よくみる子どもの皮膚疾患
診療のポイント&保護者へのアドバイス

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小児科・内科を訪れる子どもの多様な皮膚症状を、豊富な症例写真とともにエキスパートがわかりやすく解説。外来でみることが多い子どもの皮膚疾患の「原因」「症状」「鑑別」「治療」のほか、感染症では「登校(園)の目安」、あざ・色素異常では「治療や紹介の目安」もわかる。保護者への情報提供にも重点を置いており、最新のエビデンスに基づくスキンケアの指導法から、的確なホームケアへつなげることができる。
*「ジェネラリストBOOKS」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ ジェネラリストBOOKS
編集 佐々木 りか子
発行 2018年07月判型:A5頁:256
ISBN 978-4-260-03620-7
定価 4,400円 (本体4,000円+税)

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まえがき

 本書は,小児をたくさん診療してきたベテランの女性皮膚科医3名で書いた,実践的な小児皮膚科書です.
 数多ある小児の皮膚疾患の中から,外来で遭遇する機会が多い疾患だけを取り上げ,なるべくきれいな臨床写真を掲載し,診療で大切な点を強調しました.また読者の方々が悩まれることが多いと思われる「保護者への説明のポイント」も記載してあります.小児の診療は,どんなに幼い患者さんでも,ご本人の目を見て説明し,理解を得ることを忘れてはなりません.また,保護者の理解を得ない限り,ご本人に治療をなし得ないということも,大人の診療と異なる難しい点です.
 私達はその点に重きを置いて臨床経験のエキスを書き記しましたので,ぜひお手元に置いてご活用いただければ幸いです.

 さて,小児皮膚科学は,世界的にも独立した標榜を得ている国がほとんどありません.小児の耳鼻科や眼科も同様の状態だと思いますが,本来は小児にとってどれも必須の分野のはずです.
 そのような現状の中で,子どもが病気になったときに,親御さんがまずは小児科の先生にかかろうと思うのは,不思議ではありません.ですので,小児科の先生は大変だと思います.実際には小児内科がご専門ですから,ジェネラリストとして一人前になるまでには,各分野についての相当な勉強量と臨床経験が必要だと思います.
 また皮膚科医にとっても,小児は特別で難しい分野です.地域によって,あるいは大学病院となると,小児の患者さんはとても少なく,経験が不足しがちだからです.とにかく,見たことがない病気は脳内にインプットされていませんから,診断がつきません.
 そういった意味で本書は,小児の診療に携わる若手の医師にはもちろんのこと,中堅以上の医師にとっても,日常診療に役立つヒントがちりばめられていると自負しています.
 他の成書のように文献はたくさん掲載していませんが,読みやすい文章で,外来の合間や移動中に手にとって写真だけでもパラパラと見ていただくような,気軽な書にしました.
 今後は,時代とともに変化する診療内容を加えて,さらにup to dateな内容にブラッシュアップしていけますよう,末永いお付き合いをお願いしたいと思っております.
 最後になりましたが,本書を著すにあたり,優しい熱意で助けてくださった医学書院の安部直子さんに感謝いたします.

 2018年5月
 佐々木りか子

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まえがき

第1章 保護者に伝えるスキンケア
  小児のスキンケアの基礎知識
   保湿薬,日焼け止め,虫よけ剤の適切な使い方
  小児のステロイド外用薬の使い方
   乳幼児のアトピー性皮膚炎を中心に

