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“問診力”で見逃さない神経症状

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神経疾患の詳しい知識がなくても、神経学的診察が苦手でも、“問診だけ”で鑑別疾患はここまで絞り込める! 『週刊医学界新聞』の好評連載が待望の書籍化。「頭痛」「めまい」「しびれ」「意識消失」などよく診る神経症状について、Common(一般的)な疾患を見分け、Critical(重篤)な疾患を見逃さない“問診力”が身につく1冊。
*「ジェネラリストBOOKS」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ ジェネラリストBOOKS
黒川 勝己 / 園生 雅弘
発行 2019年11月判型:A5頁:150
ISBN 978-4-260-03679-5
定価 3,520円 (本体3,200円+税)

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 本書は,2013年10月から2014年9月の1年間,月1回(計12回)『週刊医学界新聞』にて連載をしたものをベースにしています.連載時の11症例のほか,新たな9症例を追加して20症例(「もう一例」も合わせれば計28症例)に増やし,総論をつけたものです.
 日常臨床でよく遭遇する神経症状(頭痛・めまい・しびれなど)の原因の多くは一般的な疾患であり,緊急対応を要するような重篤な疾患でないことがほとんどだと思います.しかし,よく診る神経症状を訴える患者の中に,時に重篤な疾患が潜んでいます.臨床医は,その重篤な疾患を見逃したくない,と思われているでしょう.ただ,非専門医にとっては神経学は難しいと感じられ,重篤な疾患を見逃さないためには,一体どうすればよいのか,と困られている方もいらっしゃるのではないでしょうか.
 私たち脳神経内科医は,臨床神経学にとって最も大切なことは病歴聴取(問診力)である,と思っています.重篤な疾患を見逃さないためには,神経学的所見や画像検査よりも,病歴聴取(問診力)が最も大切なのです.
 本書では,その病歴聴取のポイントについて,重篤な疾患を見逃さないために,私たち脳神経内科医が必ず聴くこと,を書きました.これさえ聴けば何でも(最終)診断がつく,というわけではありませんが,重篤な疾患を見逃さなくなる可能性が高くなると思っています.また,一般的な疾患なのに,しばしば誤診されているために治療に結びつかない疾患についても,その病歴聴取のポイントを記載しています.ぜひ,日常診療にお役立ていただけば幸いです.
 読み方としては総論から読んでいただいてもよいですし,症例を読んでポイントをつかんでいただいた後で総論を読んでいただいても結構です.どの症例から読んでもわかるような記載を心がけています.症例集で繰り返し記載している内容は,重要なところだと思ってください.
 本書を読んだことで,重篤な疾患を見逃さずに済んだ,治療に結びついた,という方が一人でも多くいらっしゃれば幸いです.そして,読んでくださった方が,さらに臨床神経学に興味を持っていただければ本当に嬉しく思います.

 本書を書くことができましたのも,ひとえに長年ご指導をいただいています,共著者である園生先生のおかげであり,深謝申し上げます.また,これまで臨床でご一緒した広島大学医学部附属病院,寺岡記念病院,川崎医科大学附属病院,安佐市民病院,広島市民病院,大田記念病院の脳神経内科や他科の先生,看護師をはじめとしたスタッフの皆さま,地域医療を支えておられる先生方に深謝いたします.また,私を支えてくれている家族に感謝します.最後になりましたが,医学書院の井上岬さんに深謝いたします.井上さんには,『週刊医学界新聞』の連載のときからかかわっていただき,毎回適切なご助言をいただきました.このたびの書籍化に際しましても,私の遅筆を根気強く待っていただき,本当に感謝申し上げます.

 2019(令和元)年9月
 黒川勝己

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第1章 総論
 非専門医が神経症状を診るために必要なスキルとは?
 コモンな症状を診るための“問診力”とは?

