脊柱

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患者の訴えを起点に、「要因→評価→介入」の3ステップで臨床をひも解く「運動器リハビリテーション Science & Practice」シリーズ。本巻では、頚部・腰部の痛みやしびれが現れる姿勢や動作、生活場面に着目し、診断名だけでは絞りきれない要因を複数の所見を組み合わせて見極める。「腰や首が痛い」などの多様な訴えに対し、何をどう評価し、いかに介入へつなげるか──その臨床判断と実践に至る道筋を示す。

シリーズ 運動器リハビリテーション Science & Practice
シリーズ編集 三木 貴弘
編集 三木 貴弘 / 吉田 亮太
発行 2026年11月判型:B5頁:464
ISBN 978-4-260-06564-1
定価 6,820円 (本体6,200円+税)

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シリーズ刊行にあたって/序

シリーズ刊行にあたって

 本シリーズは,運動器疾患のリハビリテーションを,科学的根拠と臨床実践の両面から学べる書籍として企画した.シリーズ名に「Science & Practice」と掲げたのは,この2つを1冊で学べる書籍をつくることが,本企画の出発点であったためである.根拠を知っていても目の前の患者に何をすべきか決められなければ臨床に活かせず,手技を身につけていてもそれをなぜ選ぶのかを説明できなければ,判断は経験の枠を出ない.その両方を一続きのものとして扱うことを,本シリーズの基本方針とした.
 Science(サイエンス)とは,検査や介入の妥当性を示す根拠であり,Practice(プラクティス)とは,その根拠を実際の1人の患者に届けるための具体的な方法である.前者だけでは患者には届かず,後者だけでは妥当性を担保できない.各巻はこの両輪を1冊のなかで回すことを目指し,根拠の確かさと不確かさをともに示しながら,実際の手順までを書き下ろしている.
 本シリーズはいずれの巻も,Step1:要因,Step2:評価,Step3:介入という共通の構成をとる.これは臨床推論の順序そのものである.なぜその症状が生じているのかという要因の理解があって初めて,評価は仮説を検証する作業になる.そして,評価が仮説の検証であることで,介入は選択されたものになる.この流れのどこかが切れると,評価は形式的な手続きとなり,介入は手持ちの手技をただ行うだけになってしまう.
 本シリーズは,『脊柱』『肩関節』『肘関節・手関節』『股関節』『膝関節』『足部・足関節』の全6巻で構成した.部位ごとに分けたのは,部位によって患者の訴えも,そこから立てる仮説も異なるためであり,その違いを実際の臨床で使える水準まで掘り下げたかったためである.関心のある巻から手に取っていただいて構わないが,サイエンスとプラクティスの両輪を回すことや,患者の訴えから出発して要因を絞り込んでいく思考の道筋は,部位を問わず共通している.
 各巻の編集と執筆は,まさにサイエンスとプラクティスの両輪を日々の臨床や研究で実践している第一線の先生方にお願いした.研究の成果を現場の言葉に置き換え,現場で生じた疑問から研究を実践する.その両方を実際に担ってこられた方々だからこそ書ける内容が,各巻に収められている.
 本シリーズが,目の前の患者を支える一助となることを編者一同心より願っている.
 最後に,本シリーズの企画から刊行に至るまで,医学書院の北條立人氏には多大なるお力添えをいただいた.構想の段階から幾度となく議論を重ね,このような形にまとめ上げてくださったことに,深く感謝申し上げたい.

