一授業単位における一単位出版物(書籍1冊又は雑誌1冊をいいます。以下同じ。)からの利用が少数、小部分であっても、恒常的(定期的、・反復的である場合をいいます。以下同じ。)に行われ、それが結果的に多数の出版物から年間通して一定数以上の文章・図表等が利用され学生に配布・配信されるのであれば、下記記載の「採用品の利用」の場合を除き許諾が必要であると考えます。
 

従って、著作権法第35条第1項で定められた無許諾で利用できる範囲を超える授業の過程における著作物の利用にあたっては、弊社あるいは弊社がその権利の管理を委託している一般社団法人出版者著作権管理機構(JCOPY)から個別あるいは年間包括許諾(教育目的利用JCOPYライセンス)ii を得て、所定の使用料をお支払いいただきたいと考えます。そうすることによって教育機関はその都度権利者から許諾を得る必要はなくなり、著作権侵害のリスクが軽減され、同時に本来の出版物等の発行と流通を確保すると共に、利用にかかる使用料を適切に著者に還元し、知的財産権の確保と著作物創作の循環サイクルを確保することが可能になると考えております。

著作権法第35条第1項「但し書き」の該当基準

教育機関による著作物の複製・公衆送信利用が著作権法第35条第1項「但し書き」に該当するか否か(無許諾で利用できるか否か)の判断については、著作権法にも明確な基準が示されておらず、条文通り、著作物の種類及び用途並びに当該複製の部数及び当該複製、公衆送信又は伝達の態様に照らして適切に判断することが求められております。
弊社の出版物は、前述した通り、その殆どが医学・医療系教育機関(医療施設を含む)において利用されることを想定していますので、但し書きに関連する基準に関して、弊社としては以下の通りに考えております。
 

1.一利用単位(たとえば、授業であれば原則として1回の授業を基準とします。以下同じ。)、一授業における一単位出版物からの弊社が著作権を有する利用著作物数が少量であり、かつ当該単位出版物の中で当該著作物が占める割合が小さい場合
①弊社が著作権を有する著作物そのものを複製し、単体で資料として利用する場合において、その利用が非恒常的(定期的、反復的でない場合をいいます。以下同じ。)である場合は、「但し書き」に該当しない(無許諾で利用可能である)と考えますが、その利用が恒常的である場合は、「但し書き」に該当する(許諾が必要である)と考えます。
②複数の著作物を掲載した教材(印刷(コピーを含む)、製本(簡易製本、電子的パッケージ等を含む)等により一定期間利用できるように作成されたもの)として利用する場合において、教員ご自身が著作権を有する多数の著作物の中に弊社が著作権を有する少量の著作物が含まれる場合であり、かつ非恒常的に利用する場合は「但し書き」に該当しない(無許諾で利用可能である)と考えますが、その利用が恒常的である場合は「但し書き」に該当する(許諾が必要である)と考えます。
③複数の著作物を掲載した教材(印刷(コピーを含む)、製本(簡易製本、電子的パッケージ等を含む)等により一定期間利用できるように作成されたもの)として利用する場合において、当該教材の中に弊社が著作権を有する著作物があり、しかも当該教材に含まれる著作物の殆どが、教員ご自身以外の第三者が著作権を有する著作物(第三者著作物の寄せ集め。但し、それぞれの利用に際して当該権利者から許諾を得ている場合は除く。)の場合は、その利用が恒常的であるか非恒常的であるかにかかわらず、「但し書き」に該当する(許諾が必要である)と考えます。
 

2.一利用単位、一授業における一単位出版物からの弊社が著作権を有する利用著作物数が少量であるが、当該単位出版物のなかで当該著作物が占める割合が大きい場合は、その利用が恒常的であるか非恒常的であるかにかかわらず、「但し書き」に該当する(許諾が必要である)と考えます。
 

3.一利用単位、一授業における一単位出版物からの利用著作物数が少量を超える場合は、その利用が恒常的であるか非恒常的であるか、一点の単位出版物のなかで当該著作物が占める割合が小さいか大きいかにかかわらず、「但し書き」に該当する(許諾が必要である)と考えます。
 

以上をまとめると以下のようになります。
 

書籍1冊・雑誌1冊からの利用著作物数 少量 少量を超える
当該出版物の中で利用著作物が占める割合 割合を問わない
利用形態 単体 製本(電子パッケージを含む) 利用形態(単体/製本)を問わない 利用形態(単体/製本)を問わない
他の利用著作物は教員自身の著作物 他の利用著作物は教員以外の第三者の著作物
非恒常的利用 但し書きに該当しない(無許諾で利用可能) 但し書きに該当しない(無許諾で利用可能) 但し書きに該当する(許諾が必要) 但し書きに該当する(許諾が必要) 但し書きに該当する(許諾が必要)
恒常的利用 但し書きに該当する(許諾が必要) 但し書きに該当する(許諾が必要)
「少量」あるいは「恒常的」等の基準は、あくまで著作権者の利益を不当に害するか否かの判断要素であって、出版物の種類、内容あるいは時間経過の中で個々の状況によって総合的に判断せざるを得ないことから、一定の数値的基準を示すことは困難です。考慮すべき点は出版物の目的に沿って正しく著作物を利用し、著者と著作権者及び流通を担う出版社の活動に影響があるか否かであり、弊社として最終的には個別のケースごとに検討することになります。

