緑内障治療のアップデート

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眼科診療のエキスパートを目指すための好評シリーズの1冊。薬物・レーザー・手術、いずれも変化が著しい緑内障治療の最前線を網羅。具体的な処方例、薬物療法から手術へのシフトの考え方、エクスプレスやチューブシャントなど新しい手術の適応や術式をはじめ、明日から診療に役立つ実践的知識を徹底解説。豊富な図解と画像に加え、エキスパートの手術手技が閲覧できるWeb動画付き。すべての眼科医必携の最新テキスト。

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シリーズ 眼科臨床エキスパート
シリーズ編集 𠮷村 長久 / 後藤 浩 / 谷原 秀信
編集 杉山 和久 / 谷原 秀信
発行 2015年10月判型:B5頁:424
ISBN 978-4-260-02379-5
定価 18,700円 (本体17,000円+税)

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 このたび『緑内障治療のアップデート』と題する書籍を皆様にお届けする運びとなりました.最近の緑内障治療を概観すると,薬物治療では新しい緑内障治療薬が日本にどんどん導入され,手術では流出路系の新しい術式が次々と開発され,またチューブシャント手術が保険適応となり,薬物・手術治療ともに大きく発展してきました.本書では,最新の情報を網羅して,眼科専門医・専門医志向者が読むにふさわしいアップデートされた緑内障治療を,読者にわかりやすく伝える教科書を目指しました.現在の世界・日本における最新情報と日本の緑内障エキスパートである執筆者の経験に基づいた洞察と哲学を盛り込んだ読み応えのある解説が,本書の醍醐味です.
 緑内障診療ガイドラインも第3版が発表され3年が経過し,改訂が必要な時期にきております.本書は緑内障診療ガイドラインの知識をアップデートするとともに,実際に病型別の治療ごとに薬物治療から手術へのシフトをどのようにするのか,エキスパートの先生の実際の薬物治療の処方例の解説,そして,従来からの濾過手術,流出路手術の解説に加えて,日本に新しく導入されたエクスプレスやチューブシャント手術,新しい流出路再建手術の実際や,合併症対策などを網羅した新たなスタンダードとなる教科書を皆様に提供できるように企画・編集しました.
 本書では「いかに緑内障患者を治療すべきか」というテーマで,大学病院や基幹病院,診療所で緑内障診療を実践しているエキスパートの先生方が,実地臨床と経験に基づいた最新の緑内障治療を,特に手術では動画とともに,わかりやすく解説しています.緑内障治療は,原則はあるものの患者個々人によって大いに異なります.生涯における患者の視機能とQOLを維持することが,緑内障治療のゴールであることを頭に置きながら,個々の患者に対して最適だと思われる治療を提供していくのが我々眼科医の使命です.本書が先生方読者の明日からの診療に多少なりともお役に立つことができれば,編者としてこの上なく幸いに思います.

 2015年9月
 編集 杉山和久,谷原秀信

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第1章 総説
 緑内障の治療総論-いかに緑内障患者を治療すべきか?
   I.緑内障治療は開始する前が大切
   II.常に患者のQOLを考えて治療する
   III.薬物治療の実際とアドヒアランス
   IV.どういう患者がレーザー治療の適応か?
   V.術式選択とトラベクレクトミーのコツ
   VI.病型別に具体的な治療法を考えてみよう
   VII.まとめ

第2章 病型別治療
 I 原発開放隅角緑内障(広義)
   I.概念・病態
   II.診断
   III.治療方針
   IV.薬物治療
   V.薬物治療から手術への切り替え
   VI.手術
   VII.予後
 II 原発閉塞隅角緑内障,原発閉塞隅角症
   I.概念・病態
   II.診断
   III.治療方針
   IV.薬物治療
   V.薬物治療から手術への切り替え
   VI.手術
   VII.予後
 III 落屑緑内障
   I.概念・病態
   II.診断
   III.治療方針
   IV.薬物治療
   V.薬物治療から手術への切り替え
   VI.手術
   VII.予後
 IV 発達緑内障,小児続発緑内障
   I.概念・病態
   II.診断
   III.治療方針
   IV.薬物治療
   V.手術
   VI.予後
 V 血管新生緑内障
   I.概念・病態
   II.診断
   III.治療方針
   IV.薬物治療
   V.抗VEGF薬による変化
   VI.手術治療と予後
 VI ぶどう膜炎続発緑内障
   I.概念・病態
   II.診断
   III.治療方針
   IV.薬物治療
   V.薬物治療から手術への切り替え
   VI.手術
   VII.予後
 VII ステロイド緑内障
   I.概念・病態
   II.診断
   III.治療方針
   IV.薬物治療
   V.薬物治療から手術への切り替え
   VI.手術
   VII.予後
 VIII 悪性緑内障
   I.概念・病態
   II.診断
   III.治療方針
   IV.薬物治療
   V.薬物治療から手術への切り替え
   VI.手術
   VII.予後
 IX 外傷性緑内障
  A 非穿孔性眼外傷
   I.概念・病態
   II.診断
   III.治療
  B 穿孔性眼外傷
   I.概念・病態
   II.診断
   III.治療
  C 予後
  Topics
   サイトメガロウイルス角膜内皮炎・虹彩炎における緑内障

