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血液病レジデントマニュアル 第4版

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研修医、内科医、血液専門医を目指す医師に向けて、血液領域の知識を1冊にまとめた定評あるマニュアル、5年ぶり改訂第4版。新規治療薬、診断基準や診療ガイドラインの改訂をふまえ全面的に記載内容を見直した。これまでと変わらず単独執筆によるもの。生成AIの進歩が著しい時代とは言え、今しばらくは本書を上回るマニュアルは出てこないであろう。限られた医療資源を有効活用するために、医療費についても記載。

*「レジデントマニュアル」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ レジデントマニュアル
神田 善伸
発行 2024年04月判型:B6変頁:516
ISBN 978-4-260-05434-8
定価 4,950円 (本体4,500円+税)

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第4版 序

 2009年,2014年,2019年と5年ごとに改訂を積み重ねてきた『血液病レジデントマニュアル』の最新版を,律儀にも前版からちょうど5年後となる2024年に発刊することができました.
 この5年の間にも数多くの新規治療薬の上市,診断基準や診療ガイドラインの改訂などがあり,全編にわたって大幅な修正が必要でした.改訂作業開始から1年弱の期間に,空いた時間をつなぎ合わせて地道に前版のデータに修正を加え,2回の校正を経て発刊に至りました.大変な作業ではありましたが,私にとって,血液疾患全領域の知識を定期的に更新するために欠かせない作業となっています.また,今回も伊豆津宏二先生(国立がん研究センター)と大森司先生(自治医科大学)に,それぞれリンパ系腫瘍領域,血栓止血領域を中心に査読,助言をいただきました.この場を借りて深謝いたします.

 第4版も新規の項目は設けず,各項目の内容を2024年1月時点の最新の情報にアップデートしました.それでもリンパ腫,骨髄腫を中心に内容量は大幅に増加し,全体のボリュームを調整するために巻末の「抗がん剤の注意事項」は割愛しました.

 また,第3版でも高額薬の薬価を紹介していましたが,今回はより広く2024年1月時点での薬価を追記しました.その背景には,日本の薬価削減政策が薬剤の安定供給の問題や日本市場の魅力の低下を招き,近未来あるいは目の前の患者さんにまで悪影響を及ぼすおそれがあるという状況があります.医療資源が無限であれば医療費を気にする必要はないのですが,少子高齢化が進むわが国の経済状況や,続々と上市される高額薬の状況を考えると,その幻想を抱き続けることは不可能です.一方,これまで医療関係者の無償の努力によって支えられてきた診療体制は,働き方改革によって是正されようとしており,必然的に人件費は上昇します.そんな中で,限られた医療資源を有効に活用して,現在,近未来,そして将来の患者さんに優れた診療を提供し続けるためには薬剤の「適正使用」が欠かせません.製薬会社がもはや販売促進を行わないような安価な薬剤でも,新規治療薬と遜色のない治療結果が期待できる場合には安価な薬剤を選択すべきでしょう.本書は医療資源に対する意識を高めるためにあえて具体的な薬価を記載しました.世界医師会の倫理マニュアルも「医師はかつては自分の患者の利益のためだけに行動することが期待されていたが,現在は医療資源の分配について,他の患者のニーズを考慮に入れるアプローチが要求される」としています.本書の薬価記載からもその意味合いを感じとっていただければ幸いです.

 単独執筆である本書は客観的なデータを基本としながらも,文章には(細かいところでは助詞の使い方などを含めて)私の個人的な考え方がちりばめられており,私の分身ともいえるものです.生成AIの進歩は著しいですが,少なくともしばらくは本書を上回るマニュアルを生成AIが作り出すことはできないでしょう.しかしながら,あらゆる領域において,かつ時間の流れの中でも本書が常に完全なる存在であり続けることは難しいため,診療時にはご自身でも文献,薬剤添付文書などをご確認いただけますようお願い申し上げます.また,日本国内で承認されている適応と異なる記載が含まれていることをご了承ください.

