急性中毒ハンドファイル
必要な情報だけを厳選、症状から中毒原因物質を推定する技術が身につく
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さまざまな症状や検査値の組み合わせから中毒原因物質を推定することをトキシドロームと言う。本書は、この技術に優れていることで名高い大垣市民病院のノウハウがコンパクトにまとめられている。第一線で働く救命救急センター医師と薬剤部スタッフが、臨床現場で真に役に立つ情報のみを精選した。
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- 序文
- 目次
- 書評
序文
開く
推薦のことば(曽根孝仁)/序(森 博美・山口 均)
推薦のことば
未曾有の大災害をもたらした東日本大震災.被災された多くの方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに一刻も早い復興を祈念いたします.伝え聞くところによると,今回はその圧倒的な自然の破壊力に加え,環境要因による二次災害が少なからずあったとされています.文明の発展とともに,知らず知らずに共存している危険物質は何も原子力のみではありません.津波肺は2004年のスマトラ沖大地震で注目されたようですが,日本ではあまり知られていませんでした.海水中の病原微生物や燃料タンクからもれた重油などの化学物質を飲み込んだり,あるいは瓦礫やヘドロに含まれた化学物質やカビが細かい粒になって浮遊し,それを吸い込むことによって発症するとされています.地下鉄サリン事件あるいはアメリカ同時多発テロ事件を契機に,NBC(核・生物剤・化学剤)テロ発生時における対応初動マニュアルが厚生労働省より配布されています.しかしながらそれは書棚の片隅でほこりをかぶっていました.まさに“災害は忘れたころにやってくる”であり,常日頃の備えが大切であることを改めて思い知らされました.
医学の進歩は早い.最先端医療をめざす多くの若手医師にとって専門領域はますます細分化され,急性中毒を系統的に学ぶ機会はほとんどありません.一方,実際の救急現場を担う主戦力もまた彼らです.救急専門医が増えつつあるとはいえ,まだまだ広く十分に浸透しているわけではありません.おそらく,偶然当直をしていた彼らが担当するというのが現状ではないでしょうか.かような状況下,大垣市民病院では1986年に薬剤部のメンバーが『急性中毒情報ファイル』を刊行,以降3回の改訂を重ね現在にいたっています.
このたび『急性中毒ハンドファイル』が上梓されました.コンセプトは必ずしも急性中毒診療の専門家とはいえない当直医あるいは薬剤師にとって臨床現場ですぐに役立つものであります.本書は森 博美氏をはじめとする当院薬剤部全員の長年の経験と当院の救命救急センター長である山口 均氏および共同執筆をいただいた他施設の救急専門医によるコラボレーションにより誕生しました.本書がいざという時の備えとして多くの医療従事者の座右の書となり,急性中毒診療に貢献されんことを願っています.
2011年7月
大垣市民病院 院長
曽根孝仁
序
急性中毒において,服用したものが不明な場合には,現れている臨床症状や検査値と,中毒原因物質の分析とにより診断がなされます.
このため,本書の第I章(総論)では,いくつかの特異的な症状や検査値を組み合わせたフローチャートを作成し,中毒原因物質に大まかにたどり着ける方法を試みました.また,それぞれの臨床症状や検査異常を呈する中毒原因物質の主なものをまとめた表や,簡易分析によるスクリーニング方法など,主にプライマリの段階で活用できる内容に絞って記述しました.
第II章(各論)は中毒原因物質の情報集です.日常遭遇する機会の多いもの,一方で,毒性の強いものという2つの観点から中毒原因物質を選択して,その情報をコンパクトに見やすくまとめました.
第III章では中毒処置薬一覧として,第II章で取り上げた物質に対する処置薬の用法・用量,使用上の注意などを記載しました.
近年,医薬品,特に精神神経用薬の中毒件数が増加する反面,農薬中毒は減少しています.発生率の高い物質の情報を利用する頻度が高くなりがちですが,実際の救急現場では,あまり経験しなくなったものこそ大切な情報であることに気づきます.猛毒で知られる有機リン系殺虫剤の中毒も例外ではありません.若い医師,薬剤師は経験例が少なく,直ちに対応できなくなってきているのが現状であります.