第3章 薬物治療の実際
 I 薬物治療の原則と方法論
   I.緑内障薬物治療の原則
   II.治療計画
   III.薬物治療の概要
   IV.点眼指導
 II 片眼トライアルによる単剤治療の開始
   I.緑内障診療ガイドラインと片眼トライアル
   II.眼圧下降薬の効果判定の必要性
   III.眼圧変動が眼圧下降薬の効果判定に及ぼす影響
   IV.片眼トライアルによる眼圧下降薬の効果判定と留意点
   V.片眼トライアルの有用性
   VI.正しい片眼トライアルのあり方
 III 両眼トライアルによる薬効の直接比較
   I.緑内障治療薬の効果判定の難しさ
   II.PG関連薬片眼トライアルに代わる両眼トライアルとは
   III.やはり薬剤反応性は変動する
   IV.実際の診療におけるPG関連薬両眼トライアル
   V.両眼トライアルによる薬剤評価の注意点
 IV 単剤処方
   I.プロスタグランジン関連薬
   II.β遮断薬
   III.α2刺激薬
   IV.炭酸脱水酵素阻害薬
   V.交感神経α1受容体遮断薬
   VI.受容体非選択性交感神経刺激薬
   VII.副交感神経作動薬
   VIII.ROCK阻害薬
 V 多剤併用-プロスタグランジン関連薬の次の一手は?
   I.PG関連点眼薬への追加投与の考え方
   II.併用療法の実際
   III.PG関連点眼薬への追加投与の眼圧下降効果
   IV.PG関連点眼薬への追加投与の副作用
   V.PG関連点眼薬への追加投与のアドヒアランス
 VI アドヒアランスを考えた薬物治療と手術へのシフト
   I.アドヒアランスの重要性
   II.アドヒアランスの把握
   III.アドヒアランスを最大化する治療
   IV.手術治療へのシフトを考慮する時

第4章 レーザー治療
 I レーザー線維柱帯形成術の適応,術式,成績
   I.作用機序
   II.LTPの長所と短所
   III.手技
   IV.適応と成績
   V.再照射の適応
   VI.合併症と対策
 II 第一選択治療としての選択的レーザー線維柱帯形成術
   I.第一選択治療としてのSLTの適応
   II.第一選択治療としてのSLTの施行方法
   III.第一選択治療としてのSLT治療成績
   IV.点眼治療中の連続正常眼圧緑内障症例に点眼を休薬して施行したSLTの効果
   V.正常眼圧緑内障におけるSLTによる眼圧日内変動への影響
   VI.SLTの治療効果予測
   VII.第一選択治療としてのSLTの合併症
   VIII.SLT再照射の有効性
 III レーザー虹彩切開術の適応,術式,成績
   I.LPIの適応
   II.LPIの術式
   III.LPIの眼圧下降成績
 IV アルゴンレーザー虹彩切開術後の水疱性角膜症と角膜内皮移植
   I.ALI後水疱性角膜症の疫学
   II.ALI後水疱性角膜症の発症機序
   III.ALI後水疱性角膜症の外科的治療法