 2026年9月
 シリーズ編集 三木貴弘


序

 脊柱は,療法士が臨床で多く出会う部位である.腰痛は世界で最も多くの障害を生む健康問題であり,頚部痛もそれに次ぐ.医学が進歩しているにもかかわらず,その罹患率は依然として高いままである.理由としては,画像所見と症状が一致しない場合が多いこと,心理社会的因子も含めて要因が多岐にわたること,同じ診断名の患者に同じ介入が有効とは限らないことなどが挙げられる.脊柱は,根拠と実践の間に隔たりが生じやすい部位でもある.
 脊柱では,診断名が得られてもそこから絞り込める範囲は限られている.同じ診断名でも要因は異なり,異なる診断名でも共通の要因が潜んでいる.だからこそ本巻では,診断名と患者の訴えの両方を手がかりとして,要因を絞り込む過程を丁寧に追うことにした.
 また,本巻は頚部から腰部までを1冊に収めている.椎間関節や椎間板といった構造は共通しており,姿勢の保持や荷重の受け渡しといった機能も連続している.頚部痛を訴える患者の胸腰部に要因が潜んでいることもあれば,その逆もある.脊柱をひとまとまりとして扱うことにしたのは,この連続性を切り分けずに読んでいただきたかったためである.
 脊柱の痛みは,日常のなかの姿勢や動作と結びついて現れることが多い.座り続けること,運転すること,荷物を持ち上げることなど,訴えの背景にはその人の生活そのものがある.だからこそ,その訴えがどこから生じているのかを1つの検査で言い当てられる場面は少ない.複数の所見を組み合わせ,治療への反応を見ながら仮説を修正していく作業が必要になる.本巻の各Chapterでは,それらをどう組み立てて判断に至るのかをまとめている.
 本巻の編集と執筆は,脊柱の臨床と研究の双方に日々取り組んでいる先生方にお願いした.サイエンスとプラクティスの両輪をどう回しているのか,その過程がそれぞれのChapterに書かれている.本巻が頚部痛や腰痛を訴える患者を前にした1日の臨床を,少しでも支えるものとなることを願っている.
 最後に,本巻の刊行にあたっては,ご執筆いただいた先生方,ならびに医学書院の北條立人氏に多大なるお力添えをいただいた.深く感謝申し上げたい.

 2026年9月
 編集を代表して 三木貴弘

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■頚部
【総論】
  1 頚部痛の全体像
   ・ 頚部痛の影響
   ・ 頚部痛の評価の流れ
  2 特異的頚部痛
   ・ 頚椎症性神経根症
   ・ 頚椎症性脊髄症
  3 非特異的頚部痛
   ・ 非特異的頚部痛の定義
   ・ 臨床的特徴に基づく5つのパターン

【各論】
 Chapter 1 可動域制限を伴う頚部痛──運動の最終域で痛む
  Step 1 要因を整理する
   ・ 機能的要因
   ・ 疾患的要因
  Step 2 評価法を身につける
   ・ 情報収集と医療面接
   ・ 身体機能検査
  Step 3 リハビリテーションを提供する
   ・ 環境因子の調整・日常生活動作指導
   ・ 疼痛原因組織・運動制限因子への介入

 Chapter 2 モーターコントロール障害──頚部の動きに伴う頚部痛
  Step 1 要因を整理する
   ・ 機能的要因
   ・ 疾患的要因
  Step 2 評価法を身につける
   ・ 情報収集と医療面接
   ・ 身体機能検査
  Step 3 リハビリテーションを提供する
   ・ 制限因子に対する治療

 Chapter 3 筋筋膜性頚部痛──同一姿勢の保持で痛む
  Step 1 要因を整理する
   ・ 機能的要因
   ・ 疾患的要因
  Step 2 評価法を身につける
   ・ 情報収集と医療面接
   ・ 身体機能検査
  Step 3 リハビリテーションを提供する
   ・ 環境因子の調整・日常生活動作指導
   ・ 疼痛原因組織・運動制御因子への介入
   ・ 機能障害への介入

 Chapter 4 上肢の症状を伴う頚部痛──安静時・運動時に腕がしびれる
  Step 1 要因を整理する
   ・ 機能的要因
   ・ 疾患的要因
  Step 2 評価法を身につける
   ・ 身体機能検査
  Step 3 リハビリテーションを提供する
   ・ 上肢の症状を伴う頚部痛の治療に関連する科学的知見の要約
   ・ 制限因子に対する治療

 Chapter 5 頚椎捻挫/外傷性頚部症候群──交通事故後から続く頚部痛
  Step 1 要因を整理する
   ・ 機能的要因
   ・ 疾患的要因
  Step 2 評価法を身につける
   ・ 情報収集と医療面接
   ・ 身体機能検査
  Step 3 リハビリテーションを提供する
   ・ 交通事故後から続く頚部痛の治療に関連する科学的知見の要約
   ・ 制限因子に対する治療
   ・ 慢性疼痛に対する介入

 Chapter 6 頚原性頭痛──頭痛を伴う頚部痛
  Step 1 要因を整理する
   ・ 機能的要因
   ・ 疾患的要因
  Step 2 評価法を身につける
   ・ 情報収集と医療面接
   ・ 身体機能検査
  Step 3 リハビリテーションを提供する
   ・ 不良姿勢・作業環境に対する介入
   ・ 軟部組織の制限に対する介入
   ・ 関節組織の制限に対する介入
   ・ 自主トレーニング