われわれは,救急医療現場ですぐに役立つ,必要最小限の情報を手早くひける書籍をとの強い思いから,ハンディタイプの本書を企画しました.第一線で活躍する救急医療の専門医に診断・治療の部分を執筆願い,当院薬剤部に蓄積した中毒情報から精選した情報をファイル化して第II章と第III章としました.
これら収載した情報に不備な点がありましたら,御教示を賜れば幸いに存じます.
本書が医師,薬剤師,看護師,検査技師,救急救命士をはじめとした医療従事者の皆様の手引書として幅広く利用され,患者様の救命の一助となることを念願します.
なお,本書の編集にあたっては大垣市民病院薬剤部が以前に編集・執筆をした『急性中毒情報ファイル 第4版』(廣川書店発行)および『医薬品急性中毒ガイド』(ヴァンメディカル発行)の2冊を参照しておりますが,新たに本書が加わることで互いの書籍の内容を補完し合いたいというわれわれの申し出に御理解と御了承をいただいた,株式会社廣川書店および株式会社ヴァンメディカルに深く感謝申し上げます.
本書の出版に際し,多大な御尽力をいただいた,株式会社医学書院編集部の藤本さおり様,制作部の永安徹也様に感謝いたします.
2011年7月
大垣市民病院
森 博美
山口 均
推薦のことば
未曾有の大災害をもたらした東日本大震災.被災された多くの方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに一刻も早い復興を祈念いたします.伝え聞くところによると,今回はその圧倒的な自然の破壊力に加え,環境要因による二次災害が少なからずあったとされています.文明の発展とともに,知らず知らずに共存している危険物質は何も原子力のみではありません.津波肺は2004年のスマトラ沖大地震で注目されたようですが,日本ではあまり知られていませんでした.海水中の病原微生物や燃料タンクからもれた重油などの化学物質を飲み込んだり,あるいは瓦礫やヘドロに含まれた化学物質やカビが細かい粒になって浮遊し,それを吸い込むことによって発症するとされています.地下鉄サリン事件あるいはアメリカ同時多発テロ事件を契機に,NBC(核・生物剤・化学剤)テロ発生時における対応初動マニュアルが厚生労働省より配布されています.しかしながらそれは書棚の片隅でほこりをかぶっていました.まさに“災害は忘れたころにやってくる”であり,常日頃の備えが大切であることを改めて思い知らされました.
医学の進歩は早い.最先端医療をめざす多くの若手医師にとって専門領域はますます細分化され,急性中毒を系統的に学ぶ機会はほとんどありません.一方,実際の救急現場を担う主戦力もまた彼らです.救急専門医が増えつつあるとはいえ,まだまだ広く十分に浸透しているわけではありません.おそらく,偶然当直をしていた彼らが担当するというのが現状ではないでしょうか.かような状況下,大垣市民病院では1986年に薬剤部のメンバーが『急性中毒情報ファイル』を刊行,以降3回の改訂を重ね現在にいたっています.
このたび『急性中毒ハンドファイル』が上梓されました.コンセプトは必ずしも急性中毒診療の専門家とはいえない当直医あるいは薬剤師にとって臨床現場ですぐに役立つものであります.本書は森 博美氏をはじめとする当院薬剤部全員の長年の経験と当院の救命救急センター長である山口 均氏および共同執筆をいただいた他施設の救急専門医によるコラボレーションにより誕生しました.本書がいざという時の備えとして多くの医療従事者の座右の書となり,急性中毒診療に貢献されんことを願っています.
2011年7月
大垣市民病院 院長
曽根孝仁
序
急性中毒において,服用したものが不明な場合には,現れている臨床症状や検査値と,中毒原因物質の分析とにより診断がなされます.
