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ジェネラリスト必携! この皮膚疾患のこの発疹

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よくみる皮膚疾患の臨床所見を網羅した“発疹のポケット図鑑”が登場! 外来・病棟・在宅など診療の現場で出会いがちな皮膚疾患の“これぞ典型疹“といえる臨床写真を多数提示し、診断のコツとツボを丁寧に解説。コモンディジーズはもちろん、「よく見るけどなんだろう?」というディープな皮膚疾患も収載。さあ、本書を片手に各疾患の臨床所見を絵合わせ的に覚えよう!
編集 宮地 良樹 / 安部 正敏
発行 2019年04月判型:A5頁:258
ISBN 978-4-260-03680-1
定価 4,400円 (本体4,000円+税)

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 皮膚科診療の第一歩は発疹の診断から始まる。もちろん,問診や発疹以外の理学的所見から診断のヒントを掴むことは少なくないが,なんと言っても“発疹を読む”ことからすべてが始まると言っても過言ではない。発疹の診断はいわば“発疹の画像診断学”なので,ちょうど胸部X線写真の読影のときに,肺野・血管陰影・縦隔と画像を分画して診断を進めるように,発疹を二次元,三次元の所見に分けて色調,隆起や陥凹,病変の深達度などを勘案しながら診断をすることになる。その際に熱感や圧痛,下床との可動性,波動など,単なる画像では把握できない情報も瞬時に触診で収集しているわけである。
 昨今のAIの長足の進歩により,病理診断やCT・MRIなどの画像診断も,いずれはAI診断に凌駕されると考えるむきもあり,発疹の診断もその潮流にのみ込まれる懸念は払拭できない。実際,“ディープラーニング(深層学習)”と呼ばれるAIの手法を用いた皮膚腫瘍診断補助システムの実用化も近い。これらは,いずれ遠隔診断を含めた皮膚科診断学の様相を変容させるであろう。しかし,われわれの五感を駆使したオーソドックスな発疹診断学は炎症や変性疾患を含めた広いジャンルで今後も不滅であろうと思われる。
 本書では,必ずしも皮膚を専門としない臨床医の先生方に“これぞ典型”と思われる臨床写真を提示しながら,発疹診断のコツとツボを惜しげもなく提示したが,おそらく皮膚科専門医にとってもあらためて発疹を見つめ直す好機となろう。主に日常外来診療で遭遇すると思われるありふれた皮膚疾患をとりあげたが,“よく見るけどなんだろう?”という疑問が氷解するように,ディープな皮膚疾患も,「この発疹を一発診断できますか?」という章を設けて一部とりあげた。
 “この疾患のこの発疹”という典型疹を学ぶ中で,ひと目で診断できる皮膚疾患のレパートリーを増やすだけでなく,多彩なcommon skin diseasesのバリエーションをもカバーできるような皮膚科診断学の醍醐味をひとりでも多くの先生方に会得していただければ編者としてこれにまさる喜びはない。

 平成最終年春
 編者を代表して
 宮地良樹

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対談 胸部X線写真のように発疹を読み解こう!

1.湿疹・皮膚炎群
 アトピー性皮膚炎
  ①アトピックドライスキン
  ②dirty neck
  ③Hertoghe徴候,Dennie’s line
  ④pearly nail
  ⑤白色皮膚描記症
 その他の湿疹・皮膚炎群
  ①貨幣状湿疹
  ②皮脂欠乏性湿疹
  ③脂漏性皮膚炎
  ④異汗性湿疹(汗疱)
  ⑤シイタケ皮膚炎
  ⑥Vidal苔癬(単純性苔癬)

2.蕁麻疹・痒疹・皮膚瘙痒症
 蕁麻疹群
  ①特発性蕁麻疹
  ②コリン性蕁麻疹
  ③血管性浮腫
 痒疹群
  ①結節性痒疹
  ②色素性痒疹
 皮膚瘙痒症

3.紅斑・紅皮症
 結節性紅斑
 丘疹紅皮症(太藤)