採用品の利用

(「許諾不要で無償利用」できる場合と「許諾不要だが補償金(有償)の対象」となる場合)
採用品として学生全員が出版物を購入してご利用いただいている場合、その授業の過程における当該採用品出版物の複製利用(公衆送信利用は除く)は一般的には「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」とはなりませんiii ので「但し書き」には該当せず、権利者の許諾なく無償で利用することが可能です。また、その公衆送信利用は権利者の許諾なく利用することが可能ですが、著作権法第35条第2項に規定される補償金の対象となり、SARTRASへ補償金を支払う必要があります。

弊社出版物を採用された場合について

前項にかかわらず、弊社は採用品として学生全員が購入してご利用いただいている当該出版物を、当該教育機関に在籍する学生、教職員が当該教育機関の内部で利用すること(授業利用、自習利用、教職員間利用等を含みます。)を目的として複製あるいは公衆送信利用することについては、当該教育機関からの申し出によって無償で許諾致します。従って、弊社が許諾した部分に限っては前項の補償金の対象からは除外されます。
 

なお、上記の「当該教育機関の内部」は、当該教育機関の在籍学生、所属教職員間であれば場所を問いません(学校と自宅間、交通機関による移動中等を含みます。)。
 

また弊社では、弊社発行のテキストシリーズ(系統看護学講座、標準保健師講座、助産学講座、新看護学、標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野、標準理学療法学 専門分野、標準作業療法学 専門分野、標準言語聴覚障害学、言語聴覚士のための基礎知識、標準理学療法学・作業療法学・言語聴覚障害学 別巻。各シリーズ電子版含む)をご採用いただいた医学・医療系教育機関様に対しまして、採用品に掲載される図表のデジタルコンテンツ(一部を除く)を収載した「医学書院図表サービス」を無償で提供しています。同サービスを活用いただければ、当該授業をご担当される先生方が同サービスのコンテンツを受講生に配布したり、閲覧させたり、授業用資料に複製したりして利用することができます。ぜひご検討ください。

「改正著作権法第35条運用指針」について

「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」を含む著作権法第35条の様々な要件に関する判断基準については「著作物の教育利用に関する関係者フォーラム」が「改正著作権法第35条運用指針(令和3(2021)年度版)」を制定し、下記のサイトで公開しておりますのでご参照下さい。

https://sartras.or.jp/wp-content/uploads/unyoshishin_20201221.pdf
 

なお、上記運用指針の17ページに「全部を複製又は公衆送信しても著作権者等の利益を不当に害することとはならない可能性が高い例」として「雑誌等の定期刊行物で発行後相当期間を経過したものに掲載された記事等の言語の著作物」とありますが、全部を利用できることに対する判断基準としてはそれだけでなく、16ページにもある通り「当該論文が市場に流通していないこと」も含めて総合的に判断する必要があります。現在弊社では発行雑誌の全て(バックナンバー、休刊、廃刊等過去に発行されたものも含みます)を弊社ならびに医書ジェーピーの電子配信サイト(https://store.isho.jp/)において雑誌単位ならびに記事・論文・文献単位で販売しております。このことから考えて、弊社は弊社が発行する定期刊行物に掲載された記事・論文・文献等に関して、その全部を複製又は公衆送信しても著作権者等の利益を不当に害することとはならない著作物は、定期刊行物発行後の経過期間にかかわらず、当該著作物が電子媒体あるいは紙媒体により市場に流通していない、あるいは購入できない記事・論文・文献等に限定されるものと判断しております。
現在、上記フォーラムでは「市場に流通していないこと」と「発行後相当期間が経過していること」との関係について更に検討を加え、上記運用指針を明確なものとする作業を行うこととしておりますが、それまでの間は上記の弊社見解も含めて適切にご判断いただきますようお願い申し上げます。
 

以上、医療系教育機関に在籍される先生方のご理解とご協力をお願い申し上げます。本書に記載の考え方は弊社の見解であり、著作権法の公的判断基準でも公的解釈でもなく、出版業界の統一した基準でもありませんのでその旨ご理解頂きますようお願い申し上げます。
 

なお、本件についてのお問い合わせは弊社総務管理部出版総務課(お問い合わせフォームはこちら)へ、JCOPYライセンスについてのお問い合わせは一般社団法人出版者著作権管理機構(JCOPY)(https://jcopy.or.jp/)へそれぞれお願いします。
 

2024年5月
株式会社 医学書院
 


無許諾で利用できる場合であっても、教育機関設置者は公衆送信利用する場合は著作権法第35条第2項の規定により、一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)へ所定の補償金を支払う必要があります。

ii  JCOPYでは「教育目的利用JCOPYライセンス」を制定し、個別利用許諾に加え、教育機関向けの年間包括契約を用意しています。教育機関は当該ライセンスの取得によって著作権法第35条第1項「但し書き」に該当する利用も含め、管理著作物の当該教育機関の内部利用(在籍学生、教職員による授業、自習、教職員間利用等の全て。利用の場所(教育機関施設、自宅、移動中等)を問わない。)については年間一律の使用料で管理著作物については全て権利者の許諾を得たものとして利用することが可能となります。

iii 出版社、権利者によってはこれと異なる判断もあり得ますのでご留意下さい。