このため,本書の第I章(総論)では,いくつかの特異的な症状や検査値を組み合わせたフローチャートを作成し,中毒原因物質に大まかにたどり着ける方法を試みました.また,それぞれの臨床症状や検査異常を呈する中毒原因物質の主なものをまとめた表や,簡易分析によるスクリーニング方法など,主にプライマリの段階で活用できる内容に絞って記述しました.
第II章(各論)は中毒原因物質の情報集です.日常遭遇する機会の多いもの,一方で,毒性の強いものという2つの観点から中毒原因物質を選択して,その情報をコンパクトに見やすくまとめました.
第III章では中毒処置薬一覧として,第II章で取り上げた物質に対する処置薬の用法・用量,使用上の注意などを記載しました.
近年,医薬品,特に精神神経用薬の中毒件数が増加する反面,農薬中毒は減少しています.発生率の高い物質の情報を利用する頻度が高くなりがちですが,実際の救急現場では,あまり経験しなくなったものこそ大切な情報であることに気づきます.猛毒で知られる有機リン系殺虫剤の中毒も例外ではありません.若い医師,薬剤師は経験例が少なく,直ちに対応できなくなってきているのが現状であります.
われわれは,救急医療現場ですぐに役立つ,必要最小限の情報を手早くひける書籍をとの強い思いから,ハンディタイプの本書を企画しました.第一線で活躍する救急医療の専門医に診断・治療の部分を執筆願い,当院薬剤部に蓄積した中毒情報から精選した情報をファイル化して第II章と第III章としました.
これら収載した情報に不備な点がありましたら,御教示を賜れば幸いに存じます.
本書が医師,薬剤師,看護師,検査技師,救急救命士をはじめとした医療従事者の皆様の手引書として幅広く利用され,患者様の救命の一助となることを念願します.
なお,本書の編集にあたっては大垣市民病院薬剤部が以前に編集・執筆をした『急性中毒情報ファイル 第4版』(廣川書店発行)および『医薬品急性中毒ガイド』(ヴァンメディカル発行)の2冊を参照しておりますが,新たに本書が加わることで互いの書籍の内容を補完し合いたいというわれわれの申し出に御理解と御了承をいただいた,株式会社廣川書店および株式会社ヴァンメディカルに深く感謝申し上げます.
本書の出版に際し,多大な御尽力をいただいた,株式会社医学書院編集部の藤本さおり様,制作部の永安徹也様に感謝いたします.
2011年7月
大垣市民病院
森 博美
山口 均
目次
開く
I 総論
はじめに
1 診断法
A 症状・検査値からみた中毒原因物質の推定
B 症状からみた中毒
C 検査値からみた中毒
D 分析結果からみた中毒
2 処置法
A 未吸収薬毒物の除去
B 既吸収毒物の除去
C 対症療法
3 見逃せない注意点
II 各論
本章の凡例
1 医薬品
1 ベンゾジアゼピン系催眠薬・抗不安薬
2 抗うつ薬(三環系,四環系,SSRI,SNRIなど)
3 抗精神病薬(フェノチアジン系,ブチロフェノン系,非定型)
4 バルビツール酸系化合物
5 炭酸リチウム
6 ブロムワレリル尿素(ブロモバレリル尿素)
7 バルプロ酸ナトリウム
8 カルバマゼピン
9 フェニトイン
10 アセトアミノフェン(別名:パラセタモール)
11 アスピリン
12 ロキソプロフェン,イブプロフェン
13 テオフィリン,カフェイン
14 抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミン塩酸塩など)
15 ジスチグミン臭化物(コリンエステラーゼ阻害薬)
16 抗コリン薬(硫酸アトロピン)
17 ジゴキシン,メチルジゴキシン
18 カルシウム拮抗薬(ジヒドロピリジン系)
19 ACE阻害薬,ARB
20 抗不整脈薬
21 カリウム薬