4.薬疹
 Stevens-Johnson症候群
 固定薬疹
 手足症候群

5.膠原病
 エリテマトーデス
  ①頬部紅斑
  ②凍瘡状エリテマトーデス
 強皮症
 皮膚筋炎
 Sjögren症候群
 Behçet病

6.物理化学的皮膚障害
 薬剤性光線過敏症
 ポルフィリン症
 褥瘡
 凍傷

7.水疱症・膿疱症
 自己免疫性水疱症
  ①水疱性類天疱瘡
  ②尋常性天疱瘡
  ③落葉状天疱瘡
 先天性・後天性表皮水疱症
 掌蹠膿疱症
 好酸球性膿疱性毛包炎(太藤病)

8.角化症
 尋常性魚鱗癬
 Darier病
 長島型掌蹠角化症
 胼胝・鶏眼
 顔面毛包性紅斑黒皮症

9.炎症性角化症
 乾癬
 Gibertばら色粃糠疹
 扁平苔癬

10.色素異常症
 尋常性白斑(全身型・分節型)
 肝斑と後天性真皮メラノサイトーシス

11.代謝異常症
 眼瞼黄色腫
 亜鉛欠乏症

12.付属器疾患
 酒皶
 ニキビ(尋常性痤瘡)
 ステロイド痤瘡
 円形脱毛症
 男性型脱毛症
 陥入爪・巻き爪

13.母斑・母斑症
 青色母斑
 太田母斑
 脂腺母斑
 神経線維腫症1型(Recklinghausen病)

14.良性腫瘍
 脂漏性角化症
 炎症性表皮嚢腫
 老人性血管腫
 血管拡張性肉芽腫
 グロムス腫瘍
 眼瞼汗管腫
 稗粒腫

15.悪性腫瘍
 日光角化症
 乳房外Paget病
 血管肉腫
 悪性黒子

16.ウイルス感染症
 再発性口唇ヘルペス
 再発性性器ヘルペス
 帯状疱疹
 麻疹
 風疹
 突発性発疹
 伝染性紅斑
 手足口病
 尖圭コンジローマ
 伝染性軟属腫

17.細菌感染症
 伝染性膿痂疹(とびひ)
 丹毒
 蜂窩織炎
 化膿性汗腺炎

18.真菌感染症
 角質増殖型足白癬
 爪白癬
 癜風
 マラセチア毛包炎
 スポロトリコーシス

19.性感染症
 梅毒 
  ①初期硬結
  ②ばら疹

20.虫による皮膚疾患
 チャドクガ皮膚炎
 疥癬
 ケジラミ症

21.この発疹を一発診断できますか?
 糖尿病に伴う皮膚症状
 透析に伴う皮膚症状
 悪性腫瘍に伴う皮膚症状
 副乳
 真珠様陰茎小丘疹
 フォアダイス状態
 陰部軟属腫
 IVRによる放射線皮膚障害
 Sutton母斑
 外陰部被角血管腫
 爪甲鉤彎症
 老人性面皰
 肛門仙骨部皮膚アミロイドーシス
 肛囲溶連菌性皮膚炎

COLUMN
 白癬菌抗原キット

索引

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皮膚科を専門としない医師のためのわかりやすい入門書
書評者: 三森 経世 (医仁会武田総合病院院長)
 医師にとっては,皮膚科医ならずとも,日常診療で発疹を見る機会は多い。総合病院であれば皮膚科にコンサルトに出せば済むことであろうが,一般医家であれば迷いながらも一応の診断をつけて対処するのではないだろうか。しかし,その結果発疹が長引いたり悪化したりして焦ることも少なくない。皮疹の診断はまず「発疹を自分の目でよく読む」ことに始まる。その発疹を読む力を高めるためには多くの症例を経験することが必須であるが,皮膚科医でなければなかなか症例を積み重ねることはできない。世の中に皮疹のイラスト集は数多く出版されているが,多くは皮膚科専門医をめざす医師のためのものであり,一般医家向けの入門書は少ないように思われる。

 京大名誉教授の宮地良樹先生と札幌皮膚科クリニック院長の安部正敏先生の編集になる『ジェネラリスト必携! この皮膚疾患のこの発疹』と『ジェネラリスト必携! この皮膚疾患にこの処方』の2冊は,必ずしも皮膚科を専門としない一般医家をターゲットとする皮膚疾患診療の入門書である。