第5章 トラベクレクトミー
 I トラベクレクトミーの奏功機序
   I.歴史
   II.術後の房水の流れ
   III.経結膜的な房水流出
   IV.ブレブ瘢痕化の臨床形態
   V.ブレブ瘢痕化の分子メカニズム
   VI.線維芽細胞のバイオロジーとマイトマイシンC
 II 手術適応
   I.眼圧下降の目標
   II.点眼薬の眼圧下降作用
   III.トラベクレクトミーの眼圧下降作用
   IV.トラベクレクトミーの合併症
   V.年齢の影響
   VI.トラベクレクトミーの適応
 III 周術期の標準的な管理
   I.術後診察のポイント
   II.濾過不足の対処
   III.過剰濾過の対処
   IV.濾過胞からの房水漏出
   V.毛様体ブロック
   VI.退院およびその後
 IV 手術テクニックのコツと落とし穴
  A 円蓋部基底
   I.結膜切開
   II.結膜縫合
   III.結膜漏出の確認
  B 輪部基底
   I.結膜切開
   II.結膜縫合
  C エクスプレス
   I.エクスプレスの原理と特徴
   II.エクスプレスの利点と成績
   III.エクスプレスの適応と禁忌
   IV.エクスプレス併用濾過手術の手順と注意
   V.術中合併症とその対策
 V 術中・術後のトラブルシューティング
   I.高齢者の薄い結膜の対処法(Tenon嚢の前転縫着法)
   II.強角膜ブロック切除および虹彩切除後の硝子体脱出での対処法
   III.過剰濾過への対処法
   IV.結膜からの房水漏出の対処法
   V.虹彩がwindowに嵌頓したときの対処法
   VI.overhanging blebに対する処置
   VII.平坦な濾過胞に対するlate needling
   VIII.濾過胞感染の鑑別診断
 VI 難治例の攻略法
  A 白内障・硝子体手術既往眼への対策
   I.内眼手術既往眼におけるトラベクレクトミーの背景と問題点
   II.白内障手術既往眼への対策
   III.硝子体手術既往眼への対策
  B 血管新生緑内障
   I.患者のサポート体制の整備
   II.網膜虚血の改善
   III.トラベクレクトミー前の硝子体手術
   IV.血管新生緑内障に対するトラベクレクトミー
  C ぶどう膜炎続発緑内障
   I.術前診断と管理
   II.手術方法
   III.術後管理
   IV.予後
  D アミロイド緑内障
   I.概念・病態
   II.診断
   III.治療方針
   IV.トラベクレクトミー
  E 小児緑内障
   I.適応と禁忌
   II.手術手技の実際と注意点
   III.術後管理
   IV.合併症と対策
   V.術後成績

第6章 チューブシャント手術
 I インプラントの種類と特長
   I.バルベルト緑内障インプラント(BGI)
   II.アーメド緑内障バルブ(AGV)
 II 手術適応
   I.ミニチューブの適応
   II.ロングチューブの適応
   III.治療成績
   IV.プレートの大きさと眼圧調整力
 III 周術期の標準的な管理
   I.チューブシャント手術後の眼圧変動
   II.術直後の低眼圧に関連する合併症とその対策
   III.術後高眼圧
 IV 手術テクニックのコツと落とし穴
  A バルベルト緑内障インプラント
   I.バルベルト緑内障インプラントのモデルと構造
   II.バルベルト緑内障インプラントの成績と適応
   III.バルベルト緑内障インプラント挿入術の手順
  B アーメド緑内障バルブ
   I.アーメド緑内障バルブのモデルと構造
   II.アーメド緑内障バルブの成績と適応
   III.アーメド緑内障バルブ挿入術の手順
 V 術中・術後のトラブルシューティング
   I.術中のトラブルシューティング
   II.術後早期合併症(1か月以内)
   III.術後後期合併症(1か月以上)

第7章 トラベクロトミーと流出路再建術
 I トラベクロトミーの奏功機序
   I.トラベクロトミーの変遷
   II.房水流出抵抗と眼圧上昇
   III.トラベクロトミーの手術手技
   IV.トラベクロトミーの奏功機序
 II トラベクロトミーの手術適応・手術成績
   I.トラベクロトミーの適応
   II.トラベクロトミーの手術成績
   III.緑内障手術術式の選択と適応
 III トラベクロトミーのコツと落とし穴
   I.手術部位と術者の位置
   II.制御糸設置
   III.結膜切開・Tenon嚢剥離
   IV.第一(外層)強膜弁作成
   V.第二(内層)強膜弁作成
   VI.トラベクロトーム挿入
   VII.Schlemm管が狭いとき
   VIII.トラベクロトームの回転
   IX.第二(内層)強膜弁切除
   X.強膜弁と結膜縫合
 IV 術中・術後のトラブルシューティングと術後管理
   I.術中合併症
   II.術後合併症
   III.術後管理
  Topics
   全周sutureトラベクロトミー
 V トラベクロトミーの類縁手術
   I.眼外から行うトラベクロトミー以外の流出路再建術
   II.眼内から行う流出路再建術(Schlemm管への流出)
   III.上脈絡膜腔への房水流出を意図したもの
 VI 隅角癒着解離術
   I.適応
   II.水晶体再建術の併用
   III.術前に行っておくべき検査
   IV.GSLに必要な備品と術前指示
   V.手術手順
   VI.術後管理