22 オピオイド
23 ピル(低用量経口避妊薬)
24 点鼻用血管収縮薬
25 マキロン®
26 ヨードチンキ
27 クロルヘキシジングルコン酸塩
28 クレゾール石鹸液
29 甘草含有漢方薬エキス製剤
30 附子含有漢方薬エキス製剤
31 地黄,川きゅう,麻黄含有漢方薬エキス製剤
32 酸棗仁湯,抑肝散,抑肝散加陳皮半夏
33 メタンフェタミン塩酸塩(覚醒剤)
2 農薬
1 有機リン系殺虫剤(メタミドホス含む)
2 カーバメート系殺虫剤
3 ピレスロイド系殺虫剤
4 カルタップ剤
5 クロロニコチニル剤
6 クロルピクリン剤
7 石灰硫黄合剤
8 パラコート剤
9 グリホサート剤
10 グルホシネート剤
11 DCPA・NAC合剤
3 家庭用品
1 合成洗剤(台所用,洗濯用)
2 住居用洗剤(酸性)
3 住居用洗剤(アルカリ性)
4 塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)
5 パーマネント液(第1液)
6 パーマネント液(第2液)
7 染毛剤(ヘアダイ,ヘアカラー)
8 香水,オーデコロン
9 マニキュア剤,マニキュア除光液
10 芳香剤(部屋用,トイレ用,自動車用など)
11 シリカゲル
12 生石灰(酸化カルシウム)
13 ホウ酸団子(ゴキブリ団子)
14 ボタン型電池
15 パラジクロルベンゼン
16 ワルファリン類(殺そ剤)
17 保冷剤,冷却剤
18 防水スプレー
19 タバコ
4 工業用薬品
1 強アルカリ(水酸化ナトリウム,水酸化カリウム)
2 強酸(塩酸,硫酸,硝酸)
3 フッ化水素(HF)
4 灯油(石油)およびガソリン(無鉛)
5 シンナー
6 トリクロロエチレン
7 メタノール
8 エチレングリコール,ジエチレングリコール
9 水銀化合物(水銀蒸気,無機水銀,有機水銀)
10 銅化合物
11 クロム化合物
12 ヒ素化合物
13 鉛化合物
14 一酸化炭素
15 硫化水素
16 シアン化合物(青酸化合物)
17 ホルマリン
18 アジ化ナトリウム
5 自然毒
1 フグ中毒(テトロドトキシン)
2 マムシ咬傷
3 ヤマカガシ咬傷
4 ハブ咬傷
5 ハチ刺傷
6 セアカゴケグモ咬傷
7 クラゲ刺傷
8 トリカブト
9 ツキヨタケ
10 ドクササコ
11 アマトキシン含有毒キノコ
12 シュウ酸含有植物
13 バイケイソウ,コバイケイソウ
6 その他
1 MDMA
2 大麻(マリファナ)
3 催涙剤(スプレー剤含む)
4 酒類(エタノール)
5 醤油(食塩)
6 放射線(急性被曝)
III 中毒処置薬一覧
中毒処置薬一覧の凡例
索引
はじめに
1 診断法
A 症状・検査値からみた中毒原因物質の推定
B 症状からみた中毒
C 検査値からみた中毒
D 分析結果からみた中毒
2 処置法
A 未吸収薬毒物の除去
B 既吸収毒物の除去
C 対症療法
3 見逃せない注意点
II 各論
本章の凡例
1 医薬品
1 ベンゾジアゼピン系催眠薬・抗不安薬
2 抗うつ薬(三環系,四環系,SSRI,SNRIなど)
3 抗精神病薬(フェノチアジン系,ブチロフェノン系,非定型)
4 バルビツール酸系化合物
5 炭酸リチウム
6 ブロムワレリル尿素(ブロモバレリル尿素)
7 バルプロ酸ナトリウム
8 カルバマゼピン
9 フェニトイン
10 アセトアミノフェン(別名:パラセタモール)
11 アスピリン
12 ロキソプロフェン,イブプロフェン
13 テオフィリン,カフェイン
14 抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミン塩酸塩など)
15 ジスチグミン臭化物(コリンエステラーゼ阻害薬)