第2章 よく診る症状別症例集
 頭痛
  症例1:締め付けられるような頭痛
   Qその1 「頭痛が起こった瞬間,何をしていましたか?」
   Qその2 「このような頭痛は初めてですか?」
  症例2:視界がキラキラする頭痛
   Qその1 「頭痛が起こった瞬間,何をしていましたか?」
   Qその2 「これまでの頭痛と同じですか?」
   Qその3 「キラキラは頭痛の前に起こりましたか?」
  症例3:頭が重い感じのする頭痛
   Qその1 「動いていると頭痛がひどくなって困りますか?」
   Qその2 「吐気はありますか?」
   Qその3 「光が眩しいと感じたり,音がうるさいと感じたりしますか?」
  症例4:片側のみの頭痛
   Qその1 「ずきっとする痛みが,短時間,間欠的にきませんか?」
   Qその2 「目の奥が痛んで,じっとしていられないほどですか?」
 めまい
  症例5:繰り返すめまい
   Qその1 「じっとしていても,30分間ずっとめまいが続いたのですか?」
   Qその2 「めまいの最中,顔がしびれていましたか?」
  症例6:ぐるぐる回るめまい
   Qその1 「これまでに同じようなめまいはありましたか?」
   Qその2 「どういう状況でめまいが起きましたか?」
  症例7:数年前からのめまい
   Q 「頭痛はありませんか?」
  症例8:意識が遠のくようなめまい
   Qその1 「どのような状況で意識を失ったのですか?」
   Qその2 「動悸がしたり,胸が痛かったりしませんでしたか?」
 しびれ
  症例9:ビリビリするしびれ(1)
   Qその1 「しびれて動かしにくく感じますか,感覚が鈍っていますか,
          それともジンジン・ビリビリしますか?」
   Qその2 「しびれはどんなときにひどく/軽くなりますか?
          起床時はどうですか?」
  症例10:感覚が鈍い感じのしびれ
   Qその1 「いつしびれに気づきましたか?」
   Qその2 「顔にしびれはないですか?」
   Qその3 「背中の痛みやこりはないですか?」
  症例11:ビリビリするしびれ(2)
   Q 「少し前に風邪をひいたり,あるいは下痢をしたりしたことは
       ありませんか?」
 一過性意識消失
  症例12:繰り返す意識消失
   Qその1 「明らかなけいれんはありましたか?」
   Qその2 「発作中,目は開いていましたか?」
  症例13:一瞬の意識消失
   Q 「急に体がぴくついたり,物を落としたりすることはありませんか?」
 その他の症状
  症例14:筋収縮と弛緩を繰り返す(間代性)けいれん
   Q 「症状の変動はありませんか?」
  症例15:足を反らせない(下垂足)
   Q 「右足は歩き始めから反れなかったのですか?
       歩いている途中から反れなくなりましたか?」
  症例16:足をひきずる(歩行困難)
   Qその1 「症状はどのように起こりましたか?」
   Qその2 「症状の程度は同じですか?」
  症例17:急に進行するもの忘れ
   Q 「状態がよい日と悪い日がありますか?」
  症例18:もの忘れのある患者のけいれん
   Qその1 「寝ながら大声を出したりしませんか?」
   Qその2 「幻をみたりしませんか?」
  症例19:体重減少
   Q 「体のどこかで,筋肉がぴくぴくすることはありますか?」
  症例20:疲れやすい
   Qその1 「力の入りにくさは,休むとすぐに回復しますか?」
   Qその2 「症状は朝方からありますか?」

索引

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“神経症状に強い”プライマリケア医になる!
書評者: 田妻 進 (JA尾道総合病院病院長/広島大大学院客員教授)
 身体の異常,その謎解きのカギは持ち主の言葉の中にある!