 2024年3月
 自治医科大学附属病院・附属さいたま医療センター血液科
 神田善伸

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最初に知っておきたいこと
血液細胞アトラス

1 血液の基礎知識
2 血液疾患が疑われる患者の診察
3 血液疾患に関連する検査
4 赤血球数の異常の鑑別診断
5 凝固・止血異常の鑑別診断
6 白血球数の異常の鑑別診断
7 リンパ節腫脹の鑑別診断
8 Evidence-based medicineと臨床決断
9 血液型と輸血
10 化学療法総論
11 がん治療薬総論
12 化学療法の手順と支持療法
13 造血幹細胞移植の総論および合併症対策
14 鉄欠乏性貧血
15 巨赤芽球性貧血
16 再生不良性貧血
17 赤芽球癆
18 自己免疫性溶血性貧血(AIHA)
19 発作性夜間血色素尿症(PNH)
20 特発性血小板減少性紫斑病(免疫性血小板減少症)(ITP)
21 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)/溶血性尿毒症症候群(HUS)
22 播種性血管内凝固症候群(DIC)
23 ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)
24 血友病
25 von Willebrand病(VWD)
26 血球貪食性リンパ組織球症(HLH)
27 伝染性単核球症
28 慢性活動性EBウイルス病
29 急性骨髄性白血病(AML)
30 急性リンパ性白血病(ALL)
31 慢性骨髄性白血病(CML)
32 慢性リンパ性白血病(CLL)と関連疾患
33 骨髄異形成症候群(MDS)
34 慢性骨髄増殖性腫瘍(MPN)
35 慢性好酸球性白血病(CEL)/好酸球増多症候群(HES)
36 Hodgkinリンパ腫(HL)
37 非Hodgkinリンパ腫(NHL)
38 成人T細胞性白血病リンパ腫(ATLL)
39 多発性骨髄腫(MM)および関連疾患
40 体表面積換算表
41 薬剤投与量の調節
42 医療費
付 略語一覧,薬剤一覧,有害事象共通用語規準

和文索引
欧文索引

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レジデントから血液専門医そして全ての医療者に役立つ名著
書評者:矢野 真吾(慈恵医大教授・腫瘍・血液内科学)

 待望の『血液病レジデントマニュアル』最新版が刊行された。本書は血液専門医をめざす若手医師はもちろん,研修医,血液専門医,一般内科医がベットサイドで活用できるポケット版の成書である。初版の刊行以来すでに15年以上の歴史を持ち,臨床血液学の定番書といっても過言ではない。

 本書の構成は創意工夫が凝らされている。「最初に知っておきたいこと」として,血液内科医が必ず知っておかなければいけない重要事項の記載から始まる。総論では,臨床血液学の基本となる項目を明確かつ丁寧に解説している。基本は時に難解で学ぶことに労力を要するものだが,本書は適切な分量でわかりやすく解き明かしている。血液病の診断学,がん治療薬総論,抗菌薬・抗真菌薬の予防投与,妊孕性の温存,統計用語など幅広い内容をカバーし,細々たる要望にも満足に応えている。さらに,薬剤投与量の調節の項では,肝障害時や腎障害時の抗がん薬の投与量を一目瞭然に示している。この表は実臨床で活用できるので,ぜひお薦めしたい。

 各論では,血液病の良性疾患から造血器腫瘍に対して,疫学,原因,診断,分類,治療と丁寧にわかりやすく解説している。薬物治療のレジメン,薬剤の投与量,投与スケジュールなどを具体的に提示しており,ベットサイドでとても役立つ。前版から数多くの新規薬剤が登場し,診断基準や診療ガイドラインの改訂がなされたが,本書はほぼ全てを網羅している。さらに,血友病,von Willebrand病,TAFRO症候群などまれな疾患についても解説しているので,いざという時に活用できるので重宝する。

 本書はレジデントのみならず一般内科医が血液病に遭遇したときに役立つマニュアルになることをめざしたとのことだが,看護師や薬剤師にもぜひ手に取ってほしい一冊である。一読すると,自身が担当している患者の病態や治療方針を理解でき,行うべき支持療法や日常のケアについて,根拠に基づいて考える上で役立つはずである。さらに,現場ではなかなか聞きにくいような疑問に対しても,正解を得ることができる。そこが本書の真骨頂であり,名著たるゆえんである。

 血液病に対する薬物治療は目覚ましく進歩している。分子標的薬,二重特異性抗体,CAR-T細胞療法などの新規薬剤がさらに開発され,新しいエビデンスが登場してくる。本書は現時点で知るべき内容が凝縮されおり,熟読することにより最新の知識を得ることができる。この『血液病レジデントマニュアル』を血液病にかかわる全ての医療者にお薦めしたい。


この一冊で血液疾患の診療に必要な情報を網羅
書評者:森 毅彦(東京医歯大教授・血液内科学)

 『血液病レジデントマニュアル』の第4版が発刊されました。初版は2009年10月に発刊され,以降5年ごとに改訂を積み重ねた素晴らしい書です。長きにわたって研修医を含めた若手から中堅,そしてベテランの医師の多くが,日常診療の中で参照し,知識の習得・整理に活用してきました。かく言う私もその一人で,初版を買った頃は若手を名乗っていましたが,ベテランと呼ばれる歳になっても,今なお,この本を手にしています。また初版序に「一般内科医として活躍されている先生方が血液疾患に遭遇した場合にも役立つようなマニュアル」と著者が記していますが,その役割も確実に担える書となっています。