16 抗コリン薬(硫酸アトロピン)
17 ジゴキシン,メチルジゴキシン
18 カルシウム拮抗薬(ジヒドロピリジン系)
19 ACE阻害薬,ARB
20 抗不整脈薬
21 カリウム薬
22 オピオイド
23 ピル(低用量経口避妊薬)
24 点鼻用血管収縮薬
25 マキロン®
26 ヨードチンキ
27 クロルヘキシジングルコン酸塩
28 クレゾール石鹸液
29 甘草含有漢方薬エキス製剤
30 附子含有漢方薬エキス製剤
31 地黄,川きゅう,麻黄含有漢方薬エキス製剤
32 酸棗仁湯,抑肝散,抑肝散加陳皮半夏
33 メタンフェタミン塩酸塩(覚醒剤)
2 農薬
1 有機リン系殺虫剤(メタミドホス含む)
2 カーバメート系殺虫剤
3 ピレスロイド系殺虫剤
4 カルタップ剤
5 クロロニコチニル剤
6 クロルピクリン剤
7 石灰硫黄合剤
8 パラコート剤
9 グリホサート剤
10 グルホシネート剤
11 DCPA・NAC合剤
3 家庭用品
1 合成洗剤(台所用,洗濯用)
2 住居用洗剤(酸性)
3 住居用洗剤(アルカリ性)
4 塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)
5 パーマネント液(第1液)
6 パーマネント液(第2液)
7 染毛剤(ヘアダイ,ヘアカラー)
8 香水,オーデコロン
9 マニキュア剤,マニキュア除光液
10 芳香剤(部屋用,トイレ用,自動車用など)
11 シリカゲル
12 生石灰(酸化カルシウム)
13 ホウ酸団子(ゴキブリ団子)
14 ボタン型電池
15 パラジクロルベンゼン
16 ワルファリン類(殺そ剤)
17 保冷剤,冷却剤
18 防水スプレー
19 タバコ
4 工業用薬品
1 強アルカリ(水酸化ナトリウム,水酸化カリウム)
2 強酸(塩酸,硫酸,硝酸)
3 フッ化水素(HF)
4 灯油(石油)およびガソリン(無鉛)
5 シンナー
6 トリクロロエチレン
7 メタノール
8 エチレングリコール,ジエチレングリコール
9 水銀化合物(水銀蒸気,無機水銀,有機水銀)
10 銅化合物
11 クロム化合物
12 ヒ素化合物
13 鉛化合物
14 一酸化炭素
15 硫化水素
16 シアン化合物(青酸化合物)
17 ホルマリン
18 アジ化ナトリウム
5 自然毒
1 フグ中毒(テトロドトキシン)
2 マムシ咬傷
3 ヤマカガシ咬傷
4 ハブ咬傷
5 ハチ刺傷
6 セアカゴケグモ咬傷
7 クラゲ刺傷
8 トリカブト
9 ツキヨタケ
10 ドクササコ
11 アマトキシン含有毒キノコ
12 シュウ酸含有植物
13 バイケイソウ,コバイケイソウ
6 その他
1 MDMA
2 大麻(マリファナ)
3 催涙剤(スプレー剤含む)
4 酒類(エタノール)
5 醤油(食塩)
6 放射線(急性被曝)
III 中毒処置薬一覧
中毒処置薬一覧の凡例
索引
書評
開く
Book Review 『急性中毒ハンドファイル』 (雑誌『月刊薬事』より)
書評者: 阿南 節子 (同志社女子大学薬学部特任教授)
急性中毒は年間約数十万件発生していると推定され,決してまれに発生するものではなく,多くの医療者が遭遇する可能性があります。
急性中毒への対応は「いつ,何を,どのようにして,どれだけ服用したか」を素早く把握し,重症度と緊急度を評価することが基本です。しかしながら患者が何を服用したかが不明な場合には,現れる臨床症状や検査値と,中毒原因物質の分析とにより,診断がなされます。
本書の特徴の一つは,第1章で,いくつかの特異的な症状や検査値を組み合わせたフローチャートにより,中毒原因物質に大まかにたどり着けるようにしていることです。そして,それぞれの対処法・治療法,注意点などのポイントを簡潔に示しています。