第2章 湿疹・皮膚炎
  乳児湿疹
  汗疹(汗貯留症候群)
  アトピー性皮膚炎
  蕁麻疹
  おむつ皮膚炎

第3章 感染症
 【細菌性皮膚感染症】
  (1)伝染性膿痂疹
  (2)毛包炎,せつ
 【ウイルス性皮膚感染症】
  (1)伝染性軟属腫
  (2)尋常性疣贅,扁平疣贅,尖圭コンジローマ
  (3)単純ヘルペス
 【真菌性皮膚感染症】
  (1)白癬,カンジダ症,癜風
  (2)足白癬
 【ダニ・シラミによる皮膚感染症】
  (1)疥癬
  (2)マダニ刺症
  (3)アタマジラミ
 【発疹症(全身性)】
  (1)麻疹
  (2)風疹
  (3)水痘,帯状疱疹
  (4)伝染性紅斑
  (5)手足口病
  (6)溶連菌感染症
  (7)突発性発疹
  (8)伝染性単核球症

第4章 その他の皮膚疾患
  尋常性ざ瘡
  円形脱毛症
  虫刺症
  凍瘡
  熱傷
  薬疹
 【角化症】
  (1)尋常性魚鱗癬
  (2)毛孔性角化症(毛孔性苔癬)
 【よくみる皮膚良性腫瘍】
  (1)類表皮嚢腫(表皮嚢腫,粉瘤)
  (2)石灰化上皮腫(毛母腫,毛根腫)
  (3)毛細血管拡張性肉芽腫(化膿性肉芽腫)
 【自然消退するが誤診されやすい疾患】
  (1)肥満細胞症(色素性蕁麻疹,肥満細胞腫)
  (2)線状苔癬
  (3)若年性黄色肉芽腫

第5章 あざ(血管腫・母斑・血管奇形)・色素異常
  あざ(血管腫・母斑・血管奇形)・色素異常の治療
   紹介のタイミングと保険適用
 【赤いあざ(血管腫・母斑・血管奇形)】
  (1)サモンパッチ,ウンナ母斑
  (2)乳児血管腫(苺状血管腫)
  (3)毛細血管奇形(ポートワイン母斑,単純性血管腫)
 【黒いあざ】
  (1)色素性母斑(母斑細胞母斑)
  (2)スピッツ母斑(若年性黒色腫)
 【茶色いあざ】
  扁平母斑,カフェオレ斑
 【青いあざ】
  (1)太田母斑
  (2)異所性蒙古斑
  (3)青色母斑
 【白いあざ】
  (1)脱色素性母斑
  (2)貧血母斑
 【上皮系母斑】
  (1)表皮母斑
  (2)脂腺母斑
  (3)平滑筋母斑
  (4)結合織母斑
 【色素異常】
  尋常性白斑

COLUMN
  (1)血管腫の新分類・病名
  (2)母斑の定義と分類

資料
索引
編著者紹介

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外来診療の理念が伝わる,写真豊富な一冊
書評者: 横田 俊一郎 (横田小児科院院長)
 発疹は誰が見てもわかりますので,お子さんの身体をくまなく見ているお母さん方にとって,とても気になる症状の一つです。まずは「かかりつけの小児科で相談してみよう」ということになり,小児科外来では発疹を主訴に受診する患者さんがたいへん多いのですが,頭を悩ますことも少なくありません。視診という簡単な方法で全身的な疾患などさまざまな疾患を診断できるという点で,皮膚の診療はたいへん魅力的です。しかし,私たち小児科医には原因のわからない発疹も多く,そのようなときの神頼みで皮膚科医へ診察をお願いすることになります。しかし全てを紹介するわけにもいきませんので,少し勉強してみようと誰もが考えるのです。

 小児の皮膚疾患に関する教科書やアトラス,雑誌の特集などは今までにもたくさん出版されていて,きっと皆さんの本棚にも何冊かの本が並んでいると思います。しかし,なかなか「これ一冊あれば」という本に出合えていない医師が多いのではないでしょうか。そんな方にうってつけの一冊として紹介したいのが本書です。

 本書は皮膚科臨床の第一線にいる3人のベテラン女性医師が執筆しています。まず感心したのは全体の構成です。皮膚疾患については細かく分類されている教科書が多く,そこでまずつまずくことが多いのですが,本書は子どもの診療でよく遭遇する皮膚疾患を「スキンケア」「湿疹・皮膚炎」「感染症」「その他の皮膚疾患」「あざ・色素異常」と非常に単純で明快に項目立てしています。私たち小児科医が知りたいことを漏らさず,しかもわかりやすく分類されているのがまず気に入りました。

