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レジデントのための血液診療の鉄則

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血液内科で頻度の高い疾患、緊急度の高い症候と疾患をとりあげ、症例ベースで思考過程と実践能力を養う書籍。血液専門研修医が真っ先におさえておくべき、診断・治療・患者管理に重要な“鉄則”をマスターできる。
編著 岡田 定
樋口 敬和 / 森 慎一郎
発行 2014年08月判型:B5頁:336
ISBN 978-4-260-01966-8
定価 4,620円 (本体4,200円+税)

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 本書は,血液診療に関わる若手医師に「血液診療の鉄則」を刷り込む本です.
 『内科レジデントの鉄則』という本をご存知でしょうか.本書『レジデントのための血液診療の鉄則』はその姉妹本になります.『内科レジデントの鉄則』が新人研修医のための本なら,本書は血液診療に関わる研修医や専門研修医に捧げる本です.
 血液専門医のためには多くのすぐれた専門書,診療ガイドライン,マニュアルがあります.でも血液の初学者には,「実際に経験する症例にどう考えどう対応するか」を学べる本はほとんどありません.本書はまさにそれを学ぶための本です.
 血液診療には「専門性が高そうで近づき難い」,「比較的稀な疾患なので敬遠したい」,「急に重症化しそうで怖い」などのイメージがあるかもしれません.もしそのようなイメージだけで,若手医師が「血液診療に二の足を踏んでいる」というのなら,とても残念なことです.
 血液診療は基礎と臨床が直結していて,治療成績は急速に向上しています.全身性疾患が多く,個別性の高い全身管理が求められます.治癒困難な患者も少なからずあり,全人的な視点が欠かせません.外からの印象だけではわからなくても,少しでも血液診療に踏み入れば,その豊かさと楽しさがわかります.

 スノーボードを初めて学ぶとき,いきなり雪山の頂上に連れて行かれて「さあ,滑ってみなさい」と言われても,滑ることはできないでしょう.急なスロープに足が震えて怖い思いをするだけです.まずはふもとのなだらかなスロープで,何度も転びながらスノボを楽しむことが必要です.そして,すぐれたインストラクターがついてくれれば,より早く楽しく上達できます.急なスロープにも遠からず挑戦して,スノボの醍醐味も満喫できるようになるでしょう.
 医療現場では,病歴,身体所見,検査所見の生データから自分の頭で診断し,治療を行い,患者の問題をマネジメントできることが求められます.一言でいえば「問題解決力」です.でもいきなり現場に放り込まれただけで,適切な指導がなければ,問題解決力を身につけることは容易ではありません.
 本書は,血液診療の問題解決力を身につけるためのインストラクターの役割を果たします.厳しい現場で足が震えて怖い思いをしなくてすむように,紙上で現場を再現して,少しでも早く問題解決力を身につけて血液診療の楽しさがわかるように指導します.
 I.病棟編では入院診療で重要な13の血液疾患と終末期医療,輸血療法,幹細胞移植,コンサルテーションの17項目,II.一般外来編では外来診療で問題になる主要な血液病態の9項目,III.救急外来編では緊急対応が必要な血液疾患・病態の6項目をとりあげています.これで,現場の血液診療をほぼ網羅することになります.
 各項目とも,刷り込むべき「鉄則」,具体的な症例の「プラクティス」,それに対する「Q&A」,問題解決のための「ここがポイント」,知識を深める「もっと知りたい」,「最終チェック」,「参考文献」から構成されています.
 執筆者は,当院の血液専門医の森 慎一郎,樋口 敬和,岡田 定の3人です.長年の研修医教育で培った「血液診療の鉄則」が目に見える形になるように,それぞれが初稿を作り,お互いに内容をチェックして完成稿に至りました.
 血液内科をローテーションする研修医,専門医を目指す血液専門研修医,そして若手医師を指導される血液専門医の先生方に,「血液診療の問題解決力と楽しさを学ぶ」ために少しでもお役に立てていただければ,執筆者一同,幸甚に存じます.
 最後に,当院血液内科・血液腫瘍科フェローの小山田 亮祐先生,医学書院の藤本 さおり氏,佐藤 博氏に,この場を借りて感謝いたします.