第2章では,急性中毒の発生頻度が高いもの,毒性が強いものを中心に100項目が選択され情報がまとめられています。項目は医薬品,農薬,家庭用品,工業用薬品,自然毒,その他に分類され,その情報は「毒性ランク」,「商品名・剤形」,「中毒量・致死量」,「中毒症状」,「体内動態」,「処置法」,「アドバイス」からなります。特に「アドバイス」の項は,著者の先生方の深いご経験が凝縮されており,薬剤師として何に留意するべきか,非常に貴重な情報となっています。
第3章は,第2章で取り上げた物質に対する処置薬が一覧としてコンパクトにまとめられています。
本書は,薬剤部門や救急部門に常備し,中身をときどき予め見ていただいておくことで,緊急の際には医療者の強い味方になります。また,薬局に勤務なさっている薬剤師や,薬学生,研修医,看護師の皆様にもぜひご一読いただきたい書籍です。
(『月刊薬事』 第53巻 第13号,2011年12月,じほう社,132(2136)ページ掲載)
新刊紹介 『急性中毒ハンドファイル』 (雑誌『日本病院薬剤師会雑誌』より)
書評者: 畝井 浩子 (広島大学病院薬剤部)
これまでの急性中毒の成書は,起因物質とその治療法を中心に書かれており,起因物質がわかっていることが前提となっていた。しかし,本書は,患者の臨床症状や検査から中毒起因物質を絞り込むときの手引書として書かれており,臨床現場ですぐに役立つ情報を手早く紐解ける,待ち望んでいたハンディタイプの書といえる。
なかでも,「診断法」の章の,散瞳・縮瞳,代謝性アシドーシスなど日常の診療でよくみる症状や検査値の組み合わせから中毒起因物質を推測するフローチャート(14パターン)は特筆に値する。また,中枢神経症状,消化器症状,呼吸器症状,泌尿器症状などの主要症状や,検査で異常値を呈する原因物質とその対処法が実にシンプルに記述されている。「見逃せない注意点」では,特有の臭い・色などをもつ中毒起因物質がまとめられている。
一方,各論では,臨床的に頻度が高い,あるいは毒性が強い起因物質が100項目に精選され,“処置法”や“アドバイス”など実践的かつ簡潔な解説が付されている。「中毒処置薬一覧」には,催吐薬や胃洗浄液などの除去薬と解毒・拮抗薬の作用機序と使用上の注意が一目でわかるように整理されている。
本書はあらゆる点において現場に即した情報とヒントが満載でありながら,コンパクトにまとめられたこれまでに類をみない書であり,豊富な臨床経験と基礎薬学に造詣の深い薬剤師と医師のみごとなコラボレーションというほかない。また,深い専門性をもちながらも初心者にもわかりやすい語り口で書かれており,編著者であるお2人の人柄が読むごとに感じられる。初心者から,日本中毒学会にて認定が開始されたクリニカルトキシコロジストまで,誰しもが中毒医療の現場で手にしたい必携の一冊である。
(『日本病院薬剤師会雑誌』 第47巻 第12号,2011年12月,1537ページ掲載)
中毒を熟知し,「診断を読める」者が厳選した情報
書評者: 須崎 紳一郎 (武蔵野赤十字病院救命救急センター長)
ベテラン救急医ならいざ知らず,「中毒」と聞くと身構えてしまうだろう。何と言っても原因物質は無数にある。日常頻度の高いマイナートランキライザーの過量服用なら,まだ診療勘もあるが,中毒には耳慣れない薬も農薬も脱法ドラッグもある。最近は「得体の知れない外国薬?」もまれではない。原因物質の情報検索には,まず医薬品なら添付文書ファイルか,それらをまとめた『日本医薬品集』が探される。医薬品以外でもWEB検索は強力で,瞬く間に(しばしば膨大な)情報がPCから打ち出される。