 そして,第1章は「保護者に伝えるスキンケア」です。皮膚の基本から始まって,保湿剤や日焼け止めの使い方,ステロイド外用薬の塗り方や投与量の目安がわかりやすく書かれています。ステロイド外用薬の安全な総使用量が書かれているのも役立ちます。第2章以降は疾患について書かれていますが,2~4ページ程度でまとめられたものが多くてたいへん読みやすく,初めに好発部位が描かれている図が掲載されています。そして「臨床のポイント」が冒頭の赤く囲まれた欄に記載されており,これを読むだけでも勉強になります。また,写真がとても見やすく,コンパクトな本の割にきれいなカラー写真が多いことが特徴の一つです。

 病態・治療法も簡潔にわかりやすく記載されていて,非常に読みやすいと感じます。また,何といっても最後に「保護者への説明のポイント」が書かれているのが外来診療をしている医師には魅力です。子どもの視点,保護者の視点から説明されており,本書を貫いている理念がここにあるのだと感じます。

 診察机の上に置いていたら,私のクリニックを手伝い始めた小児科医の娘に「この本,いいね!」と危うく持っていかれそうになりました。子どもの皮膚疾患の診療に当たっている全ての医師にお薦めしたい一冊です。
小児の皮膚を診療する全ての医師にオススメしたい
書評者: 吉田 和恵 (国立成育医療研究センター皮膚科診療部長)
 「子どもは小さな大人ではない」といわれるが,皮膚疾患に関しても同様である。大人でよくみる皮膚疾患と子どもでよくみる皮膚疾患は大きく異なる。本書は,子どもの皮膚を数多く診療されてきたベテラン女性皮膚科医3名で書かれた実践的な小児皮膚科診療を学べる書である。著者らの幅広い臨床経験から導き出された診療のポイントとコツ,そして保護者が一番気になる親目線のアドバイスがたっぷり織り込まれている。機械を使わなくても目で見える皮膚疾患を学ぶには,やはり,典型的な臨床写真を「見て理解する」のが一番だが,本書では,豊富な224枚にも及ぶ臨床写真が,よくみる子どもの皮膚疾患への理解を深めてくれる。

 小児科(内科)外来,皮膚科外来を訪れる子どもといっても幅が広い。新生児から思春期まで,その中でもよくみる皮膚疾患は異なるし,成長によっても変化していく。すぐに治療が必要な疾患もあれば,待つと自然に良くなる疾患もある。的確な診断と,適切なタイミングでの治療の介入が重要である。例えば,生まれつきのあざ(血管腫,母斑,血管奇形)については,「治療したほうがいいのか? それとも自然に消えるのか? いつまで待って,いつから治療したほうがいいのか?」など質問されることも多いと思う。本書には,専門医に紹介する適切なタイミング,治療の実際,保険適用なども含めて,実際の診療に役立つ詳細が記載されている。

 また,湿疹,とびひなど,ありふれた皮膚疾患でも,教科書に書かれている治療薬を処方しただけでは良くならないことも多い。子どもたちの日常生活をよく理解して,生活上の細かなアドバイスを行い,実践してもらい,保護者と患児本人の治療へのモチベーションを上げることがとても大事である。子どもの皮膚に症状の出る感染症も多いが,感染症に関しては,登校・登園の目安なども書かれている。本書には,患児とその家族が納得できるアドバイスが書かれているので,日常診療の保護者への説明の際に役立つであろう。

 本書はわかりやすい文章なので,研修医,医学生などにも読みやすいと思うが,中堅以降の小児科医,皮膚科医が読んでも,すぐに診療に生かせるヒントが数多くちりばめられている。子どもの皮膚を診療する全ての方にオススメしたい一冊である。

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