和文索引
欧文・数字索引

付録Web動画一覧
動画-1 トラベクレクトミー(円蓋部基底)の結膜縫合のコツ
動画-2 術中の強膜弁からの房水の過剰濾過に対する自己強膜移植(強度近視眼の症例)
動画-3 選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)
動画-4 円蓋部基底結膜切開と縫合
動画-5 輪部基底結膜切開と縫合
動画-6 エクスプレス
動画-7 強膜開窓術
動画-8 房水漏出点が強膜弁の直上にある場合の対処法
動画-9 眼圧が安定している場合のoverhanging blebの対処法
動画-10 硝子体手術併用バルベルト緑内障インプラント(BGI)毛様体扁平部挿入
動画-11 アーメド緑内障バルブ(AGV)前房挿入
動画-12 トラベクロトミー(耳下側アプローチ)
動画-13 360°スーチャートラベクロトミー変法の実際の手技
動画-14 360°スーチャートラベクロトミー(5-0ナイロン糸の作成)
動画-15 トラベクトーム手術
動画-16 隅角癒着解離術

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緑内障治療の最新のスタンダードを示唆する教科書
書評者: 富田 剛司 (東邦大医療センター大橋病院眼科診療部長)
 医学書院の≪眼科臨床エキスパート≫シリーズに新たに『緑内障治療のアップデート』が加わった。金沢大学の杉山和久教授ならびに熊本大学の谷原秀信教授という現在の日本の緑内障学を牽引する最も脂の乗った先生方の編集によるものである。昨今は,医療のスタンダーダイゼーションの波が押し寄せ,さらにはエビデンスに基づいた医療の実行が世界的な規模で求められるようになってきている。わが国でも今後,眼科分野においても新しい診療ガイドラインの策定が精力的に行われるようになると思われる。

 そのような流れの中で,緑内障治療に関する現時点における最もアップツーデートで新しいスタンダード,いわゆる,PPP(preferred practice pattern)につながる流れを示唆する教科書が本書であると考える。ただ難しい文献を並べて,それを云々する内容ではない。より積極的に,この手技・治療はこうあるべきだということを主張しつつ,その根拠を文献によってしっかり押さえてある。

 具体的には,緑内障病型ごとにその対処法と実際の点眼処方例が商品名で挙げられている。どの時点で手術治療を考慮するかについても具体的に記載されている。イラストもきれいで,写真の解像度も良くクオリティが高い。相当に吟味されていると感心する。特にチューブシャント手術の項目は,これまでの教科書ではなかなか詳細な解説はなかったが,テクニックも詳しく述べられている。

 また,今後の緑内障手術の傾向としてmicroinvasive glaucoma surgery(MIGS)が注目されているが,その一端として,全周sutureトラベクロトミーなども収載されており,大変参考になる。さらには,手術手技はいくらイラストや写真で解説してもうまく伝わらないものだが,Web動画でも閲覧できるという優れものである。

 眼科初心者,専門医をめざす人はもとより,現在の緑内障治療は少し前とはずいぶん違ってきていることを,シニアのドクターにも本書で確認していただきたい。ただ,強調したいのは,単にハウツーだけに関心を持つのではなく,なぜそうなのか,という本書が訴えている根本のところも押さえていただければ幸いである。
緑内障治療の新しいスタンダードを網羅した実践書
書評者: 阿部 春樹 (新潟医療福祉大教授・眼科学)
 この度,医学書院より≪眼科臨床エキスパート≫シリーズの一冊として,杉山和久先生(金沢大学教授・眼科)と谷原秀信先生(熊本大学教授・眼科)が編集された『緑内障治療のアップデート』と題する書籍が発行されました。

 わが国における最新の緑内障治療を概観すると,薬物治療・レーザー治療・手術治療は,いずれも変化が著しく大きく発展してきました。薬物治療では新しい緑内障治療薬が導入されたり開発され,手術治療ではチューブシャント手術が保険適用となったり,流出路系の新しい術式が次々開発され,いずれも大きく発展してきました。

 ところで日本緑内障学会で編集・出版した緑内障診療の指針ともいうべき『緑内障診療ガイドライン』も,第3版が出版されてから3年が経過し,日進月歩の緑内障診療の進歩を考慮すると,改訂が必要な時期に来ておりますが,まだ第4版は出版されておりません。

 本書は『緑内障診療ガイドライン』の知識をアップデートするとともに,病型別に薬物治療から手術治療への指針を示し,実際の薬物治療の処方例の解説や,手術については従来からの濾過手術や流出路手術の解説に加えて,近年わが国に新しく導入されたエクスプレスや,チューブシャント手術そして新しい流出路再建手術の適応や,実際の手術テクニックや,コツと落とし穴,そして合併症対策などを,動画を用いてわかりやすく解説しています。