でも,それらを見ても「中毒の病態」も「毒性」もはっきりせず,なにより肝心の患者の「治療・対処」にはほとんど無益な記事の羅列だと気付く。もともと中毒のための資料でないのだから。結局,中毒を熟知し,「診療を読める」者が厳選した情報でなければ,量が多くても実診療の役には立たない。
本書では例えば医薬品では収録は33種に絞られ,その一方で外用消毒薬の「マキロン®」が載せられているなど,ややもすれば偏った選択に見えるかもしれない。しかし,これまで30年間,救急に専従し急性中毒に接してきた立場で眺めれば,本書の記載対象100種の選び方は実に渋い。農薬,家庭用品,工業用薬品,自然毒と合わせて,日常の救急臨床で接する中毒物質はまず本書で網羅されていると言ってよい。この点,本書には同じ著者らによるロングセラー『急性中毒情報ファイル』とその改訂が生かされていることは間違いない。
本書は比較的コンパクトである。「ハンドファイル」との名称は携帯性を重視したものだろうが,得てして小判の冊子は,いざ開いても必要な内容が不十分で,実用性に欠けることが少なくない。不用な記載を削り必要な項目・記載に絞り込んで書き込むには,著者の経験と思い入れがなければなし得ない。総論の「中毒症候」一つをとっても他書にはない明快な解説であり,一読,腑に落ちよう。
本書を評せば,大垣市民病院薬剤部に勤務しつつ長年急性中毒を追い,今夏,第33回日本中毒学会総会を主催された森博美先生の,中毒への情熱と執念がギュっと詰まった本である。
書評者: 阿南 節子 (同志社女子大学薬学部特任教授)
急性中毒は年間約数十万件発生していると推定され,決してまれに発生するものではなく,多くの医療者が遭遇する可能性があります。
急性中毒への対応は「いつ,何を,どのようにして,どれだけ服用したか」を素早く把握し,重症度と緊急度を評価することが基本です。しかしながら患者が何を服用したかが不明な場合には,現れる臨床症状や検査値と,中毒原因物質の分析とにより,診断がなされます。
本書の特徴の一つは,第1章で,いくつかの特異的な症状や検査値を組み合わせたフローチャートにより,中毒原因物質に大まかにたどり着けるようにしていることです。そして,それぞれの対処法・治療法,注意点などのポイントを簡潔に示しています。
第2章では,急性中毒の発生頻度が高いもの,毒性が強いものを中心に100項目が選択され情報がまとめられています。項目は医薬品,農薬,家庭用品,工業用薬品,自然毒,その他に分類され,その情報は「毒性ランク」,「商品名・剤形」,「中毒量・致死量」,「中毒症状」,「体内動態」,「処置法」,「アドバイス」からなります。特に「アドバイス」の項は,著者の先生方の深いご経験が凝縮されており,薬剤師として何に留意するべきか,非常に貴重な情報となっています。
第3章は,第2章で取り上げた物質に対する処置薬が一覧としてコンパクトにまとめられています。
本書は,薬剤部門や救急部門に常備し,中身をときどき予め見ていただいておくことで,緊急の際には医療者の強い味方になります。また,薬局に勤務なさっている薬剤師や,薬学生,研修医,看護師の皆様にもぜひご一読いただきたい書籍です。
(『月刊薬事』 第53巻 第13号,2011年12月,じほう社,132(2136)ページ掲載)
新刊紹介 『急性中毒ハンドファイル』 (雑誌『日本病院薬剤師会雑誌』より)
書評者: 畝井 浩子 (広島大学病院薬剤部)
これまでの急性中毒の成書は,起因物質とその治療法を中心に書かれており,起因物質がわかっていることが前提となっていた。しかし,本書は,患者の臨床症状や検査から中毒起因物質を絞り込むときの手引書として書かれており,臨床現場ですぐに役立つ情報を手早く紐解ける,待ち望んでいたハンディタイプの書といえる。