 2014年初夏
 聖路加国際病院 血液内科部長
 岡田 定

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I.病棟編
 1 再生不良性貧血-まず重症度を評価しよう
 2 自己免疫性溶血性貧血,発作性夜間ヘモグロビン尿症-溶血性貧血にも強くなろう
 3 急性骨髄性白血病-AMLの診断と治療の肝を把握しよう
 4 急性リンパ性白血病-小児と比べて成人のALLの予後は悪いけど…
 5 慢性骨髄性白血病-診断はmajor BCR-ABLが決め手
 6 骨髄異形成症候群-リスク分類に基づいて対応しよう
 7 好酸球増加症候群/慢性好酸球性白血病
   -好酸球が増加するのはアレルギーだけじゃない…
 8 非Hodgkinリンパ腫-多彩な病型に惑わされない!
 9 Hodgkinリンパ腫-病期診断が大切だ
 10 成人T細胞白血病/リンパ腫-ユニークな腫瘍を理解しよう
 11 多発性骨髄腫と関連疾患-新規薬剤の最新情報に注意!
 12 特発性血小板減少性紫斑病-個々に応じたアプローチをしよう
 13 血栓性微小血管障害-早期診断,早期治療を
 14 造血器腫瘍の終末期医療-治癒的治療と同様に大切
 15 輸血療法-なんでも輸血すればいいってものではない!
 16 造血幹細胞移植-造血幹細胞移植の肝をおさえよう
 17 他科からのコンサルテーション-聞かれて困ることってよくあるよね…

II.一般外来編
 1 貧血-貧血の原因は何だろう
 2 赤血球増加症-どう鑑別して治療する?
 3 白血球増加症-白血球分画に注目しよう
 4 白血球分画異常-その異常,放っておいてもいい?
 5 白血球減少症-まずウイルス感染症を疑おう
 6 血小板減少症-検査結果で血小板が少なかったらどうする?
 7 血小板増加症-本態性血小板血症の理解を深めよう
 8 汎血球減少症-系統的にアプローチしよう
 9 リンパ節腫脹-まず触診で鑑別しよう

III.救急外来編
 1 高度の貧血-高度の貧血をみたら,すぐ輸血?
 2 不明熱,高度の出血傾向
   -いつまでも不明では困る,高度の出血傾向はemergencyだ
 3 高度の汎血球減少症-白血球,赤血球,血小板,みんな少ない! これは大変!
 4 外来化学療法中の患者のトラブル-予防が大切!
 5 移植後の外来患者の急変-移植後の特殊な病態を理解しよう
 6 汎血球減少症の外来患者の急変-特別な対応が必要です!

索引

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診療のポイントや最新の情報が素早くわかる多忙な医師に最適の好書
書評者: 木崎 昌弘 (埼玉医大総合医療センター教授・血液内科学)
 このたび,聖路加国際病院血液内科部長の岡田定先生を中心に,同病院のスタッフである樋口敬和先生,森慎一郎先生により,レジデントおよび血液内科医を対象とした本書が医学書院より上梓された。本書を拝見してまず感じたのは「よく練られた内容で,読者のことを真っ先に考えたよくできた本だなあ」ということである。さすがに臨床経験が豊富で,場数を踏んでいる3人が書かれただけのことはあると感じ入った。

 われわれ血液内科(小児科)医は,実際の診療の現場では生命に直結する疾患を扱うことも多く,常に適切かつ迅速な判断を求められている。その上で特に造血器腫瘍の治療に関しては,化学療法や造血幹細胞移植のみならず,分子標的治療薬や抗体医薬などの新しい薬剤を用いた治療法をいかに用いるかについても適切に選択しなくてはならない。そのためには,多くの疾患を経験するとともに,常に最新の病態解析研究や治療薬の臨床試験のデータ,ガイドラインなどを頭に入れておく必要があるが,日々忙しいレジデントや血液内科(小児科)医は時間がないのも事実である。これらの知識を取得するためには,多忙な医師のことを考えたテキストが必要であるが,本書は「かゆいところに手が届くように」多忙な医師の立場に立って書かれた好書である。

 本書は,病棟診療と外来診療,さらには救急の現場で扱う頻度の高い血液疾患を,実際に患者を診療しているかのようなスタイルで統一して書かれている。当然ではあるが,病棟に入院してくる大多数の患者は診断が既についているが,外来では診断から始めなくてはならない。本書では,そのような実態に即して病棟編では血液疾患の各論の形で主要な血液疾患を,一般外来編や救急外来編では診断学の形でよく遭遇する症候を中心に記載されていることは,血液診療の現場を知り尽くした著者らの慧眼である。しかも,病棟編では,各疾患について,実際のケースをもとにQ&Aの形で診断,鑑別,予後,治療を系統立ててどのように考えて診療を進めていくべきかを中心に記載されているところなどは,従来の医学書の形式とは全く違う,現場の医師の立場を考えた優れたテキストだと思う。外来編でも症候から,どのように鑑別して確定診断を導くかが理論的に学べるようになっている。コラム形式の「ココがpoint」や「もっと知りたい」もよくできており,長年の経験に基づく診療のポイントや最新の情報が素早くわかるように工夫されている。そして,何よりも冒頭の箇条書きに書かれた「鉄則」を読むだけで,何かその疾患や症候をすべてわかったような気にさせてくれる。さらに親切にも終わりには「最終チェック」ができるようになっており,ここまで読めば完璧である。この課程が簡潔な文章や箇条書きで本当にわかりやすく記載されている。