 最近の医学全体の進歩は著しく,その中でも血液内科学では新規治療薬・治療法が次々に導入されてきており,また数多くの大規模な無作為比較臨床研究の結果が発信されています。それにより,長きにわたり標準とされた治療が変更になったものも多くあります。本書はそれらを漏れなく組み入れ改訂されています。主要疾患は詳細に,そして稀少疾患も押さえておくべく要点がまとめられており,この一冊で血液疾患の診療に必要な情報が網羅されています。診断基準から実際の治療法,用量調整から副作用対策まで疾患ごとに詳細に書かれており,診療現場で医師が文字通り「痒い所に手が届く」内容となっています。

 著者である神田善伸先生(自治医大病院附属さいたま医療センター血液科教授)は押しも押されもせぬ血液内科診療の第一人者です。とは言っても幅広い血液疾患を網羅する本書を単独執筆でこのレベルで改訂を続けることは想像を絶する努力の上に成り立っていることと思います。それは日本全国で適切な血液疾患診療が行われることを望む神田先生のお考えから来るものです。それに応えるべく本書を参照に日々の診療に臨んでいかねばならないと改めて思いました。そして「序」で神田先生が「しばらく本書を上回るマニュアルを生成AIが作り出すことはできないでしょう」と述べておられますが,まさにその通りだと思います。神田先生にはこれからも血液内科医が手放せない本書を改訂いただき,発刊し続けていただきたいと思います。

 また,本書は日々のclinical questionの答えを探し求める際に活用できるマニュアルであるものの,重要な論文は原書が引用されております。ぜひ,必要に応じて原著論文にも目を通し,本書に書かれている内容の整理やそれ以上の知識も習得できるような形でも,本書を活用していただきたいと思います。


なぜこのような専門外の本を私が必要とするのか
書評者:國松 淳和(南多摩病院総合内科・膠原病内科部長)

 素晴らしい書籍がまた改訂された。私は総合内科,あるいは地域医療としてのリウマチ・膠原病診療をしているのであって,血液内科の専門治療をしているわけではない。が,じつは初版から今回まで毎版購入している。いってしまえば熱心な本書の読者である。

 さて,専修医でも専門医でもない私がなぜこのような専門外の本を必要とするのか。当たり前だが,知識をアップデートするためである。そこで,本書を読むなどして最近の血液学の臨床について気付いたことが2つあってそれについて述べる。

 1つは,新規治療が増えたということはもちろんだが,血液病の治療として「内服薬」が明らかに増えたという点である。血液病の治療といえばとにかく入院して何本かの点滴を次々にやっていくイメージを持ってしまうが,非常にスマートな治療薬が増えてきた。外来で治療をすることの重要性,必要性はおそらく確実に高まってきていて,この点内科医にとって外来力のビルドは急務になってきている。私の場合は不明熱診療がそうで,病名なしに「とりあえず入院精査」のようにはしにくい医療制度になってきている。できる限り入院せずに解決するような外来力が望まれていることを日々感じる。

 もう1つは,“地域医療 in hematology”とでもいおうか,すなわち,血液病の治療を高次機関で厳密に完璧にやるという考えとは対比的に,無治療で緩和のみというのではないものの,無理して完全寛解をめざすのではなく,生存がそれなりに延び,遠くの高次機関に通院するのではなく自宅近くの相対的に小さく機能の低い医療機関でも実施できるような治療選択肢が増えてきた印象を抱いた点である。内服薬があるという点で1つ目と重複はするが,例えば骨髄異形成症候群,慢性骨髄性白血病,慢性リンパ性白血病,真性多血症など,専門的な診断・評価・ステージングが最初は必要でも,観察や治療などは地域の病院でも可能な場面が増えてきたように思う。低リスク骨髄異形成症候群へのアザシチジンなどは,化学療法をやっていて緊急採血ができるような医療機関ならば,常勤専門医が不在でも(サポートを受けながらであれば)外来で実施可能だし,例えば慢性骨髄性白血病や慢性リンパ性白血病などは,診断も治療も外来でできる。慢性リンパ性白血病なら骨髄穿刺なしでも診断できる。データの推移,血算のパターン,細胞表面マーカー解析を見ることは通常の血液検査で実施可能である。治療に用いられるBTK阻害薬も経口薬である。また,本書にはホスタマチニブのような新規薬への言及もあって,帯にある「最新情報のアップデート」は確かになされている。なおこれも経口薬である。

 必ずしも都心部の大きな高次機関の血液内科外来に頻繁に通わなくても,あるいは入院しなくても,自分の家の近くで診断・治療が受けられる潜在性を示しつつあることを,私のような専門外の医者にも察することを可能にしている本書の役割は大きい。

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