 そんなメッセージを発信し続ける著者の神経症状シリーズ連載が一冊の書籍となって登場した。その名も,『“問診力”で見逃さない神経症状』,第一線でさまざまな症候に向き合うプライマリケア医,病院の総合外来・ER担当の総合診療医・総合内科医に薦めたいピットフォールを意識したポケットサイズのメモファイルである。

 プライマリケアの現場における著者自身の症例経験に基づく神経症状の謎解きは,私たち臨床医にとって悩ましい,「頭痛」,「めまい」,「しびれ」11例に加えて,「一過性意識消失」2例を含めた総計20症例の診たてで組み立てられている。それに先立つ,総論という名の基本のおさらいも親切なお膳立てとしてありがたい。

 一般臨床のプロセスが,(1)病歴聴取,(2)身体診察,(3)臨床推論,(4)検体検査・画像診断,または(4)から(3)へと進む中,疾患領域別の診察後・検査前診断率は心臓血管系67%,神経系63%,呼吸器系47%,消化器系27%(Am Heart J. 1980[PMID:7446394])とされており,神経症状は循環器症状とともに”問診力“がものをいう世界である。40年前から指摘されていながら,医療環境の著しい変化を超えてなお,医療者のわざ(技・術)が機器に優先される神経疾患領域の診療,そこに向き合う著者の本書に注ぐ情熱が随所に垣間見える。

 病歴聴取の具体的な手法として,Walk-inに対してはOPQRST(Onset, Provocation/palliative, Quality, Related/Radiation/Region, Severity, Time course),救急医療の現場ではSAMPLE(Symptom, Allergy, Medication, Past history, Last meal, Event)が汎用される中,迅速に的確に“攻めの問診”でCriticalかCommonかを見分けたい。その教科書的なテクニックを本書の貴重な例示に当てはめながら検証するのも妙である。誌面上に再生されたリアルな診療を繰り返し繰り返し振り返るとき,そのVirtual診療を通じて著者が意図した問診力が読者諸兄に醸成されているに違いない。

 デジタル情報が主体の現代にあって,ポケットサイズの本書に思い切り手垢を提供した,“神経症状に強い”プライマリケア医の誕生を楽しみにしている。
問診でここまでわかる!
書評者: 砂田 芳秀 (川崎医大教授・神経内科学)
 著者の黒川勝己先生は,園生雅弘先生の薫陶を受けた電気生理診断を専門とする脳神経内科専門医であるが,臨床現場では一貫して患者第一主義を貫き,自らgeneral neurologyを標榜しているように,そのオールラウンドな臨床能力には定評がある。学生への講義,研修医やかかりつけ医を対象とした彼の講演は大変わかりやすいと高く評価されている。本書は彼が1年にわたって『週刊医学界新聞』に連載し,好評を博した「“問診力”で見逃さない神経症状」というシリーズに総論を加え単行本としてまとめたものである。

 神経解剖の複雑さ,鑑別診断の多さ,神経診察の煩雑さのゆえだろうか,神経疾患の診療に苦手意識を持っている研修医やかかりつけ医は多い。本書はそのような方にぜひ一読してもらいたい。本書のユニークな特徴は,神経診察手技や症候学ではなく,問診の仕方にフォーカスしている点にある。頭痛,めまい,しびれ,一過性意識消失などの日常診療で遭遇することの多いコモンな神経症状を取り上げ,見逃してはいけない重篤な神経疾患の鑑別に役立つ,問診のポイントが実際の質問のせりふとともにわかりやすく解説されている。例えば,めまいを訴える患者に対して,「めまいの持続時間」に加え「顔のしびれ感」の有無を聴くことで,椎骨脳底動脈系のTIAを見逃さない。けいれん発作患者の診察に際して,目撃者から「発作中,目は開いていましたか」と聴くことで,てんかん発作を鑑別できる,など。知っているか否かで診療レベルに歴然とした差が出るようなポイントが述べられている。一読いただければ,明日から自信を持ってこうした症状の患者の診療に向き合えるようになるだろう。

 脳神経内科の名医というと,神経症候学の碩学や神経診察手技の名手のイメージを持つかもしれないが,最も大切なスキルは問診でいかに重要な情報を収集するかということであり,これが“History is everything!”と言われるゆえんである。以前,共著者の園生先生の直筆外来診療録を拝見したことがあるが,細かい字でびっしりと病歴が記載されていて圧倒された。本書の中にも,問診で得られた詳細な情報がさりげなく記載されているが,徹底して問診にこだわる姿勢には私自身が多くのことを教えられた。非専門医だけでなく専門医にもお薦めしたい一冊である。

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