 評者自身多くの書籍の出版に関わっているが,このように読者の立場に立って書かれ,しかも系統的に理解しやすく書かれている書籍に遭遇することは少ない。これも,岡田先生を中心とした聖路加病院血液内科の診療レベルの高さを示すとともに,常に若い医師をどのように実践的な医師に育てていくかを考えた教育レベルの高さを物語っているものと思われる。

 忙しい臨床の現場に立つ医師には常に座右において活用していただきたい書籍である。
若手医師の血液診療への不安を払拭してくれる書
書評者: 冨山 佳昭 (阪大病院輸血部部長)
 専門性を決めていない若手医師にとって,血液疾患といえば「専門性が高くとっつきにくい」「重症化しやすい」などのイメージがあり,ややもすると敬遠されがちな診療分野である。実際,化学療法に伴う好中球減少時の対応など,他の診療科とは異なる血液疾患ならではの対処法が種々存在するのも事実である。しかしながら,一方では基礎研究の成果がいち早く臨床応用される分野でもあり,かつて難病と言われた疾患が医学進歩により克服されていくことを実感できる分野でもある。血液疾患の面白さや醍醐味に魅せられると,疾患の分子異常の理解や種々の分子標的薬剤やエピジェネティック関連薬剤の使い分けなど,興味が尽きない分野でもある。

 そんな若手医師の血液診療に対する一抹の不安を払拭してくれるのが本書である。『レジデントのための血液診療の鉄則』というタイトルの本書を手にしたとき,「鉄則」という,いわば古めかしい文字がまず目に飛び込んでくる。さらに序には,若手医師に「血液診療の鉄則」を刷り込む本である,とあり,かなり硬派なイメージである。今風のタイトルでいえば,「わかりやすい○○診療の基本」「○○診療のツボ」あるいは「○○診療のガイドライン」といったところか。しかし,本書を読んでみると,聖路加病院血液内科のベテラン医師たちの若手医師への,さらには血液患者さんへの愛情が溢れているのを実感でき,なぜあえて「鉄則」との表現を用いたのか,納得できる。特に,本書の強みは豊富な経験に基づいて作成された「プラクティス」の項目であり,さまざまな症例提示を通して,その鑑別診断に始まり,治療法の選択とその効果,さらには患者さんへの説明内容まで,実際にその症例を体験できる形で知識が整理されることにある。それぞれの項目は,決して表面的な記述のみにとどまらず,最先端の情報がくどくない程度にちりばめられてあり,若手医師のみならず血液専門医にとっても大変有用な実用書であるといえる。

 ぜひ,臨床の現場において本書を熟読し血液疾患の醍醐味を満喫していただきたい。さらには,鉄則の理解だけにとどまらず,血液疾患における未解決な問題にも大いに興味を持ってもらいたいものである。
血液診療の楽しさを味わえ段階的に理解できる書
書評者: 大屋敷 一馬 (東医大主任教授・血液内科)
 血液と聞くと,初めから苦手意識を持ち,すぐに血液専門医を探すか,総合病院にと思っている医師も多い。これは半分は正しいが,半分はとにかくわからないという気持ちが働いているからではないだろうか。本書は,そんなとっつき難いと思われがちな血液疾患について段階的に理解できるように工夫されている。章立てとして,病棟編,一般外来編,救急外来編に分けられているが,対応の異なる状況における血液診療がうまく分類され,興味を継続させてくれる。一般外来編では主に鑑別診断を含む見逃さない診断に重きが置かれている。救急外来編ではしばしば経験するような緊急対応についてうまくまとめられている。また,それぞれの項目は常に全身的なアプローチから見て,血液疾患を俯瞰的に把握するという内科の鉄則にのっとっている。

 個々の疾患にはポイントとも呼ばれるような小見出しが鉄則としてまとめられ,実際の症例提示へとつながり,POSから診断・検査,治療と説明,副作用と有効性などまでQ and Aの形で書き進められている。本書では,2色刷であることに加え,拡大文字やボールドをうまく使って重要な点を見落とさないような工夫が随所にみられるのもありがたい。

 「もっと知りたい」や「教訓」もあり,ちょっとした読みもの風になっており,それぞれの筆者のあるいは編者のこだわりが垣間見えるのも成書にはない楽しさかもしれない。「最終チェック」で頭の整理ができ,本書は血液専門医をめざす医師にとってもまさに有用な一冊といえる。

 内科研修で血液疾患に遭遇し,苦手意識を持ったかもしれない若手医師にとっても,本書『レジデントのための血液診療の鉄則』は頭の整理になるとともに,経験していなかったさまざまなことを楽しく読み解いてくれる。

 ぜひ,手に取って本書の素晴らしさ,血液診療の楽しさを味わってほしいと切に願う。

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