■腰部
【総論】
  1 腰痛の全体像
   ・ 腰痛の影響
   ・ 腰痛の評価の流れ
  2 特異的腰痛
   ・ 特異的腰痛の定義
   ・ 特異的腰痛の病態
  3 非特異的腰痛
   ・ 非特異的腰痛の定義
   ・ 非特異的腰痛の病態
   ・ 心理社会的因子の影響

【各論】
 Chapter 1 非特異的腰痛のモーターコントロール障害──ふとした日常生活のなかで腰が痛む
  Step 1 要因を整理する
   ・ 機能的要因
   ・ 疾患的要因
  Step 2 評価方法を身につける
   ・ 情報収集と医療面接
   ・ 身体機能検査
  Step 3 リハビリテーションを提供する
   ・ 運動制御障害と非特異的腰痛における関連要因の介入指針

 Chapter 2 急性腰痛(ぎっくり腰)──靴下を履いたときに腰が急に痛くなった
  Step 1 要因を整理する
   ・ 機能的要因
   ・ 疾患的要因
   ・ リスク要因
  Step 2 評価法を身につける
   ・ 情報収集と医療面接
   ・ 身体機能評価
  Step 3 リハビリテーションを提供する
   ・ 患者教育
   ・ 機能的要因に対する介入
   ・ 疾患的要因に対する介入

 Chapter 3 腰部脊柱管狭窄症由来の腰痛──30分ほど歩くと足がしびれてくる
  Step 1 要因を整理する
   ・ 機能的要因
   ・ 疾患的要因
  Step 2 評価法を身につける
   ・ 診断学的検査
   ・ 情報収集と医療面接
   ・ 身体機能評価
  Step 3 リハビリテーションを提供する
   ・ 腰部脊柱管狭窄症に対する運動療法の科学的根拠の要約
   ・ 腰部脊柱管狭窄症に対する治療

 Chapter 4 脊椎分離症・すべり症由来の腰痛──バレーボールをしているときに腰が痛む
  Step 1 要因を整理する
   ・ 機能的要因
   ・ 疾患的要因
  Step 2 評価法を身につける
   ・ 情報収集と医療面接
   ・ 身体機能評価
  Step 3 リハビリテーションを提供する
   ・ 病期に応じた段階的な介入
   ・ 全身的な運動連鎖をふまえた治療戦略

 Chapter 5 下肢症状を伴う腰痛──運転を30分以上していると腰が痛くなる&足がしびれる
  Step 1 要因を整理する
   ・ 下肢症状を伴う腰痛の分類
   ・ 機能的要因
   ・ 疾患的要因
  Step 2 評価法を身につける
   ・ 情報収集と医療面接
   ・ 身体機能評価
  Step 3 リハビリテーションを提供する
   ・ 患者教育
   ・ 関節可動域制限により疼痛が増悪している場合の介入
   ・ モーターコントロール障害により疼痛が増悪している場合の介入
   ・ 中枢性感作により疼痛が増悪している場合の介入
   ・ 脱神経(絞扼性神経障害)により疼痛が増悪している場合の介入
   ・ 末梢神経の感作により疼痛が増悪している場合の介入

 Chapter 6 骨盤帯痛(仙腸関節障害)──骨盤あたりが痛む,脚に力が入りづらい
  Step 1 要因を整理する
   ・ 機能的要因
   ・ 疾患的要因
  Step 2 評価法を身につける
   ・ 情報収集と医療面接
   ・ 身体機能評価
  Step 3 リハビリテーションを提供する
   ・ 環境因子の調整と日常生活動作指導
   ・ 機能障害への介入

 Chapter 7 運動恐怖感を伴う腰痛──腰を曲げづらい,曲げる際に痛む&恐怖感がある
  Step 1 要因を整理する
   ・ 機能的要因
   ・ 心理社会的要因
  Step 2 評価法を身につける
   ・ 情報収集と医療面接
   ・ 身体機能検査
  Step 3 リハビリテーションを提供する
   ・ 日常生活動作指導
   ・ 運動療法
   ・ 患者教育
   ・ 運動療法と患者教育の併用

 Chapter 8 慢性腰痛・頚部痛──数十年にわたり腰や首が痛い
  Step 1 要因を整理する
   ・ PDDM model
  Step 2 評価法を身につける
   ・ 情報収集と医療面接
  Step 3 リハビリテーションを提供する
   ・ PDDM modelに沿った治療

索引

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