なかでも,「診断法」の章の,散瞳・縮瞳,代謝性アシドーシスなど日常の診療でよくみる症状や検査値の組み合わせから中毒起因物質を推測するフローチャート(14パターン)は特筆に値する。また,中枢神経症状,消化器症状,呼吸器症状,泌尿器症状などの主要症状や,検査で異常値を呈する原因物質とその対処法が実にシンプルに記述されている。「見逃せない注意点」では,特有の臭い・色などをもつ中毒起因物質がまとめられている。
一方,各論では,臨床的に頻度が高い,あるいは毒性が強い起因物質が100項目に精選され,“処置法”や“アドバイス”など実践的かつ簡潔な解説が付されている。「中毒処置薬一覧」には,催吐薬や胃洗浄液などの除去薬と解毒・拮抗薬の作用機序と使用上の注意が一目でわかるように整理されている。
本書はあらゆる点において現場に即した情報とヒントが満載でありながら,コンパクトにまとめられたこれまでに類をみない書であり,豊富な臨床経験と基礎薬学に造詣の深い薬剤師と医師のみごとなコラボレーションというほかない。また,深い専門性をもちながらも初心者にもわかりやすい語り口で書かれており,編著者であるお2人の人柄が読むごとに感じられる。初心者から,日本中毒学会にて認定が開始されたクリニカルトキシコロジストまで,誰しもが中毒医療の現場で手にしたい必携の一冊である。
(『日本病院薬剤師会雑誌』 第47巻 第12号,2011年12月,1537ページ掲載)
中毒を熟知し,「診断を読める」者が厳選した情報
書評者: 須崎 紳一郎 (武蔵野赤十字病院救命救急センター長)
ベテラン救急医ならいざ知らず,「中毒」と聞くと身構えてしまうだろう。何と言っても原因物質は無数にある。日常頻度の高いマイナートランキライザーの過量服用なら,まだ診療勘もあるが,中毒には耳慣れない薬も農薬も脱法ドラッグもある。最近は「得体の知れない外国薬?」もまれではない。原因物質の情報検索には,まず医薬品なら添付文書ファイルか,それらをまとめた『日本医薬品集』が探される。医薬品以外でもWEB検索は強力で,瞬く間に(しばしば膨大な)情報がPCから打ち出される。
でも,それらを見ても「中毒の病態」も「毒性」もはっきりせず,なにより肝心の患者の「治療・対処」にはほとんど無益な記事の羅列だと気付く。もともと中毒のための資料でないのだから。結局,中毒を熟知し,「診療を読める」者が厳選した情報でなければ,量が多くても実診療の役には立たない。
本書では例えば医薬品では収録は33種に絞られ,その一方で外用消毒薬の「マキロン®」が載せられているなど,ややもすれば偏った選択に見えるかもしれない。しかし,これまで30年間,救急に専従し急性中毒に接してきた立場で眺めれば,本書の記載対象100種の選び方は実に渋い。農薬,家庭用品,工業用薬品,自然毒と合わせて,日常の救急臨床で接する中毒物質はまず本書で網羅されていると言ってよい。この点,本書には同じ著者らによるロングセラー『急性中毒情報ファイル』とその改訂が生かされていることは間違いない。
本書は比較的コンパクトである。「ハンドファイル」との名称は携帯性を重視したものだろうが,得てして小判の冊子は,いざ開いても必要な内容が不十分で,実用性に欠けることが少なくない。不用な記載を削り必要な項目・記載に絞り込んで書き込むには,著者の経験と思い入れがなければなし得ない。総論の「中毒症候」一つをとっても他書にはない明快な解説であり,一読,腑に落ちよう。
本書を評せば,大垣市民病院薬剤部に勤務しつつ長年急性中毒を追い,今夏,第33回日本中毒学会総会を主催された森博美先生の,中毒への情熱と執念がギュっと詰まった本である。
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