 さらに本書では最新の情報を網羅して,緑内障専門医のみならず眼科専門医・専門医志向者が読むにふさわしいアップデートされた緑内障治療のスタンダードとなる指針を提供してくれているのに加え,現在の世界の緑内障治療に関するスタンダードと最新情報,そして日本の緑内障エキスパートである執筆者の経験に基づいた読み応えのある解説が網羅されています。

 現在,緑内障患者を治療する機会を有する眼科医は,本書を診察室に常備して,個々の患者に対して,現在最適だと思われる治療を提供していただきたいと思います。

 本書を,現在の緑内障治療の新しいスタンダードを網羅した実践書として,心より推薦させていただきます。
眼科専門医,専門医指向者にとっての教科書的書籍
書評者: 田原 昭彦 (産業医大名誉教授/田原眼科院長)
 400ページに及ぶ緑内障治療に関する本が出版されたと知り,早速手にした。

 フローチャートと表が多く使用され,写真,図が豊富である。Webサイトを通して動画を見ることもできる。商品名を記した薬物治療の実例が示されているなど,臨床の第一線を意識した構成である。要となる箇所は,著者の単なる印象ではなく文献を引用した記述であり,説得力がある。「臨床の現場で役立つ」と「根拠が明らかな記述」を重視した編集者のコンセプトを感じる。

 章ごとに見ると,「総説」では緑内障治療に当たっての基本姿勢が述べられている。治療の目的,治療開始前の準備,薬物療法での注意点,レーザー治療や手術療法の適応などが,膨大な過去の研究を咀嚼してわかりやすく解説してある。目標眼圧の決定時に考慮すべき要因,高眼圧症や緑内障の治療開始のタイミングなど参考になることが多い。

 第2章「病型別治療」では,各病型で微妙に異なる薬物療法,手術療法,そして予後が記載してある。原発開放隅角緑内障の薬物治療から手術へ切り替えのタイミング,原発閉塞隅角緑内障,原発閉塞隅角症の改訂された分類とその治療はわかりやすい。

 第3章「薬物療法の実際」では,緑内障治療薬の紹介に加え,点眼薬の効果判定の詳細,多剤併用時の組み合わせについて,詳しく説明されている。ROCK阻害薬も含まれている。β遮断薬の効果減弱時の対応やアドヒアランスが不良な時の対処法は,役立つ手法である。前の「総説」「病型別治療」とともに,緑内障を専門としない眼科医にもぜひ読んで欲しい章である。

 第4章「レーザー治療」では,レーザー線維柱帯形成術の適応,手技,治療成績などが動画付きで詳細に記載されており,本術式導入時には必読である。また,迷うことが多いレーザー虹彩切開術の適応が,わかりやすい表で示されている。

 上記の4章に続き,第5章「トラベクレクトミー」,第6章「チューブシャント手術」,第7章「トラベクロトミーと流出路再建術」と,手術の術式が独立した章を構成し,全体の半分以上のページを占める。編集者の緑内障手術に対する意気込みを感じる。「手術テクニックのコツと落とし穴」や「術中・術後のトラブルシューティング」の項が設けられ,手術で遭遇するさまざまな場面でのエキスパートのテクニックや工夫が,動画を含め惜しみなく披露されている。例えば,トラベクレクトミーでは,内眼手術の既往眼に対する対策,強膜弁直上からの房水漏出に対する処置,さらに術後レーザー切糸での切糸の順番やTenon<56CA>が厚い例での切糸のコツなど,細部にわたる。トラベクロトミーでは,Schlemm管が狭い例やプローブ挿入時に早期穿孔した場合の対応,プローブは左右どちらから先に挿入するかなど,参考になる。また,チューブシャント手術では,手術適応から手術手技,周術期の管理,トラブルシューティングが詳しく述べられており,本手術を始めるに当たって目を通すべき章である。

 緑内障は,治療に際し考慮すべき要因が多い。点眼薬は多種多様で,確実な手術法がない。さらに,多くは慢性で,消失した視機能は取り返せないと,苦慮することが多い疾患である。しかも,その罹患率は40歳以上で5.8%と高く,眼科臨床医として避けることはできない。そのような疾患と取り組む眼科専門医,専門医指向者にとって,本書は教科書的書籍と言える。また,スタンダードな治療法がない緑内障診療で,エキスパートのちょっとしたアドバイスが,しばしば好結果につながる。緑内障専門医を目指す医師や経験豊富な緑内障専門医にとっても,さらに上の段階への足がかりとなる書である。

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