 『この発疹』は皮膚疾患の診断のためのポケット図鑑である。日常診療で遭遇する機会の多い発疹について典型的な写真を豊富に提示し,「なぜ一目で診断できるか」が箇条書きで簡潔にわかりやすく解説されている。さらに「診断における留意点」と「診断がついた時の対処法」にも言及し,発疹診断のコツとツボを懇切に解説してくれる。

 もう1冊の『この処方』は皮膚疾患の治療のためのコンパクトなガイドブックである。治療薬の総論とともに,さまざまな皮膚疾患の基本的な治療法を「処方のスタンダード」として第一選択と次の一手がわかりやすく解説されている。さらには難治例の「専門医への紹介のタイミング」も記載されている。

 これら2冊はそれぞれ皮疹の診断と治療の解説書であり,姉妹書として一対をなすものであるが,必ずしも内容が1対1対応しているわけではない。『この処方』に取り上げられている皮膚疾患は『この発疹』の項目よりもずっと少なくなっているが,これは疾患によってはジェネラリストが手を下すよりも速やかに皮膚科専門医の手に渡したほうがよいものがあるためであろう。逆に言えばこの本で取り上げている疾患くらいは専門外であろうと診断して治療をしてほしいということになる。

 皮膚科を志す研修医や,皮膚は専門外だが皮疹を見る機会が多いという先生方にぜひお薦めしたい。
皮膚科の先生も皮膚科以外の先生も手にとっていただきたい「宮地本」の最高傑作!
書評者: 大塚 篤司 (京大特定准教授・外胚葉性疾患創薬医学兼皮膚科学)
 私が京大皮膚科に入局を決めたのは,当時主任教授であった宮地良樹先生の影響が大きい。というより,宮地先生と面談をして「京大で働こう」と思った。宮地先生の皮膚科学と皮膚科診療に対する圧倒的な情熱に感動し,京都から松本に帰る特急電車で悩むことなく決断した。宮地先生はとにかく話がお上手。日本全国をまわり,どんなテーマでも一流の講演をされる。併せて,本屋には「宮地良樹先生コーナー」ができるほど沢山の教科書を編集されている。ここまでたくさんの本を出されるには,もちろん理由があるはず。

 「先生,どうやってこんなに教科書をつくっているんですか?」
 書籍を量産するテクニックをこっそり伝授していただこう。そういう魂胆の私に,宮地先生の答えはシンプルだった。
 「いろんな学会や講演会に参加して勉強しているからだよ」

 いやはや,聞いた自分が恥ずかしくなった。皮膚科を何十年も愛し,貪欲に勉強してきた当然の結果が数々の「宮地本(みやちぼん。宮地先生が書いた本たちの俗称)」という当たり前のことを私はまざまざと思い知らされた。

 研修医のころから,私は宮地チルドレンとして「宮地本」のほぼ全てに目を通している。ありがたいことにいくつかは分担執筆させてもらっている。その200冊を超える「宮地本」の中で,『ジェネラリスト必携! この皮膚疾患のこの発疹』と『ジェネラリスト必携! この皮膚疾患にこの処方』の2冊は間違いなく最高傑作だと断言する。各項目をおなじみの有名専門家が担当し,難しい専門知識をジェネラリストに向けてわかりやすく解説している。「粟粒大の淡紅色紅斑がびまん性に散在」などと皮膚科医にしか通用しない解説だけが乱暴に並んでいる教科書とはわけが違い,「これでもか」と臨床写真が掲載されている。そして,視覚的に理解を助ける図も多い。皮膚科医の私にとっては眺めているだけで楽しい,そんな教科書になっている。

 さて,個人的には,巻頭に掲載されている宮地先生と群馬大時代の宮地チルドレンである安部正敏先生の対談が最高に面白い。京大時代の宮地チルドレンの私としては,宮地先生の知識を十二分に引き出した安部先生に軽く嫉妬を覚えるほどの充実した内容であった。これはぜひ,皮膚科の先生も皮膚科以外の先生も,実際に本を手にとって読んでいただきたい。私が「京大皮膚科に入局したい!」と思った十数年前の当時の気持ちを共有していただけるのではないかと期待している。2冊の本をパラパラとめくりながら,あのとき,京大皮膚科に即断した私を褒めてあげたいと思った。超えることができない師匠をもった私はとても幸せな皮膚科医だと思う。

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